特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第307話 証言を拒む女!

2007年04月24日 04時00分08秒 | Weblog
脚本 峯尾基三、監督 村山新治

通りすがりの男の顔を見て顔色を変える吉野。知人を装って声をかけると、男は「人違いです」と名刺を差し出した。男は8年前に宝石商夫婦を殺して自殺した犯人と瓜二つだった。当時、その事件を追っていた吉野は、潜伏中の犯人を発見したものの、鉄パイプで滅多打ちにされ、逃亡を許してしまった。逮捕に執念を燃やす吉野だったが、犯人は事件から半年後に焼身自殺を遂げていた。死体は焼け焦げていたため、身許の確認は不可能だったが、盗まれた宝石が現場に残されていたことや、犯人と同棲していた女に自殺をほのめかす電話があったことが決め手となり、捜査は終結していた。
男の戸籍を調べたところ問題はなく、他人の空似かと思われた。しかし、中学まで青森にいたにも関わらず、まったく訛りがないことがひっかかる吉野は、事件を調べ直すべく女の行方を捜す。ホステス時代の友人から居所を聞き、今は娘と二人暮しで、仕出弁当屋で働いていた女を発見する吉野だが、男のもとへ連れていったところ、女は「別人だ」と証言する。
一方、男の身辺を洗った特命課は、かつての勤務先から「左利きで、東北訛りがきつかった」との証言を得る。男は確かに左利きに見えたが、なおも男に接近して嫌がらせを続けたところ、咄嗟に右手で張り手を見舞う。左利きを装っているだけと確信した吉野は、再び女に接近、リハビリ中の少年のもとに連れて行く。少年は殺された宝石店夫婦の息子であり、事件の後遺症で歩行困難になっていた。「あの子にとって、まだ事件は終わっていない」と、証言を迫る吉野。
やがて、女は「すみません。証言できないんです」と悲痛な声で吉野に電話をかけると、睡眠薬を飲んで自殺を図った。意識の戻らない彼女をホステス時代の友人が見舞い、娘の父親が犯人だと明かし、「どうしてそっとしてあげられなかったの!」と吉野を非難する。一方、自殺の現場を調べた船村は、睡眠薬のビンに指紋が残されてないことから、自殺に見せかけた殺人ではないかと推測する。
男に女が生きていることを告げ、「明日、入院先で尋問する」と告げる吉野。さらに、入院中の女を装って男に電話をかける。「すみません。証言します」との言葉は、吉野にかかってきた電話の録音テープを編集したものだった。狙い通り、女の入院先に潜入した男を、待ち構えていた特命課が逮捕して事件は解決。女も意識を取り戻した。

Xライダーこと速水亮をゲストに迎えながら、桜井がお休みのため歴代ライダーの競演は実現せず。ストーリーに何のひねりもなく、嫌がらせにも程がある吉野の捜査ぶりや、録音テープを編集する小細工など、捜査のダーティーさばかりが際立ち、見るだけ時間のムダだった、というのが正直な感想。たまにはこんな話もあります。

第306話 絞殺魔の記念写真!

