特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

少し早いですが、良いお年を。

2007年12月17日 20時19分34秒 | Weblog
ファミリー劇場での放送が早くも年末編成となり、次回の特捜は年明けの1月5日(土曜)深夜までお預けとなりました。2週間も間が空くのはなんとも寂しいですが、その間は太陽やGメン、あるいはホームドラマチャンネルの「はぐれ刑事」(純情派ではなく、平幹二郎と沖雅也コンビの名作。全13話とコンパクトなので、これこそ全話DVD化して欲しいものです)などを見て、心を慰めるとしましょう。
このブログの更新も、今年はこれで最後ということになります(たまに仕事の合間を見てチェックはしますので、コメントくだされば適宜レスポンスします)。たくさんのアクセスありがとうございました。とくに、コメントいただきましたクロックワークスさん、submarine17さん、すずめさん、特オタさん、リュウジさん、memaidoさん、くじむすびさん、ルチャ・ティグレさん、ですとらさん。本当にありがとうございました。今後も引き続きコメントいただけると嬉しいです。
では、また来年お会いしましょう。

第371話 7月の青春レクイエム!

2007年12月14日 18時21分16秒 | Weblog
脚本 亜槍文代、監督 野田幸男

銀行強盗の現場に居合わせた叶と吉野。女行員の喉元にナイフを突きつけ、逃走を図る強盗犯人に銃口を向ける叶。女行員が「撃たないで!」と必死で叫ぶ姿に、叶は苦い記憶をダブらせる。その迷いが、強盗犯の逃走を許してしまう。マスコミに向かって「自分のミスです」と告白した叶を、神代は処分せざるを得ない。
叶の脳裏をよぎった悪夢、それは、夜間大学の同級生だった親友を自分の手で殺めた記憶だった。孤児院育ちの叶にとって、親友とその妹、母が暮らす家庭は、招かれるたびに温かな想いに包まれる「第二の我が家」と言えた。しかし4年前、刑事となった叶は、勤め先の金を強奪した親友を追う羽目になる。追い詰められた親友は「自首する前に、奪った金を弁償したい」と妹に懇願した。叶と対峙する兄のもとに、必死でかき集めた金を届ける妹。だが、血迷った親友は、妹を人質に逃走を図る。喉元にナイフを突き立てられながらも「撃たないで!」と必死に叫ぶ妹。やむなく叶は引き金を引く。銃弾はナイフを持つ手に当たったが、階段から転落した親友は頭を強く打って死亡。兄がその親友に殺されるのを目の当たりにした妹は、ショックで記憶を失った。
謹慎処分となった叶は、親友の墓参りに向かう。真新しい花束を見て、最初は母親が手向けたものかと思った叶だが、住職の話では、若い女が定期的に参っているのだという。
一方、強盗犯を追う特命課は、逃走車両が盗難車だと突き止める。車の持ち主であるカメラマンの協力を得て車両盗難犯を追う特命課だが、目撃者はなく、捜査は暗礁に乗り上げる。
精神科に入院する妹を見舞った叶は、ときおり妹が病室を抜け出していることを知る。墓参りの主は妹だった。彼女は記憶を取り戻していたが、辛い現実から逃避するために記憶喪失を装っていたのだ。妹の姿を女行員と照らし合わせた叶は、あることに気づく。「人質となった女行員も、強盗犯をかばっていたのではないか?」密かに女行員をマークする叶。そこにカメラマンを尾行してきた特命課が合流する。車両盗難がカメラマンの狂言だったのではないかと推測し、容疑者としてマークしていたのだ。こっそり落ち合う女行員とカメラマンに、歩み寄る刑事たち。二人は罪を認め、事件は解決した。
後日、なおも浮かぬ顔の叶のもとに、妹が訪ねてくる。「私は忘れません。自首しようとした兄を、無慈悲にも撃ち殺した刑事がいたことを」憎悪の目で睨みつけ、去っていく妹に、弁解するでもなく、なぜか微笑を浮かべる叶。妹を送っていく叶に代わって、神代が刑事らに真相を明かす。あの日、叶の親友は自首するつもりなどなかったのだ。母親や妹のために身を粉にして働いていた親友は、眠気覚ましの薬に頼るうちに、いつしか覚醒剤中毒者となっていた。妹に頼んだ金も、逃走資金を得るための嘘だった。「貴様、妹さんまで騙すつもりか!」叶の悲痛な叫びも、もはや親友には届かない。「お前に捕まるくらいなら、妹を殺してでも逃げてやる」次の瞬間、現れた妹を人質に取る親友。やむを得ず放った叶の銃弾は、結果として親友の命を奪った。「だったら、逆恨みじゃあないですか!」妹に真相を伝えんとする吉野を、船村が制止する。「叶君は、許してもらおうなんて望んじゃいない。むしろ逆だ」「それじゃあ、叶は自分を憎ませることで、彼女に生きる気力を・・・」叶の優しさを知り、笑みを浮かべる刑事たち。声一つ掛けることなく妹を見送った叶は、「これでいいんだよな」と、亡き親友に語りかけるのだった。

