ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『コーマン帝国』

2012-02-12 22:55:46 | 新作映画
(英題:Corman's World : Exploits of a Hollywood Rebel)



----今日の映画は『コーマン帝国』
これってロジャー・コーマンのドキュメンタリーだよね。
この人、いま一つよく分からないんだけど…。
「そうだね。
実はぼくが最初に彼の名前を目にしたのは、
雑誌『スクリーン』で紹介された『白昼の幻想』
『ワイルド・エンジェル』も監督してていたりで、
サイケデリック&ヒッピーの人かなって…。
ところが、後になって
『アッシャー家の惨劇』など、
エドガー・アラン・ポー原作のホラーを
いくつも手がけていたことを知るんだ。
あれあれ、この人、どんな人?
と思ったら、
こんどはマーティン・スコセッシ監督の『明日に処刑を…』をプロデュース。
さらにはジョー・ダンテ監督『ピラニア』
ジョナサン・デミ監督『怒りの山河』と、
当時の俊英たちの名前と一緒に彼の名前が出てくるようになる。
その中には、コッポラ、モンテ・ヘルマン、ロン・ハワード、ピーター・ボグダノヴィッチ
さらにはあのキャメロンまで…。
こうなると、コーマンはアメリカ映画界のゴッドファーザー…のはず。
なのに、なぜか彼の名前はメジャースタジオのブロックバスター作品には出てこない。
いったい、何者なんだろうって?」

----で、この映画を観たら、
その実像に近づけるってわけ?
「そう、ある程度はね。
彼が作ってきた映画が、あまりにも
ストレートにセックスやバイオレンスを打ち出しているため、
どこかおっかないイメージがあったんだけど、
これが文学か何かの教授のようにモノ静かなイメージ。
でも、映画を製作する熱はずっと燃え続けていて、
いまだに作り続けている。
その姿は、いわば万年映画青年。
製作費は莫大なのにCGを多用している映画が多い昨今、
彼の映画は手作り感でいっぱい。
現場の楽しさに満ち溢れているんだね」

----『スター・ウォーズ』でいえば、
後にCGで手を入れる前の感覚?
「おっ。
いいところを突いてきたね。
ロジャー・コーマンいわく、
『「JAWS・ジョーズ」』と「スター・ウォーズ」が自分の居場所を奪った』…。
それまで、宇宙や巨大生物など想像上の世界を
チープな特撮によって描いていたのに、
それを大予算で作られちゃった。
ジャック・ニコルソンの言葉じゃないけど、
緑の光線が飛び交う嘘っぽい映画が一掃されたのは
ぼくもやはりさびしい気がする」

----それって、意地悪な言い方をすれば、
技術の進歩に追いつかなかったってことでしょ?
勉強不足なのでは…?
「う〜ん。
そこがロジャー・コーマンの、
強いては、この映画の哀しみ。
古き良き時代の、のどかな映画作りがそこにはある。
それをもっとも分かっているのが、
ロジャー・コーマンが見出した一人、ジャック・ニコルソン。
コーマンについて語っているうちに、
感極まったニコルソンは涙を流してしまうんだ。
一方、これもどうとらえるかだけど、
実はハリウッドは、彼にアカデミー賞名誉賞を授与するんだ」

----アウトサイダーとしては複雑だよね…。
「うん。
その時のスピーチが
『この世界で成功するには、危険を冒す必要があると思う。
今、最も優れている映画は、
危険を冒し賭ける勇気のある独創的で革新的な映画製作者が撮影したものだ。
だから常に賭けて、危険を冒すことを忘れないでほしい』

そして彼は今も低予算で
着ぐるみパニック・ホラーを作っている。
こういう人は、もう二度と出ないだろうね」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「コーマンという人は、ベルイマン『叫びとささやき>』や
『フェリーニのマルコルド』
などを全米配給したらしいのニャ」いいねぇ

※彼の部屋にはトリュフォーの『アデルの恋の物語』のポスターが貼ってあった度

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『孤島の王』

2012-02-11 19:02:29 | 新作映画
(原題:Kongen av Bastoy)



----映画って“孤島”を舞台にした作品多いよね。
「うん。
閉ざされた空間だから、
それだけでドラマにしやすい。
登場人物も限られていて、
人間関係の縮図の比喩として描くのにもいい。
最近では『ビー・デビル』なんていう韓国映画の秀作もあったけど、
こちらは、島民ではなく囚人たちのお話」

