特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

DVD-BOX第4弾への期待

2007年06月29日 00時27分26秒 | Weblog
最終三部作が収録されたVol.3で打ち止めかと心配されたDVD-BOXですが、某掲示板の情報によれば、11月にVol.4の発売が決定とのこと。まずはめでたいことです。収録されるエピソードはまだ未定でしょうが、この際、ベストエピソード募集の投票結果は無視して、「是非ともこのエピソードを」という収録作16本を考えてみました。

第17話「爆破60分前の女」神代・桜井
第58話「緊急手配・悪女からのリクエスト!」高杉
第90話「ジングルベルと銃声の街!」津上
第129話「非常の街・ピエロと呼ばれた男!」紅林
第152話「手配107・凧を上げる女!」桜井
第179話「面影」神代
第211話「自供・檻の中の野獣!」船村
第248話「殺人クイズ招待状!」紅林
第256話「虫になった刑事!」橘
第260話「逮捕志願!」叶
第280話「黙秘する女!」紅林
第283話「或る疑惑!」橘
第306話「絞殺魔の記念写真!」船村
第309話「撃つ女!」船村
第311話「パパの名は吉野竜次!」吉野
第318話「不発弾の身代金!」桜井

主演刑事別に見ると、神代2本、桜井3本、高杉1本、津上1本、紅林3本、船村3本、橘2本、叶1本、吉野1本とそれなりにバランスも良いと思うのですが、どんなものでしょうか?
紅林ファンには第315話「面影列車!」が入ってないのは納得いかんでしょうし、同様におやっさんファンには第193話「老刑事鈴を追う!」、西田健ファンには第264話「白い手袋をした通り魔!」が抜けていると思われるでしょうが、あくまで個人的な好みと(加えて未視聴の324話以降は除く)いうことで、ご容赦ください。

第323話 二人の夫を持つ女!

2007年06月25日 23時03分51秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 藤井邦夫

連続強盗殺人犯を追う特命課。奪われた指輪が質入れされ、質屋に残された住所氏名をたどったところ、ある母子家庭に行き着いた。ホステスとして幼い息子を育てていた女は、事件とは無関係を主張するが、洗濯物に男の下着が混じっていたことを追及すると「店の客を泊めただけ」と開き直る。そこに電話が入るが、女は間違い電話を装って切る。再びかかってきた電話の主は、やはり犯人だった。警察の存在に気づいた犯人は、「電話に出せ」と要求。対応した桜井に「その母子は親切心で俺を泊めてくれただけで、事件とは無関係だ」と主張する。
女を取り調べたところ、犯人について知っているのは名前だけだという。犯人との関係を追及する船村だが、女は「夫と別れた後、女一人で息子を育てるためには、客を大切にするしかないんだよ」と主張する。犯人をかばうような女の言動に不審を覚え、引き続き母子をマークする特命課。そんななか、女は子供を残したまま姿を消す。
改めて女の戸籍を調べて驚く特命課。離婚した夫の欄に記されていたのは、犯人の名前だった。女は別れた夫と偶然再会し、その犯行を知りつつ匿っていたものと推測された。「子供を残して消えるような女じゃない」と子供を見張る桜井に、叶は「甘いんじゃないですか」と反論する。その後、叶の予想通り、女は東京駅で九州行きの電車に乗ろうとしたところを発見されるが、犯人の行方を語ろうとはしなかった。
夫の過去を調べたところ、かつて九州、そして北海道で炭鉱夫をしていたが、坑内の爆発事故で閉山となり、職を失った。そして借金を背負った挙句、妻子に負担をかけまいと離婚した末に、行方不明となった。女は夫を探すために子供を連れて上京したのだという。
犯人が作ってくれたという犬小屋に色を塗りながら「パパ好き。ワンワンのおじちゃんも」と語る子供の証言から、桜井は犯人と夫が別人ではないかと推測する。やがて、夫が数年前に身許不明者として死んでいたことが判明。死体の引受人は女だった。再度女を問い質したところ、女は夫の死を受け入れられず、同じ炭鉱夫だった犯人に夫の姿を重ね合わせ、面倒を見ていたのだという。犯人は覚醒剤中毒者で、自分の名前も定かではなかったことから、女は犯人に夫の名前を与え、いつしか犯人は母子を自分の実の妻子であるかのように錯覚していた。
そして、犯人は子供と約束した子犬を買い与えるために、わずか30万円の金を求めて銀行に押し入る。女性行員を人質に立てこもる犯人。人質に接触し過ぎているため、射殺をためらう桜井。叶は「自分ならやれます」と主張し、制止を振り切って発砲。銃弾は逸れ、犯人は逆上。咄嗟に放った桜井の銃弾が犯人を貫いた。虫の息の犯人に「お前の本当の名は?」と問いかける桜井。犯人が答えたのは、女の夫の名前だった。「桜井って刑事に頼みがある。子供に約束した犬を・・・」その言葉を残して、犯人は死亡した。その事実を、女は、そして桜井はどう受け止めたのか?その答えは降りしきる雨に流されていった。