親友を手に掛けた哀しさを胸に秘め、その親友の家族に恨まれながらも、なおその幸せを願う叶の優しさが、胸を打つ一本です。
自分に良くしてくれる友人の母親というものは、誰にとっても、我が家とはまた違った懐かしさを感じるもの。孤児である叶にとっては、なおさらだったでしょう。そんな“おふくろさん”に「二度と顔を見せないで」と罵られる辛さはどれほどのものだったでしょうか?同様に、自分に懐いてくれる友人の妹というものは、誰にとっても愛しく、幸せを祈りたいもの。そんな妹に「鬼!」と罵られる辛さは、どれほどのものだったでしょうか?憎しみを買うとしって、それでもなお「罪を犯した人間を捕まえるのは、刑事として当然のことだ、恨むなら、君の兄さんを恨みなさい」と言い放つ叶の胸の内を思うと、たまらないものがあります。
妹の行為は、客観的に見れば、叶が言うように「甘ったれ」であれ、吉野が言うように「逆恨み」でしょう。自首すると言いつつ自分の喉にナイフを突きつける兄に、彼女が疑惑を抱かなかったのか?という突っ込みもあるでしょうが、妹は心の奥底で兄の真意に気づいてはいても、それを自覚することが怖かったのではないでしょうか?今は兄を信じ、叶を憎むことしかできないかもしれません。しかし、いつか時がすべてを解決し、彼女に真実を見据える勇気を与えることでしょう。犯罪者に堕した兄を恨むことも、その兄を殺した叶を恨むこともなく、二人が妹や母親の幸せを願っていたことに気づく日が来ることを、信じたいと思います。

第370話 隅田川慕情!

2007年12月12日 03時28分23秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 辻理

団地で一人暮らしの老人が、自室で絞殺された。表札には家族の名が記されていたが、息子一家は建売住宅を購入して独立し、いわゆる「置き去り老人」となっていた。老父の死を報せても、忙しさを理由になかなか現れない息子に、怒りを募らせる特命課。
現場に落ちていたライターから検出された指紋は、窃盗で前科2犯の若者のものと一致した。若者の行方を捜すべく、その妹をマークする吉野と叶。無邪気な高校生に見えた妹は、隅田川を遡上する水上バスで浅草に向かうと、中年男を相手に売春を働く。「捜査には関係ない」と言ってはみたものの、やはり捨てては置けず、妹を保護して説教する吉野。それとなく家族について質問すると、幼い頃に両親と死別し、定職につかない兄とも別れて寄宿舎暮らしだという。
一方、現場近くの弁当屋の証言で、いつも一人分しか注文しない被害者が、その日に限って二人分の弁当を注文したことが判明。被害者は「友達と一緒に食べるんだ」と嬉しそうに語ったという。弁当屋が見た友人らしき後姿は、若者風の派手なジャンパーを着ていた。
若者の捜索を続ける吉野と叶。若者はどの仕事も長続きしなかったが、なぜか隅田川沿いの職場ばかりを選んでいた。一方、船村の捜査で若者と妹の過去が明らかになる。幼い頃、二人の父親は借金苦が原因で隅田川に飛び込み、一家心中を図った。そのとき母親は死亡したが、父親は生き残り、二人を残して蒸発していた。
ようやく若者を発見し、逮捕する吉野。はじめは犯行を否定していた若者だが、ライターに加え、弁当屋が目撃したジャンパーを所有していたことも判明。さらに、若者が浅草で初老の男と一緒だったのを目撃した見た者もいた。「そこで被害者と知り合ったんだろう!」と吉野に詰め寄られ、若者はついに犯行を自白。だが、その後の調べで、被害者が別の老人と一緒だったことが判明する。全てを察した神代は、自ら尋問を買って出る。「君がかばっている間に、お父さんは犯行を重ねるかもしれん」神代の言葉に、若者は全てを自白する。若者が浅草で一緒だったのは、生き別れの父親だったのだ。あまりに薄汚れた姿に、若者はお気に入りのジャンパーを与え、そのポケットにライターが入っていた。父親は若者と別れた後に被害者と知り合い、一緒に自宅に向かったと思われた。「私は安心したよ。彼は自分を捨てた憎い父親を、それでも待っていた。そして今ではかばってさえいるんだ」神代の言葉を黙って聞いていた吉野は、複雑な思いを胸にしまい込み、険しい顔で言った。「父親は、今、どこにいるんですか?」若者は父親の行き先までは知らなかったが、妹に会いたがっていたという。
簡易宿泊所からの通報で、宿泊費の尽きた父親が荷物を残して消えたことを知った特命課。残された荷物には、古びた家族の写真とともに、日記が残されていた。そこから事件当日の模様が明かされる。浅草で知り合った被害者と意気投合した父親は、被害者の部屋で食事をともにした。「息子夫婦が良くしてくれる」と自慢する被害者に、父親もまた「子供たちと一緒に暮らせて幸せだ」と語った。被害者に嘘を見抜かれて逆上した父親は、発作的に殺人に及んでしまう。被害者の自慢もまた嘘であり、互いの哀しい嘘が引き起こした悲劇に、特命課は愕然とするしかなかった。
一目娘に会おうと、寄宿舎の友人に「吾妻橋で待つ」と伝言を頼む父親。三社祭りの賑わいのなか、妹は橋に佇む父親の姿を認め、歩み寄る。娘との再会を喜ぶ間もなく、特命課の存在に気づいた父親は逃走する。追跡劇の末に、「捕まりたくなぃよぉ!」と醜く抵抗する父親を逮捕する特命課。あとを仲間らに託すと、吉野は妹のもとへと走る。「親父さんに会ってこい」吉野の言葉に首を振る妹。「私、お父さんに会った殴ってやろうって、そればかり考えてました。私ってひどい奴でしょ」強がる妹の笑顔に、破顔する吉野。そこには、若者たちの心の中にも、自分たちと変わらぬ意地と優しさが息づいていることを知った喜びがあった。

