特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

皆さん、良いお年を。

2008年12月28日 01時03分02秒 | Weblog
昨日、更新しました第455話をもちまして、本年度の放送分は終了しました。秋から冬に掛けて多忙が続いており、更新が遅れがちになっていましたが、放送休止が多かったこともあり、ようやく追いつくことができました。
ファミリー劇場での放送再会は1月10日からですが、年末で少し仕事も落ち着きましたので、当面はタイムリーに更新できる予定です(と言いましても、ネタバレを避けるために、水曜の再放送後の更新にしたいと思っていますが)。

今年もたくさんの方にコメントいただけ、本当にありがたく思っています。ブログを続ける上での励みになると同時に、さまざまな視点からのご意見をいただけたことで、自分の視野が広がったように思えます。
順調にいけば、来年の夏頃には最終回が放送されるわけですが、少なくともそれまでは、よろしくお付き合いいただけますよう、お願いいたします。もちろん、その後は念願の第一話からの再放送を期待しているわけですが、さて、どうなることでしょうか?

それでは、皆さん、良いお年を。


第455話 絆・ミッドナイトコールに殺しの匂い!

2008年12月26日 03時07分42秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 宮越澄
1986年3月6日放送

【あらすじ】
深夜、犬養の部屋に掛かってきた電話。それは独り暮らしの孤独な老人が、話し相手を求め、電話帳から手当たり次第に掛けたものだった。快く会話に応じた犬養を、老人は体育教師と勘違いし、以来、互いの素性も知らぬままの奇妙な関係が続いていた。
そんななか、強盗殺人事件が発生。犯人の指紋は、迷宮入りとなった昨年の強盗殺人事件のものと一致する。昨年の被害者は役者で、現場からは舞台衣装が盗まれていた。指紋や毛髪から、犯人は左利きの30代の男と推定されたが、その後の捜査は難航する。
そんなある夜、いつものように老人からの電話に応じた犬養は、老人の息子と事件の関係性に気づく。老人の身許を探ろうとする犬養だが、老人は「粋じゃない」と応じない。神代の指示で、逆探知で老人の身許を調べることになるが、犬養は罪悪感を拭えなかった。
逆探知で割り出した老人の自宅を訪ねる橘たち。犬養がにらんだとおり、息子が老人に贈った着物は、昨年の被害者のものだった。息子は実家にめったに寄り付かないため、指紋を採取できず、犯人と断定はできなかったが、頑固一徹な老人は「倅が本当に殺人犯なら、さっさと逮捕して死刑にしてくれ」と橘に語る。
息子の行方を追う一方で、老人のもとを張り込む特命課。犬養は老人を心配する福祉施設の女に接触。老人はかつて女に「自分は息子に借りがある」と語っていたという。報告を受けた桜井は、犬養に老人から息子の情報を引き出すよう指示。「これ以上あの老人を騙したくない」と言う犬養を「捜査に感傷を持ち込むな」と叱責する桜井。「人を騙してまで犯人を逮捕するのが特命課ですか」と反発する犬養に、桜井は「後が辛くなるような真似はするな」と忠告する。
その夜、老人は「倅が人を殺したかもしれねぇ」と犬養にこぼし、「代わりに俺が死刑になってやりてぇ」と本音を語る。「息子さんを探し出して確かめるんだ」との犬養の説得に、老人は息子の預金通帳を受け取りに来た女を思い出す。老人の記憶を頼りに、女を探し出した特命課は、息子の指紋を採取。犯人のものと一致したことで、息子を犯人と断定する。
福祉施設の女から、老人の古い知り合いだという老女を紹介される犬養。老女によれば、息子は老人の亡き妻の連れ子だった。妻の前夫は自殺しており、その原因は妻と老人との浮気にあった。「息子への借り」が理解できたものの、犬養は息子が実子でなかったことに、一抹の安堵感を抱く。
引き続き老人の張り込みを続ける特命課の前に、息子が姿を現す。図らずも老人の目の前で息子を逮捕することになる犬養。息子に「てめぇ、タレこみやがったな!くたばっちまえ」と罵られ、その場に崩れ落ちる老人。居合わせた福祉施設の女は、「ひどすぎます!お爺ちゃんの目の前で捕まえるなんて」と犬養の頬を張る。
特命課での取調べに、老人への恨みを語る息子。だが、時田は意外な事実を明かす。老人は息子の実の父親だった。老人は自殺した前夫の名誉のため、その事実を息子にも伏せていたのだ。幸い、老人は犬養が刑事と気づくことはなく、事件解決後も二人の奇妙な関係は続いた。強がって笑う老人の声を、犬養は複雑な思いで聞くのだった。

