情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

下らぬ猿芝居を拒否するための方法~英国の公職任命コミッショナーに見る任命の適正化

2008-03-22 19:38:13 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 たくさんの諮問委員会が官僚の決めたとおりの答申を出し、それに従った法律が定められてきた。NHKの経営委員長は、委員の互選なのに、委員にすら選ばれないうちから、安倍元首相の友達がなることが報道されたりした。あまりに市民を馬鹿にしてはいないだろうか。私たちは、大臣によるそういう恣意的な任命を今後も我慢しなければならないのだろうか?NO!英国公職任命コミッショナー、ここに答えがある。

 英国公職任命コミッショナー(The Commissioner for Public Appointments:※1)は、諮問委員会のメンバーや独立行政法人の長など大臣によって任命される者については、恣意的な人事を防ぐために1995年にできた制度。当初は、管轄する組織の範囲は小さかったが、その効果が認識されたためか、徐々に拡大し、いまでは、大臣が任命する公職のほとんどは、このコミッショナーの管轄下にある。

 このコミッショナーは、任命の全てについて報告を受けることになっている。つまり、新たな諮問委員会を設けることとし、推薦する候補者がいるなら、その時点から報告をする。打診をして断られたりすることもあろうが、とにかく最初から報告をする。こうすることで、根回しによる事前の人事を防ぐことができる。そして、候補者は決められたフォームによる申し込みをし、その申し込みに対していかなる経過で選択をするか、面接をする場合はいかなる面接が行われたかをすべて記録し、コミッショナーに報告することになっている。こうすることで、恣意的な人事を防ぐことができるわけだ。

 コミッショナーは7つの原則に従っている。

Ministerial responsibility(大臣の責任)
The ultimate responsibility for appointments is with Ministers.
(任命の最終責任は大臣にある)

Merit(メリット)
All public appointments should be governed by the overriding principle of selection based on merit, by the well-informed
choice of individuals who through their abilities, experience and qualities match the need of the public body in question.
(全ての公職任命は、候補者の能力、経験。任命しようとしている公職の特性などに関して十分に情報を与えられたうえで、そのメリットに基づかなければならない。)

Independent scrutiny(独立した審査)
No appointment will take place without first being scrutinised by an independent panel or by a group including
membership independent of the department filling the post.
(独立した任命組織やその公職部門から独立したメンバーを含むグループによる第一次審査なしに任命をしてはならない)

Equal opportunities(機会均等)
Departments should sustain programmes to deliver equal opportunities principles.
(任命しようとする部門は機会均等の原則を貫かねばならない)

Probity(清廉潔白)
Board members of public bodies must be committed to the principles and values of public service and perform their duties
with integrity.
(公共組織の役員らは、公共サービスの原則及び価値に従い、真摯に教務に取り組むような者でなければならない)

Openness and transparency(公開性、透明性)
The principles of open government must be applied to the appointments process, its working must be transparent and
information provided about the appointments made.
(開かれた政府の原則は、任命のプロセスにも当てはめなければならない。その過程は外から分かるようなものにし、任命されたケースに関する情報は公開されなければならない)

Proportionality(的確性)
The appointments procedures need to be subject to the principle of proportionality, that is they should be appropriate for
the nature of the post and the size and weight of its responsibilities.
(任命のプロセスは的確性の原則に従わなければならない。すなわち、候補者がその公職の性質及び責任の重さにふさわしいものとなるようにしなければならない)


 以上のような重責をこなしている現在のコミッショナーはJanet Gaymer(冒頭の写真)。国際的な法律事務所のパートナーらしい。
 
 この制度は、特殊法人などの無駄遣いなどが問題となったために、考え出された新しいシステムだ。日本でも同じ問題が騒がれるが、根本的な解決策を見いだそうという努力はほとんどなされていない。

 せめて、このコミッショナーのシステムくらいは、簡単にネットで検索できるようにするべきだろう。現時点では、ネットではほとんどヒットしないが、きっと文献はあるはずだ。ご存じの方はぜひ教えてください。

 この制度、ぜひ、野党側にしっかり勉強してもらって、提案をしてもらいたいと思う。

 自衛隊の民主的コントロール同様、行政への民主的コントロールもシステムとして確立させなければならない。

 この問題は、今後も取り上げていきたい。
 

 ※1:http://www.ocpa.gov.uk/







★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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