特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第274話 恐怖の診察台!

2006年12月11日 23時04分11秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 藤井邦夫

ある夜、叶は記憶喪失の少女を保護する。オルゴール人形を持っている以外は何の手がかりもないが、何者かに命を狙われているらしい。入院している病院で歯医者の治療音を聞いた少女は「お父さんを殺さないで!」と錯乱する。
その後、捜索願から少女の身元が判明。少女の母親が、父親の助手とともに駆けつけるが、依然として記憶は戻らない。父親は大学医学部の教授で、自宅で青酸カリを飲んで死亡したという。所轄では、所属する医学部の入試問題漏洩事件の責任を問われ、ノイローゼ気味だったことから、自殺と判断する。叶は少女の言葉から「教授は歯医者で殺されたのではないか」と主張するが「青酸カリは即効性があり、歯医者で飲まされたというのは無理がある」と桜井に否定される。
そんなとき、入院中の少女の病室に何者かが侵入する。侵入者は歯科医の使うペンライトを病室に落としていったが、叶が気づく前に、何も知らない看護婦が拾ってしまった。
少女の記憶にあった、階段、青白い部屋、というキーワードを手がかりに、該当する歯科医を探し回る叶。そんな中、殺された教授のお手伝いの姿を見かけ、尾行する叶だが、背後から何者かに襲われ、気絶する。眼が覚めたとき、叶は歯科医の診療台に括り付けられ、薬で声を出せない状態にされていた。
その頃、桜井の調べで、教授の歯に新しい治療痕があったことが判明。歯科医で歯に穴を開けられ、青酸カリを詰められたものではないかと推測する。殺された教授と同様、奥歯に青酸カリを詰められた状態で解放される叶。いつ青酸カリが露出するか判らない恐怖の中で、叶は少女の病室へと急ぐ。
看護婦が拾っていたペンライトは、刻まれたイニシャルから、教授の助手のものだと判明した。お手伝いに青酸カリ入りのジュースを飲まされる寸前の少女を救った叶は、人形に隠されていた私書箱のカギを発見する。そこには入試問題の漏洩犯が助手とお手伝いであると記した書類が隠されていた。事件後、叶は自分の奥歯から青酸カリを取り除くところを少女に見せ付けることで、記憶を取り戻させるのだった。

奥歯に穴を開けられる恐怖は、歯科医に行ったことがある者なら誰でも分かりますが、だからといって、そこに青酸カリが詰められると言う発想はなかなか出てきません。脚本家は、歯科医でよほど酷い目に合ったのでしょう。証拠が隠されているのはオルゴール人形、登場した時点で助手が犯人だと丸判りであり、プロットは安易と言えるものですが、それでもサスペンスに満ちた仕上がりになっているのは、ひとえに歯科医に対する恐怖心が視聴者の心に迫るからでしょう。

第273話 水色の幽霊を見た婦警!