冒頭からラストシーンまで、一分のスキもない完成度の高い一本です。冒頭で、叶が銃を練習する風景が描かれ、おやっさんの台詞によって、叶が桜井を目標に腕を磨いていること、一方の桜井が、最近では銃の練習に身を入れていないことが語られます。この両者の関係が、捜査を通じて「犯人と女に対して同情的な桜井」と「捜査に私情を挟むべきではないと主張する叶」の対立へと変化していきます。かつては刑事同士の対立といえば、非情に徹する桜井と、私情を隠さない紅林(初期は高杉)と言うのが定番でしたが、本作では桜井の立ち位置が変わっています。これは脚本家ごとのキャラクター把握の差というより、むしろ桜井の心境の変化と捉えるべきでしょう。冒頭のおやっさんの「最近、あんまり(銃の練習を)やらないね」という台詞が、その変化を象徴していると考えるのは、深読みのしすぎでしょうか?(ただし叶に関しては、いつもに比べて冷淡すぎるような気もしますが・・・)
事実の推移だけを追えば、両者の意見の対立は叶に軍配が上がり、その自負がラストシーンにおける叶の発砲につながります。その結果、叶はまだまだ桜井に及ばないことを思い知らされます。それは単に銃の腕の差だけではく、人間に対する洞察力でも同様です。叶にとって、犯人は最後まで凶悪な人でなしでした。しかし、実際は桜井が洞察したように、犯人は(そして死んだ夫も)炭鉱夫としてしか生きる術を知らなかった哀しい男でした。「まともな人間に戻してやりたい」という桜井の願いも虚しく、叶の先走りによって(と言うのは厳しすぎるかもしれませんが)、桜井自身の手で命を奪うしかないという皮肉なラストが、冒頭のシーンが布石となっているだけに、見る者に強い印象を与えます。
また、両刑事の対立という本筋に加えて、女と犯人、そして子供の触れ合いも情感たっぷりに描かれています。特に泣かせるのが、犯人と子供の交わした約束が、桜井に犯人と夫が別人だと気づかせる鍵になり、またラストシーンの強盗の引き金にもなっていること。何も知らない子供は、“ワンワンのおじちゃん”が約束の子犬を買って来てくれるのを待ち続けることでしょう。そんな子供に、女は夫の死と同様に、犯人の死をも告げることができないのでしょうか?深い余韻を残す名作です。未視聴の方は金曜の再放送をお見逃しなく。

第322話 にっぽん縦断泥棒日記!