2007年04月22日 02時56分22秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 辻理

小学校の同窓会に出席した船村は、当時の記念写真を見ていて、ある同級生が来ていないことに気づく。「今頃どこでどうしているのか・・・」と、旧友たちと語り合う船村のもとに、特命課から緊急の電話が入る。「若い娘の絞殺死体が発見された」との報せに、船村は中座して現場に向かう。
被害者を絞殺した縛り方は、5年前に起こった未解決の連続絞殺事件と同一であり、軍隊独特の縛り方であることから、船村と同世代の犯行と思われた。所轄署で5年前の事件を調べた桜井は、一人だけ絞殺魔に襲われながら生き残った女がいたことを知る。女を訪ねた桜井は、その証言に違和感を覚える。
その後も絞殺魔は犯行を繰り返す。5年前と同じく、被害者は少女ばかりで、いずれも売春していたことが判明。絞殺魔は少女たちの客だった可能性が強まる。そんな中、若作りして夜の街を巡回していた高杉婦警は、被害者の一人に売春を斡旋していた大学生を発見。少女と売春した客の名前を聞き出そうと大学生を連行するが、記憶は曖昧で有効な証言は得られない。
一方、被害者の一人が売春した動機を調べていた橘は、「保険外交員をしている母親のためだったのでは?」との推測。橘にその推測を突き付けられた母親は愕然とする。被害者の手帳に残されていた客の名前は、すべて母親の保険の契約者と合致していたのだ。最も怪しい犯行直前の契約者は、50年配の初老の男だった。船村はその名が同窓会に出席しなかった同級生のものと一致したことに驚くが、同一人物かどうかは判然としない。
契約者名簿に勤務先として記された会社には、該当者はいなかった。念のため、50年配の社員のリストを確認したところ、その中には桜井がマークする女性と同姓の男がいた。「二人は元夫婦で、保険の契約時には本名を、会社では妻の姓を名乗っているのでは?」そう推測した船村と桜井は、偶然を装って二人を会わせることを画策。だが、出会った二人の表情を見る限り、かつて夫婦だったとは思えなかった。
それでも二人をマークし続ける特命課。女性は港町の古びた民家に入っていく。そこはかつて、離婚した夫や行方不明となった一人娘とともに暮らした家だった。家に入ったきり、日が落ちても灯りも点けないため、不審に思って踏み込んだところ、女性は自殺を図っていた。寸前で保護した女性から事情を聞く神代。男はやはり、女性のかつての夫だった。男は数年前、愛情ゆえに厳しく育てた一人娘が非行に走ったのを咎め、口論になった際に、はずみで娘を殺してしまった。男は娘の死体を埋め、女性とは離婚し、新しい生活を始めた。だが、それ以来、娘と同世代の少女が身を売ろうとしているのを見ると、殺意を抑えきれなくなった。それこそが連続絞殺の動機だったのだ。5年前、事情を知った女性が男と一緒に自殺を図ったことで、事件は一端ストップした。そして、今、何かのはずみで再び男の殺意に火が点いたのだ。
一方、男は尾行を振り切って行方をくらます。大学生をマークし続けていた高杉が男を発見。大学生に伝言を頼み、男に接近を図る。すぐに高杉婦警を追う特命課だが、大学生からの伝言が曖昧であり、まずは盛り場で大学生を探さねばならない。その間、男とラブホテルに入った高杉が危機に陥る。気絶した高杉の首を絞めようとした矢先、男は高杉のバッグから飛び出したハガキを目にする。それは故郷の父親の健康を気遣うものだった。絞殺を断念し、立ち去ろうとする男だが、そこに特命課が踏み込んでくる。飛び降り自殺を図る男に、船村が呼びかける。「俺を覚えているか?小学校で一緒だった船村だ!」一瞬、懐かしそうな笑顔を浮かべたように思えたが、次の瞬間、男は身を投げる。呆然と立ち尽くす船村。男は本当に同級生だったのか、もはやそれを確かめる術はない。

脚本が塙五郎、演出が辻理、主演がおやっさんで、ゲストが織本順吉。これだけ条件がそろえば傑作にならないはずがないと期待していたところ、期待に違わぬ、いや期待以上の救いの無さに、視聴後に思わず呆然としてしまいました。
ラストで見せた、織本順吉とおやっさんの表情。そこには、今回の脚本が提起する問題が凝縮されています。戦争を経験した世代と、戦後生まれの世代との間の、どうにも越えがたい道徳観や人生観の違い。一方の世代はその違いに苦悩し、もう一方の世代はその違いを笑い飛ばす。どうしてこんな世の中になったのか?アメリカのせいか?東京裁判のせいか?GHQのせいか?戦後のマスメディアのせいか?教育現場の歪みのせいか?食生活の違いのせいか?誰かに責任を帰することはできないが、だからといって誰もが無責任でいて本当に許されるのか?答えの無い問いかけを続けるしかない虚しさが、今回のドラマの奥底に流れているように思えます。
なかでもドラマの白眉、というか脚本のメッセージが端的に示されているのが、ドラマ中盤、被害者に売春を斡旋した大学生を尋問するシーンです。悪びれもせず捜査を茶化すような態度の大学生。「娘に死なれた親の気持ちを考えたことがあるのか?」とおやっさんに問われ、こう答えます。「そもそも親が悪いの。あんまり生活が苦しいから、あの娘が『生活保護を受けたら』って言ったのに、あそこの親父は『他人に迷惑をかけたくない』って格好つけちゃってさ」怒りをこらえて「それと、売春とどんな関係がある?」と問うおやっさんをバカにしたように「要するに、融通が利かないんだよね。うちの親父も同じ。自分がどれだけ苦労したかを自慢して、楽に生きることを不真面目みたいに言う。世の中が変わったのに、ついていけないんだよ」と毒づく。激昂したおやっさんは大学生を張り倒し「保護を受けないで頑張っている人間の気持ちが、貴様なんかに分かってたまるか!世の中、楽をしたい人間ばかりじゃないんだ!」もっと殴ってくれ、おやっさん。
「苦労は買ってでもしろ」というのは、もはや寝言に過ぎないのか?「いかに楽して生きるか」を教えるのが親の役目だとでも言うのか?もちろん、子供は親の所有物ではなく、自分で自分の生き方を選ぶ権利がある。しかし、そんなことは人の道を踏み外すことなく、自分自身の力で人生を歩いてから抜かせ!親の脛をかじって遊び暮らしていながら、ぬけぬけと言えるような台詞か!
・・・妙に感情的になるあまり、いつになく長くなってしまいましたが、傑作選DVDはおろか、ファンが選ぶベストエピソードベスト100からも漏れていようとも、私的には忘れられない一本です。

第305話 炎の女Ⅱ 哀切の雪まつり!

