ジッタン・メモ

ジッタンは子供や孫からの呼び名。
雑読本の読後感、生活の雑感、昭和家庭史などを織り交ぜて、ぼちぼちと書いて見たい。

【憩室入院 かくあり記】(上) 11月8日~12日

2008年11月28日 | 2008 暮らし雑感
【憩室出血入院 かくあり記】(上) 11月8日~12日

それは突然襲ってきた。
その日は、朝と夕に快適な定期便があって夜の10時となった。
急に駆け込みたくなるような衝動に突き動かされ、しゃがんでトイレで見たものは血だった。
貧血した感じとなり、横になったが、ほどなくまた似たような感じに襲われ、再び入ると事後の陶器に、鮮紅色の血が散っている。
量も多い。
 「なんなのだ、これは?」
血があざやかなので胃より下と思われたので、ネット検索で「大腸 出血」と検索して見る。

憩室部位からの出血が疑われたがこちらはまったくの素人、憶測は禁物だ。
近隣ではもっとも設備と医療水準で定評のあるS病院に電話をする。
診療するとの返事をもらえたので近くに住む息子の車で駆けつけた。
採血、触診、胃部のレントゲンなどを経てAM1:00の深々夜の入院となった。
退院までの15日間をメモ録としておきたい。

11月8日(土)
1:00に個室ベッドに横になった。
診断は大腸憩室部位からの出血が考えられるとのこと。
止血剤入りの点滴をして床につくが、寝られるわけがない。
ああでもない、こうでもないの不安は消えない。
今後のことを考えると暗澹となり、まんじりとすることもなく朝を迎えた。
朝、看護婦さんが来る。血圧正常。検温6・9分。
若い女医さんから説明を受ける。
・憩室出血の可能性
・若年層や健常者でも発症する場合がある。
・硬い便や高血圧、糖尿などが誘引となって起こることも(女医)

その後に主治医となった消化器内科のS医師から同様の説明と治療方針を聞く。  
治療は止血点滴と栄養補給、その後水、絶食から重湯~全粥までの食養などで、少し時間はかかるが「がんばりましょう」とのこと。
S医師は消化器内視鏡専門医でもあり、今年5月の大腸検診で顔は知っていた。
この病室は個室で浴槽、シャワー、テレビなどがあり簡易ビジネスホテルと似ている。
家のパソコンが当分使えなくなるので、携帯メールを使ってその旨を「メル友」に連絡。
午後三時、カミさんと娘が一緒にやってくる。
パジャマ、タオル、歯ブラシなど身の回り品を揃い付けのタンスなどに分けて入れる。
夜、プロ野球日本シリーズ観戦。
今年は春開幕の不振時期からG+テレビで巨人戦をずっと、黙って応援してきた。
こうして病室で一人、声もあげず、拍手もせず横たわって黙然と見ることになるとは 思わなかった。
この第6戦は西武が巨人に4―1で勝ち、対戦成績を3勝3敗のタイに戻した。
中2日で初リリーフ役をこなした岸の気迫がすごい。
巨人を見下ろしていた。
投手力の気合、力量の差がここまでの試合に感じられた。

11月9日(日)
朝6時になると各室内に「今日は11月9日日曜日です。これから各部屋を廻ります」という看護婦さんの声が聞こえてくる。
7:00 点滴が続く。止血主体から栄養混じりのものに変る。
オナラは出るが実は出ない。下血もない。
静かだ。日曜なので大沢・張本の渇!番組を見る。
イチローが8年連続ゴールデングラブ賞をとった話の中で、今年はエラーが5回あった。いままででわずか16個しかない。
イチローもいまや35歳、寄る年波もあるのではと張さんが指摘。この辺り、いずこの世界も年年歳歳の感じだ。
携帯メールで各人から見舞いや連絡などが入る。
巨人もし優勝せば、先ず銀座ライオンで大ジョッキーを傾ける会というのを私のほうから仲間に提唱していたが、入院でダメになり関係者へお詫びのメール。
点滴しているからベッド体操もするわけにはいかない。
少し歩くと注射の部分に血が逆流して管を上ってくることがある。 正午近くに検温36・5分。血圧70~137。
テレビ、将棋は藤井 × 片上の初手合い。
序中盤の長い将棋となったが藤井の貫禄勝ち。
囲碁は小林覚九段 × 小松九段の対局を見ていたが半ばで寝ててしまった。
本は「一茶に惹かれて」(千曲山人 文春新書)を読む。
  雪ちるや わき捨ててある 湯のけぶり  
 子供等が 雪喰いながら 湯治かな の句が印象的。
「一茶の反骨、源流を浄土真宗にもとめているのは卓見」と書かれた本カバーの作品紹介が気になった。
午後、あーちゃん(カミさん)と娘が来る。
クッションや筆記具類、耳栓、パジャマの類を持参。
娘から点滴で「父さんの肌が、がさつかず、しっとりしている感じだ」と言われる。
生活を振り替えると若い頃とくらべ水分の摂り方が少ないと、二人から言われた。

日本シリーズ最終観戦は雑記帳にスコアを刻みながら見る。
結局ライオンズが4年ぶり13回目の優勝となった。
就寝は9時なのでテレビと頭の上のスタンドのみの灯りとなる。
隣室からミャーア、ミャアーという患者さんの大きな声が聞こえる。つらそうな声で耳栓をして寝る。