2007年06月25日 02時55分38秒 | Weblog
脚本 押川國秋、監督 宮越澄

老人が店番をするタバコ屋に「裏口が火事だ」などと電話をかけ、店を開けさせた隙に収入印紙などを奪うという事件が頻発する。そんななか、福島県でも同様の事件が発生。今回は泥棒に追いすがった老婆が殺される。
捜査に当たった特命課は、過去の犯行の記録から、次の犯行現場を予測して網を張る。予測どおり犯人が現れ、タバコ屋からの通報で地元警察が急行するが、犯人は包囲網をかいくぐって逃走。紅林はタバコ屋の店先で、犯人が落としたと思われる手紙を発見する。その手紙は、失踪した兄を探すために上京した男が、故郷に残された兄の子供たちに宛てたものだった。差出人の手紙に記されていたドヤ街を訪ねたところ、男は不在だったが、残された荷物から収入印紙と犯行を記録したノートが発見される。それによると、九州から北海道まで日本中を泥棒して回っていたらしいが、福島の事件だけは記されていなかった。
収入印紙を換金したのではと、付近のコイン屋を当たる紅林だが、それらしい人物には覚えがないという。コイン屋を見張り続けたところ、目撃者の証言通りの背格好の男が現れ、逃走を図ったために逮捕する。特命課の尋問にとぼけ続けていた男だが、船村におだてられ、つい口を滑らせる。「一軒で2万円くらいの犯行に目くじら立てなくても・・・」と居直る男に「細々と暮らしている老人にとって、2万円がどれだけの価値があるか、貴様には分からんのか!」と一喝する船村。男は全国各地の犯行を認めたものの、福島の犯行だけは頑なに否認する。
被害者の夫に面通しさせるため、福島県に男を護送する紅林。夫は男の着衣を見て犯人とだ断定するが、男は否認を続ける。紅林は、タバコ屋の付近に電話ボックスが見当たらないことに疑問を覚える。事件当日、犯人は老婆に電話をかけて店を空けさせた後、すぐに犯行に押し入った。「この現場だけは共犯者がいたのでは」と思われるが、男に共犯者がいたとは考えにくく、模倣犯の仕業だと推測する紅林。
「自分の手口を誰かに喋ったことはないか?」と男を問い質す紅林だが、男にそんな記憶はない。何とか思い出させようと犯行前の足取りをたどるうちに、10日ほど前、新宿で外人女性に誘われ、ホテルに入ったことを思い出す。女は男が風呂に入っている途中、収入印紙を奪って逃げた。特命課が調べたところ、新宿界隈で同様の事件が続発していた。女の似顔絵を作成し、その行方を追う紅林。やがて女を発見し、共犯がコイン屋だと判明。二人をマークし続けた結果、同様の犯行を働くところを現行犯で逮捕する。検察庁に送られながら「兄貴の居所をさがしてください」と頭を下げる男に、紅林はしっかりと頷くのだった。

タイトルどおり、「日本全国を旅して泥棒を続ける男」という着想のみで勝負し、他は何のひねりもありません。失踪した兄がどこで事件にからんでくるのか、ずっと待ってるうちに出てこないまま終わってしまいました。どこか憎めない犯人を演じる車だん吉がかもし出す独特の味わいも、人によっては好き嫌いが分かれるところ。模倣犯の偽装も稚拙極まりなく(男が服を着替えたらどうするつもりだったのか?)、「特命課が出動するほどの事件じゃないだろう」という不毛な感想を持たざるを得ない一本でした。

第321話 11時まで待っていた女!

2007年06月18日 19時22分48秒 | Weblog
脚本 大川タケシ、監督 宮越澄

刑事になる前からの恩人である、交番勤務の巡査長と待ち合わせる叶。待ち合わせの喫茶店になかなか現れない巡査長を心配する叶だが、巡査長はビルの屋上から転落死を遂げていた。巡査長はなぜビルの屋上に行ったのか?喫茶店に向かう途中、手配中の犯人を見つけて追跡したのではないかと見て、叶は捜査を開始する叶。
事件当日、喫茶店で隣り合わせた女を見かけた叶は、その女が誰かを待ち続けていたことを思い出す。もしやと思い、女に「誰を待っていたのか」と問い掛ける叶だが、女は逃げるように立ち去った。叶はウェイトレスの証言から、女が事件当日に11時まで待ち続けていたことや、よく女と一緒に来店する若者が事件以来姿を見せていないことを知る。その後、目撃者が現れ、巡査長が逃げる若者を「あのことは気にするな」と呼びかけながら追いかけていたことが判明。叶はその若者が女の待ち合わせ相手ではないかと推測する。
引き続き目撃者を探すなか、叶は巡査長の墜落現場に花を手向ける少女を見かける。気になって派出所に確認したところ、かつて娘が電車賃を落として困っていたとき、巡査長が助けたことがあったという。派出所では、お金を落とすなどして困った人のために千円を限度に貸与する「公衆接遇弁償費」という制度がある。特命課はそのリストから、巡査長が応対した者を手当たり次第に当たるが、不審な人物は見当たらなかった。
実は、叶も学生時代に巡査長から金を借りたことがあった。そのとき、叶は千円以上必要だったため、巡査長がポケットマネーから金を貸し、叶の名を警察手帳に書き止めた。叶は巡査長の妻から手帳を借り受け、そこに名前を記されていた者を追う。その中から、事件の翌日に前触れもなく退職した若者が浮上する。若者が住んでいた工場の寮を調べたところ、遊園地の切符が捨てられていた。念のため指紋を採取したところ、転落現場に残された指紋と一致。若者を犯人とみて指名手配する一方、叶は遊園地を当たる。若者の写真を見せて聞き込んだところ、売店の女の恋人だと判明。それは叶が喫茶店で隣り合わせた女だった。男の所在を問い質す叶だが、女は何も知らないという。若者の境遇に共感を覚えた叶は、「彼は生真面目すぎるあまり、たかが3千円のために人を死なせてしまった。このまま追い詰められれば自殺するかもしれない。彼を助けたいんだ」と女を説得する。女は今夜、若者から連絡が入ることを明かす。女の部屋で若者からの電話を待つ叶。待ち続けた末に、ようやく電話がかかってくる。若者は、女に上野のホテルにいることを告げると、今から自殺すると言って電話を切る。上野のホテルをしらみつぶしに当たる特命課。探し回った末に、叶は睡眠薬を飲んで昏睡状態の若者を発見。若者は「殺すつもりはなかったんです」と涙ながらに犯行を自白するのだった。