2007年04月16日 05時04分57秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 宮越澄

姿を消した吉野を案じる橘と叶は、タクシーで河口に向かう芸者を追った。芸者とともに吉野を探したところ、雪上に点々と残る血痕を発見。その先には、負傷しながらも自力で脱出した吉野の姿があった。芸者が橘らとともに自分を探してくれたことに、屈託なく礼を言う吉野に、芸者も少しずつ心を開く。「私たちは殺人犯を追っているだけじゃない。犯人の真実も追っている。それが娘を助けることにもなると信じている」橘の説得に応じて、娘の消息を語る芸者。娘は姉を騙した男を殺しただけでは飽きたりず、名前を取り替えたもう一人の男の命を狙って姿を消したというのだ。
その後、神代と高杉婦警も新潟に到着し、新潟県警に捜査本部を設置する。娘が狙う男の会社に確認したところ、男は周辺の都市に出張中だが、何者かが電話で男の出張先を尋ねてきたという。出張先で男を発見した桜井だが、男は東京に帰ることしか頭になく「名前を交換して女と遊ぶくらい、なんですか」と反省した様子もない。桜井らのマークを煙たがり、急遽行く先を変更して行方をくらます男。慌てて後を追ったところ、娘に襲われて重傷を負った男を発見する。
一方、船村と叶は、男の周辺を探っていた不審な人物を捕らえる。それは姉に片思いしていた若者で、復讐を誓う娘に協力していた。若者は「地方の女をだました男が天罰に当たったからって、何を必死に捜査するんです」と叶らを非難する。
姉は男にだまされるまで、デザイナーとして身を立てようと勉強していた。その努力がようやく実を結び、今年の雪まつりの「着物ショー」で、姉のデザインした着物が披露されるというのだ。娘が現れるとみて、雪まつりの会場に張り込む特命課のメンバーたち。しかし、一晩中張り込んでいたが、娘の姿は現れない。諦めきれず、翌朝、改めて雪まつりの会場を訪れる特命課。そこには、誰もいない雪上のステージで、姉のデザインした着物を身にまとう娘の姿があった。手錠をかけられた娘に、駆け寄る芸者。「何もしてあげられなかったね」と詫びる芸者に姉の墓を託す娘。そんな二人を見守る特命課の一人ひとりの表情にも、娘に何もしてやれなかった苦汁が浮かんでいた。

前編以上にグダグダな展開を見せる後編。地方ロケ編のクライマックスでは、現地のお祭りを延々と紹介するのが義務づけられているのでしょうか?仮にそうだとしても「彼女は必ず現れる」とか言っておきながら、雪まつりの様子を克明にレポートした挙句に、「しかし、彼女は現れなかった」では、誰も納得できません。現地エキストラの朴訥な演技を楽しむ以外には収穫なし、と言いたいところですが、よくよく考えてみれば、本放送時の視聴者のうち、私のような刑事ドラマ中毒者はむしろ例外であり、「地方ロケを通じて地方の風物詩を楽しみたい」というニーズもあったはず。これはこれで視聴者サービスだったのだと割り切って、名作・傑作が目白押しの月曜からの再放送を期待することとしましょう。

第304話 炎の女 瓢湖からのたずね人!

2007年04月16日 04時09分50秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 宮越澄

張り込み中、桜井と紅林は、行方不明の姉を探して新潟から上京してきた娘と出会う。「困ったことがあれば尋ねておいで」と名刺を渡した紅林を頼って、翌日、娘が訪れる。詳しい事情を聞くと、姉は「男に会いに行く」と言って上京したというが、その男については、苗字と新宿に勤めること以外に手がかりはない。桜井の勧めで身元不明の死体を確認したところ、そこには変わり果てた姉の姿があった。駅のホームから転落して電車に轢かれたもので、駅員に事情を聞いたところ、駅で姉と一緒だった男が逃げるように立ち去っていた。
数日後、ホテルで男の死体が発見された。連れの女による犯行と見られたが、被害者の妻に女性関係を確かめたところ、妻は「考えられない」と号泣。被害者は最近まで新潟に単身赴任していたが、月に一度は子供の顔を見に帰っており、その夜も息子と一緒に遊ぶ約束をしていたという。特命課では、何者かが被害者を待ち伏せた上で、ホテルに誘い込んだものと推測する。被害者の単身赴任時代を調査するため、新潟に向かった吉野と叶。被害者のかつての住まいや友人関係を調べたところ、恋人らしき女性の存在が浮かぶ。
一方、被害者の会社の受付から、事件当日、若い女が被害者を待ち伏せていたことが判明。似顔絵を作ったところ、チラシを配っていた娘に酷似しており、受付に娘の写真を見せたところ、間違いはなかった。しかし、娘の姉が上京する際に口にした苗字は被害者のものではなく、二つの事件のつながりを確かめるため、残るメンバーも新潟に向かい、手分けして捜査に当たる。桜井と橘が向かった被害者が行きつけのスナックでは、被害者が別の男と名前を交換し、姉をだまして交際していたことが判明。数日前には娘もスナックを訪れており、その事実を知ったという。
娘と親しい温泉芸者の存在を知った吉野は、娘と匿っているのではないかと問い詰める。芸者は娘姉妹の幼馴染であり、東京からきた人間を目の仇にしていた。「東京から来た男が、田舎で必死に生きている女を騙してもてあそんだあげく、虫けらのように殺したんだ!」と怒りをぶつける芸者。それでも食い下がる吉野に、芸者は「娘は河口の船小屋にいる」と明かす。半信半疑で河口に向かった吉野。だが、そこに娘の姿はなく、雪の重みで崩れた屋根が吉野の身体を埋め尽くす。果たして吉野の安否は・・・