----ということは監獄?
「厳密に言うと、
非行少年を強制するための収容施設。
観るまでは、“王”というのは
その中の一人かと思っていたんだけど、
そうじゃなかったね。
“王”は、そこに厳しい戒律を敷き、
厳格な指導をしている院長のこと。
少年たちは、過酷な自然環境の下、
青い作業服を身にまとい労働の従事している。
リーダーのオーラヴは、卒院を間近に控え、
揉めごとを起こしたくないという優等生だし…。
主人公は、そこに新しく送られてきたエーリング。
彼は島にやってきた時から
脱出を考えている。
ここに『アルカトズからの脱出』『パピヨン』といった
監獄島からの脱出の物語が入りこんでくる」

----『シャッターアイランド』などとも違うようだね。
アクションの要素も多いの?
「いや、それは少ないかな。
ちょっとネタバレとなるけど、
最後に反乱が起こるくらい。
この映画、批評にも書いてあるから言ってもいいのだと思うけど、
ミロシュ・フォアマン監督『カッコーの巣の上で』を想起させる。
途中、ぼくはリンゼイ・アンダーソン監督『ifもしも…』を思い出しもしたけどね。
で、クライマックスの兵士の登場は
森崎東監督『高校さすらい派』

----へぇ〜っ。アメリカ、イギリス、そして日本か…。
この映画はどこの国のニャの?
「なんと、北欧のノルウェー。
なんでも、これは1915年に実際に起こったことらしいんだ。
さて、その“王”となる院長に扮しているのがスウェーデン生まれの名優で
『メランコリア』などラース・フォン・トリアー監督作品にも出演しているステラン・スカルスガルド
両庁を演じているクリストッフェル・ヨーネル
よくぞ見つけてきたと思うほど
権力を背景に薄汚い欲望をまき散らす寮長を好演。
監督のマリウス・ホルストと共に覚えておいて損はないと思うね」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ラストが衝撃的らしいのニャ」悲しい
※まだ『カッコーの巣の上で』を観たことがない人は、そちらはまだ観ないで観た方がいい度

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『恋人たちのパレード』

2012-02-08 23:55:05 | 新作映画
(英題:Water for Elephants)

「う〜ん。このタイトルはないよなあ。
まるで、70年代前後の
クロード・ルルーシュの映画みたいだ」

----どんなお話ニャの?
「一言で言えば、
強圧的な夫の虐待に苦しめられていて、
それでも彼を母親のように見守っているヒロインと、
大学を卒業できなかった若い青年との恋」

----一言と言っている割には、
ややこしい説明だニャあ(笑)。
「まあ、
そのややこしい部分がこの映画を膨らませているんだけどね。
そうじゃなければ、、
それこそこれまで数えきれないくらい作られてきた
“許されない愛”の映画と変わらなくなってしまう。
ということで、もう少し詳しい説明を…。
ヒロイン、マーリーナを演じるのはリーズ・ウィザースプーン
彼女は孤児院育ちで、
いまはサーカスの花形スター。
その彼女に恋をするのが、
ロバート・パティンソン演じるジェイコブ。
彼はポーランド系移民の息子。
大学で獣医学を学んでいたものの、
卒業目前で両親が交通事故死。
経済的にも追いつめられてしまった彼が衝動的に乗ったのが移動サーカスの列車。
そこで彼は大学で獣医学を修め、卒業したと偽ってサーカス団に入り込む。
だが、そのサーカス団長兼舞台監督のオーガストは、
冷酷な絶対君主。
必要なくなった団員を列車から放り落すような男だった…」

----へ〜え。その団長はだれが演じているの?
『イングロリアス・バスターズ』以来、人気のクリストフ・ヴァルツ
強権的で嫉妬深い彼は、また子どものようでもある。
そんな彼をマーリーナは見切ることができないんだ。
とはいえ、この“ひねり”もそこまで目新しい設定とは言えない。
映画はその内容そのままにクラシックな香りを放つ。
時代が1930年代、大恐慌時代ということもあり、
全体的に紗がかかったようなノスタルジックな感じなんだね。
で、その決定打とも言えるのが、
当時の“一流ではない”サーカスの存在。
サーカスというのはやはり映画に向いていると再確認。
代表的なのはフェデリコ・フェリーニ
日本の寺山修司なんかもそうだった。
サーカスという超絶空間によって
息苦しい現実からちょっぴり離れるという意味でも、
この映画は今の時代の空気に向いているかも。
そうそう、本作はベストセラーが基になっているけど、
映画オリジナルの設定として
年老いたジェイコブの回想としていることも言っておかなくちゃ」