生真面目すぎる若者が、わずかな金を借りたために精神的に追い詰められ、その挙句に人を死なせてしまう。面白い設定だとは思うのですが、いかにも人の良さそうな巡査長が「気にしなくていいから」と言っているにも関わらず、「許してください」と土下座までし、屋上から突き落としてしまうのは、いかにも不自然。さらに付け加えれば、神戸出身だという若者の取ってつけたような関西弁も、いかにも不自然。監督や役者は誰も「これは無いよ」と思わなかったのでしょうか?

第320話 特命へリ緊急発進!

2007年06月17日 20時56分59秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 辻理

空港で不審な外国人を見かけた神代は、その尋常ではない雰囲気に危険信号を感じた。咄嗟に尾行を開始するとともに、記憶をたどる神代。外国人は、国際事件のファイルにあった米国上院議員殺しに関わる男だった。FBIや外事課に問い合わせたが、外国人の正体は分からない。そこで指紋を採取しようとするものの、外国人はタクシーやホテルのフロントにも徹底して指紋を残さない。ホテルまで追跡し、スキをついてようやく採取した指紋をFBIに照合した結果、元グリーンベレーの殺し屋だと判明する。逮捕を決意する神代だが、FBIから「外国人の相棒が日本に潜入している」との情報を得て、両者の同時逮捕に方針を変更する。
外国人の行動を徹底マークする特命課。外国人は都内数箇所を回り、公園でマフィアと繋がる男と接触した後、ビジネスホテルにデートクラブの女を呼び出した。男を逮捕し、外国人がライフルを発注したことをつかんだ特命課は、3つの手掛かりから狙撃対象を割り出そうとする。第1の手掛かりは、外国人が男に渡した新聞。第2の手掛かりは、外国人が狙撃の下見に立ち寄った場所。そして第3の手掛かりが帰国予定の飛行機の時間。新聞に載っていた500名以上の中から、飛行機の時間までに狙撃ポイントから狙える位置を通過する人物を絞り込んだところ、一人の人物が浮かび上がった。その人物は国際汚職事件の証人として、明日、検察庁で証言する予定だった。
外国人が食事に出た隙を狙って、ホテルの室内を家捜しする特命課。催涙ガスの入ったライターを見つけた他に収穫はなかった。狙撃を警戒して紅林がヘリで護送することになるが、発進直前、桜井がヘリの整備所から出てきた不審な女を捕らえる。特命課は女とデートクラブの女が接触していたことに気づくが、ヘリに不審な点はなく、予定通り発進させる。その一方で、部屋のベランダに隠してあったライフルを発見し、外国人を銃器不法所持で逮捕する。
余裕のある外国人の様子に疑問をいだいた神代は、女の所持品を調べ、そこに紅林のライターが発見する。それは催涙ガス入りのライターと同形のもので、紅林のものとすり替えられたらしい。ヘリ内でライターを使用すれば、操縦どころではなくなる。慌てて紅林に連絡するものの、妨害電話のために通話できない。地上からヘリを追う特命課。証人がタバコを吸おうとして紅林にライターを求めたとき、追いついた神代は発炎筒を焚いて危険を知らせる。そこに潜伏していた相棒が銃撃戦を仕掛ける。危機は回避され、廃工場に逃れた相棒も逮捕。刑事たちは安堵の笑顔を交わすのだった。

神代の陣頭指揮による緻密な捜査が克明に描かれた、長坂復帰記念4本連続の最後を飾る見ごたえのある一本。特捜にしては珍しい銃撃戦も披露されるなど、本来の売りであるドラマ性を捨てて、殺し屋対特命課の対決に徹しています。それだけに、あまり語りどころはないのですが、サスペンスと緊張感にあふれた構成には卓越したものがあり、見て損はない一本と言えるでしょう。

第319話 一億円と消えた父!