新潟ロケの前後編。タイトルにある瓢ことは、白鳥で有名な新潟の観光地だそうです。先日の能登半島ロケと同様、地方ロケになると脚本のレベルがワンランク下がってしまうような気がしてなりません。特にラスト。悲鳴を上げる吉野のアップで「つづく」となったときは、思わず「『ファイヤーマン』かよ!」と突っ込みを入れてしまいました。また、単身赴任者が名前を入れかれて女をだますという展開は、以前にもあったと思うのですが、放送リストを見てもどの話だった思い出せませんでした。どなたかご存知の方はご一報ください。

ファミリー劇場での再放送スタートを祝して

2007年04月10日 00時35分41秒 | Weblog
ファミリー劇場で毎週2話ずつ絶賛放送中の特捜最前線が、このたび4月12日より、第209話から再放送されることとなりました。初回放送は毎週月曜から木曜までの深夜3時から(翌朝9時よりリピート放送)で、在日替わり放送ということで週に4話、土曜夜の本放送(翌金曜朝にリピート放送)と合わせれば週に計6話も特捜が見れるということで、嬉しいような大変なような、複雑な気持ちです。
このブログは、昨年10月に第256話から紹介してきましたが、いつかはそれ以前のエピソードも紹介したいと思っており、この機を逃さず、別のブログとして紹介していきたいと思います。209話から256話までの間には、傑作選DVDに収録されたのは第215話「シャムスンと呼ばれた女!」しかありませんが、第211話「自供・檻の中の野獣」や、続く212話「地図を描く女」、さらには第231話「十字路・ビラを配る女」、第248話「殺人クイズ招待状」など、個人的に印象深いエピソードが多く、半年ほど前に視聴したばかりととはいえ、今から楽しみです。このブログのブックマーク欄にリンクを貼っておきますので、よろしければそちらもご覧になってください。

第303話 20歳のイルミネーション!