【感想など】
孤独な老人と犬養との奇妙な「絆」を描いた一本。DVD-BOX6に「後期の隠れた傑作」として収録されているだけに期待していたものの、見所と言えば、花沢徳衛さんが演じる老人の頑固親父っぷりと、犬養こと三ツ木氏の奥様である坂上美和さん(福祉施設の女)との競演ぐらい。個人的には期待はずれに終わりました。

何が不満かと言えば、やはり老人に犬養が刑事だとバレないこと。桜井に「後が辛くなるような真似はするな」と言わせておきながら、最後まで良好な関係が続いていては、視聴者としては肩透かしをくらったようなもの。本来の(あるいは夜十時台の)特捜であれば、気の優しい青年と信じていた相手が刑事だったと知った老人の怒りと哀しみ、そしてその憎悪を黙って受け止めるしかない犬養、という、ある意味で定番の展開が待っていたはずであり、女にひっぱたかれて終わり、では余りに甘すぎます。
そもそも、息子を逮捕するシーンで、老人が犬養の声を聞いていながら電話の相手と気づかないのは「甘い」を通り越して不自然。さらに残念だったのが、ラストで犬養から老人に電話をかけたこと。「おいおい、それじゃあ刑事だとバレちゃうだろう」と画面に突っ込みを入れてしまいました(でも、やっぱりバレませんでした)。

老人と息子が実の親子かどうかという話題も、正直なところ、どうでもいい(というか、実の親子云々の話題が2話連続するのは、どうにかならんものかと思います)。実際、その事実が明かされた際の、息子や犬養の反応が中途半端であり、ドラマ的に消化されていない印象です。そもそも(前話と同じような感想で恐縮ですが)、「実の息子が殺人犯だと辛い」「義理の息子だから殺人犯でも辛くない」という刑事たちの(というか脚本家の)勝手な理屈が理解できないので、余計に不毛な話題という印象です。

ここのところの「展開の甘さ」や「勝手な理屈の押し付け」を見ていると、番組自体の方向性が変わってしまった印象が否めません。それが時間帯によるものなのか、それとも時代の変化によるものなのかは定かではありませんが、このままの路線が続くのであれば、個人的には残念というほかありません。残り約50話のなかに、「見続けていて良かった」と思えるエピソードが多少なりともあることを、心から願います。

第454話 フラッシュバック!通り魔を殺した女!

2008年12月24日 22時19分54秒 | Weblog
脚本 山田隆司、監督 辻理
1986年2月27日放送

【あらすじ】
ビデオ喫茶で元覚醒剤中毒者の青年がマスターに刺殺された。マスターや居合わせた客の証言では、青年がフラッシュバック(元覚醒剤中毒者の後遺症として起こる幻覚による錯乱状態)を起こして包丁を奪おうとしたため、取り押さえようとしたところ、誤って刺してしまったという。青年は1年前にも同様にフラッシュバックを起こして女子大生を殺傷したが、精神鑑定の結果、不起訴処分となり、退院したばかりだった。このため、マスターの正当防衛が認められる。
だが、青年の父親が特命課を訪れ、1年前の事件を担当した時田に「息子は殺された。再捜査して欲しい」と訴える。青年は深く反省し、退院後はフラッシュバックの再発を恐れて飲酒や刺激的な映像を避けていたという。また、青年のもとには、「人殺し」「死ね」「殺してやる」といった匿名の脅迫状が毎日のように送られていた。父親は所轄署にも脅迫状を見せて再捜査を訴えたが、取り合ってもらえなかったという。
父親の誠実な人柄を知る時田は、同じく父親の言葉を信じた叶とともに再捜査に乗り出す。左利きの青年が右手で包丁を奪おうとしたことに疑問を抱く叶たち。マスターや客に確認したところ、あやふやな証言に疑惑は深まる。また、事件当日の青年の足取りを追ったところ、1年前の被害者の墓参りのために花を買った後、赤い車に連れ去られたとの目撃証言が得られる。
同じ頃、脅迫状から採取された指紋が、20年前に心中未遂事件を起した女のものと判明。女の顔写真を見た叶は驚く。それは、叶が「おふくろさん」と慕う定職屋の女だった。叶が女と知り合ったのは、特命課に所属する以前。当時の叶は、功を焦って法スレスレの捜査を繰り返し、職場で孤立していた。女はそんな叶を「抜き身の刀」と評し、「いい刀は鞘に入っているもの」と忠告。その言葉は、その後の叶の刑事人生を決定づけるものだった。
いつの間にか定職屋を売り払っていた女を、自宅まで訪ねる叶と時田。女は脅迫状を出したことを認める。1年前の被害者は女の姪であり、可愛がっていた姪を殺した青年が罪に問われないのが納得できなかったのだ。
犯行時のアリバイが確かなため、叶は「彼女は事件とは無関係」と報告する。だが、被害者の着るはずだった振袖を今も飾ったままの女の姿に、時田は「いや、彼女は怪しい」と主張。「彼女は人殺しをするような人じゃない!」と激昂する叶。神代は「捜査に私情を挟むな」と、叶を捜査から外そうとするが、橘の取り成しで事なきを得る。
その後、客の乗っていた赤い車から、青年が買った花の花粉が発見される。また、借金を抱えていた客が、急に金回りがよくなったことも判明。特命課は、マスターが偽装殺人を企て、金で客を協力させたと断定するが、肝心の動機が分からない。
一方、被害者の母親(=女の姉)を訪ねた叶は、被害者と女の関係に疑念を抱き、20年前の心中未遂事件を調べ直す。被害者は女の実子であり、その父親である女の不倫相手はマスターだった。女が定食屋を売ったのは、客を買収するための資金づくりのためだったのだ。
マスターと客を逮捕したものの、女は飛び降り自殺を図る。「おかしいじゃないか、人を殺しておいて、何の罪も受けないなんて。私が死んで、世間に訴えてやる!」と叫ぶ女に「死なないでくれ!刑事として言ってるんじゃない。もう一度、俺におふくろの味を食べさせてくれ!」と涙ながらに語りかける叶。そこに、神代が青年の父親を連れてくる。「あなたの娘も、私の息子ももう帰ってこない」と訴える父親。青年は病に臥せった父親のために、体を酷使し、職場の仲間に「疲れが取れる薬」と騙され覚醒剤中毒になってしまった。誰を恨んでよいか分からず混乱する女を抱きとめる叶。「あなただけは、逮捕したくなかった」女に手錠を掛け、泣き崩れる叶に誰も書ける言葉は無かった。