2007年06月11日 23時28分59秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 天野利彦

銀行員が1億円を持ち逃げするという事件が発生。行方不明となった銀行員の娘に、マスコミが殺到する。「私に責任ということを教えた父が、そんなことをするはずはありません」と、父親の無実を訴える娘。「それじゃあ答えになってない」となおも追及するマスコミに、娘は「父の犯行だと証明されれば、死んでお詫びします」と宣言する。娘の言葉に真実を見た船村は、銀行員の無実を証明すべく捜査を開始する。
娘の立会いのもと、現場検証で当日の模様を再現する特命課。銀行員は、金庫からジェラルミンケースで1億円を持ち出した。次長から車を借りて銀行を出た。その後、奪った車に乗り捨てて逃走し、故郷である九州に逃走したものと思われた。
乗り捨てられた車や、残されたジェラルミンケース、さらには車を乗り捨てた現場からも指紋が検出され、銀行員の犯行は明白だった。それでも船村は「指紋なんか、つけようと思えばいつでもつけられる」と、銀行員の無実を主張。「銀行員の持っていたジェラルミンケースは空だったのでは?」「銀行員を装った別人だったのでは?」など、さまざまな仮説を立て、目撃者一人ひとりの証言を検証する。
しかし、銀行員が後輩の保証人となったために借金を背負っていることや、その借金が事件後に九州の銀行から返済してされていることが明らかになり、銀行員の犯行は確実なものに。マスコミからそのことを知らされ、絶望して自殺を図る娘。娘を思い止まらせたのは、叶の「おやっさんが真犯人をつかまえた」という一言だった。船村に詫びる叶。だが、今はその言葉を真実にするしかない。船村は銀行員の潔白を証明する最後の手段を明かす。それは、銀行員の死体を捜すことだった。
船村の仮説では、銀行員は犯人の指示で金庫から1億円を持ち出した後、銀行内で犯人に殺された。「他人から物を借りるのが嫌いな彼が、車を借りにくるはずがない」と次長に詰め寄る船村。「だったら指紋はどうなる?」と反論する次長。「あんたは死体からある物を持ち去った。死体が発見されれば明らかになる」船村が見抜いた死体の隠し場所とは、次長室の窓の真下に空いていた下水道工事の穴だった。埋め立てられた工事跡を掘り返した結果、発見された銀行員の死体には右手がなかった。次長は横領の穴埋めのために1億円を奪い、銀行員の右手を切り取って指紋を残し、さらに九州から借金を振り込むという偽装工作を行っていた。ようやく父の無実が証明されると同時に、娘は父の死という哀しい事実を知らされるのだった。

長坂秀佳が復帰記念に4本連続で脚本を務めた第3作。いわゆる本格推理路線を追求した1本ですが、死体の隠し方が強引なら、おやっさんの推理も強引で、説得力に欠けることは否めません。さらに、メインテーマである「父親と娘」の絆の描き方がおざなりのため、あまり感情移入できない(特に父親に対して)ため、正直言って今ひとつな印象でした。
それはともかく、今回、最も不愉快だったのが、銀行員の娘に対して飢えた獣のように殺到するマスコミどもです。自分を社会正義の代弁者でもあるかのように振舞う鬼畜のようなレポーターどもは、まさに万死に値する。貴様らは視聴率を取るためなら自分の身内の不幸ですらネタにするのだろう。この人でなしども!人の不幸をセンセーショナルに煽りさえすれば視聴者は喜ぶと思っているのか?視聴者をバカにするな!と言いたいところだが、実際のところバカを対象にするような番組でなければ視聴率を取れないのだから、それもしょうがない。そう思えば、貴様らも哀れな犠牲者だと言えるが、だからと言っていささかの同情も覚えない。己の言動を振り返ってみて、恥ずかしいと思う感覚すら麻痺している貴様らに、もはやつける薬などない。勝手にいつまでもバカに向けたバカな番組を作っていろ。こちらは見なければいいだけなのだから。

第318話 不発弾の身代金!

