書店で立ち読みしながら涙したのは、今回が初めて。しかも一冊読み通したにも関わらず、その本を購入したのも初めてです。
立ち読みで完読するのは、二つのパターンがあると思います。
一つ目が、買うまでもないやと思いつつ興味のあるジャンルの本。
二つ目が、内容が面白く自宅にたどり着くまで待ちきれない本。今回の一冊は、待ちきれない一冊です。2時間半かけて立ちっぱなしで丹念に読み進めました。
最近の大型書店では、座り読みのできる椅子を設置してあるところもありますが、わたしの場合は何時間でも立ち読みです。
今回の一冊、それは村松謙一弁護士が書かれた「いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる」です。村松さんは、企業再生を専門とする日本を代表する弁護士。NHKの「プロフェッショナル」にも登場された有名な方ですが、不覚にも存じ上げませんでした。著書も多数出されており、今回の一冊はそれを集大成した半生記とも言える一冊。
村松弁護士の基本的なスタンスは、企業の経済合理性よりも国民の人権を守るというもの。借りた金は返さなければならないが、人や家族の命は最も尊重されなれければならないというものです。まさに正義のために戦う弁護士です。
同書の中には、司法試験受験のための経済的な苦労の話が出てきます。月三万円で暮らしていた時に愛犬が病気になり獣医師から一万円の注射を打つかどうかの判断を迫られます。村松氏は注射を選びますが、愛犬は死ぬことになります。その夜、肉を買ってきて二人で通夜。村松さんのヒューマニズムがひしひしと伝わってきます。
そして、この本の真ん中には、娘さんの死があります。順調に育ち高校に入ったころ、拒食症にかかり不遇の死を迎える・・・。ここは、涙なくしては読み進めることができません・・・。しかも村松弁護士は多くの人や会社を救うため全国を走り回る日々。そのジレンマのことを考えると胸が痛くなります。
最近、事業再生やターンアラウンドというテーマでの研究を続けているのですが、どちらかというと経済合理性に傾斜する傾向にあったと考えています。今回の村松弁護士の一冊。自身を大きく変えたように思います。
「いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる」 村松謙一著 角川書店 1575円
目次
第1章 どんな会社も再建しなければいけない―東北地方・卸業者(暗闇の中でもがいていた会社が、今、人々を助けている避難所に、生きるための食料を載せたトラックを走らせた・・・)
第2章 ふたつの死が私を変え、支えている(99%ダメと言われても、私は諦めない 初めての大きな失敗・・・)
第3章 私の会社再生法(多くの人生が、命が、会社と共にある原則、会社は再建できる。心の力が会社を蘇らせる・・・)
第4章 人をマスで救おうと決めた若き日(溺れないように泳ぎ続けた人生 次郎長の里で生まれ育つ・・・)
第5章 企業再生こそ日本の再生だ(全就労人口の70%が中小企業の社員「お金を返せないから」と命を差し出してしまう人がいるのはおかしい・・・)