2007年04月10日 00時35分11秒 | Weblog
脚本 阿井文瓶、監督 藤井邦夫

江東区の運河から、全身が刺し傷だらけの水死体が発見された。死体は前日に捜索願が出されていた宝石店の店主と判明する。被害者は普段から女性関係が派手で、数日家を空けることも少なくなかったらしく、「なぜ今回に限って捜索願を出したのか」と被害者の妻を問い質したところ「商店会の役員に強く勧められたから」だという。
早速、商店会の副会長である呉服屋を訪れたところ、「会長なのに役員会を欠席したので、おかしいと思った」と理由を説明する。呉服屋の店先に並んだ着物の値段に驚いた紅林は、若い女店員に「若い女性には目の毒ですね」と軽口をたたく。その言葉に不可解なほど怒り出した女店員は、その場を取りなそうとする店主に「着物を盗んだのは私じゃない。自殺しようとした娘の方よ」と言い捨て、店を出て行った。事情を聞いたところ、数日前に店頭の着物が紛失し、二人の女店員のどちらかが無断で持ち帰ったものと疑われた。その場に居合わせた被害者が着物の金を出し、「無かったことにしよう」と店長を説き伏せたため、犯人は曖昧なままに終わったという。
被害者について不審な言動が目立ったため、商店会の役員連中を問い詰める特命課。商店会では、大手スーパーの進出を食い止めるべく政治家に働きかけるため、一千万円の資金を集めており、被害者はその資金を持ったまま消息を絶っていた。それが捜索願を出した本当の理由だった。また、死体発見の数日前の夜、運河近くで男同士が言い争うのが目撃されており、被害者と犯人だと推測された。
一方、自殺を図った娘のアパートを訪れた紅林は、室内に盗まれた着物が飾られているのを発見。室内からは被害者の指紋が検出され、呉服屋で店長を説き伏せた直後に娘の部屋を訪れたものと推測された。「着物を盗んだことを咎められたために殺したのか?」と問い詰める紅林だが、娘は泣きじゃくるだけで要領を得ない
その後の調べで、被害者が商店街の若い女を次々と食い物にしている事実が判明。最近では呉服屋の女店員と付き合っていたらしい。「取調中の娘ことか」と色めき立つ特命課だが、紅林は反論する。「被害者は、着物を盗んだ容疑者二人のうち、娘の住所しか店主に尋ねなかった。それは、もう一人の女店員の住所はすでに知っていたからではないか」自らの主張を確かめるべく、女店員のアパートを訪ねた紅林は、管理人の証言から、彼女が被害者と愛人関係にあったことを確認する。しかし、女店員は被害者との関係を認めたものの、犯行は否定する。立ち去りかけた紅林だが、女店員の部屋の前に待ち伏せしている男を発見し、二人の会話を立ち聞きする。女に愛人をやめるよう説得し、拒絶された男は「結局は金か?だったら一千万円あればいいのか?」と口走る。「被害者を殺して金を奪ったのはこの男だ」と確信した紅林は、追跡の末に男を逮捕。男は被害者に女店員との付き合いをやめるよう頼んだが、金を見せびらかされながら「女なんて金で買えると分かるまで、恋愛なんてするな」と言われたため、我慢できずに殺したのだと自供する。
事件は解決したが、娘の行動には疑問が残った。紅林は、娘の前で着物を引き裂くと、「私の着物!」と泣き叫ぶ娘にむかって「これは君のものじゃない、君が盗んだ着物だ」と決め付ける。娘は泣きながら、その日の真実を語る。娘は一日だけ着物を借りて、部屋で成人式の記念写真を撮ったら返すつもりだった。しかし、部屋を訪れた被害者は「着物は私からのプレゼントだということにしよう、その代わり・・・」と娘の体を要求。「警察に行きたいのか」と脅して体を奪ったのだという。紅林に着物を見つけられたとき、娘は着物が奪われるのを恐れて、口をつぐんだのだという。「だって、それじゃあ私に残るのは、汚らしい思い出だけじゃないですか!」と叫ぶ娘に、紅林は「それでいいじゃないか。たとえ汚らしい思い出でも、それをしっかりと受け止めるんだ」と諭します。
ラストシーン。釈放された娘は、同じく取調べを受けていた女店員と連れ立って、憂さ晴らしにディスコへ出かけます。そんな娘に、娘の部屋で見つけた、弟からの手紙を差し出す紅林。そこには、仕送りへの感謝の想いと、そのために何も買えないでいる姉への申し訳なさが綴られていた。その手紙が物語る家族への想いから、紅林は娘がこれからも強く生きていくだろうと確信していた。

金がすべての世の中をしたたかに生きる若い女たちの姿を描いた一本です。欲望のままに奔放に生きる女店員の生き様を、ただ断罪するのではなく、そんな生き方にしか幸福を見出せない哀しさや、自分なりの確かな価値観をもって生きる強さとして描き出す脚本が秀逸です。今回の脚本は、長坂秀佳氏、塙五郎氏の両輪の影に隠れがちですが、味のある脚本に定評のある阿井文瓶氏。今回も印象深い台詞の連続なので、いくつか詳細に再現してみましょう。
まずはドラマ中盤、紅林が女店員のマンションを訪れるシーン。被害者と愛人関係にあることを悪びれもせず認める女店員に、憤りを感じる紅林。「誰もが金をすべてだと考えているわけじゃない。自分の心や体を金で売り渡すなんて・・・」と諭す紅林の言葉をさえぎって、女店員は「刑事さん、古いわ。彼は私を楽しませてくれたわ。お金のために泣く泣く自由にされたんゃないわ」と切り捨てます。
また、被害者との愛人関係をやめるよう、若い男が女店員を説得するシーン。「世の中には、金で買えない幸せだってある」と、かつて彼女に編んでもらったマフラーを見せる男に「清く貧しく美しく、あなたらしいわね。でも、私はいや」とあっさり拒絶する女店員。「金で買ったものなんて、いずれ古くなるし、壊れもする」と吐き捨てる男に「そうね。だけど、買わないと、いつまでも幻のままよ」と応える女学生。男は返す言葉もありません。
さらに、若者が被害者を視察するシーン。ナイフで脅しながら「これ以上、彼女をダメにしないでくれ」と頼む男に、札束を見せつけ「女なんて金で買えると分かるまで、恋愛なんてするな」と答える被害者。次々と若い女の弱みに付け込んでモノにする被害者は、決して許せません。しかし、この台詞は決して男を馬鹿にしたわけではなく、女に幻想を哀れな抱く若者に向けた、彼なりの忠告ではなかったのではないでしょうか。
女学生や被害者の放つ、ある意味で醜く、それでいて身にしみる台詞の数々には、奇麗事ではない真実が隠されています。金持ちの愛人になること=悪いこと、人として堕落すること、と決め付けるのは、女性に自分の勝手な理想を押し付ける男のエゴに過ぎません。「金で買えない愛がある」など空疎な理想を口にし続ける男は、「金」を得るための苦労から逃げる自分を正当化するだけの哀れな存在だということを、彼らは知っていたのでしょう。
自分の体を奪って立ち去る被害者を呼び止めた娘は「この安物の着物1枚が私の値段ですか?お金をください」と要求します。そんな娘に対して「それでいいんだよ」と微笑み、金を与える被害者。そこに単なる拝金主義ではなく、もっと奥深い人生の不条理さを感じ取れたような気がしたのは、深読みのしすぎでしょうか。

第302話 始発電車にあった死体!

