戦争の悲惨さを伝える言葉をご紹介します。光市の事件、三浦氏の事件の被害者だけでなく、遠い国で亡くなっている多くの方のことも考えたい。そして、私たちに何ができるかも…。遠回りかもしれないけれど、日本が軍を縮小、放棄し、戦争のない社会を実現する努力をすることで、軍事費のいらない社会がいかに幸せで豊かなものかの見本となり、そのモデルを世界に広げていくことで、戦争の芽をつぶしていくべきではないでしょうか。
■■以下転載■■
「もうたくさんだ」と思う。
イスラエルでの乱射事件は大きく報道されるのにガザの事態はほとんど知らされない。
読んでいて涙がでてくるような、こんな報告をもうこれ以上転載しないですむようにするために、ぼくたちにできることは、そんなにたくさんはない。ハチドリが山火事にむかって、口に含んだ水を落とすくらいのことしか、できないだろう。
それでも、もうこんなことを許しちゃいけないんだと、声を出し続けたいと思う。
ぼくたちにできる小さなこと、以下に転載する記事の中にもあるし、イルコモンズさんが紹介してくれてる▼「ガザに暮らす恐怖」と、日本にいて、しないことで、できることのリストhttp://illcomm.exblog.jp/7425662/もある。
**以下、転送を歓迎します**
○○○ナブルス通信 2008.3.9号○○○
「我が家半焼と従兄弟の死」
http://www.onweb.to/palestine/
Information on Palestine
────────────────────────────────
>◇先週のガザでの犠牲者、120人を超える
6日(木)の夜、西エルサレムのユダヤ教宗教学院で、東エルサレム住人のパレスチナ人が銃を乱射し、イスラエル人8人を殺しました。この事件は大きく報道され、国連安保理も緊急に開かれました。ハマスは事件に対して責任を持つという声明を出したとか(本来は「犯行声明」というものと違うはずなのですが、そう訳されて伝えられています)。
イスラエル政府は、パレスチナ人に対するさらなる「対処」を検討しているということです。これからまた何が起きるか……。
先週、ガザでイスラエル軍によって殺された者は120名を超えました。
パリでは8日(土)に5000人規模の大きな抗議デモが行われていますが、そういう声も無視され、さらに虐殺が行われかねないのが今の状況です。
パレスチナ人権センター(PCHR)は28日から5日までの一週間に114名が殺されたことを発表しました。
「PCHRによると、殺された114人のうち、77人がガザへの空爆で殺されている。114人のうち、子どもの犠牲者は28人(赤ちゃんが2人)、6人が女性で、救急医療クルーが1人だった。空爆は52回行われ、最低80発のミサイルがガザに撃ちこまれた。地上侵攻で殺された人は43人になる。」
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200803082125.htm
このように数字だけを見てもひどいものなのですが、数字からはそこにいる人々が置かれている状況が抜け落ちてしまいます。
ガザに家族を持ち、現在は日本に在住しているヤスミンさんから、ご家族の様子を書いた手記を掲載させていただくことになりました。
爆弾が落ちてくる下にいる人々が何を感じ、どうしているのかを直接に知らせてくれる貴重な手記です。お読みください。
[ナブルス通信]
────────────────────────────────
>◇我が家半焼と従兄弟の死
「我が家半焼と従兄弟の死」 2008.3.5 ヤスミン
いろいろなことがありすぎて、どうしても書くことができなかった2日間。
我が家が燃えて。。
従兄弟が死んで。。
今もうまく書けるか自信がないけれど、ともかく書いてみよう。
一昨日(3日)現地時間午前10時頃のこと。
戦車部隊はイスラエルとの境界線付近にまで後退していたが、アパッチは相変わらず上空に。
そのアパッチに反撃を試みた者が、どうやらいたらしい。
(我が家の面している通りのひとつ隣の通りから?)