2006年12月10日 23時03分36秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 天野利彦

ある日、朝から心身の不調を感じていた高杉幹子婦警は、占い師に「水に関係するモノと刃物に注意しろ」と言われ、さらに不安を募らせる。そんな幹子のもとに、夏休みを利用して家出してきた従姉妹が押しかける。小説家志望の従姉妹は、「父親が愛人を殺して逮捕された」などと、自分の空想を現実のように喋り、幹子を困らせる。
帰宅中の夜道で車中のアベックが揉み合うところを見かけた二人だが、従姉妹は「車の中で女が男に殺されていた」と言い出す。念のため、車を調べようとした幹子だが、車が突然走り出したため確認できなかった。間違いなく殺人だったと主張する従姉妹だが、女の外見を問いただすと「ショートカットで黒い服を着ていた」と言う。女は長髪で水色の服だと記憶していた幹子は、いつもの嘘だと決めつけ、従姉妹を叱りつける。
翌日、車中で女性の死体が発見され、昨夜の従姉妹の言葉は真実だったのではないかと危惧する幹子だが、死体は車ともども燃やされていたため、外見は判別できなかった。唯一の手がかりは死体の右手のブレスレッドだったが、幹子はそこまで覚えてはいなかった。
その日から、幹子と従姉妹の周囲に、水色の服を着た不審な女がたびたび出没するようになり、幹子は不安を募らせる。
捜査を続けるなか、車は幹子の住まいの近くで盗難されたものであり、死体の女の着衣も水色だったと判明するなど、幹子の証言を裏付ける材料が揃っていく。だが、車中で見た水色の服の女を見かけた幹子は、自分の気のせいだったと判断する。
その後の調べで、女の死体の身元が判明。女には同性の恋人がいたとの情報を得た特命課は、車中のアベックが女同士だったのではないかと推測。従姉妹の証言は嘘ではなかったと気づいた幹子は、従姉妹の身を案じる。
その頃、従姉妹は学校を舞台にした小説を書こうと、近所の小学校を見物していた。夜の闇にまぎれて、青い服の女が従姉妹を襲う。従姉妹を追って学校に向かった幹子にも危機が迫るが、駆けつけた特命課の面々によって女は逮捕され、事件は解決した。

夏場恒例の高杉婦警を主役とした怪談物。小説家志望の従姉妹の言動は、いわゆる電波系で、見ていて実にイタイです。幹子の身辺に出没する女は、ありえないようなヒラヒラした水色の服を着ていて、てっきり幻想だと思っていたら、終盤になってその服をきたまま襲いかかってきました。そう、女は危地外だったのです。幽霊よりも危地外女の方がよっぽど恐ろしいということを強く訴える一本でした。


第272話 狙われた乗客!

2006年12月09日 00時24分23秒 | Weblog
脚本 大野武雄、監督 辻理

タクシーの運転手が、乗客を人気のない川原に連れ込んで刺し、重症を負わせた。サイフには手をつけられてないことから、怨恨が理由と思われた。
被害者の足取りを調べるため勤務先を訪れた桜井は、被害者が数日前に起こった同様の事件を報じる記事を切り抜いており、護身用にナイフを持ち歩いていたことを知る。数日前の事件を調べ直す桜井だが、前回の被害者は「襲われる理由はない」と言う。
そんななか、重症だった被害者が、女の名を言い残して息を引き取った。その名を聞いた桜井は血相を変える。それは桜井の友人であるタクシー運転手の妻の名前だった。
その運転手と知り合ったのは、桜井のよく通う定食屋だった。運転手は定食屋の女に恋をしていたが、なかなか告白できずにいた。桜井は運転手の告白を後押しし、深夜ラジオのメッセージコーナーを使ってプロポーズさせた。彼女もラジオを通じてプロポーズに応え、二人は結ばれたのだ。
あの気の弱い運転手に、人を殺せるはずがない。そんな想いを胸に二人の消息を追う桜井だが、定食屋に女の姿は無く、運転手はタクシー会社を辞めていた。タクシー無線を借りて呼びかける桜井に応える運転手。「客を襲ったのはお前か」との桜井の問いに、運転手は「過去を消すためだ」と答え、連絡を絶つ。
一方、叶の調べで、運転手の妻は元売春婦だったことが判明。二人の犠牲者は同じゴルフ場に通っており、そのゴルフ場は、かつて妻が売春婦として働いていたクラブの近くにあった。二人がかつて妻の客だったと睨む桜井に、ゴルフ場の職員は、犠牲者の二人を含めた三人の会員の住所を調べる電話があったと告げる。残る一人の大学教授を調べる桜井と叶だが、教授は関わりを否定する。
叶に教授をマークさせ、桜井は運転手の妻を捜す。場末のバーでようやく発見した妻は、「警察なんか信用しない」と言い放ち、協力を拒む。その間に運転手は教授を拉致。連絡を受けた桜井は、これ以上運転手に罪を重ねさせないために、必死の説得を続ける。
ようやく妻は告白する。数日前、たまたま定食屋を訪れた三人は、妻がかつて売春婦だった女だと気づき、乱暴した上で金を置いていった。それを知った運転手は警察に訴えるが、警察は取り上げなかった。三人が合意の上の売春行為だと主張したためだった。そのとき、運転手は初めて妻が売春婦だったと知る。運転手は妻を許したが、妻はいたたまれず家を出た。そして、運転手は犯行に及んだのだ。
桜井に促され、かつてのように深夜ラジオを使って運転手に呼びかける妻。教授を手に掛けようとしたとき、運転手の耳にラジオから妻の呼びかけが聞こえてくる。「これ以上はやめて、私、待ってます」涙ながらの叫びに、思わず手を止める運転手のもとに、桜井が駆けつける。連行される運転手の前で、救出された教授を婦女暴行で逮捕する桜井。「たかが娼婦じゃないか」と言い張る教授に、桜井の怒りの鉄拳が飛んだ。