2007年04月09日 09時36分14秒 | Weblog
脚本 竹山洋、監督 松尾昭典

山手線の車内で、眠るように座っていた老人が死んでいた。現場に駆けつけた特命課が調べたところ、死後数時間は経過しており、死体のまま車内に運び込まれ、座席に座らせられたらしい。名刺から身元を割り出したところ、大手建設会社の顧問を務め、若い愛人を囲うなど、羽振りがよかったらしい。
山手線内の各駅を聞き込んだ結果、二人の老人が被害者に肩を貸して電車に乗り込んだことが判明。叶が老人の一人を訪ねたところ、脳溢血で倒れ、ボランティアの女学生によって病院に運び込まれていた。老人は女学生に「大丈夫、うまくいった」と言い残して息を引き取る。女学生に被害者の写真を見せる叶だが、彼女に心当たりはなかった。
そんななか、もう一人の老人が自首して現れ、「人を馬鹿にしたからだ」と動機を打ち明ける。事件の朝、脳溢血で死んだ老人と喫茶店で競輪の予想をしていたところ、たまたま隣席に居合わせた被害者から「みみっちい買い方だ」とからかわれ、カッとなって殺したのだという。しかし、証言に不自然な証言が多く、老人を釈放して泳がせることにする。
叶が尾行するなか、老人はボランティアの女学生を探して大学を訪れる。女学生に会うこともできず、運動部の学生に突き飛ばされる老人を見かねて、思わず飛び出す叶。学生で賑わう喫茶店に叶を誘い、若者たちを眩しそうに見つめる老人。「僕も含めて、最近の若い奴はダメですよ」と苦笑する叶に、「若い人にも素晴らしい人がいます」と可愛い手袋を見せる老人。それは、寒さに震える老人を見かねた女学生が譲ってくれたのだという。しかし、老人と入れ替わりに喫茶店に入ってきた顔見知りらしき女学生たちは、「捨てようと思ってたのをもらって、あんなに喜ぶなんて、みじめね」と老人を嘲笑するのだった。
死んだ老人を看取った女学生の住むマンションを訪ねた叶は、事件の日の朝、被害者と老人が相次いでアパートを訪れていたとの証言を得る。殺害現場は女学生のマンションで、女学生が老人二人に頼んで死体を運び出させたのではないかと推測する特命課。さらに、被害者と女学生が愛人関係だと発覚し、女学生を参考人として取り調べる。最初はふて腐れていた女学生だが、被害者と写った写真を突きつけられると、叶に嘘をついていたことを詫びる。しかし、犯行は頑として否認。その日、たまたま老人と被害者とかち合い、二人が喧嘩しながら部屋を出て行ったと言い張る。
叶が老人に女学生の言い分を告げると、老人は「彼女の言うとおりです。私がやりました」と認める。叶は老人を伴って、かつて老人の工場で働いていた工員たちを訪ねて回る。中国から引き上げた後、裸一貫で興した工場の経営が悪化したとき、老人は家を売って工員たちの退職金を作った。その後、工員らの前から姿を消した老人を、工員らは今も慕い続けていた。「あなたは、自分の人生が終わったと思って、彼女をかばっているのもしれない。しかし、あなたのことを思っている人がいる」と説得する叶に、老人は真実を語る。事件の朝、女学生に呼び出されてマンションを訪れたところ、被害者が死んでおり、女学生は「被害者に乱暴されそうになって、夢中で抵抗していたら・・・」と打ち明けたのだという。「貧乏で何もしてやれない私は、かばってあげられるのが嬉しかった」と、老人は声を震わせる。しかし、事実は違った。女学生はディスコで知り合った若い男を部屋へ連れ込み、そこに訪れた被害者と争にになって殺したのだった。「なぜ、死体を電車に?」と問う叶に、老人は「金がなかったから」と答える。「本当のことを知りたくなかった」と呟き、叶に連行される老人。後には女学生から譲られた手袋だけが残されていた。

孤独な老人と女学生の、一見して心暖まる交流の裏に隠された、薄汚い欲望を描いた一本です。金にモノを言わせて若い女を囲う被害者もアレですが、さんざん金をもらっておきながら、浮気がばれて都合が悪くなると殺してしまい、あまつさえ自分に好意をもつ老人に罪をなすりつける女は、ほとほと性根が腐っている。いくつになっても、女性に対して淡く切ない夢と理想を抱いてしまう男は、愚かではあるけれど哀しいものです。
叶が言うように「他人の罪をかぶるというのは、美しいように見えて、これほど周りの人を悲しませることはない」。もし、あなたの大切な女性が罪を犯したら、その罪をかばうのでなく、真摯に罪を償うよう諭すことが、本当の男の優しさではないでしょうか。けど、きっとそんな男は女性に嫌われることでしょう。あくまで私見ですが。

第301話 万引き少女の日記!