【感想など】
覚醒剤中毒者(=心神喪失状態の者)に殺された被害者が「殺され損」となってしまう法の矛盾を、被害者の実の母親である女と叶との交流を通して描いた一本。盛りだくさんな要素を、そこそこバランス良くまとめているとは思いますし、「おかしいじゃないか!」という女の主張には全く同意なのですが、全く感情移入できないのはなぜでしょうか?
いろいろ要素はあると思うのですが、一番の理由は、「実の娘を殺した犯人を、法が裁かぬのなら自分が裁く」という切実な動機に対して、「フラッシュバックを利用して正当防衛に見せかける」という策を弄したような手口がどうにもチグハグに感じられること。

加えて気になったが、女の動機として「被害者が実の娘だった」という秘められた過去がドラマ上の重要なポイントになっている点です。「実の親ならともかく、彼女は単なる叔母ですよ」という叶の台詞がありましたが、「実の娘が殺された=動機あり」「姪が殺された=動機なし」という勝手なルールを当てはめるのが、どうにも納得できません。犯行動機、すなわち人の感情というものは、そんな明確に割り切れるものではないでしょう。姪はおろか、血のつながりの全くない知人の子供であっても、理不尽に殺されれば復讐心を抱くことはあるでしょうし、逆に言えば、実の子が殺されても復讐を企てない親もいるでしょう。あえて女の過去を掘り下げる必要があったのかどうかも含めて、疑問が残りました。

話は変わりますが、ここのところ時田のキャラクターが浸透してきている感があり、特命課内で確たるポジションを築いているという印象。今回も叶主役編とはいえ、大いに存在感を発揮していました。それに比べて、何かといえば「取りあえず杉を(応援に)やる」と予備軍扱いの杉の存在感の無さはどうしたことでしょうか?

第453話 不倫!? 紅林刑事が愛した女!

2008年12月20日 02時07分51秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 北本弘
1986年2月20日放送