----まさか、それってロバート・パティンソンが老けメイクで?
「いやいや、演じるのは名優ハル・ホルブルック
ポール・シュナイダーも出ているし、
映画って、やはり役者の存在が大きいなということを
改めて感じさせられた映画でもあったね。
監督は『コンスタンティン』 『アイ・アム・レジェンド』フランシス・ローレンスだよ」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「コメディじゃないリーズ・ウィザースプーンも魅せるのニャ」いいねぇ

※ロバート・パティンソン、『トワイライト』シリーズよりはこっちだ度

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『ヒューゴの不思議な発明』

2012-02-07 00:18:15 | 新作映画
(英題:Hugo)

----これ、マーティン・スコセッシ監督の新作だよね。
しかも3D。
よく「映画への愛」を描いているって、言われているけど、
それってどういうこと?
「ぼくも、どういうことかなと、
もしかしたら、原作に“映画愛”の要素を加えたのではないかと、
監督が、映画生誕10年を祝ったドキュメンタリー
『A Personal Journey with Martin Scorises Through American Movies』
『マーティン・スコセッシ 私のイタリア映画旅行』などを手掛けた
あのスコセッシだけにね…。
ところが、なんとこれって原作自体が
映画史上、もっとも重要な、
あるひとりの作家を取り扱ったものだったんだ
まさに彼のためにあるような原作」

----へぇ〜っ。
てっきり、パリの時計台に住む少年の物語とばかり…。
「それには間違いないんだけどね。
主人公は、時計職人で、博物館の所蔵品の修繕もしていた父親(ジュード・ロウ)を亡くし、
冷酷な叔父に引き取られた少年ヒューゴ(エイサ・バターフィ−ルド)。
ある日、駅構内のオモチャ屋に忍び込み、
ネズミのオモチャを盗もうした彼は、
店主のジョルジュ(ベン・キングズレー)に捕まってしまう。
ポケットの中身全部を調べ上げられるヒューゴ。
彼は、その中でも最も大切にしていた
父の遺したノートを取り上げられてしまう。
そのノートには、
父が亡くなる直前まで心奪われていた“機械人形”の修理方法が描かれていた。
ジョルジュは、決してノートをあきらめないヒューゴに、
盗んだ分を働いたら返してやると譲歩する。
かくしてジョルジュの店に通うことになったヒューゴは、
そこでジョルジュの養子イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)と出会い、
心を開くようになっていく…」

----ふむ。その著名人はジョルジュという名なのだニャ。
ジョルジュ、ジョルジュ、ジョルジュ…。
誰だろう?
「う〜ん。
これは映画史に興味を持っていないと出会わない名前かも。
その手の本には必ず出てくるんだけどね。
答は、特撮の父ジョルジュ・メリエス
ほんとうは、この答を明かすべきかどうか迷ったんだけど、
プレスの裏に、彼の代表作、
最初のSFとも言われる『月世界旅行』のワンシーンが載っているから、
まあ、いいのかな?って。
とは、言いつつも、
ぼくはこの映画がメリエスを扱っているとは知らなかっただけに
ほんとうに嬉しい驚きだったんだけど。
それこそ学生時代にアテネフランセで観て以来だもの」

----ニャるほど、メリエスだったらオモシロそうだ。
「でしょ。
さて、この映画、
父を失ってこっそり隠れ住んでいたヒューゴが希望を取り戻すまでを、
“映画”そしてジョルジュ・メリエスとの関わりの中で描いていく。
それだけに全篇が見逃せないシーンの連続。
おそらく、人によっていろんな楽しみ方ができると思うけど、
ぼくはこれをスコセッシの“3D支持宣言”と取ったね。
冒頭の、パリに降る雪、光にきらめく綿ぼこりなど、
この映画それ自体もスペクタクルではないディテールにおける3Dの魅力を謳っているけど、
いちばん注目してほしいのが
メリエスが特撮を駆使した『A Thousand and One Nights』を撮影シーンもろとも見せていること。
この『ヒューゴの不思議な発明』が3Dであるだけに、
撮影シーンの向こうに描かれた撮影中の『A Thousand and One Nights』も3Dとなる。
特殊効果の萌芽的な撮影がいかにしてなされていたかが、いまの最新の3Dで楽しめるわけだ。
実は、ジョルジュ・メリエスはマジシャン上がり。
リュミエール兄弟の『シネマトグラフ』を観て、
そこに新たな可能性を感じ取り、
映画にストーリー性を持たせたり、カット割りなどを使用。
もし、そんな彼が現代にまだ生きていたら…」