2007年04月02日 16時52分36秒 | Weblog
脚本 宮下潤一、監督 野田幸男

ある日、非番の高杉婦警は、少女がネックレスを万引きするのを目撃。涙ながらに詫びる少女の姿から、再犯の心配はないとみた高杉は、婦警という身分を明かすことなく、盗品を店に返して少女を解放した。
それから一年後、ヤクザが自宅で殺害され、情婦らしき若い女が容疑者に浮かぶ。事件当夜、その女は付近のスナックでヤクザに殴られていた。スナックに落とした定期券から女の勤務先を突き止め、重要参考人として取り調べる特命課。連行された女があの日の少女だったことに、高杉は衝撃を受ける。
少女はヤクザとともに美人局を繰り返していた。犯行を認める少女に「奴を恨んでいたからか?」と動機を尋ねる桜井。少女は「お金の取り分で揉めたからです」と応じた。納得いかない高杉は、少女の過去を調べる。半年前、少女は母親をガンで亡くし、高校を退学していた。担当教師の証言では、アルバイトで学費と母親の治療費を稼ぐ、まじめな娘だったという。高杉と同様、少女の態度に疑問を抱いた桜井は、その証言の矛盾をつく。誰かをかばっていることは明らかだが、少女は「私は人殺しです」と頑なに言い張る。
「彼女を釈放して、私にマークさせて欲しい」という高杉の申し出を許可する神代。数日後、勤務先を抜け出す少女を追ったところ、大物議員の屋敷で門前払いをくらった。議員とその家族を調べたところ、一人娘が誘拐されたことが判明。誘拐事件との関係を問い詰める高杉に、少女は「私は以前にも人を殺している」と語る。翌朝、少女が向かったのは、水子を弔う墓地だった。「半年前に殺した、私の子供です」と打ち明ける少女。それこそが、「私には生きる資格がない」という理由だった。
その後、議員の娘は札付きの不良で、死んだヤクザの弟分にあたるチンピラと付き合っていたことが判明。特命課は、誘拐が二人の共謀による狂言ではないかと睨む。そうと知った議員は、誘拐犯との交渉を拒絶した。その夜、少女は帰宅中、車にひき殺されそうになる。車の窓から狂ったような笑顔を見せたのは、代議士の娘だった。愕然とする少女。少女がかばおうとしたのは、今、まさに少女を殺そうとした娘だったのだ。
絶望した少女は、高杉に全てを語る。少女は数ヶ月前、代議士の娘が万引きする現場を見たという。かつて自分が高杉に救われたように、娘を救った少女だが、数日後、娘がチンピラとともに美人局をしている現場を目撃。娘を救おうと、ヤクザにチンピラを説得するよう頼んだ少女だが、その度に殴られたという。事件当夜、チンピラと娘はヤクザ宅を訪れ、狂言誘拐を持ちかけた。ヤクザとチンピラが金の取り分で揉めて喧嘩になったとき、チンピラを救おうとした娘がヤクザを刺殺。娘のお腹にチンピラの子供がいることを知った少女は、娘に自分と同じ道をたどらせまいと罪をかぶったのだ。
その後、チンピラを逮捕した桜井たちは、ヤクザの貸金庫の存在を知る。そこには美人局の証拠写真とともに、少女が万引きを働く現場写真があった。少女はそれをネタに美人局を強要されていたのだ。責任を感じる高杉に、少女は語る。万引きしようとしてネックレスは、母の日のプレゼントだったのだ。母親を悲しませないため、そして母親に手術を受けさせるために身を売った少女。母の死後、一人で子供を産もうとした少女だが、ヤクザの暴力によって流産したという。
そんな少女にとって唯一の救いだったのが、同じ境遇にある娘を助けることだった。しかし、少女の想いは娘には届かない。「彼女、おせっかいなのよね」とうそぶく娘に、子供はどうしたと尋ねる高杉。「とっくに堕したわよ。めんどくさいもん」と答える娘を、思わず張り飛ばす高杉。無力感に苛まれる高杉に、少女は「警察の仕事、やめないでください」と語りかける。あの日の高杉の優しさが、少女と娘の出会いを呼び、それがさらなる悲劇を生んだ。皮肉な巡り合わせではあるけれど、その優しさが尊いことに変わりはない。数日後、またも少女らの万引き現場を目撃した高杉は、一瞬の躊躇を振り切るように、少女らの前に立ちはだかるのだった。

心優しき少女が、たった一度の過ちから悲劇の人生へと転落していく。その現場に居合わせながらも少女を救うことのできなかった高杉の無力感と、同じ境遇の娘を救おうとする好意が一人よがりにすぎなかったと知る少女の無力感とが、哀しいハーモニーを奏でる一本です。未成年の少女の体を食い物にするような外道は死んで当然ですが、それで少女の心と身体の傷が癒されるはずもなく、やり切れない怒りと悲しみが募るだけです。哀しい話の多い特捜ですが、今回のような、ただ不幸になるだけの話は、見ていて救いがなく、本当に辛い。ちなみに少女を演じるのは、若き日の熊谷真美。悲劇の運命に翻弄される姿が痛々しく、嫌な意味で心に残ってしまいます。

第300話 鏡の中の女!