そのお返しが、機銃掃射。
そしてその機銃掃射は、我が家のある通り一帯にも降り注いだ。
ある銃弾は外にいた人々の身体を襲い、ある銃弾は家々の中へ飛び込んだ。
その内の一発が、我が家の2軒先のキッチンへ、料理用のガスに当たって引火・爆発したらしい。
近隣の数軒が火災に。
被弾で、火傷で、たくさんの人が病院へ運ばれた。
「病院に行って、我が家も見てくる」と電話をかけてきた夫。
ショックと心配とで、何も手につかなくなった。
我慢できずに2時間後、夫の携帯に電話をしてみる。
夫は病院へ運ばれた人達を見舞った後、我が家に戻ってきていた。
この数日、町のいたるところでタイヤが燃やされていた。
黒煙が、イスラエルの偵察活動や攻撃を少しでも邪魔してくれるのではないか、と。
ひどい煙と匂いに目や喉を痛めながらも、人々はタイヤを燃やし続けた。
その煙い空気の中でもさらに濃く立ち込める火災の名残りの中、夫は皆と協力して火が残っていないか各家の被害状況を調べ、後片付けをしていた。
「まだ意識が戻らない者もいるよ。意識がある者は自分の家族の安否を知りたがって、名前を大声で呼んでた」
「我が家はキッチンのガスも無事だったし、燃えたのは半分くらいだし、窓ガラスも全部が割れたわけじゃない。でもあいつの家は…」
と、ガスが引火した従兄弟の家の様子を話してくれた。
内部はめちゃくちゃで、本人も妻子も病院に運ばれている。
「俺達はまだマシなほうなんだ…そうだよね?」
「火災にちび達が巻き込まれたわけでもないし、使える部屋だって残ってる」
「ミサイル直撃で全壊したわけじゃないし」
「俺達はこの程度で済んだのだから感謝しなくちゃいけないってことはわかってるんだ。でも…」
夫は泣き出した。
「でも…」の先に彼が口にしたい言葉は私も同じ。
「何もしていないのに、ただ生きてるだけなのに、なぜこんな目に遭わなくちゃいけないんだ?」
他の家よりマシであっても被害は被害、悲しくて悔しくて、なのにその怒りをどうすることもできない。
「ちび達の部屋が燃えてしまったよ。服も全て燃えてしまった」
「まだ寒い日も多いのに。ちび達の服、全部持ち出しておけばよかった」
夫の嗚咽が激しくなった。
その数時間後、続けざまに私の携帯が鳴った。
夫の弟と、昨年のハマス警察による拘束事件で大人達の不在を守ってくれた13歳の少年から。
「兄貴にしばらく休養するように言ってくれないか。俺が言っても聞いてくれない」
「焼け焦げた家に戻ってから倒れちゃったの。なのにまた戻るって言い張ってる。行かないように言ってくれない? 僕が頼んでもダメなんだ」
そして二人とも
「俺が(僕が)電話して頼んだことは内緒にして」
夫はこの2日間ほとんど寝ていない。
張り詰めきった神経と疲労のピークの肉体を直撃したこのショックに、倒れてしまった。
それでも本人は
「病院に行く。家々の片付けを続けなきゃ」
少し時間をおいて夫に電話した。
「倒れて店に連れ戻されちゃったよ。でもまた起きなきゃ」
と辛そうな夫の声。
弟と少年の電話を受けて、私は作戦を練っていた。
今回は「脅迫」ではなく、おだて作戦☆
「少しは休まなきゃダメだよ。この2日間、夜も見張りで眠ってないでしょ?」
「朝になっても太陽が昇らなかったら人間は不安になっちゃうよ。あなたは皆にとって太陽なんだから」
「太陽だって一日の半分は休むでしょ(←大ウソあせあせ(飛び散る汗)。あなたも休んで、しっかり皆を照らしなさい」
そんな話をしている最中に、ちびすけがひとり走り寄ってきた。
電話を代わりたいという。
「おうちがもえちゃったよ。ぼくたちのふくももえちゃったの。でも、みんながぶじだから、ぼくたちへいきだよ。みんながげんきだったらいいの」
思わぬ、心強い援軍(^^)
「ちびも元気でいてほしいって言ってるじゃないの」
「こら! 自覚がないなら、今日からあなたのこと『太陽』って呼ぶぞ!」
夫は吹き出して
「いやだよ~、わかったからちゃんと正しい名前を呼んでくれよ。ちゃんと休むから」