【あらすじ】
拳銃密売組織を追う紅林の前に、「情報を買って欲しい」という男が現れる。2年前、紅林は誘拐された子供を救出するため、やむを得ず情報を買ったことがあり、男はその情報屋から紅林のことを聞いたという。紅林は「いらんね。そんな話はあれっきりだ」と拒絶し、男を追い払う。
その翌日、特命課に、紅林と女がホテルから出てくる写真とともに「紅林刑事は被疑者の女を食い物にする色魔だ」との告発書が届く。同様の告発は刑事部長にも送られており、神代に事情を問われる紅林。写真の女と知り合ったのは1年前。置き引きの濡れ衣を着せられていた女の無実を証明した紅林は、具合の悪い女を送って行った。たまたま通り掛ったホテル街で女が眩暈を起こし、ホテルで休ませた。写真はそこで撮られたものと推測されたが、それ以来、女とは月に数度会う関係が続いていた。
心配する桜井に、女とは“男女の仲”でないことを明かし、女の営む飲み屋を訪れる紅林。女は3年前から内縁関係にある男の存在を明かす。それは紅林に情報を売ろうとした男であり、告発書の主もその男だった。かつて金で情報を買ったことを含めて、すべてを報告する紅林。神代はその行為を叱責したものの、刑事部長からの休職勧告に対しては「その判断は私にお任せください」と紅林をかばう。
飲めない酒を飲み、自宅で辞職願をしたためる紅林。そこに女が詫びに訪れる。「僕が刑事でいるうちは、君とは会えない」と拒絶する紅林だが、女が貧血で倒れたため、やむなく自室で介抱する。そこに男から電話が入り、再度「情報を買え」と要求。西新宿署の刑事にも情報を売っていることを明かす。紅林は商談に応じると見せかけ、男と会う約束を取り付けるが、電話の間に女は姿を消していた。
翌日、男は約束の場所に現れることなく、その近所で殺害される。事件直前、男が別の男と会っていた目撃証言から、西新宿所の刑事に疑惑を向ける紅林。元西新宿署だった杉によれば、その刑事には黒い噂が付きまとい、昨年、依願退職したという。現場に残されたサングラスの指紋は元刑事のものと合致。特命課の取調べに対し、元刑事は男に金で雇われ、紅林を陥れる電話をかけた。「俺は約束の金が足らなかったので殴っただけ」と殺人を否定し、「金木犀の香水をつけた女が通り掛った。その女を探してくれ」と主張する。元刑事の言葉に、人が違ったように激昂する紅林。金木犀の香水は、女がいつもつけているものだった。
女の飲み屋を訪れ「奴を殺したね?」と問い詰める紅林。「分かるんだよ。俺には、君のすることが何もかも分かるんだ。君が好きだから」哀しい愛の告白に、女は涙で応えた。
取調べに対し、女はすべてを明かす。事件当夜、女は男が元刑事に渡すための金を用意し、現場近くにいた。約束の金に足らなかったため、元刑事は男を殴り倒す。女が近づいたことで元刑事は逃げ去ったが、負傷した男に女は思わず止めを刺した。「あんた、紅林が好きになったから、あの男が邪魔になった。そうじゃないかね?」橘の質問に「冗談言いっこなし。あの人は店の客の一人。それだけよ」と笑ってみせる女。尋問を聞いていた刑事たちの思いを代表するように「そうとしか言えんだろう」と呟く神代だった。

【感想など】
冒頭で桜井から「辞書で“真面目”って引いてみろ、“特命課の紅林”って出てるからな」と評されるほどの堅物、紅林の悲恋を描いた一本。ちょうど1年前、第404話「殺意を呼ぶダイヤルナンバー!」でも、その生真面目さゆえに愛を失った紅林ですが、今回は相手を犯罪者として捕らえねばならないという、さらに辛い立場にさらされます。
相手は第421話「人妻を愛した刑事!」で吉野の片思いの相手であった新井春美さん。都合の良すぎるタイミングでの度重なる貧血、思わせぶりな姿の消し方など、てっきり彼女が男とグルになって紅林を陥れようとしているのかと思いましたが、ラストで明かされるように、彼女の紅林への愛は本物でした。とはいえ、紅林が彼女のどこに惹かれ、どのように愛を育んできたのか、そのあたりの描写に欠けているため、二人の思いにあまり共感できないのが残念に思われました。
ちなみに、西新宿所の元刑事はGメンやウルトラマンレオでお馴染みの藤木悠。刑事部の参事官はキリヤマ隊長こと中山昭ニ。なかなか豪華なゲスト陣の割には、起伏に乏しい、ある意味、陳腐とも言えるストーリー展開。紅林ファン以外にとっては、あまり印象に残らないエピソードではないでしょうか。

第452話 遺書・指名手配113号の男!