2007年04月02日 16時47分53秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 天野利彦

ある事件を解決して東京に戻る途中、富士川の河口で溺死体に遭遇した特命課。死体の身元を調べようとした矢先、東京地検特捜部が割って入り、捜査を遮った。神代が東京地検に出向いて問い質したところ、被害者は地検が大物実業家宅に潜入させた検事だった。その実業家は、特命課が数年前から脱税や不正経理などの疑いで捜査を続けていた。数ヶ月前には、実業家の会社の経理部長と運転手が相次いで不審な死を遂げており、実業家が証拠隠滅を図ったものと推測された。検事の溺死事件を捜査の突破口にしたいと考える神代だが、特命課の介入を嫌う地検は捜査資料を引き渡そうとしない。
実業家宅を訪れた神代だが、応対に出た実業家の娘は、使用人の死など気にも留めていない素振りを見せる。なおも問い詰めたところ、娘は事件当夜、パーティーに出席していたと主張。出席者の証言から、娘のアリバイは証明される。
ようやく検事の解剖所見を入手した特命課は、胃の内容物から死の直前の足取りをつかむ。検事はおでん屋で女と落ち合い、電話を掛けた後、女に資料を渡して慌てて出て行ったという。おでん屋の主人の証言によると、女は実業家の娘だった。その時刻にはパーティー会場にいたはずであり、神代は再び娘を訪ねて真偽を確かめる。質問に答えず、父親の権力を振りかざす娘に、「世間ではあなたの父親を犯罪者と見ている」と挑発する神代。
おでん屋に残されたメモから、検事が電話した先を突き止めた特命課。そこでは実業家の娘と瓜二つの女が、小さな食堂を切り盛りしていた。驚きを隠して接触した神代に、女は夫が事故で入院中だと語る。やがて、夫は手当てのかいなく死亡。所轄署の調査では、事故ではなく殺人の疑いが濃いという。夫が検事の協力者だったと知った神代は、おでん屋で検事と会っていたのは、実業家の娘ではなく、食堂の女だったのではないかと推測する。戸籍を調べた結果、二人は双子の娘だと判明。一度は実業家との関わりを否定した女だが、夫の葬儀を終えると、ひそかに姉である実業家の娘と接触。一緒に父親を説得しようとするが、娘は取り合おうとしなかった。
一方、検事の解剖所見を洗い直したところ、胃に残された水の成分から、別の場所で殺害された可能性が浮上。それが実業家宅ではないかと睨んだ神代は、実業家宅に乗り込み、「検事の死体に残っていなかったコンタクトレンズが、応接の水槽内にあるはず」と迫る。去勢を張る娘に、神代は室内に仕掛けられた盗聴器を見せつける。「お父さんにとって、あなたは道具に過ぎない」と指摘し、執事が運んできた飲み物を差し出す神代。不安にかられる娘に、「あなた方親子の信頼関係とは、その程度のものか」と揺さぶりをかける。娘が意を決して口を付けようとしたとき、神代はコップを張り飛ばす。
やがて水槽からコンタクトレンズが発見され、娘はついに観念する。そこに駆けつけた食堂の女は、娘と衣装を取り替え、身代わりになろうとする。手の荒れ具合から入れ替わりに気づく神代だが、時すでに遅く、娘は青酸をあおって屋敷に火を放っていた。その後、食堂の女は、検事から預かった資料を公表し、実父である実業家の罪を証言。世間から身を隠すように去っていく彼女を、神代はひとり見送るのだった。

久々に主役を務めた神代課長が、大物実業家の不正を暴くべく執念を燃やす姿を描いた一本です。自分の地位を守るためには娘すら切り捨てようとする父親と、その父親を盲目的に尊敬する娘。そんな父と娘の偽りの信頼関係に静かな怒りを燃やす神代。深い信頼関係で結ばれた娘を目の前で失った神代の過去(詳細はDVD傑作選Vol2収録の第50~51話を参照)を知る者には、沈着冷静な表情の裏に隠された深い哀しみに思いを馳せずにはいられません。毒をあおって死を選んだ娘を抱きかかえ、「死ななくてもよかったんだ」と愕然とする神代。ごく短い台詞と表情だけで、溢れんばかりの情感を表現する二谷英明の熱演に圧倒されます。