「よろしい☆ 『この電話の後は一歩も外に出なくてネコのように寝てしまった』って、明日の電話で聞けるのを楽しみにしてるからね。了解かな、ネコ君?」
「俺は太陽になったり、ネコになったり忙しいな」
と笑う夫。
よかった。。
「ヤスミンに会いたいよ。今そばにいてくれたらって思うよ」
溜息をつく夫。
「今日、ちびの顔を見るたびにほっぺにチュッとして。どの子でも、何回でも、顔を見るたびに。私だと思って。ちび達のほっぺは私よりすべすべだから気持ちいいよ(笑)」
夫は笑い出した。
「まずは、さっき代わったちびすけに! 私に聞こえるように!」
で、受話器越しに「チュッ」の音とちびすけの笑い声わーい(嬉しい顔)
「家具や服のことはあまり気に病んじゃダメだよ。ちび達はどんどん大きくなるでしょう。服はすぐ小さくなって買い換えなきゃならないでしょう。今日ちび達はぐんと大きくなったから、今までの服が着られなくなったのよ。子供の成長って楽しいねぇ♪」
「そういう考え方もあるのか」
夫の声に笑いが満ちた。
よかった。。
一夜明けて昨日(4日)。
合間をぬって、何度か電話をかけた。
昨夜眠った夫の声は、少し力を取り戻していた。
「約束どおり、いっぱい眠ったよ。ちび達にもチュッチュッしてまわったよ。みんな笑い転げてた(笑)」
「服のことも、ヤスミンが言ったとおりに言ったんだ。ちび達は『ぼくたちおおきくなったから』とはしゃいでたよ(笑)」
その様子を想像すると笑顔になれる。
けれど次に電話した時に彼の口から出てきたのは悲しい報せ。
「11歳と14歳の男の子が息を引き取ったよ」
そして夜の電話では、さらにひとり従弟が亡くなったことを知らされた。
アラブ社会の「従兄弟」は、私達が聞くと「それって親戚?」と首を傾げるくらい範囲が広い。
けれどこの従弟は、夫の父親と彼の父親が兄弟の、いわゆる「従兄弟」だった。
家も隣同士、店の警備も手伝ってくれて、ちび達が病気になった夜は一緒に駆けずり回ってくれる、そんな兄弟のように親しい存在だった。
時おり受話器の向こう、夫の声の背後から「元気か~!」と張り上げる声の主だった。
機銃掃射の銃弾が降り注いだとき彼は自宅の戸口のそばにいて、頭部と腹部と脚へ3発の被弾。
一度は意識を回復し、妻と子供達の安否を気にしていたと言う。
けれど、頭部の傷が致命傷となった。
まだ31歳。
5人の子供はみな10歳以下で、末っ子はまだ数か月。
妻も負傷している。
家は焼け、彼の兄も片脚を失う大怪我。
後に残された者達は、大切な者を失った悲しみと自らの傷の痛みとこれからの不安に耐えなければならない。
「戦車部隊はイスラエル領内に撤退」「ガザ侵攻作戦終了」
そんな見出しが報道に並び、一方で
「ライス米国務長官の訪問に合わせて一時撤退しただけ」
との見方も。
まだ安心はできないってこと。。
もう十分だよ。
ガザの人々は、十分すぎるほどの恐怖と悲しみと痛みを受けている。
これ以上はいらない。
お願いだから、普通の生活をさせてほしい。
再侵攻の可能性に備えて、夫も私も、何をすべきか何ができるか考え続けている。
────────────────────────────────
◇この文章は http://0000000000.net/p-navi/info/ に掲載予定
(技術的な問題で一時的に「パレスチナ・ナビ」にアップすることが
できません。解決したら、http://www.onweb.to/palestine/ に
アーカイブします)
────────────────────────────────
(お詫びとお願い)
引き続き……
イスラエル政府などへ意見を送ってください。これ以上の犠牲を出さないためにも――。サンプル文や宛先は前号または
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200803021804.htm
十分にP-navi infoを書く時間がとれない状態も続いています。
もし、関連記事を翻訳されたり、ダイジェストされて、ブログやサイトで発表された方がいらっしゃれば、お知らせくださると嬉しいです。