どうすればこんな切ない脚本が書けるのか?塙脚本の真骨頂とも言える哀切さ漂う傑作です。特に、寂しさを抱えた老人同士が哀しい嘘をつきあうシーンは絶品。哀しき殺人者を演じるのは、名優・谷村昌彦。他の刑事ドラマの話になって恐縮ですが、初期の『Gメン75』で「魚の目の恐怖」と「定年強盗」を見て以来、谷村氏の魅力の虜となってしまった私は、彼の独白で語られる悲痛な真相に、思わず涙をこぼしてしまいました。(ちなみに、ファミ劇で正月に集中放送される259話から274話までの中に、谷村氏ゲストの第268話「壁の向こうの眼!」がありますので、是非ご視聴を!)
また、塙脚本の一つの特徴に“無言の芝居”があると思うのですが、今回も、神代が語る真相を黙って聞く吉野の表情や、妹の売春を見過ごそうとする吉野を挑発する叶の表情など、複雑な想いを秘めた“無言の芝居”に、深いドラマ性を味わうことができます。加えて、その裏に脚本家と演出家、そして俳優の信頼関係が見て取れるのも、良質なドラマを見る醍醐味と言えるのではないでしょうか。

「吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋、両国橋、新大橋、清洲橋、永代橋、勝鬨橋・・・」なぜか隅田川の橋の名前を暗誦できる妹と、なぜか隅田川近くで仕事を点々とする兄。二人を隅田川に引き付けていたものは、幼い頃、最後に家族揃って過ごした記憶でした。その記憶が、一家心中の記憶だというのが、また切なく、痛ましい。そんな過去を引き摺りながらも、強く生きる妹の姿に、吉野も若者への偏見を見直さざるを得ません。そんな感動も、前半で執拗に繰り返される吉野の時代錯誤なまでの頑固親父ぶりがあってこそ。「余計なおせっかいだろうが、俺は嫌なんだ。自分を安っぽくする奴に、我慢ならないんだ!」「その『~だしぃ』ってのはやめろ。それなりの喋り方ってのができんのか!」といった台詞一つひとつに、吉野の若者への苛立ち、そしてその裏返しの愛情が感じられます。
何より大好きなのが「今の若い連中には個性がない。個性がないということは主張がない。目先の興味であっちにふらふら、こっちにふらふら。何をやってもすぐ飽きる。怒れば拗ねるし、ほめればつけ上がる。平気で嘘をつくし、そのくせ意気地がないときた」と若者たちをこき下ろすシーン。神代が苦笑交じりに「あの妹は17歳だったな。吉野、お前が17歳の頃はどんなだった?」と聞き返すと、一瞬口ごもった後「俺が17のときは、天下を取るぐらいの気概をもって、青春を生きてました!」と力説する吉野。思わず吹き出す叶も含めて、何度も思い出しては微笑んでしまう名シーンです。
素晴らしき脚本と、素晴らしき俳優たちが織り成すこの傑作を、是非多くの方に視聴いただきたいものです。

第369話 兜町・コンピューターよ、演歌を歌え!

