特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

叶刑事主演作リスト(その2)

2010年06月24日 00時33分21秒 | Weblog
前記事で「余り間をあけず」などとほざいておきながら、この体たらくで、何ともバツの悪い思いをしていますが、長々と懺悔の言葉を並べても誰も喜びませんので、早速叶刑事主演リストの第2弾を掲載します。
今後もこれくらいのペースでの更新になるかと思いますが、よろしくお付き合いください。


2年目:1981年(昭和56年)
年度概況:登場2年目にしてローテーションの柱となり、年間48話のうち、最多となる10本で主役を務め、うち6本がDVDに収録済み。ちなみに2位は紅林の9本。脚本家別に見れば、長坂氏と横山氏が4本ずつで、良くも悪くも、この両者が叶のキャラクターを決定付けたと言えるでしょう。

(8)第195話「殺人メロディーを聴く犬!」
1月28日放送、脚本:長坂秀佳、監督:野田幸男、BOX7収録(94位)
瀕死の犬を拾った叶。看病の甲斐あって回復した犬を知人宅に預けるが、周囲に怪しい影が出没し、ついには知人が殺害される。犬の過去を追う叶は、元の飼い主が殺されていたことを知る・・・夏氏が大の犬好きだったことから発想されたという「叶と犬」シリーズの第1作(勝手にシリーズ化しました)。犬への愛情が伝わってくる叶の表情はもちろん、「テツタロウ」と名付けられた犬の健気さが、見る者の胸を打ちます。犬好き、それも飼い犬に死なれた経験のある者にとっては、涙無しには見られない一本と言えるでしょう。個人的に印象深いのが、「雑種は雑種」と言う吉野に対し、叶が「俺も雑種です・・・」と搾り出すような声で反論するシーン。それにしても吉野は損な役回りだ・・・

(9)第198話「レイプ・似顔絵を書く女!」
2月18日放送、脚本:横山保朗、監督:松尾昭典
指名手配の男を発見した叶は、まさに結婚式を挙げようとする男を逮捕。男は犯行を否定し、新婦と姉は警察からの帰路にレイプ犯に襲われ、新婦が殺される。やがて誤認逮捕とわかった男とともに、叶はレイプ犯を追う・・・簡単な粗筋だけで何とも嫌な気分にさせられる、ある意味で特捜テイスト満載な一本。特筆すべき話ではなくとも、こういう話もDVD化すべきと思うのは私だけでしょうか?そう言えば、叶の誤認逮捕が原因で悲劇が起こるという展開は「ビーフシチューを売る刑事」と類似していますが、それだけ刑事というのは重い仕事だ、ということにしておきましょう。

(10)第205話「雪国から来た逃亡者!」
4月8日放送、脚本:長坂秀佳、監督:宮越澄、BOX8収録(98位)
暴走バイクから子供を守って死んだ男。顔見知りだった男を弔おうとする叶だが、男の身許はデタラメだった。本当の身許を突き止め、郷里・福島を訪ねたところ、男は10年前に起こった未解決の殺人事件の容疑者だったことが分かる・・・未解決事件の真相究明もさることながら、叶の捜査にどんな意義があるのか、が真のテーマとなる重厚な一本。過去を消そうとした男の真意と、事件の背景を知るらしき女の隠したい過去。さらに、事件を追い続ける元刑事の執念と、男の老母の秘めた哀しみ。さまざまな人物の想いを背負いながら、それでも真相を追及する叶の姿が胸を打ちます。