2007年06月11日 00時25分30秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 藤井邦夫

都内の工事現場から、終戦間際に米軍の落とした不発弾が発見された。その不発弾が忽然と姿を消したため、捜査に乗り出す特命課。同型の不発弾が展示されている資料館を訪れた特命課の面々は、その威力に戦慄する。「戦争ってやつが、まだ生きていたんだよ」と怯える船村。「盗まれたとはいえ、まだ殺戮のために使われると決まったわけじゃ・・・」となだめる桜井に、船村は静かに答えた。「人間を殺すために作られた兵器が、他の目的に使われたことは、ただの一度もない」
そんななか、不発弾を持ち去った犯人から、特命課にフロッピーディスクが送られてくる。表示される質問に答えていくと、爆破予告が現れる。半信半疑ながらも予告された現場に赴くと、花火をほぐした火薬による小規模な爆発が起こる。悪質な悪戯かとも思えたが、翌朝、その狙いが明らかになる。不発弾が発見された工事現場の工員が、数名の男が不発弾を運び出すのを目撃していた。犯人は、不発弾を持ち去ったと見せかけ、現場深くに埋め直し、爆破予告で注意をそらした間に改めて掘り出したのだ。
再度フロッピーディスクの質問に答えていくと、「身代金を用意せよ」との要求が表示された。拒否した場合は、明日の午後1時に184人の子供が犠牲になるという。犯人は身代金の引渡し方向を記したメッセージを特命課に届けるが、受付の手違いでロッカーにしまい込まれてしまう。
その間、不発弾を持ち去ったのが単独犯だとの確証をつかんだ特命課は、「数名の男が運び出した」と偽証した工員を逮捕する。取調べに神代を指名した工員は、「エリートのあなたが、工業高校中退にすぎない僕の顔色を窺っている」と勝ち誇る。「日本では、親も、学歴も、金もない、僕のような人間は、いくら才能があっても身動き一つ取れない。あなたのようなエリートには分からないんだ」屈折した論理を振りかざす工員を「そんな理屈は負け犬の遠吠えでしかない」と一喝する神代。工員は不適な笑みを浮かべ「朝7時のニュースを見せろ」と要求する。要求に応じ、工員の様子を見守るなか、犯人のメッセージがようやく特命課に届く。「身代金10億円を用意し、朝7時のニュースで見せろ」との文面に、慌てる特命課。何ごともなくニュースが終わり、工員は激昂する。「手違いで今届いたばかりなんだ」と弁解する特命課だが、工員は「もう間に合わない。子供たちが死ぬのは貴様たちの責任だ!」と叫ぶ。工員の計画では、身代金を持って国外に脱出した上で、爆弾の所在を教えるはずだった。その計画が崩れた今、工員に爆弾のありかを教える義理はなかった。
最後の手段として、工員を泳がせる特命課。「俺のせいじゃない」と呟きながら、うつろな表情で街をさ迷う工員。自分の不運を罵った末に「止めなきゃ」と決心するものの、特命課の尾行に気づくと、当てつけのように高架から飛び降りる。死に際に呟いた「軽トラの・・・」という言葉を頼りに、空と陸から捜査網を引く特命課。爆破1時間前、ようやく河川敷に乗り捨てられていた軽トラを発見する。しかし、140人もの子供はどこにいるのか?軽トラに残されていた不発弾は、火薬を抜かれた展示品だった。資料館の不発弾とすり返られていたのだ。折りしも、資料館には小学生140人が見学に訪れていた。避難するよう電話する神代だが、見学の対応に追われる職員は電話に出ない。タイムリミット寸前、駆けつけた桜井の手で爆弾は処理される。そのとき、タイマーの秒針は、1時2秒前を指していた。

長坂秀佳の特捜復帰第2作。“爆弾の長坂”の集大成とも言える一本ですが、なんといっても主役は西田健演じる工員です。学歴コンプレックスに由来する自己憐憫と被害妄想、その裏返しとも言える肥大した自尊心が、工員の心の中にエリートの象徴である特命課への憎悪を募らせ、挑戦的な犯罪へと駆り立てます。取調室で神代に対して滔々と語りかける姿からは、何一つ誇りを持てなかった哀れな男の怨念が見て取れます。子供を死なせることに良心を苛まれながらも、エリートへの敗北を認めたくないがゆえに、破滅への道を選ぶ工員。死に瀕しながらも、不発弾の真のありかを語ることなくミスディレクションを誘う執念は、何に由来するのか。それは、最後の最後に呟いた「行きたかった。大学に・・・」という言葉からも明らかです。学歴が無いという、ただそれだけのことが、これほどまで心に闇をもたらすものなのか、正直言って私には分かりません。ただ、西田健という名優の存在が、そんなこともあるのだろうと、見る者を納得させるのです。恐るべし、西田健。

第317話 掌紋300202!