2007年12月08日 02時13分01秒 | Weblog
脚本 阿井文瓶、監督 藤井邦夫

兜町の路上で、証券会社の警備員が死体で発見された。逃げるビル荒らしを追跡中に反撃されたものと見られたが、荒らされた証券会社では、なぜかコンピュータが叩き壊されていた。現場付近の公衆電話に、特命課の電話番号を記したメモが残されていたことから、捜査に乗り出す特命課。
捜査へのコンピュータ導入を試みる桜井は、パチンコ玉で窓ガラスを破って侵入する手口などから、過去に特命課が扱った事件との共通点を検索。瞬く間に3人の容疑者をリストアップする。その中の一人は、船村がかつて窃盗で逮捕した流しのギター弾きだった。流しが立ち直ったことを信じる船村は、「奴は人殺しができる男じゃない」と反論する。
他の2人の容疑者はアリバイが立証されるが、流しのだけは行方が分からなかった。桜井と船村は流しの妻が働くスーパーを訪ねるが、それが誤解を呼び、妻はスーパーを解雇される。貧困を極め、子供たちの食費にも事欠く妻は、切羽詰った末に、公園の砂場に落ちていたオモチャの拳銃で銀行強盗を働く。様子をうかがっていた桜井と船村は、慌てて妻を取り押さえる。桜井の腕に噛み付いて抵抗する妻だが、船村に諭され、憑き物が落ちたかのように泣き崩れた。
その後の捜査で、目撃者を発見する特命課。その証言によると、犯人は会社員風の中年男で、流しとは全くの別人だった。モンタージュ写真をもとに犯人を追うなか、桜井はマスコミに取り囲まれる。流しの妻が強盗を働いた原因を知って「あなたが犯罪に追い込んだも同然じゃないですか?」と桜井を糾弾するマスコミたち。「彼女を逮捕したとき、どんな気持ちでしたか?」心無い質問にも無言を貫く桜井。その気持ちを船村が代弁する。妻に噛まれた桜井の腕を見せ「逮捕のときに彼女が噛み付いた傷だ。これが人を逮捕するときの痛みだ。腕を噛まれたから痛いんじゃない。肉を噛まれるより、もっと大きな痛みを感じながら逮捕するんだ。刑事がニタニタ笑いながら手錠を掛けてるとでも思ってんのか!」
会社員風の犯人像とビル荒らしの手口が結びつかず、違和感を消せない船村。桜井とともに、流しの姿を求めて夜の街を巡る中、屋台のおやじから流しの消息を耳にする。流しはカラオケの登場で居場所を失っていた。「流しがカラオケに恨みを抱いたように、コンピュータに恨みを抱いた者がいたのではないか?」そう気づいた桜井は、被害のあった証券会社の退職者を調べる。果たして、その中にモンタージュ写真の男はいた。かつては「場立ち」と呼ばれる花形職であったが、コンピュータによってその仕事を奪われ、会社を去る他なかったのだという。「今ではパチンコ通いを続けている」との証言を得た桜井と船村は、犯行現場に落ちていたパチンコ玉をもとに、元証券マンの通うパチンコ屋を突き止める。ある日、玉が出ない腹いせに台を叩く元証券マンに、店員が「出球はコンピュータ管理だ」と声を掛けたという。元証券マンは突然台を叩き割り、そこに仲裁に入ったのが、たまたま居合わせた流しだった。元証券マンと流しがつながったことで「コンピュータも捨てたもんじゃないね」と桜井に笑いかける船村。
流しの立ち回り先を知るべく、再び流しの妻を訪ねる船村。桜井が弁護士である父親に手を回したおかげで、妻は程なく釈放され、働き口まで紹介されていた。妻の証言をもとに、ゴミ処理場を捜索する特命課。そこには、哀しげに演歌のメロディーを爪弾く流しの姿があった。船村の姿を認め、自分から口を開く流し。元証券マンに同情して、ビル荒らしの手引きをした流しだったが、元証券マンはコンピュータを壊した末に、止めに入った警備員を殺害。流しは船村に連絡を取ろうとしたが、元証券マンが怖気づいたため、一緒に逃走したのだという。
「機械が何だ!」ゴミ処理場に捨てられた家電製品に、やり場のない怒りをぶつける元証券マン。取り囲んだ特命課に「俺が悪いんじゃねぇ。悪いのは会社だ、世の中だ!」と叫ぶ。「20年勤めたあげく、後はコンピュータがやるからって、会社から放り出しやがった。それで良いのかよ!」怒りを露にする元証券マンに、桜井が語る。「死んだ警備員は、腕利きの建具屋だった。アルミサッシの登場で仕事がなくなり、仕事を代えたんだ」桜井の言葉に慟哭する証券マン。その涙は、自分と同じく社会に居場所を失った仲間を手にかけてしまったことへの悔悟の涙だったのか?それとも、社会の進歩がさまざまな分野で働く男たちの誇りを奪っていく現実への怒りの涙だったのか?
事件は解決しても、刑事たちの胸に喜びはない。「世の中が便利になった、進歩したって言うけど、錯覚じゃないのかねぇ?」と語る船村。「そして、その間に何かを失っていくんですか・・・」と応じる桜井。二人の胸にあるもの。それは、たとえ捜査にコンピュータを駆使しようとも、人を逮捕する“痛み”だけは失ってはならないという誓いだった。