2008年12月16日 01時11分17秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 田中秀夫
1986年2月13日放送

【あらすじ】
父親殺しの容疑で手配中の青年を追う特命課。「父親を殺すような奴は、絶対に許せない」と叶は怒りをたぎらせる。青年は戦前から続く工場の次男坊で、素行の悪い前科者。日頃から両親や長男とは折り合いが悪かった。2ヶ月前の夜、父親は自宅の屋上から転落死を遂げた。その手には次男の着衣のボタンが握られており、以来、次男は姿を消していた。
改めて母親や長男から事情を聞く特命課。2年前に次男が逮捕されたきっかけは、父親に叱られたためだという。その日、工場の経営資金に行き詰った父親に、次男は札束を差し出した。次男は「ダチのノミ屋を手伝った金だ」と得意げに語ったが、父親は「そんな汚い金が使えるか!」と次男を張り倒したという。怒った次男は町へ繰り出し、傷害事件を起こしたのだ。
その頃、特命課に匿名の女性から「彼は、本当はお父さんのことが好きでした。殺したなんて誤解です」との電話が入る。だが、次男の評判はどこでも最悪で、かばうような女性がいるとは思えない。やがて、特命課は次男が潜伏するアパートを突き止め、逮捕する。ふて腐れた態度の次男に取り調べは難航するが、母親が差し入れに来たことで、その態度は豹変。父親殺しを自供する。だが、現場検証の際、あやふやな証言を繰り返す次男を見て、叶の胸に疑念が生じる。
一方、次男が潜伏していたアパートの借り主が偽名の女性と判明。また、工場の経営状況を調べたところ、一度は不渡りを出したにもかかわらず、原因不明の入金によって持ち直していた。叶は工場の帳簿の筆跡が、偽名の女性のものと似ていることに気づき、工場で事務職を務める女を問い詰める。女は次男を匿っていたことを認め、次男の無実を強く主張する。女こそが匿名電話の主だったのだ。
長男の紹介で工場に勤め始めた女は、最初は次男を怖がっていたが、しだいに愛情の現し方が不器用なだけで、芯は優しい人間だと気づいたという。事件当夜、工場を訪ねた女は、長男が母親に「弟を厄介払いできた」と語るのを立ち聞きする。事情を聞いた女は、自首しようと交番に向かった次男に追いつき、「お父さんを殺したなんで嘘でしょう?」と問い詰める。次男は「俺が親父を殺した」と主張するが、女が長男の言葉を告げたところ、悔しげな表情を浮かべて自首を思い止まり、以来、女が匿っていたという。
次男が殺していないとすれば、誰が殺したというのか?叶は自殺説を主張する。工場の資金繰りに窮した父親は、加入して1年以内の自殺であれば保険金は下りないことを知らず、保険金目当てに自殺した。そこで、他殺に見せかけるために、次男が罪を被ったのではないか?
真相を探るべく、父親が残したかもしれない遺書を探す特命課。叶は「次男が女に渡しているのではないか?」と推測。最初は否定した女だが「このままでは彼は死刑だ」との叶の言葉に、隠していた遺書を差し出す。それは次男に宛てられたもので、2年前の一件について「許してくれ。お前の真心も知らずに、ひどい仕打ちをした」と詫びの言葉が綴られていた。
こうして、父親の自殺と次男の無実が明らかになる。父親の遺書を読んだ次男は、父の死を無駄にしないために、自ら罪を被ろうと申し出たのだ。女から長男の言葉を聞かされ、決心が鈍ったものの、母親の差し入れに、再び決意を固めたのだ。「奴は、愛情に飢えていたんです」次男の気持ちを代弁しつつ、「次男に工場を再建するチャンスがあれば」と願わずにはいられない叶だった。

【感想など】
粗暴な言動の裏で、親の愛情を求め続けていた青年の悲しい決意を描いたい一本。粗暴な青年を演じるのはバイオマンのグリーンツー。他に特筆すべきことはありません。と、それだけで終わらせてしまってもいいのですが、少しだけ感想を。

何と言うか、次男といい、女といい、母親といい、出てくる人物がどいつもこいつも甘ったれというか、薄っぺらいというか、胸に迫ってくるものがありません。個人的に最も不愉快なのは「私だけがこの人の良いところを分かってあげられる」という思い上がりもはなはだしい勘違い女。よほどの外道でもない限り、粗暴な人間にだって少しは優しいところはあるもの。だからといって「人を殺さない」確証などどこにもないことがなぜ分からないでしょうか?
実際のところ、次男は殺してはいませんでしたが、こういう他人の気持ちを思いやることができず、自分の感情を最優先させて暴力に訴えるような輩は、何かのきっかけがあれば親でも殺しかねません(もちろん、殺した跡で「殺すつもりじゃなかった!」とか泣き喚くのでしょうが)。父親殺しの罪を被ろうとしたのも、ただ感情が高ぶったためであり、死刑になってまで意思を貫けるかどうかは、はなはだ疑問。どうせ裁判の途中かどこかで真相を自白したことでしょう。それ以前に、息子に輪をかけて中途半端な母親が、罪悪感に耐え切れず告白した可能性の方が高いでしょうが・・・