2007年06月05日 01時34分39秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 田中秀夫

疑獄事件の手掛かりとして、自殺した政府高官が残したノートを追う特命課。そのノートの所有者と目される大物政治家の身辺を捜索したところ、事務所内の隠し金庫が怪しい。捜査令状を用意して事務所に踏み込む特命課だが、政治家はノートの所有を否定し、金庫を開けることを拒否。金庫には6桁の暗証番号が必要な上に、午前と午後の8時にしか開かないようタイムロックが設定されており、本人が拒む限り開けることは不可能だった。
政治家から押収した文書から、政治家が人探しをしていたことが判明する。探す相手は昭和30年2月2日生まれで、手形に残された掌紋と一致する男。政治家の真意は不明だが、「この男が突破口になれば」と捜査を開始する特命課。
意外なことに、その掌紋の持ち主は叶だった。自らの出生の秘密を知り、衝撃を受ける叶。政治家が探していたのは、内縁の妻が産んだ息子だった。内縁の妻は資産家の一人娘だったが、家出してホステスに身を落としていたところを政治家に見初められた。政治家の子を身篭った彼女は、スキャンダルになることを恐れて姿を消し、生まれたばかりの子供を孤児院に預けた後で自殺した。政治家は妻が出産した病院を探し出し、そこに残されていた新生児の手形を手掛かりに、わが子を探していたのだ。
まだ見ぬ息子への愛情ゆえに自分を探していたと思い、政治家への追及をためらう叶。しかし、「息子探しの理由は、資産家の財産目当てではないか」と指摘され、政治家のパーティー会場に乗り込み、自分の手形を叩きつける。政治家は、叶を息子と認めらながらも、ノートの所有は否定し、「金のために息子を探したのか?」との質問にも答えようとしない。
その夜、叶は政治家の秘書に呼び出される。秘書は叶に「先生はノートを政界浄化のために使おうとしている」と告白。「あなたが先生の息子なら、腹を割って話し合って欲しい」と促され、政治家の事務所に向かう叶。そこでは、ノートの公表を恐れた何者かに雇われた殺し屋が潜入していた。叶に銃口を向ける殺し屋。不意に席を立った政治家を、反射的に射殺する殺し屋。飛び掛かった叶ともみ合った末に、殺し屋は窓から転落死を遂げる。
事務所の隠しカメラを調べた特命課は、そこに映っていたシーンに驚愕する。政治家が金庫を閉じようとしたとき、殺し屋は金庫内に時限爆弾を投げ込でいたのだ。爆弾は明朝8時2分にセットされている。8時ジャストに金庫を開けることができれば、爆弾はギリギリで解除できる。付近の住民を避難させた上で、神代は橘、桜井、叶とともに事務所に残り、6桁の暗証番号を推理する。
刻一刻と爆破時間が迫るなか、叶たちはそれぞれの推理を披露する。
 叶 「奴は自己中心的な男です。自分の生年月日ではないでしょうか?」
 桜井 「最後に信用するのは金だと思います。メインバンクの口座番号では?」
 橘 「奴が最も大事に思っていた日だと思います。叶、お前さんが生まれた日だよ」
 叶 「それは違う。根拠は何ですか!」
 橘 「人の親としての直感だ」
 叶 「奴は俺が撃たれようとしたスキに、自分だけ逃げようとした男だ!」
 橘 「まだ分からんのか!親父さんは、おまえを助けるために、わざと殺し屋の注意を引いたんだ!」
 桜井 「さっきの俺の意見は撤回する。橘さんの意見を支持する」
 神代 「私の考えを言っていなかったな。橘と同じ、300202だ」
神代に促され、暗証番号を入力する叶。「昭和30年、2月、2日」午前8時を迎えた瞬間、金庫は開き、爆弾は処理された。金庫の中にしまわれていた手形に、叶の涙がこぼれ落ちた。