ある意味で特捜の持ち味でもある「センスの無さ」(放送当時の言葉で言えば「ダサさ」)を象徴するタイトルとして、例に挙げられやすい本編ですが、それだけに特捜ならではの魅力に満ちた一本であり、この時代を象徴する代表作と言っても良いかもしれません。
便利さや高度化という大義名分のもとに、カラオケが流しから、コンピュータがベテラン証券マンから、アルミサッシが建具屋から、その仕事を奪っていく現代社会。奪われる側からすれば、単に生活の糧を奪われたというだけでなく、それまでの自分の人生そのものを否定されたかのような屈辱だったのではないでしょうか?コンピュータ(に代表される現代文明)を恨んでもしょうがない。そう分かってはいても、いや、そう分かっているからこそ、やり場のない怒りと哀しみが胸を離れない。そんな男たちが、自分を追い出した社会に対して企てたささやかな復讐が、さらにやりきれない悲劇を呼ぶ。阿井文瓶脚本の真骨頂とも言える哀しい運命が胸を打ちます。(特に、流しの妻が貧困に追い詰められた末に犯罪に駆り立てられていく場面や、おやっさんがマスコミ陣に刑事の痛みを言い聞かせる場面などは、まさに刑事ドラマ史に残る必見シーンだと思います。)
一方、コンピュータは犯罪捜査の現場にも進出しようとしており、それは便利さの代償として、刑事として大切なものを奪いかねない危険性をはらんでいます。「コンピュータが自動的に容疑者を弾き出す。何か違うと思わないか?」おやっさんの感じた違和感は、そこに捜査する側の感情が伴わないことへの危機感だったのです。流しの妻に噛み付かれ、肉体の痛み以上の激しい痛みを感じたとき、桜井は「この痛みこそが刑事の背負わねばならない宿命だ」と気づかされます。痛みを感じることなく自動的に犯人を特定するコンピュータ捜査に慣れてしまったとき、刑事という仕事から“人を逮捕する哀しみ”は失われてしまうのかもしれません。
実際、携帯電話の登場で刑事ドラマのシーンが一変してしまったように、コンピュータ捜査が当たり前となった刑事たちの姿から“人間臭さ”の欠如を感じるのは私だけではないと思います。泥臭いおっさんたちが、つねに辛気臭い顔で重苦しい事件を解決するドラマが、現在の視聴者に受け入れられないのもやむを得ないことだと思います。しかし、それでもなお、せめて刑事ドラマの刑事たちだけには“人を逮捕する痛み”を忘れて欲しくありません。現実の刑事や警官にそんなことを望んだところで、仕方のないことですから。

第368話 野鳥団地の女!

2007年12月06日 01時14分22秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 天野利彦

ある夜、ルポライターが殺された。所持金は奪われてなく、動機は怨恨と推測された。被害者は、5年前の一家皆殺し事件のルポを書くため、犯人の愛人だった女に取材攻勢をかけていた。だが、女は頑なに取材を拒んでいたという。重要参考人として女を事情聴取する特命課。女は「内縁の夫と一緒だった」とアリバイを主張。そのとき、特命課に女の夫から電話が入る。応対した紅林に「奴を殺したのは俺だ。女房は関係ない」と告げ、夫は電話を切った。女は「夫はいろんな現場に泊り込みで働いていて、帰ってくるのは土日だけ。だから、夫の素性をよく知らないし、籍も入れていない」と語る。神代は「お互い、消し切れない嫌な過去を持っているのではないか」と推測する。
女の住む団地に送っていく紅林。女は野鳥が訪れる川辺に紅林を誘い「ここで夫と出会ったんです」と語る。夫は野鳥を見るのが好きで、いつか一緒に渡り鳥を見ようと約束したのだという。「本当は、あの人に私のことを知られたくなかった。だから、あの人のことも聞かなかった」
建設現場で夫を探す特命課だが、該当する人間はいなかった。夫は女に嘘をついていたのだ。騙されていたと知って、なお夫をかばう女は、捜査への協力を拒む。やむなく団地内で聞き込みを開始する紅林たちだが、夫の存在を知るものはいなかった。団地内で野鳥好きの人間を探し回った紅林は、一人の男と出会う。男は、妻子を持つエリート商社マンだったが、仕事優先で家族を顧みなかったために、家庭に居場所を失っていた。
その後も女の張り込みを続ける紅林。モノレールから女を見つめる白い服の人影に気づいた紅林。駅に先回りしたものの、それらしき人影は見当たらない。人並みの中に先日の男を見かけた紅林は、男=夫ではないかと直感する。紅林の直感が正しいとすれば、男は同じ団地内で二重生活を送っていることになる。男の家庭や会社を調べたところ、男は週末になると出張と偽って外泊していた。だが、それ以上の物的証拠は何もなかった。
女を訪れ、男の写真を見せて証言を迫る紅林。だが、女は首を横に振る。戻って来ない夫の分まで食事を用意する女の姿に、苛立ちを抑えきれない紅林。「この男は今頃、この団地の別の部屋で、妻や子供と一緒に食事をしているんだ!」と声を荒げる紅林。だが、女は静かに答える。「あの人がどんな名前でどんな暮らしをしていようと、この部屋で私と一緒に過ごしていたのは私の夫です。私のために人を殺したあの人は、いつかきっと、一緒に渡り鳥を見ようと誘いに来てくれるんです」
翌日、川岸で野鳥を見つめる男に、一途に夫をかばい続ける女のことを語る紅林。彼女への苛立ちと、夫への怒りを語りつつ、暗に自首を勧める紅林。意を決したように、野鳥を見ている女のもとへ歩み寄る男。特命課の存在に気づいた女は、「近寄らないで」と警告し、立ち去ろうとする。女を引きとめ「この人が、あなたの夫ですね?」と念を押す紅林。「違います!」と答える女だが、悲しげに見つめる男の前に、思わず泣き崩れる。「もういいんだ」女を優しく抱きしめる男。ふと気づけば、いつか一緒に見ようと約束した渡り鳥が川岸で鳴いていた。