----それは3Dに手を出すに違いないニャ。
「そういうこと。
ここにスコセッシがこの映画を撮ったわけ、
しかも3Dで…という理由が見えてくる。
そう言う意味でも興味深い作品だったね」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「アカデミー賞最多11部門ノミネートなのニャ」身を乗り出す

※映画ファンにはたまらない映画だ度

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『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』

2012-02-05 00:18:12 | 新作映画
(英題:Sherlock Holmes : A Game of Shadows)



----昨日だっけ。
この映画ってツイッターで呟いたら、
耳に痛いご指摘をいただいちゃったよね。
「う〜ん、お叱りというわけではないと思うけど、
安易な言葉で呟いてしまったのはまずかったかもね。
その呟きとは
『「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」、
これはオリジナル・キャラのエッセンスを使ったアドベンチャー・アクション。
エンターテイメント・ムービーだな。』というもの。
それに対していただいたレスが
『ホームズはともかく日本語名詞が一つも入っていないのに驚いた』。
でも、この映画、これにつきちゃうんだ。
ぼくが子どものころ読んだホームズとは別モノ。
というわけで、今回は、この呟きに添って話をしよう。
フォーンは、ホームズと言うと
どんなジャンルの物語だと思う?」

----それは決まっているよ。
推理モノ。ミステリでしょ?
「だよね。
ところが、この映画、
前作『シャーロック・ホームズ』 にもまして
その推理要素は後退。
推理も確かにあることにはあるんだけど、
それは最後の最後にホームズがモーリアック教授に対して優位に立った時、
“実はあの時…”という形でタネを明かすという、
いわゆる『木更津キャッツアイ』パターン。
本作最大の見どころは全編を貫くアクション。
もとより、原作でもホームズは格闘技に優れているとなっているし、
その描いているところは、決して間違いではないんだろうけど、
彼の武闘能力が並外れているために、
ミステリーの要素が影に隠れてしまうんだ」




----ちょっと待って。
そのモリアーティ教授というのは?
「これまた、
原作では人気のホームズのライバル。
今回は、そのモリアーティ教授が政商よろしく立ち回る。
表では国際会議に出席しながら裏では戦争の火種を作っている」

----具体的には?
「一見、アナキストの仕業であるかのように見せて
ヨーロッパ各地で爆破事件を起こしているという設定。
その真の目的は、戦争によって武器と包帯の需要が増え、
自分のふところが膨らむことにある。
さてそして、ここにもうひとりの新たなキャラ
ホームズの兄マイクロフトが登場。
このモリアーティとマイクロフトそれぞれを、
ジャレッド・ハリス、スティーブン・フライ
というふたりの名優が演じている」

----主演とかは変わらないんだよね?
ヒロイン役でレイチェル・マクアダムスもまた出てるんでしょ?
「うん。
ホームズがロバート・ダウニーJr.、
ワトソンがジュード・ロウ

原作未読の、とりわけ今の若い人には自然に受け入れられるだろうね。
でも、くどいようだけど、
ぼくのような古い時代の愛読者にはね〜。
映像にしてもあまりにカッコよすぎるんだ。
砲弾が飛び交う中での脱出、
そして前作にも出てきたホームズの“格闘予想”における
超スローモーションとストップモーションの組み合わせは、
この21世紀ならではの映像。
スタイリッシュすぎる。
そういえば、もうすぐ公開されるドラゴン・タトゥーの女』のオリジナル、
スウェーデン版でリスベットを演じたノオミ・ラパスも重要な役で出演。
こちらもファンには見逃せないかもね」

----あれれ?その『ドラゴン・タトゥーの女』、
観たはずなのに、まだお話を聞いてない気がするけど…?
「……mmmmmm」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「カッコよすぎるのが気に入らないというのは問題ではないのかニャ」複雑だニャ
※だから「エンターテイメントとしては楽しめる」と言っているんだ度

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『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

2012-02-04 00:08:25 | 新作映画
(英題:Extremely Loud & Incredibly Close)



「なるほど。
これは評判がいいのもうなずける。
基本となる物語がよく練られているのはもちろんのこと、
演技、撮影、そしてそれらを束ねる演出が申し分ない。
ハリウッド映画って、どうしてこんなに隙がないんだろう? 
これはまさに丁寧な職人の仕事」