P-navi infoのコメント欄に情報を書き込んでいただいても、助かります。どうか、よろしくお願いします。
■■以上転載■■
※写真はhttp://electronicintifada.net/v2/article9375.shtmlより。
■■以下転載■■
「もうたくさんだ」と思う。
イスラエルでの乱射事件は大きく報道されるのにガザの事態はほとんど知らされない。
読んでいて涙がでてくるような、こんな報告をもうこれ以上転載しないですむようにするために、ぼくたちにできることは、そんなにたくさんはない。ハチドリが山火事にむかって、口に含んだ水を落とすくらいのことしか、できないだろう。
それでも、もうこんなことを許しちゃいけないんだと、声を出し続けたいと思う。
ぼくたちにできる小さなこと、以下に転載する記事の中にもあるし、イルコモンズさんが紹介してくれてる▼「ガザに暮らす恐怖」と、日本にいて、しないことで、できることのリストhttp://illcomm.exblog.jp/7425662/もある。
**以下、転送を歓迎します**
○○○ナブルス通信 2008.3.9号○○○
「我が家半焼と従兄弟の死」
http://www.onweb.to/palestine/
Information on Palestine
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>◇先週のガザでの犠牲者、120人を超える
6日(木)の夜、西エルサレムのユダヤ教宗教学院で、東エルサレム住人のパレスチナ人が銃を乱射し、イスラエル人8人を殺しました。この事件は大きく報道され、国連安保理も緊急に開かれました。ハマスは事件に対して責任を持つという声明を出したとか(本来は「犯行声明」というものと違うはずなのですが、そう訳されて伝えられています)。
イスラエル政府は、パレスチナ人に対するさらなる「対処」を検討しているということです。これからまた何が起きるか……。
先週、ガザでイスラエル軍によって殺された者は120名を超えました。
パリでは8日(土)に5000人規模の大きな抗議デモが行われていますが、そういう声も無視され、さらに虐殺が行われかねないのが今の状況です。
パレスチナ人権センター(PCHR)は28日から5日までの一週間に114名が殺されたことを発表しました。
「PCHRによると、殺された114人のうち、77人がガザへの空爆で殺されている。114人のうち、子どもの犠牲者は28人(赤ちゃんが2人)、6人が女性で、救急医療クルーが1人だった。空爆は52回行われ、最低80発のミサイルがガザに撃ちこまれた。地上侵攻で殺された人は43人になる。」
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200803082125.htm
このように数字だけを見てもひどいものなのですが、数字からはそこにいる人々が置かれている状況が抜け落ちてしまいます。
ガザに家族を持ち、現在は日本に在住しているヤスミンさんから、ご家族の様子を書いた手記を掲載させていただくことになりました。
爆弾が落ちてくる下にいる人々が何を感じ、どうしているのかを直接に知らせてくれる貴重な手記です。お読みください。
[ナブルス通信]
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>◇我が家半焼と従兄弟の死
「我が家半焼と従兄弟の死」 2008.3.5 ヤスミン
いろいろなことがありすぎて、どうしても書くことができなかった2日間。
我が家が燃えて。。
従兄弟が死んで。。
今もうまく書けるか自信がないけれど、ともかく書いてみよう。
一昨日(3日)現地時間午前10時頃のこと。
戦車部隊はイスラエルとの境界線付近にまで後退していたが、アパッチは相変わらず上空に。
そのアパッチに反撃を試みた者が、どうやらいたらしい。
(我が家の面している通りのひとつ隣の通りから?)