実際のところ、特命課が全力を挙げるほどの事件ではなかったと思え、「命と引き換えにしても守りたいものがある」という叶の言葉も、どこか空々しく聞こえてしまいました。そもそも、長男の言葉からもわかるように、この家族の絆はすでに断たれているといっても過言ではありません。
唯一まともに思えたのは、たとえ資金繰りに困ろうとも、息子が悪事で稼いだ金を受け取ろうとしなかった親父さんくらいですが、その親父さんですら、自殺を前に弱気になったのか、詫びる必要も無い行動を詫びてしまい、次男の間違った決断を引き出すことになってしまいました。
この家族がどう裁かれたのか、ラストが中途半端なため(工場の閉鎖が描かれるのみ)明らかではありませんが、おそらくは家族一同、保険金詐欺で裁かれたことでしょう。無駄死にを遂げた親父さんが不憫というほかありません。

第451話 暴走・ロード募金殺人行?!

2008年12月04日 00時39分28秒 | Weblog
脚本 押川國秋、監督 宮越澄
1986年2月6日放送

【あらすじ】
ある夜、たまたま立ち寄った交番で、時田は自転車に乗った若者と出会う。負傷していながら、頑なに事情を話そうとしない若者に閉口し、所轄署に後を任せて退散する。
同じ頃、一人暮らしの資産家が自宅で刺殺され、1千万円が奪われる。その手にはゲートボールの①と⑧の球が握られており、現場から自転車で逃走する若い人影が目撃されていた。
翌朝、事件を知った時田は、昨夜の若者が事件と関係しているのではと見て行方を追う。だが、手掛かりは腹痛で苦しんでいたということだけだった。翌朝、事件を知った時田は、昨夜の若者が事件と関係しているのではと推測する。だが、所轄署では身許を聞かぬままに若者を解放しており、手掛かりは腹痛で苦しんでいたということだけだった。
若者が交番に残したハンカチの血痕は、資産家の血液型と一致する。また、被害者のゲートボール仲間の証言によると、若者は数日前、ゲートボール中の資産家に「自転車で募金旅行をしている」と声をかけ、盛んに売り込んでいたという。特命課は「募金がうまくいかずに困った若者が、資産家の金を狙った末の犯行」と推測し、その行方を追う。
時田らは若者が腹痛を訴え駆け込んだ病院を発見。病院周辺の旅館を探したところ、若者を発見し、追跡の末に拘束する。取調べに対し、若者は犯行を否定。時田と叶は旅館を捜索するが、凶器や1千万円は見当たらない。そこに、若者宛に募金仲間の娘から電話が入る。時田が若者を装い応対したところ、二人は山口県の宇部出身とわかり、叶が事情を調べに向かう。
若者の取調べが難航するなか、時田は現場付近の「一八寿司」が食中毒の疑いで保健所に調べられている現場に遭遇。もしやと思って板前に被害者や若者の写真を見せるが「覚えがない」という。だが、病院からの連絡で、若者の腹痛の原因はサルモネラ菌による食中毒と判明。被害者の遺体からもサルモネラ菌が検出される。二人が一緒に寿司を食べたと見て、証拠固めのために再び「一八寿司」訪れる時田だが、板前は行方をくらませていた。
一方、叶の調べで若者の素性が判明。若者は2ヶ月前、事故で半身不随となった弟のために、身障者の施設を設立する目的で、同級生の娘と東西に別れてロード募金の旅に出た。募金は思いのほか難航するが、地元のマスコミが派手に報道したこともあり、簡単に諦めることも、警察沙汰になることもできなかったのだ。
若者の志を知って同情を寄せる時田に、若者も心を開く。「大勢に見送られて出発するとき、自分がヒーローになったような気分でした・・・でも、世間は思ったほど甘くはなく、次第に、素通りする人間が憎くなってきました」そんな若者に、資産家は寿司をふるまいつつ一千万円の存在を明かし「その金を寄付するのは容易い。しかし、男たるもの、日本中を巡ってでも初志を貫くことだ」と励ましたという。真犯人は、その会話を聞いていた板前だった。若者は板前が資産家のマンションに入っていくのを目撃。後を追ったところ、資産家が殺されており、板前は若者の反撃にあって逃走。若者は残された1千万に目がくらみ、金を奪って逃走したのだ。
若者の証言により、隠していた1千万円は発見され、海外逃亡を図った板前も逮捕。事件は解決する。送検される若者に、特命課は心尽くしの寄付を送る。刑事たち一人ひとりに頭を下げる姿を見て、今後は挫けることなく現実に立ち向かってくれることを祈る時田だった。