----へぇ〜っ。最初タイトルを聞いたとき、
これニャに?って思ったけど…。
「それはぼくも同じ。
しかし、観てみてよく分かった。
この映画、最大の感動は
“ありえないほど近い”が何かということが分かった瞬間に訪れるんだ」

----う〜ん。よく分からないニャあ。
そもそも、どんなお話ニャの?
「主人公は新人のトーマス・ホーンが演じる少年オスカー・シェル。
9.11で父トーマス(トム・ハンクス)を失った彼は、
父のクローゼットで見つけた鍵に心動かされる。
この鍵に合う鍵穴を見つければ
父からのメッセージを受け止められるはずだと考えるんだね。
そこで、鍵が入っていた封筒に書かれたブラックという文字を頼りに、
ニューヨーク中のブラックという名前の人を訪ね歩く…
と、こういうお話だ」

----ニャるほど。
さっき、“名優”と言っていたけど、
それってトム・ハンクスのこと?
「彼もそうだし、
母親役のサンドラ・ブロックもそう。
いつもにはなく抑えた演技ながら
最後にはいいところをさらっていく。
しかし、今回最大の注目株は
アカデミー助演男優賞にノミネートされたマックス・フォン・シドー
ベルイマン映画のベテランとして知られる彼が演じるのは、
オスカーの祖母の部屋の間借り人となる老人。
ある過去の事件がトラウマとなっていて彼は失語症に…。
つまり、マックス・フォン・シドーは無言の演技を続けるわけだ。
その老人に対し、
オスカーが自分の思いを一気に爆発させるシーンがある。
その中で、オスカーは父親の9.11当日の留守電を彼に聞かせる。
それを聞きたくないと、遮ろうとする老人。
いわば“受け”で感動を誘う演技…
これはもうさすがと言うほかない」

----その老人って?
「彼は、オスカーと一緒に“ブラックさん探し”を続けるんだ。
9.11以降、祖母が彼に部屋を貸した意味など、
あとで考えると
この映画、それぞれの気持ちを
あえて言葉にはしようとせずに描いていることが分かる」

----でも、いずれにしろ、
そのブラックさんを探すっての、
あまりにも無謀じゃニャい?
「ところが、
オスカーは、独自の才能によって効率的にやる方法を見出す。
実は、冒頭の方で
彼と父マックスの関係がじっくり描かれている。
最初は、よく分かりにくかったけど、
この父親は、ある種の発達障害を持つ息子オスカーから、
その好奇心を引き出し、社会と関わりを持てるような子育てを行なっているんだ。
もし、この父親がいなければ
彼は家に引きこもっていたかもしれない。
で、ここは知らないと分かりにくい部分でもあるけど、
この(広汎性)発達障害を抱えた少年というのは、
反面、驚くほど知能が高いケースもある。
この映画で、オスカーはアスペルガー症候群の検査を受け、
その結果は“不確定”…となっていると説明されている」

----ふうん。
ここまで聞いた限りでは
あまり9.11は関わってこない気もするけど…?
「それについては、
説明できない不条理なことといった描き方に近いね。
なぜ、それが起こったのか、
それによって多くの人たちの命が奪われなければならなかったのか…。
政治的人間ではない一般市民にとってはどうしても理解できない。
大人がそうだから、ましてや子どもには…。
それともう一つ。
僕らがこれまで見てきた9.11ツインタワーの多くは
下から見上げたもの
しかし、ニューヨークで働く多くの人たちは同じく高層ビルの中、
かなり高い位置から真正面に“それ”を目撃している。
それは文字通り言葉を失う映像だったね」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「タイトルはふざけているようで、内容はしっかりしているのニャ」複雑だニャ
スティーヴン・ダルドリー監督は<謎>を孕ませながら物語を展開する映画に抜群の手腕を発揮する度

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『ヤング≒アダルト』

2012-02-01 22:21:28 | 新作映画
(英題:Young Adult)



「いやあ。
これはオモシロかった。
ほんとうによく考えられた脚本だ」

----えっ。この映画って、あれでしょ。
勘違いのタカビー女が、
高校時代に付き合っていた元カレからのメールで、
赤ちゃんが生まれることを知り、
幸せな結婚生活を壊してカレを自分に取り戻すべく
故郷に乗り込むという…イタイ女性のお話…」