そのお返しが、機銃掃射。
そしてその機銃掃射は、我が家のある通り一帯にも降り注いだ。
ある銃弾は外にいた人々の身体を襲い、ある銃弾は家々の中へ飛び込んだ。
その内の一発が、我が家の2軒先のキッチンへ、料理用のガスに当たって引火・爆発したらしい。
近隣の数軒が火災に。
被弾で、火傷で、たくさんの人が病院へ運ばれた。
「病院に行って、我が家も見てくる」と電話をかけてきた夫。
ショックと心配とで、何も手につかなくなった。
我慢できずに2時間後、夫の携帯に電話をしてみる。
夫は病院へ運ばれた人達を見舞った後、我が家に戻ってきていた。
この数日、町のいたるところでタイヤが燃やされていた。
黒煙が、イスラエルの偵察活動や攻撃を少しでも邪魔してくれるのではないか、と。
ひどい煙と匂いに目や喉を痛めながらも、人々はタイヤを燃やし続けた。
その煙い空気の中でもさらに濃く立ち込める火災の名残りの中、夫は皆と協力して火が残っていないか各家の被害状況を調べ、後片付けをしていた。
「まだ意識が戻らない者もいるよ。意識がある者は自分の家族の安否を知りたがって、名前を大声で呼んでた」
「我が家はキッチンのガスも無事だったし、燃えたのは半分くらいだし、窓ガラスも全部が割れたわけじゃない。でもあいつの家は…」
と、ガスが引火した従兄弟の家の様子を話してくれた。
内部はめちゃくちゃで、本人も妻子も病院に運ばれている。
「俺達はまだマシなほうなんだ…そうだよね?」
「火災にちび達が巻き込まれたわけでもないし、使える部屋だって残ってる」
「ミサイル直撃で全壊したわけじゃないし」
「俺達はこの程度で済んだのだから感謝しなくちゃいけないってことはわかってるんだ。でも…」
夫は泣き出した。
「でも…」の先に彼が口にしたい言葉は私も同じ。
「何もしていないのに、ただ生きてるだけなのに、なぜこんな目に遭わなくちゃいけないんだ?」
他の家よりマシであっても被害は被害、悲しくて悔しくて、なのにその怒りをどうすることもできない。
「ちび達の部屋が燃えてしまったよ。服も全て燃えてしまった」
「まだ寒い日も多いのに。ちび達の服、全部持ち出しておけばよかった」
夫の嗚咽が激しくなった。
その数時間後、続けざまに私の携帯が鳴った。
夫の弟と、昨年のハマス警察による拘束事件で大人達の不在を守ってくれた13歳の少年から。
「兄貴にしばらく休養するように言ってくれないか。俺が言っても聞いてくれない」
「焼け焦げた家に戻ってから倒れちゃったの。なのにまた戻るって言い張ってる。行かないように言ってくれない? 僕が頼んでもダメなんだ」
そして二人とも
「俺が(僕が)電話して頼んだことは内緒にして」
夫はこの2日間ほとんど寝ていない。
張り詰めきった神経と疲労のピークの肉体を直撃したこのショックに、倒れてしまった。
それでも本人は
「病院に行く。家々の片付けを続けなきゃ」
少し時間をおいて夫に電話した。
「倒れて店に連れ戻されちゃったよ。でもまた起きなきゃ」
と辛そうな夫の声。
弟と少年の電話を受けて、私は作戦を練っていた。
今回は「脅迫」ではなく、おだて作戦☆
「少しは休まなきゃダメだよ。この2日間、夜も見張りで眠ってないでしょ?」
「朝になっても太陽が昇らなかったら人間は不安になっちゃうよ。あなたは皆にとって太陽なんだから」
「太陽だって一日の半分は休むでしょ(←大ウソあせあせ(飛び散る汗)。あなたも休んで、しっかり皆を照らしなさい」
そんな話をしている最中に、ちびすけがひとり走り寄ってきた。
電話を代わりたいという。
「おうちがもえちゃったよ。ぼくたちのふくももえちゃったの。でも、みんながぶじだから、ぼくたちへいきだよ。みんながげんきだったらいいの」
思わぬ、心強い援軍(^^)
「ちびも元気でいてほしいって言ってるじゃないの」
「こら! 自覚がないなら、今日からあなたのこと『太陽』って呼ぶぞ!」
夫は吹き出して
「いやだよ~、わかったからちゃんと正しい名前を呼んでくれよ。ちゃんと休むから」
「よろしい☆ 『この電話の後は一歩も外に出なくてネコのように寝てしまった』って、明日の電話で聞けるのを楽しみにしてるからね。了解かな、ネコ君?」
「俺は太陽になったり、ネコになったり忙しいな」