諸事情で特捜を離れていた長坂秀佳が、約半年振りに復帰を果たした記念すべき一本。先の「面影列車」における紅林に続き、今回は叶の出生の秘密が明らかになるなど、特捜の歴史を語る上で欠かすことのできない傑作です。練りに練られた展開。ギミックを駆使したスリリングな舞台設定。つむぎ出される親子の情と、長坂脚本ならではの見所が満載ですが、なかでも白眉なのは、あらすじに記した濃密な台詞の応酬。捜査とは単なる推理ゲームでなく、深い人間洞察による真理の追求なのだと思い知らされました。
また、山内明=政治家、東啓子=秘書、天本英世=死神博士と、ゲスト俳優がわずか3名だけというのも異例で、それだけでもドラマの濃密さが分かるというものです。全エピソード中のベストに推す方も多い傑作ですが、唯一残念なのは、クライマックスの鍵となる6桁の暗証番号がサブタイトルでバラされていること。当然ながら傑作選DVDにも収録されておりますので、放送を見逃した方は是非そちらをご覧ください。

第316話 ベートーベンを聴く刑事!

2007年06月04日 03時27分54秒 | Weblog
脚本 永井龍一、監督 天野利彦

名曲喫茶に勤める女に熱を上げる吉野は、橘を伴って女を食事に誘い出す。迎えに来た吉野に背を向け、チンピラ風の男とともに去って行く女。「彼女は嫌がっているようにも見えたぞ」と慰める橘。そこに「交番勤務の巡査が殺害され、拳銃が奪われた」との連絡が入る。
同僚の若い巡査の証言によると、死んだ巡査は「違法駐車の車がある」との電話に呼び出されたという。巡査がメモしたナンバーを手掛かりに、逃走した車を探す特命課。死体の様子から「動機は怨恨ではないか」と主張する船村は、吉野とともに死んだ巡査の妻を訪ねる。「警察官とは人に恨まれる仕事。誰か心当たりはないか」を尋ねる船村に、巡査の妻は「あの人が逮捕したのはただ一人。私だけです」と告白。「出世を棒に振ってまで、前科者の私を妻にしたあの人が、誰かに恨まれるはずはない」と語る。
男との関係を確かめようと、改めて女を食事に誘う吉野。吉野が刑事だと知り、煙たそうな態度を見せる女。吉野は失恋を悟るしかなかった。
一方、桜井と叶は、逃走した車の運転手を逮捕。運転手は「刑務所で一緒だった男に頼まれただけ」だと告白する。その男の写真を見た吉野は顔色を変える。女を連れ去ったチンピラ風の男だったのだ。女の自宅を訪れた吉野は、男の消息を問い質す。「昔の男で、迷惑している。昨日も『もう絶対会わない』といっただけ」という言葉を信じて引き下がる吉野だが、橘は「あの女を調べるぞ」と宣言する。その後の調べで、女が売春や覚醒剤の常習犯だったという過去が明らかになる。「俺は彼女と一緒になります。捜査から外してください」と言う吉野に、神代は「安っぽい同情はやめろ」と一喝する。
「犯人が狙ったのは、死んだ巡査ではなく、若い巡査の方だったのでは?」と船村が推測したとおり、若い巡査が男に呼び出され、銃撃を受ける。通りがかった吉野と橘に救出された巡査は、女との関係を語る。「前科のある女とは知らずに付き合っていたが、出世の妨げになると思い別れた」という巡査の言葉を、吉野は苦々しい思いで聞くしかなかった。
男が立ち寄るのではないかと、名曲喫茶を見張る特命課。様子を見るべく店内に入った吉野が見たものは、拳銃を手にした女が、男の死体の前で立ち尽くす姿だった。男に打ち込まれた銃弾は2発で、1発目で即死していた。「女は1発目を撃った犯人をかばって、2発目の引き金を引いた」と推測する吉野。その犯人とは、若い巡査に他ならなかった。
ラストシーン。拘置所から移送される女を、花束を持って見送りに行く吉野。間一髪で渡せなかった花束を振る吉野を、護送車の中から振り返る女。その顔には哀しげな微笑みが浮かんでいた。

ベートーベンの交響曲を背景に、好漢・吉野の悲しい恋を描いた一本。あちこちにストーリー上の矛盾や破綻が見受けられますが、今回はあくまで吉野の恋物語なので、いちいち気にしないことにします。出生を棒に振ってでも自分を愛そうとする男と、出世のために自分を捨てる男。女が選んだのは後者でした。それでいいんだ吉野。そんな女は君に似合わない。もっと素敵な出会いが待っているはずと、半ば自分に言い聞かせるように呟く私でした。