「そうだよ。
で、この映画が公開されたら、
こういう意見が大多数を占めるのも想像つく。
『あれはないよ。空気が読めない以前の問題だ…』。
でも、ぼくは思うんだ。
じゃあ、なぜ、そんな誰も共感しないような女性の物語を
この監督(ジェイソン・ライトマン)は映画にしたんだろうって…」

----そう、そこが分からないところ?
「じゃあ。
たとえばみんなが褒める
コーエン兄弟の 『ノーカントリー』とかはどうだろう?
あんな猟奇殺人鬼にみんな共感なんかしないよね。
でも、いつの間にか惹きつけられて観ちゃう。
ということで、まずはストーリーのおさらい。
高校時代にみんなから一目置かれた女性メイビス(シャーリーズ・セロン)。
都会に出た彼女は仕事では、まあまあの成功を収めているものの、
こと、男性に関してはせいぜい一夜限りの付き合い程度。
そんな中で、自分のよりどころだった
連載小説(と言ってもゴーストライターとして関わっているわけだけど)さえも打ち切りになることが決定。
そこで、過去の栄光にすがりつき始める。
彼女に火を付けたのは一通のメール。
その昔付き合ったことのあるバディ(パトリック・ウィルソン)が、
あの頃のことをまったく忘れ、
いまや善きパパ善き夫として
日常の幸せの中に入って行こうとしていることを知ったメイビスは、
勝手に『それは彼の本心ではない』と勘違い。
助けに向かうというお話」




----結局、身勝手じゃニャい。
「ところがこの映画、
なんとかにも一分の理じゃないけど、
彼女の言い分も十分に聞く。
しかも、高校時代はメイビスからはそっぽも向かれなかったマット(パットン・オズワルド)、
そしてその妹サンドラ(コレット・ウォルフ)などを登場させることで、
彼女にもある種の救いを差し伸べる」




----救いって…?
『もっとも哀れなのは“忘れられた女”』という、
マリー・ローランサン(『鎮静剤』)の詩
の一節もあるけど、
この映画では、そこまでメイビスを貶めない。
マットはメイビスにバディに近づくなと忠告。
一方で、サンドラは今でもメイビスの生き方に憧れている。
もっとも、マットに下心がなかったかと言うとこれは怪しいけど…。
一方、バディにも優柔不断という弱みもある。
でも、そういうところまで描ききっているからこそこの映画はオモシロイ。
言葉で、『あれはダメ、この人はイヤ』ですむんだったら映画にする意味なんてない。
ヒトの不思議さオモシロさ。
そして他の人との関わりの中でどう変わっていくか…。
それが映画をダイナミックに動かす。
そういう意味でもぼくはこの映画は本当に楽しめたね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「映画は、ヒロインの生き方が好きか嫌いかじゃないということなのだニャ」
※タイトルバックもお見事だ度

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『ポエトリー アグネスの詩』

2012-01-28 18:58:48 | 新作映画
(英題:POETRY)



----これ、昨年の最初の試写で観たんだよね?
「うん。
すっかりここで喋っていた気になっていた。
結論から言うと、
今年ここまでに公開された映画の中では
頭抜けて好きな作品だね。
とにかく、スクリーンを見つめている間、
“映画を観ている”という気にさせてくれる」

----アグネスと言うと、
アグネス・チャンを連想するけど、
ここに写っているのは
かなり年配の人みたい。
どんなお話ニャの?
「う〜ん。
これはあんまり、
中身を知らずに観た方がいいんだけどね。
主演は16年ぶりに映画に出演という韓国の名優ユン・ジョンヒ
脚本・監督はイ・チャンドン
『ペパーミント・キャンディ』『シークレット・サンシャイン』が人気だけど、
個人的には『オアシス』の衝撃が大きい。
さて、簡単にシノプシスを離すと…。
主人公は、遠く釜山で働く母親に代わって
中学生の孫息子ジョンウクを育てている初老の女性ミジャ(ユン・ジョンヒ)。
詩作の教室に通い、言葉を探す穏やかな日々を過ごしてきた彼女が、
孫息子の事件によって、その日常を脅かされるというお話」

----へえ〜っ。
なんてことのないお話に見えるけど…。
その孫息子の事件というのが問題なんだニャ…。
「そう。
彼を含む仲間6人は、
少し前に自殺した少女ヒジンの事件にかかわっていたんだ。
他の5人の親たちはお金で解決しようとする。
だが、ミジャにはそんなお金はない。
しかも、なんと彼女はアルツハイマーの初期症状が出始めていた…」