と笑う夫。
よかった。。
「ヤスミンに会いたいよ。今そばにいてくれたらって思うよ」
溜息をつく夫。
「今日、ちびの顔を見るたびにほっぺにチュッとして。どの子でも、何回でも、顔を見るたびに。私だと思って。ちび達のほっぺは私よりすべすべだから気持ちいいよ(笑)」
夫は笑い出した。
「まずは、さっき代わったちびすけに! 私に聞こえるように!」
で、受話器越しに「チュッ」の音とちびすけの笑い声わーい(嬉しい顔)
「家具や服のことはあまり気に病んじゃダメだよ。ちび達はどんどん大きくなるでしょう。服はすぐ小さくなって買い換えなきゃならないでしょう。今日ちび達はぐんと大きくなったから、今までの服が着られなくなったのよ。子供の成長って楽しいねぇ♪」
「そういう考え方もあるのか」
夫の声に笑いが満ちた。
よかった。。
一夜明けて昨日(4日)。
合間をぬって、何度か電話をかけた。
昨夜眠った夫の声は、少し力を取り戻していた。
「約束どおり、いっぱい眠ったよ。ちび達にもチュッチュッしてまわったよ。みんな笑い転げてた(笑)」
「服のことも、ヤスミンが言ったとおりに言ったんだ。ちび達は『ぼくたちおおきくなったから』とはしゃいでたよ(笑)」
その様子を想像すると笑顔になれる。
けれど次に電話した時に彼の口から出てきたのは悲しい報せ。
「11歳と14歳の男の子が息を引き取ったよ」
そして夜の電話では、さらにひとり従弟が亡くなったことを知らされた。
アラブ社会の「従兄弟」は、私達が聞くと「それって親戚?」と首を傾げるくらい範囲が広い。
けれどこの従弟は、夫の父親と彼の父親が兄弟の、いわゆる「従兄弟」だった。
家も隣同士、店の警備も手伝ってくれて、ちび達が病気になった夜は一緒に駆けずり回ってくれる、そんな兄弟のように親しい存在だった。
時おり受話器の向こう、夫の声の背後から「元気か~!」と張り上げる声の主だった。
機銃掃射の銃弾が降り注いだとき彼は自宅の戸口のそばにいて、頭部と腹部と脚へ3発の被弾。
一度は意識を回復し、妻と子供達の安否を気にしていたと言う。
けれど、頭部の傷が致命傷となった。
まだ31歳。
5人の子供はみな10歳以下で、末っ子はまだ数か月。
妻も負傷している。
家は焼け、彼の兄も片脚を失う大怪我。
後に残された者達は、大切な者を失った悲しみと自らの傷の痛みとこれからの不安に耐えなければならない。
「戦車部隊はイスラエル領内に撤退」「ガザ侵攻作戦終了」
そんな見出しが報道に並び、一方で
「ライス米国務長官の訪問に合わせて一時撤退しただけ」
との見方も。
まだ安心はできないってこと。。
もう十分だよ。
ガザの人々は、十分すぎるほどの恐怖と悲しみと痛みを受けている。
これ以上はいらない。
お願いだから、普通の生活をさせてほしい。
再侵攻の可能性に備えて、夫も私も、何をすべきか何ができるか考え続けている。
────────────────────────────────
◇この文章は http://0000000000.net/p-navi/info/ に掲載予定
(技術的な問題で一時的に「パレスチナ・ナビ」にアップすることが
できません。解決したら、http://www.onweb.to/palestine/ に
アーカイブします)
────────────────────────────────
(お詫びとお願い)
引き続き……
イスラエル政府などへ意見を送ってください。これ以上の犠牲を出さないためにも――。サンプル文や宛先は前号または
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200803021804.htm
十分にP-navi infoを書く時間がとれない状態も続いています。
もし、関連記事を翻訳されたり、ダイジェストされて、ブログやサイトで発表された方がいらっしゃれば、お知らせくださると嬉しいです。
P-navi infoのコメント欄に情報を書き込んでいただいても、助かります。どうか、よろしくお願いします。
■■以上転載■■
※写真はhttp://electronicintifada.net/v2/article9375.shtmlより。