【感想など】
マスコミに踊らされた若者の愚行を描いた一本です(このまとめ方に異論はあろうかと思いますが、個人的な感想ということでご容赦ください)。ラストシーンで神代が若者に向けた「マスコミが犯罪者までをヒーロー扱いする世の中だ。それに乗っかって目立ちたがる気持ちはわかるが、本当のヒーローというものは、不可能と思われることを成し遂げる人を言うんだ。わかるか?」との言葉こそ本編のテーマであり、それ以上語ることもありません。
現実を見ることなく、甘い考えで旅立つ若者が愚かなことは言うまでもありませんが、その愚行を止めようともしない親や、あたかも英雄のごとく派手に騒ぎ立てるマスコミは、さらに愚劣。とくにマスコミは読者の興味さえ引ければそれでよく、若者が失敗しようが、自分たちの報道のせいで引っ込みがつかなくなろうが、知ったことではありません。さらにタチの悪いことに、そうした自分たちの卑劣さを自覚することすらなく、むしろこうした報道を「いいことをした」とでも思ってしまいかねないあたり、ほとほと救いようがありません。
もちろん、マスコミが愚劣なのは周知の事実であり、それによって若者や娘の愚行が肯定されるものではなりません。とくに、娘の「私たちの青春のモニュメントなのよ!」などとはしゃいだ言葉には、呆れるというか何と言うか、「弟は貴様らの人生にアクセントを与えるために半身不随になったんとちゃうぞ!」と怒鳴りつけたくなる思いでした。

私が募金は大嫌いだという話は、以前に第396話「万引き少女の告白!」の感想でしつこいほどに語りましたので、ここでは繰り返しませんが、加えて気になったのは、特命課の捜査態度です。血液型の一致だけでは決定的な証拠とは言えないにもかかわらず、若者を犯人と決め付けて捜査するのは特命課らしくありません。また、北条清嗣演じる板前が、念願かなってニューヨークに寿司バーを出店する予定にもかかわらず(もちろん、金が欲しい時期だというのは分かりますが)強盗殺人という危ない橋を渡る理由もさっぱり分かりません。
とはいえ、そんな瑣末なことはどうでもよくなるほど、若者と娘の自己陶酔的な自己中心さが不愉快極まりなく、私にとってはドラマの評価以前に「不快な一本」という印象しか残りませんでした。

第450話 前略、神代課長様・天使からの告発状!

2008年12月01日 19時18分25秒 | Weblog
脚本 宮下隼一、監督 天野利彦
1986年1月30日放送

【あらすじ】
娘、夏子の8年目の命日を迎え、神代は休暇を取って墓参りへ。「自分が刑事でなければ、あんなことにはならなかった・・・」年に一度、刑事である自分を忘れ、ただの父親に戻る神代。その胸中では、尽きることのない後悔と無念さが渦を巻いていた。そんな神代に届いた一通の匿名の封書。それは、所轄署で取調べ中の容疑者の無実を訴えるものだった。
その容疑者は、交際を拒否された女をラブホテルに連れ込み、絞殺しようとしたところを、駆けつけた警官に逮捕された。1年前に別のラブホテルで起こった殺人事件と状況が酷似していたため、所轄署ではその事件についても容疑者を追及。今回の殺人未遂と併せて起訴する方針を固めていた。
この事件の担当検事は神代の大学時代の同期生。切れ味の鋭さでも、男手一つで娘を育てたという点でも似た者同士だった。検事は容疑者の犯行を確信していたが、神代は匿名の訴状を根拠に、1年前の事件の再捜査に乗り出す。
そんななか、被害者の母親は特命課を訪れ「娘を殺した犯人を助けようとするんですか?」と怒りをぶつける。その母親に、神代は厳しい真実を突きつける。「お嬢さんは買春をしていたようですが・・・」母親が激昂するなか、検事が特命課に現れ、母親をかばう。「神代、君には親の気持ちがわからんのか?」「真実を無視して、事件の解決は無い!」対決姿勢を明らかにする両者。
やがて、容疑者は検事自らの執拗な取調べの前に、犯行を認める。決め手となったのは、容疑者の自宅の天井裏から発見された被害者のブローチだった。そんななか、桜井が容疑者のアリバイを証明する情報を聞き込んでくる。容疑者は1年前の犯行当日、若い娘をレイプしたと吹聴していた。被害者が泣き寝入りしたためか、該当する事件の記録はない。目撃者探しに奔走する特命課だが、手掛かりは得られない。警察病院で面会謝絶となっていた容疑者に、強引に面会する橘。容疑者は「俺は殺していない!助けてくれ!」と訴え、レイプした娘の首筋に二つの黒子があったことを明かす。
再び検事のもとを訪れた神代は、容疑者を強引に有罪に追い込もうとする検事の態度を問い質す。「何を焦っている?昔のお前は冷静だった。今のお前をお嬢さんが見たら、どう思う?」「お前は幸せだ。夏子ちゃんはお前の心の中に、永久に綺麗な思い出として、生き続けることができる。それに引き換え・・・」検事の態度に、ただならぬものを感じた神代は、捜査を離れ、単身、検事と娘の過去を追う。やがて、神代は場末の店で飲みつぶれる娘を発見。「おじ様・・・」「この手紙をくれたのは、君だね?」娘の首筋には、2つの黒子が浮かんでいた。
検事をレイプ現場の河原に連れ出す特命課。そこに待っていた神代は、検事に語り始める。「1年前、この河原で一人の女性が襲われた・・・」容疑者にレイプされた娘を発見したのは、迎えに出た検事だった。検事は現場から立ち去る容疑者とすれ違い、顔を見ていた。職業柄、事件を法の下に裁こうとした検事だが、娘はその夜、自殺を図った。命を取り留めたものの、回復した娘は検事の前から姿を消した。そして1年後、容疑者と思わぬ再会を果たした検事は、容疑者を死刑にすることで、娘の傷を世間にさらすことなく復讐を図ったのだ。
神代の推理に対し、ブローチという物証を盾に反論する検事。だが、橘は証拠を突きつける。「あれは貴方が捏造したものだ。被害者の母親が、貴方に頼まれてブローチを渡したと認めた」真相を認め、胸中を語り始める検事。「検事という仕事が、娘を傷つけてしまった。私は娘に償いたかった。神代、お前にならわかるはずだ」「いや、夏子は、私に復讐など望まなかった。お嬢さんも同じだ」検事に封筒を差し出す神代。愕然とする検事の前に、娘が現れる。「悪いのはお父さんじゃありません。1年前、私が弱かったばかりに・・・あの時、きちんと訴え出ていれば・・・」
こうして、容疑者は1年前のレイプと今回の殺人未遂によってのみ起訴され、検事は職を追われた。その後、1年前の真犯人が逮捕されるが、それは神代がにらんだとおり、被害者の買春客であった。被害者の墓前に報告に訪れる神代。そこでは、愛する娘を失った母親が、神代や検事と同じ無念さを抱え、静かに佇んでいた。