----うわっ。一気に悲惨な話になっちゃった。
「うん。でも人生って、
たとえ、今はいいように見えていたとしても、
どこでどんな落とし穴が待ち構えているか分からない。
しかも、それは
いくら自分がそれまで正しくつつましく生きていたからと言って
世の中が、まあまあと見過ごしてくれるわけじゃない。
その厳しい試練が
ピュアの塊のような彼女ミジャに襲いかかるんだ。
この残酷な事実――。
もう、それだけで心揺さぶられてしまう」

----う〜ん。
「さて、それを軸としながら
この映画が映画としてもぼくの心を鷲掴みにしたのは、
やはり映像だね。
まず観てほしいのがミジャの服装。
ふだんから彼女がきる服は少女のような色遣い。
初老の女性が着るには目立ちすぎる。
韓国版『下妻物語』と言っては言いすぎかもしれないけど…。
ここにはいくつかの意味がある。
ミジャがおしゃれが好きで
自分の人生を楽しんできたこと、
他の人とは違っているという、その特異性を見せること、
落ち着いたトーンの田園風景の中での観た目の効果を出すこと、
そして、それによって映像、物語の両方を弾ませること…」

----服だけでそんなにも?
「うん。その効果が最大限に発揮されるのが、
ミジャが他の人たちを代表して
被害者の母親の元に謝罪に向かうところ。
その母親は野良仕事をしている。
そこに、謝罪には似つかわしくない姿で彼女が現れる。
さて…?
ここは言わない方がいいだろうな。
と、この映画にはこのシーンに代表されるように、
心をざわつかせるシーンが随所に散りばめられている。
まあ、後は何も言わないから
とにかく観て観ることをおススメするね。
エンディングひとつをとっても
人によっていろんな解釈がある、
そんな深みを持った映画だよ」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ところでアグネスというのは誰なのニャ」小首ニャ

※ヒジンの洗礼名だ度

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画像はアメリカ・オフィシャルより。
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『アフロ田中』

2012-01-26 22:03:09 | 新作映画
----しっかし、すっごい頭だニャあ。
こんな人いるの?
「まあ、ここまでじゃないけど、
いることはいるね。
これは映画のタイトルにもなっているように
アフロヘアーと言うんだ。
主人公の田中は、
生まれたときから天然パーマ。
周りにからかわれてアフロにしたところ、
急に、みんなが一目置きだした。
その迫力にタジタジになったんだね。
で、調子に乗った彼は、
以後、独自の道を歩み始める。
そのひとつが、高校中退。
ところが、そのまま楽しくやれると思っていたのに
人生は、そうは甘くなかった。
上京して働き出すも、恋人はできないまま。
そんな彼に、高校時代の仲間から結婚式の招待状がくる。
そこで焦った彼は…というお話」

----ニャんで焦るの?
「高校時代に、彼と仲間たちはある約束を交わす。
それは、彼らのだれかが結婚するときに
それぞれ彼女を連れていくというもの。
しかし、田中には彼女はいなかった。
と、まあ、これだけの話。
でも、そのこれだけの話がとてつもなくオモシロい」

----そのオモシロいワケって?
「もう、すべては
田中を演じている松田翔太の演技。
本来なら、そのルックスの良さで、
いくらでも女性が寄ってきそうな彼が、
オーバーアクションで“モテない”男を演じちゃう。
体はクネクネ、目線は変なところをさまよう。
しかも、緑色のジャージ姿。
合コンのとき、一念発起しておしゃれをしたら、
これまた、一昔前のディスコスタイル。
まあ、それ以前に、彼の顔にアフロと言うだけで笑える」

----松田翔太って『ボーイズ・オン・ザ・ラン』では
クールで嫌味なモテ男を演じていたよね。
「そう、それだけにギャップがオカシイ。
あの映画とこれを並べて観たら、
そのアフロヘアーはともかくとして、
ひとりの男がモテるモテないは、
生まれついてのモノだけじゃないということを
感じとれるかもしれない。
モノローグも松田翔太。
とにかく、ここまで一人の役者の力量に
その映画全体をゆだねた作品は近年まれと言ってもいいだろうね」