(11)第209話「三千万を拾った刑事!」
5月6日放送。脚本 横山保朗、監督 天野利彦、BOX7収録(94位)
叶が三千万円を拾ったことから、ある誘拐事件が発覚する。捜査に乗り出す特命課だが、叶が誘拐犯に拉致されてしまう。誘拐犯の巧妙な手口に翻弄されながらも、叶の機転と特命課のチームワークが、次第に犯人を追い詰めていく・・・「叶拉致監禁シリーズ」の記念すべき第1弾。スリリングな展開といい、知恵比べの周到さといい、長坂脚本(それも絶好調時の)と間違えかねない秀逸な脚本で、特捜の魅力である「苦味」には欠けるものの、エンターテインメントとしては一級品と言えるでしょう。
ちなみに、このエピソード以降は姉妹編ブログで詳述していますので、興味のある方は2007年4月の記事をご覧ください。

(12)第213話「密室殺人・小さな瞳の謎!」
6月3日放送、脚本:横山保朗、監督:天野利彦
祖母の絞殺死体とともに、5日間も部屋に閉じ込められていた子供が発見される。父親はすでに亡く、母親は男を作って別居中という境遇に、叶は子供への同情と母親への怒りを募らせる・・・近年、社会問題となっている育児放棄(ネグレクト)をテーマとした一本であり、事件の真相以上に、この親子に対する叶の想いがドラマの骨格となっています。終盤で母親への怒りを爆発させ、罵倒し、殴り倒して子供を連れ去る叶。「あんなお母ちゃん、いらないよな」という叶の台詞は、孤児である叶の口から出るがゆえに、いっそう切なく、重く、寂しいものがあります。横山氏は、他の脚本陣に比べると、あまり評価も高くなく、語られることも少ないようですが(その理由は3本ほど後で明らかになりますが・・・)、本編と前述の「三千万」を残しただけでも評価に値すると、個人的には思っています。
なお、この時期は名作揃いで、208話から216話まで、本編を抜かして8話連続でDVDに収録されています。本編も負けず劣らずの名編ですので、早期の収録を切に願います。

(13)第217話「深夜の密告ファクシミリ!」
7月1日放送、脚本:長坂秀佳、監督:野田幸男
深夜、特命課に送られてきた1枚のFAXが、叶を未解決の殺人事件の捜査へと駆り立てる。やがて、FAXが送られてくるたびに、被害者の秘められた過去が少しずつ明らかになっていく・・・当時、いまだ普及の途上にあったFAXを小道具に取り入れるとともに、親子の情愛も巧みに盛り込んだ一本。あまり語りどころはないのですが、それでも十分に楽しめるレベルに達しているのが、この時期の特捜の充実ぶりを物語っています。

(14)第219話「鉢植えを抱えた17才!」
7月15日放送、脚本:藤井邦夫、監督:田中秀夫
「失踪した父親を探して」――少女の懇願を受けて捜査に乗り出す特命課。父親は暴力団員殺しの容疑者で、被害者の銃で負傷しているらしい。闘病中の母親のために犯罪者となった父親を想う少女。その少女の気持ちを知りつつも、父親を追う叶。果たして父親の行方は・・・「いっそ一人ぼっちのほうがいい」と呟く少女に、「どんな親でもいるだけ幸せだ」と説く叶の心情が胸に迫る一本。少女の悲痛な思いは、ラストで明かされる真相によって、よりいっそう胸に迫ります。当たり外れの激しい(失礼!)藤井脚本のなかでは、かなりの高水準と言えるでしょう。

(15)第223話「ピラニアを飼う女たち!」
8月26日放送、脚本:横山保朗、監督:村山新治、BOX7収録(87位)
ノーコメント。と言いたいところですが、そうもいかないので簡単に紹介すると、魚に食い荒らされて人相や指紋も確認できない溺死体が発見され、ピラニアを飼っていた女たちが捜査線上に浮かぶ。いずれも怪しげな女たちを調べる叶だが、犯人の逆襲にあい、パンツ一丁で溺死させられそうになる・・・「叶拉致監禁シリーズ」の第2弾ですが、本ブログで何度も酷評したことで物議をかもした(笑)一本。この一本だけで、個人的には横山脚本の評価がガタ落ちしました。