【感想など】
愛する娘を襲った悲劇を前に、癒しようのない心の傷と、職務への責任感の板ばさみに苦しむ親たちの葛藤を描いた一本。神代親子と検事親子という、親交のある2組の親子を軸にしつつ、加えて1年前の被害者とその母という、もう一組の親子をからませることで、ドラマに深みを与えているあたりはお見事(こうした場合、えてして視点がブレてしまいがちですが、今回はうまくバランスが取れているのも好印象です)。

ドラマの序盤、課長が再会した検事に娘の話題を出したところで、ある程度展開が読めてしまったきらいはありますが、今回のドラマのポイントは、謎解きよりも神代や検事の娘に対する想いであり、そこが充分に描かれているので個人的には問題なし。特に、自分の娘への想いだけでなく、相手の娘への想いも丹念に描かれているのがミソ。
冒頭では8年前の夏子の被弾シーン(その夏子に片思いしていた津上の姿もわずかに映っており、懐かしさもひとしお)が挿入され、色褪せることの無い神代の苦悩がしのばれますが、その後日談として検事の娘との回想シーンも描かれています。――夏子の死後、「夏子お姉さんの代わりにはなれないだろうけど、ときどき、こうしておじ様の娘になる」と神代に甘える娘。「(検事に)やきもちを焼かれてしまうな」と苦笑する神代に「いいの。お父さんにはお仕事っていう恋人がいるもの」と笑う娘――短いシーンではありますが、神代や夏子に対する娘の想いとともに、娘と検事との心のすれ違い、さらには実娘を失った神代にとって検事の娘がどんな存在であったかも示しており、台詞が練り込まれていることがわかります。

また、神代に対する特命課刑事らの信頼(なかでも、容疑者の拘留期限が迫り、特命課内にも焦りが募るなか、動じることなく「俺は、課長を信じて待つよ」と呟く橘のかっこ良さは絶品!)、大地康雄の味のある演技によって単なる悪役の域を超えた存在感を発揮する容疑者(存在感があり過ぎて、かえって「真実」のために「憎むべき外道」を救わねばならないという葛藤が薄れてしまった感もありますが・・・)など、メインとなるストーリー意外にも随所に見せ場があり、個人的には時間帯変更後ではトップクラスの出来ではないかと思います。「神代夏子の命日モノ」としても重要な位置づけとなる一本だけに、半年前に時期はずれの命日モノ(第424話「渓谷に消えた女秘書!」がなおさら残念に思えてなりません。