----ふうん。他の役者はどうニャの?
佐々木希、原幹恵、美波といった
平成風美女もわんさか出ているけど、
気になったのはリリー・フランキー
さっき話した『ボーイズ・オン・ザ・ラン』にも出ていたけど、
昨年の傑作『モテキ』に続いて
またまた主人公の上司役。
エロっぽいいやらしさから
上司としての常識人まで
彼は、人の観察がよくできている(と思う)。
なんというか、存在感以前に説得力があるんだ。
映画に不思議なリアリティをもたらしているよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「松田優作に似てきた気がするのニャ」身を乗り出す

辺見えみりにも驚いた度

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『ピープルVSジョージ・ルーカス』

2012-01-25 00:08:47 | 新作映画
(英題:THE PEOPLE VS GEORGE LUCAS)


「今日はちょっとユニークな映画のお話をしよう。
タイトルは『ピープルVSジョージ・ルーカス』
“VS”となっていることからも分かるように、
これは、よくあるジョージ・ルーカス賛歌ではない。
『スター・ウォーズ』旧シリーズのファンたちからの
ルーカスに対する辛辣な疑問、不満がいっぱい詰まった、
愛憎のドキュメンタリーなんだ」

----へぇ〜っ。興味津々。
でも、なぜ旧シリーズなの?
「うん。
彼らファンはこう考えている。
『オリジナルの3部作で終りにしておくべきだった』と。
ファンとルーカスの蜜月期間が終わったのは、
ルーカスが“スペシャルエディション”を発表したとき」

----あれってジャバ・ザ・ハットを登場させたり、
当時の技術ではできなかったことを
ルーカスがCGを使ってやってのけた特別篇だよね。。
「そう。
この作品は、ジャバ・ザ・ハットのシーンばかりが脚光を浴びた感もあるけど、
実は他にも細かい改変がいくつもなされている。
その一つが、ハン・ソロが銃を撃つタイミング。
お尋ね者の彼はオリジナルでは賞金稼ぎに対して自分から発砲。
ところが、これは相手が発砲して外れて
その後、ソロが発砲という風に変わっている。
それによって、ハン・ソロのキャラも変わるし、
第一、 賞金稼ぎがあんな至近距離から撃って外すわけはない…と、
彼らファンはこう見るワケだ。
実を言うと、ぼくもこのスペシャルエディションには
オリジナルを観たときほどの感動がなく、
それってなぜだろうと思っていたんだけど、
もしかしてこういうところにあったのかも…」

----でも、作品を自分の満足のいくモノにしたいというのは
作家共通の気持ちニャのでは?
「そこなんだよ、
この映画のオモシロいところは…。
ファンたちは、映画は“時代のモノ”だという。
もちろん作家のモノだけど
それを観た人たちのモノでもあると…。
だから、その時代に生まれたものを勝手に変えるなとね。
現に、その頃、ルーカス自身も
古い白黒映画をカラー化することに反対していた。
なのに、自分だけなぜ、それが許されるのかと…。
もし、ダ・ビンチが今の時代に現れて
『モナリザの口元を書きなおす』と言ったら
きっと、みんな止めるだろうとね…。
彼らの声は切実。
『オリジナルを見せてくれ』。
こういう細かい検証は、
新シリーズに対してもなされる。
社会的現象ともなった22年ぶりのスター・ウォーズ。
『エピソード1/ファントムメナス』の第一回の上映を観ようと
会社を休む人も出たほどだった。
ところが終ったときにはそれは落胆に変わる」

----ジャー・ジャー・ビンクスが悪評のヤツだね。
「ラジー賞最低男優賞(笑)。
後、フォースミディ=クロリアンという概念を持ち込んだこととかもだね。
ほかにも、ルーカスが
大実業家として成功したこと、
彼のマーチャンダイジング戦略に乗っかって
家庭を失ってまでグッズ、フィギュアを買い集めた人たちの恨みなども出てくる。
まあ、これは逆恨みに近いけど…。
と、この映画、喋り出したらキリがない。
しかし、何よりも感心したのは
ファンたちの自家製リメイク版がとんでもなく数多く存在していること。
そのこと一つとっても、
この『スター・ウォーズ』は映画史上、
右に並ぶものがないエポックメイキングな作品だったことが分かる」

----でも、それ聞いていると
『エピソード7〜9』はない方がいいってことだね。
「いや、それは…(汗)。
ここがファンの複雑なところだろうね。
期待値が高いから
少しでも崩されると
もう我慢できなくなってしまう。
それにしても、いろいろと考えさせられる一本だったな」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「同じ子供向けでもイウォークは嫌われてないのニャ」
※『スター・ウォーズ』はやはり特別な映画だ度


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