11月10日(月)
起床は6:15分。
排尿は黄色、点滴のせいか。
この点滴ヴィーン3Gとの表記があった。
まだ絶食、点滴が続く。 点滴はブドウ糖、アセテートなどが入っているらしい。止血剤も続く。
人間、歩けなくなったり酒が飲めなくなってきたら、だいぶ弱ってきた証拠になると以前から考えていたので、そんなことも時折、頭を掠めたりする。
朝の巡回は、まず若い医師が2人来て「お変りありませんか」と尋ね、簡単なやりとりのあと今度は主治医が現れる。
下血、腹痛「ありません」
 「今日採血しましょう。結果がよければ夕方から水もOKでいきましょう」 「5月に大腸内診で異常がないので、そっちの方はどうするか少し迷っているが、医師としては念のため撮りたいところもある」
などのやりとり。その後、 看護士が採血で来室。
脈72 血圧 62~104と低い。
ゴミ回収、点滴交換、シーツなど交換、床掃除など午前中は人の出入りが多い。
「身体拭きましょうか」の時間があり、点滴で着替えがままならないので上半身をお願いする。
嫁さんの車であーちゃん来訪。
3歳末娘のカナが、紙の「のりまき」と。アンパンマンを書いた絵を差し入れしてくれた。ありがたく頂戴する。

11月11日(火)
昨夜からの「落語の年輪」~江戸・明治篇~ (暉峻 康隆)を読み終わる。
 昭和24年の早稲田で総勢4人の落語研究会が発足した。
著者の暉峻康隆が会長で、会員は小沢昭一と加藤武と大西信行。
卒業とともに会員がいなくなったが、代わりに教え子でひとり落語きちがいがいた。
その人が興津要で副会長となったの挿話は笑えた。
 午後の回診でS主治医と話す。
・血液検査などから憩室からの出血と判断。  
・現在この病棟には70人の入院患者がいるが、あなたのは他 
 の病状を持つ人からみれば、もっとも軽症な患者だ。
・血液状態もいいので、夕刻から水を飲んでもかまわない。
・水を飲んで力を与え徐々に、重湯、三分粥、五分、七分、全粥 
  から米飯にかえていきましょう。
・止血剤入りの点滴は状況に応じていく。
・この治療は医師1年生でも10年生でも手当てとするところは
 まったく一緒で簡単なものなどなど。

点滴針の場所を変える。固定の同じ針は約3日で変更するらしい。
あーちゃんに頼んであった本を持参してもらう。  

・「ステップアップ 古文書の読み解き方」 天野 清文ほか 
 吉川弘文館  
・「文政十一年のスパイ合戦」検証 謎のシーボルト事件 
 秦 新三  文春  
・「近世日本国民史」 文政・天保編  徳富 猪一郎著  
 時事通信社

ブログに【江戸城からの遠眼鏡】と題して文政、天保の脳トレ雑メモを綴っているが、その参考文献だ。
江戸中期というのは、知らないことがたくさんあって面白い。
古文書のほうは、郷土史研究会で地元の村方文書を読む機会が多いのでその力をつけるため。
読む時間だけはたっぷりあるわけで、血は失ったが、得るものも得て退院したい。
テレビ『筑紫さんが遺したもの 』を見る。
ガンとの壮絶な闘いは500日余。 先日の11月7日、満73歳で逝去された。

 11月12日(水)
売店は朝7:00からなので、開くのを待って4階の個室から新聞を買いに降りる。
家で読んでるのは読売だけだが今日は朝日と読売の両紙。
田母神空爆長の紙面扱いが気になった。
6000万円の退職金はしっかりと抱いて、戦前の日本の侵略行為を「濡れ衣」としてはばからない自衛隊のトップを両紙はどう扱うか、読み比べてみたがそれほど差はない。
そろって批判しているが甘い。
活字メディアの正念場と思うが残念。
こちらの体も今危機だが10年後の日本の文民統制を想像すると慄然とするものがある。
主治医から  
・本日の採血結果でよかったら、夕方から食事に入りましょう。
 最初は重湯から。  
・点滴は併用
午前の検温、35度6分 血圧 72~126
ルーチンとなっているゴミ採り、拭き掃除、床掃除、体拭き、点滴など人の出入りがあわただしい。
掲示で、水曜日は”将棋出前”があることがわかっていたので予約申し込み。
午後から地元の将棋連盟支部の方で、四段の免状を持つ人が駒と盤を持って現れた。
自らも大腸ガンの体験があり、ボランティアで療養の人の相手をしているとのこと。
三番将棋で結果は ● ○ ●。
二局目は穴熊に囲って攻め続け、最終局面で角に力が貯められた。
局後の検討で即詰め手順があることが確かめられた。
高段者だから患者にストレスを与えないように緩めてくれた勝負だった気もする。
自分の棋力は地元公民館で二段ちょっとだ。
薬剤師の方が来訪、マグラックスという軟化剤についての説明があった。
明朝から朝食~夕食後に2錠づつ飲む。
通じをやわらかくする薬で、下痢が続くようなら看護士に連絡してくださいとのこと。
夕方から重湯流動食が始まった。
担当看護婦さんから
・血液検査結果がいいこと
・食後、血便などある場合もあり注意すること などを聞く。    



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