地味ながらも特捜らしい味のある一本。野鳥が羽を休めるかのように、新しい生活を求めてニュータウンに集う人々。その中で、捨てたくとも捨てられない過去を背負った男女が出会う。過去を知られることを恐れながら、一人で生きていくことに耐えられない女。もはや家族からは得られない温もりを求めて、偽名を使って女のもとへ通う男。そんな二人が紡いできた愛情が、男を悲しい殺人へと駆り立てる。
自分のせいで崩壊してしまった家族を傍観するしかできない男。そんな自分を情けなく思うからこそ、かりそめながら第二の家族である女だけは、殺人を犯してでも守らねばならなかった。「俺たちの仕事は矛盾だらけだ。逮捕したいと思う一方で、そっとしてやりたいとも思う」と紅林が語るように、悪意なき殺人者を追及する刑事の悲哀が、ラストシーンの手錠に込められています。
哀しい殺人者を演じるのは、やいと屋こと大出俊。演出の唐突さもあって、現れた瞬間に犯人と分かってしまうのは残念なところ。真相を暴くのがドラマの本筋ではないとはいえ、もう少し何とかならなかったものでしょうか?

第367話 六本木ラストダンス!

2007年12月03日 23時43分59秒 | Weblog
※以前に放送された際に視聴し損ねて欠番としていましたが、「刑事ベルト」枠で再放送されたため、ようやく更新できました。当時いただいたですとらさんのコメントも参考にさせていただきましたので、改めて御礼申し上げます。

