情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

沖縄ノート集団自決判決と朝日新聞連載完結の偶然~新聞記者はそげんこと、書かんかったじゃ、なかですか

2008-03-30 08:20:30 | メディア(知るための手段のあり方)
 3月28日朝日新聞夕刊、一面トップで沖縄集団自決への軍関与を認定した判決を伝えたこの紙面で、偶然にも新聞の戦争責任を問い続けてきた「新聞と戦争」が終結した。右傾する紙面の中で、真剣に報道の意義を伝える記事を連載し続けた担当者とこの連載を企画した方にお礼を述べたい。今後、この連載は6月に単行本となって刊行されるという。しかし、この企画をこのまま終了させるのはいかにも惜しい。できれば、地方版で同様の企画を立てることはできないだろうか。題して、「私の町の新聞と私の町の戦争」。戦時中、支局がいったい、いかなる記事を出稿し、地元の戦争との関わりにどのような影響を与えたのか?

 事実に迫ることの重要性とそれを伝える意義の重要性を認識するには適切な企画で、ぜひ、新人に担当してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか?

 この日、大阪地裁は、大江健三郎氏の著作「沖縄ノート」の集団自決命令の記載などを巡る名誉毀損訴訟において、集団自決は「家族の無理心中」だなどという元隊長の主張を排し、軍の関与を認定した。当然の判決だと思う。戦後直後であれば、集団自決命令について否定するような主張はなされなかったはずだ。このような裁判が起きて初めて集団自決の軍関与が紙面に掲載されるような状況が、実は、このような裁判を起こさせるに至ったのではないだろうか。

 「新聞と戦争」には、次のように書かれている。

 「あなた方、新聞記者はそげんこと、いっちょん書かんかったじゃ、なかですか」一等兵として九州で敗戦を迎えた元朝日記者、村上寛治(92)は、日本が降伏に至った事実を仲間の兵に説明した時、そう問い詰められたことを忘れない(村上『有楽町は燃えていた』)。この言葉は、今も新聞を撃つ。なぜ新聞は戦争の過程で誤ったのか。今は改まったのかと。過誤の一因は、当時のアジアを低くみる風潮だったであろう。朝日も「暴支膺懲(ぼうしようちょう)」という居丈高な言葉を紙面で使った。顧みて今、近隣の国々への見方は過去のゆがみを払拭したと言えるだろうか。
(中略)
 85年春の朝日新聞の入社式で、社長だった一柳東一郎(83)はこうあいさつした。「権力の抑圧によって筆を曲げるよりは、筆を折る、つまり死を選ぶくらいの気概を秘めた企業だということを、諸君もハラの中に入れておいてほしい」

 残念ながら、日本の言論は、戦後まもなく、声を上げられないシステムによって、権力監視機能を大きく減殺され、その後、個々の記者の努力にもかかわらず、徐々に封じ込められてきた。残念なのは、がんばる側に、俯瞰図と対策がなかったことだ。

 いま、ネットの社会における表現の自由が侵されようとしている。俯瞰図は、「マスコミはなぜマスゴミと呼ばれるのか」(現代人文社より近刊)で明らかにされる(ちょっと、しつこい…苦笑。ただ、まじめな話、いまの言論封殺システムの実態は分かるはず。また、言論規制に向けて何をするべきか、その答えとまではいかないが、ヒントくらいにはなるはず)。

 残された時間は決して多くはない。2010年通常国会には、ネットの言論規制まで踏み込んだ情報通信法案が上程される予定だ。

 朝日新聞の記者だけでなく、全てのジャーナリストがこの法案の実態を明らかにし、言論封殺を防ぐよう真剣に取り組んでもらいたい。そうしないと、将来の市民から、「あなた方、新聞記者はそげんこと、いっちょん書かんかったじゃ、なかですか」と批判されるだろう。
 
 




★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。