気の弱いお人好しの運転手が、愛する者を汚されたとき、凶悪な殺人者へと変貌する。そんな悲哀を描いた一本です。運転手が必死の思いで告白し、幸せをつかむまでが微笑ましく描かれ、それを見つめる桜井の優しい視線が印象に残ります。それだけに、無惨な運命に陥る二人を見るのがいたたまれず、ラストの桜井の一撃で、わずかに溜飲を下げるほかありません。

第271話 雨の夜の殺人風景!

2006年12月08日 00時25分23秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 村山新治

ある夜、女から殺人を見たとの電話を受け、出動する特命課。「向かいの空き家の窓で、誰かがスパナで殴り殺されるのを見た」という女とともに、現場に踏み込んだ紅林たちだが、マネキンが倒れているだけで、殺人の形跡はなかった。
問題の空き家を管理している不動産屋を訪ねた紅林は、女の夫が殺人容疑で逮捕され、取調べ中に病死したことを知った。そんなとき、女から紅林のもとに「怖くて眠れない」と不安げに訴える電話がかかる。渋々女の自宅に向かった紅林に、女は「夫が逮捕された翌日、その現場で何かを拾ったでしょう?」と尋ねる。紅林が拾ったのは捨て猫だったが、女はそれを「嘘だ」と決めつけ、紅林の胸のペンダントをじっと見つめる。
女の夫が逮捕された事件を調べ直す紅林。殺されたのは、日頃から夫と仲の悪かった会社の同僚だった。夫は殺害現場の近くで、凶器のスパナを手に返り血を浴びたまま歩いているところを発見され、現行犯で逮捕された。夫は犯行を頑なに否定していたが、取調べを繰り返している最中に病死していた。
再度女から「スパナを持った人影を見た」の電話を受けて、空き家に向かう紅林たち。しかし、またもそんな様子は見当たらない。女の狂言と見て引き上げる紅林たちだったが、その後も女からの電話は止まらない。さすがに相手にしなくなる特命課だが、紅林は一人女のもとへ。
一方、女の態度を不審に思った神代らは、紅林が猫を拾った現場に向かい、そこで紅林のものとよく似たペンダントを発見した。彼女は紅林が拾ったのは子猫ではなく、このペンダントだと誤解したのだ。ペンダントに彫られたイニシャルから、持ち主が彼女であることは明白だった。彼女は、自分が夫の同僚が殺された現場にいたという証拠を、紅林に握られたと思っているのだ。
空き家を調べる紅林の不意をつき、女は共犯である不動産屋の息子とともに襲いかかる。危機一髪の紅林だが、危機を察して駆けつけた特命課によって救われる。女は不動産屋の息子と不倫の仲で、邪魔な夫を消すために、会社の同僚を殺害して、夫に罪をかぶせたのだった。

邪魔になった夫を殺人犯に仕立て上げるだけでなく、自分の見間違いを頑なに信じ込むわ、何度も虚言を繰り返すわ、証言の怪しさを指摘されると逆ギレするわと、とにかくはた迷惑な女を描いた一本。こんな女には関わらないのが一番です。「通報者の言い分を信用せず、無視する刑事たち」というシーンが、これほど痛快に見えたのは初めてです。