脚本 佐藤五月、監督 辻理
1984年6月6日放送

【あらすじ】
六本木の公園で青年の刺殺死体が発見される。手首にためらい傷があったため、自殺とも思われたが、死因となった胸への刺し傷から他殺と判明。特命課が捜査に乗り出す。
現場検証のさなか、叶は現場を見つめる不審な娘に気づく。声をかけたところ、娘は「現場近くでコンタクトレンズを落とした」と答えるが、叶の胸には疑念が残った。
その後、現場付近で宝石が発見され、叶は娘が宝石の外れた指輪をしていたことを思い出す。娘と青年の接点を探すべく、叶は娘の身辺を捜索する。
娘はダンサー志望で、レッスンに励むかたわら、昼はウェイトレス、夜は踊り子として複数のディスコを掛け持ちするなど、多忙なバイト生活を送っていた。娘の働くディスコで聞き込んだところ、青年と娘の接点が判明。青年はディスコにミキサー(音響エンジニア)として雇われていたが、支配人にミスを咎められ、娘に慰められていたという。だが、顔見知りという以上の関係ではなかったらしい。
強引とも思える叶の捜査に、特命課は一抹の危惧を抱き、橘がフォローにつく。その後も娘のマークを続けた叶は、ダンサーという夢に掛けた娘の情熱と、それが報われない厳しい現実を知る。自分が落選したオーディションに友人が合格しているのを見て、落胆を隠して嬉々として友人に報せに行く娘の姿に、叶は自分の直感が間違っていたのではないかと悩む。「彼女は自分が不幸でも、他人の悲しみは見逃せないんです。仕事がうまくいかずに落ち込んでいる青年を殺すような人じゃありません」悩んだ末の叶の言葉に、神代はこう答える。「お前の考えはよく分かる。だが、自分が最初に抱いた確信を確かめてみろ。それが刑事というものだ」
再び、娘を張り込む叶。落胆する娘に、オーディションの関係者が接近し「この世界、実力だけじゃだめだ」と金を要求する。純粋な夢を金で汚そうとする行為に憤りを感じた叶は、娘の自宅を訪ね「あんな話を信じちゃダメだ」と忠告する。叶の励ましを受け、娘は翌日のオーディションに臨む決意を固める。
すでに娘の無実を確信している叶に、意外な報せが届く。例の宝石が娘の指輪のものだと判明したのだ。娘の友人によれば、その指輪は有名な某ダンサーにまつわる縁起物だった。叶がマークして以来、娘は指輪をしていなかった。だが、明日のオーディションに臨んで、娘は縁起物の指輪を身につけるはず。そう信じた叶はオーディション会場に張り込む。
友人から、特命課の捜査が指輪に及んだことを聞かされつつ、娘はあえて指輪をはめてオーディションに挑む。素晴らしいダンスを披露する娘。だが、娘を待っていたのは、絶賛の声を断ち割るように現れた特命課の姿だった。
宝石は娘の指輪にピタリと嵌り、動かぬ証拠を前に、青年殺しを認める娘。だが、動機については黙秘を貫く。動機を突き止めるべく、青年が常に持ち歩いていたカセットデッキを探す叶。それは青年の墓前で発見される。再生したテープから、青年の最後の声が流れる。「僕には死ぬ勇気もない。頼めるのは貴方しかいない。貴方の手で死にたい・・・」
テープを聞かされた娘は、重い口を開く。その夜、娘は青年に電話で公園に呼び出され「殺してくれ」と頼まれたという。青年は、自分がミキサーとして採用されたのが、父親が裏で金を渡していたからだと知って絶望したのだという。「金で買える世の中なんて、何の価値があるんですか?」テープの言葉を残して、胸にナイフを突き立てる青年。死に切れずに苦しむ青年を見兼ねて、娘は「弱い人は嫌いよ!」と罵りながらも、ナイフを深く突き刺した。
自殺幇助の罪で送検される女を、「早く刑を務めて、もう一度踊るんだ」と励ます叶。娘は叶に語る。「彼が『死にたい』って言ったとき、本当はその気持ちが分からなかった。でも、オーディションに落ちて、お金のことを持ちかけられたとき、彼の絶望感が分かった」「それでも、君は踊ったじゃないか」だが、娘がオーディションに向った理由は、叶の励ましではなく、青年が最後に言い残した「貴方だけは、踊り続けてくれ」という言葉だった。「あれが、私のラストダンス・・・」
その後、娘の罪が軽くなることを祈る叶のもとに、娘が飛び降り自殺を遂げたとの報せが入る。「彼女もまた、弱い人間だったのです。本当に死にたかったのは、むしろ彼女のほうだったのかもしれません。二人は別々に死にましたが、心中だったのです・・・」叶の報告書に目を通した神代は「これは感想文であって報告書ではない」と書き直しを命じる。報告書を書き終え、六本木の雑踏を歩く叶は、ふとすれ違った少女の顔に、娘の面影を見る。彼女の夢、そして絶望と死は、この街ではありふれたものだったのだろうか?そんな想いが叶の胸をよぎるのだった。

【感想など】
夢と現実とのギャップに傷つき、死を選んでしまう若者の弱さと哀しさを描いた一本。情けないにも程がある自殺動機はもちろん、好きだった(と思われる)娘を罪に落としてまで、自殺を手伝わせる青年に、感情移入する視聴者はほとんどいないだろうと思われます。
娘の行動と心理についても、説明がつくようで、どこか納得できないものがありますが、それでもなお、それなりに見応えがあったのは、「現実は汚い」という彼と彼女の主張に、共感せざるを得ないものがあるからではないでしょうか?「だからと言って死ぬことはないだろう」という思いは、もちろんあるのですが、そう言えるのは、我々が「夢と現実は違うもの」と、世の中を分かったような気持ちになっている「大人」だからこそ。かつて、世間の厳しさ、現実の厳しさを知らずに、ただ夢を追っていた頃の気持ちを思い返してみれば、一概に「愚かなことを」と言い捨てにできないものがあると思います。

一方、視点を変えて、叶の立場からドラマを振り返ってみると、(何の確証も無く、直感を頼りに娘を追い掛け回すのは無理がありますが、それはさて置くとして)ひたすら空回りしている印象です。落ち込む娘への「オーディションに落ちる、落ちないは問題じゃない。大切なのはずっとやり続けることじゃないか?踏まれても踏まれても、踊り続けることじゃないか?」との励ましや、連行される娘への「君は立派に踊ったじゃないか」との言葉は、結局のところ、娘の胸には届いていません(届いてはいるのかも知れませんが、青年の言葉ほどには娘の行動に影響を与えてはいません)。意地の悪い見方をすれば、本編のもう一つのテーマが「過剰な思い込み、思い入れが空回りする悲劇」ではないかとも思ったりするのですが(ラストの課長の突き放すような台詞なんかが特に)、底意地の悪さには定評のある(褒め言葉ですよ)佐藤脚本だけに、あながち深読みしすぎではないかもしれません。

第366話 44,000人の標的!

2007年12月03日 23時24分10秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 宮越澄

3名の警官が連続して射殺された。犯人から特命課に「1億円を渡せば、警官殺しを止める」との脅迫電話が入る。都内4万4千人の警察官の命を救うための身代金というわけだ。
犯人から受け渡し役に指名された桜井は、翌朝、指定された新宿のホテルに向かう。桜井に接近した若い女は売春婦だった。事情を知らぬまま、犯人から託されたテープレコーダーを桜井に手渡す売春婦。桜井は録音されたメッセージに従い、新宿の街を歩く。人通りの激しい交差点で「無線機と警察手帳を捨てろ」との指示が再生される。無視して歩き続ける桜井だが、銃声が響き、信号を打ち抜いた。犯人は桜井を監視しているのだ。
無線機と手帳を捨て、テープの指示に従って走る桜井。気づかれぬよう桜井をガードする特命課だが、次第に振り切られてしまう。ビルの屋上へと急ぐ桜井。1億円を入れた鞄に仕込んだ発信機をもとに、橘が後を追う。指示に従い、屋上から地上のゴミ捨て場に鞄を投げ落とす桜井。後を追ってきた橘は、鞄を追って地上へ急ぐ。「これでゲームは終わりだ」ほくそ笑むようなテープの声に従い、隣のビルに視線を向ける桜井。そこにはライフルを構えた犯人の姿があった。銃弾が桜井を襲う。防弾チョッキに救われる桜井だが、犯人はさらなる犯行を示唆して姿を消す。ビルの間を飛び越え、単身で犯人を追跡する桜井。
一方、慌てて地上に降りた橘だが、すでに鞄は持ち去られた後だった。ライフルを持った犯人以外に共犯がいるのか?鞄に仕込んだ発信機を追う特命課。ようやく発見した鞄はゴミ集取車の中にあった。犯人の目的は金ではなく、桜井自身にあったのだ。神代の指示で、紅林は桜井が過去に手掛けた事件を追う。
路地から路地へ、犯人と桜井の追走劇が続く。倉庫に追い詰めたかに見えた桜井を、二人組のチンピラが襲う。撃破したチンピラから「2時5分に渋谷の道玄坂に来い」との犯人のメッセージを受け取る桜井。その場所と時間に、桜井はある事件を思い出す。
一方、犯人が売春婦に残した遺留品から、犯人の指紋が検出される。それは、かつて桜井のライバルと目された元エリート刑事のものだった。去年のある日、2時5分。元刑事は道玄坂で麻薬中毒者を逮捕した。そこに、麻薬中毒者に妻を殺された男が包丁を持って襲い掛かった。止めに入った警官にまで切り付けた男を、元刑事は射殺。現場に居合わせた桜井が元刑事の行為を非難する証言をしたため、元刑事は懲戒免職となった。
道玄坂に到着した桜井に、包丁を持って襲い掛かる影。それは元刑事に女房を人質にとられた無関係の男だった。拳銃を構えながらも引き金を引こうとせず、足を刺される桜井。「どうして撃たなかった?」桜井から拳銃を奪った元刑事が問う。「俺は貴様とは違う」「自分がどうなってもか?」「俺は刑事だ」桜井の答に「警察官というのは命がけの商売だ。牙を向いてくる奴には、恐ろしさを思い知らせてやらねばならん」と自己の正当性を主張する。「警官の職責を全うした俺がクビになり、無能な警官が、無能なるがゆえに制服を着続けていられる」と拗ねる元警官に、桜井は「それが警官を射殺した理由か・・・」と哀しげな目を向ける。突きつけられたライフルを奪い、反撃する桜井。逃走を図る元刑事を傷ついた足で追う。「貴様ほどの刑事が・・・」格闘の末に、桜井から奪った拳銃を突きつける元刑事。「殺してやる」勝ち誇ったように引き金を引く元刑事。だが、そこに銃弾は込められていなかった。愕然とする元刑事に、桜井の怒りの鉄拳が炸裂する。
駆けつけた特命課によって連行される元刑事。長かった一日がようやく終わり、大の字になって倒れる桜井。磨り減った靴を手に、桜井は元刑事と肩を並べて走った日々を、苦い思いで振り返るのだった。

アクション俳優、藤岡弘、(当時は「、」はありませんが)の魅力が爆発する一本。スピーディーな演出と脚本が冴える好編ですが、いかんせん犯人の設定や動機、桜井の対応まで、すべてが第287話「リミット1.5秒」の焼き直し。桜井のライバルと目されるエリート刑事には、ろくな奴はいないということでしょうか?同僚時代の二人の信頼関係がしっかりと描かれていれば、ラストの余韻もまた違ったものになっていたのではないかと思われ、重ねて残念に思われました。とはいえ、「リミット1.5秒」を見ていなければ、なかなか楽しめる一本ではないかと思います。