(16)第228話「通り魔・あの日に帰りたい!」
9月30日放送、脚本:宮下潤一、監督:天野利彦、BOX9収録(26位②)
通り魔として逮捕された青年の嬉しげな笑顔に不審を抱く叶。青年の真意を知るべく、その孤独な日常をなぞる叶の精神も、いつしか孤独に押しつぶされていく・・・人によっては特捜史上の最高傑作に挙げる人もいるのではないか、とすら思えるほどの強烈な印象を残す一本。単調極まりない日常のなかで、次第に独り言が増え、一人芝居に走り、労いにきた橘に異常なまでの饒舌さを見せる叶。夏さんの一見コミカルで、鬼気迫る演技を堪能する上でも必見の傑作と言えるでしょう。

(17)第232話「脱走!水を飲む野獣!」
10月28日放送、脚本:横山保朗、監督:天野利彦、BOX10収録(44位②)
殺人事件の容疑者として逮捕された男が、特命課の厳しい追及に否認を続けながらも、かつて自分を逮捕した叶にだけは心を許す。しかし、男は叶の油断をついて脱走する・・・「ピラニア」と並んで横山脚本の評価を地に落とした一本。にもかかわらず2度目の投票でランクインし、あまつされDVDに収録されるとは、個人的には忌々しいことこの上ありません。冒頭のシーンで、先輩方に対して高慢にふるまう叶の自信過剰ぶりも、いかがなものかと思われます。

叶刑事主演作リスト(その3)につづく

叶刑事主演作リスト(その1)

2010年06月04日 23時15分56秒 | Weblog
ずいぶん長く放置してしまって誠に申し訳ありません。
連休明けから続いてきた忙しさがようやく一息つきましたので、今さらながらではありますが、予告していました叶刑事主演作リストを掲載していきたいと思います。
実際にまとめてみると、特に本ブログ開始以前の初期編については、予想外に時間がかかってしまい、今回は初年度となる1980年のみとさせていただきます。
余り間をあけず、順次、年度ごとに更新し、最終的には私的セレクトによる叶刑事BOXの収録リストについての妄想を語りたいと思いますので、よろしくお付き合いください。

余談ですが、最近ファミ劇で再放送中のエピソード(第460話あたり)については、2009年2月ごろに記事がありますので、興味のある方は是非ご一読ください。

以降は叶刑事主演リスト第1弾です。作品データの末尾、DVD-BOX収録情報のあとの数字は「ファンが選んだエピソード」の順位(②とあるのは第2回アンケート)です。万一、データに不備があった場合は、コメント欄でご指摘くだされば幸いです。


1年目:1980年(昭和55年)
年度概況:放送開始から4年目、殉職した津上の後を受けて、叶が特命課に加入する。加入当初は神代、橘、桜井、紅林、吉野、滝と叶の7名体制で、同年の夏に滝が退職して船村が復帰。年間48話のうち叶主演作は以下7本で、うち5本がDVDに収録済み。ちなみに最多は紅林の11本で、次が吉野の8本。

(1)第148話「警視庁番外刑事!」
2月6日放送、脚本:長坂秀佳、監督:青木弘司、BOX4収録(53位)
連続狙撃事件の現場に常に居合わせる謎の男。その正体は新宿中央署の叶旬一刑事だった。事件の裏を知りつつ単独捜査を続ける叶に、神代は特命課入りを命じる・・・。孤児院育ちというプロフィールとともに、弱者へのいたわりとエリートへの憎しみという叶のキャラクター性が印象的に示され、しかもそれらが事件と密接に関わり合うという、登場編に相応しい力作。当初は敵対心むき出しの叶が、橘をはじめとする特命課刑事の姿勢に何かを感じ始める姿に、今後の成長が予感されます。

※次の叶主演回まで8話と、ちょっと長めのインターバルがありますが、その間に第152話「手配107・凧をあげる女!」で叶と桜井の激しい対立が描かれているのが個人的にはポイント。最終回で特命課が二課に別れた際、叶は橘班(特命第一課)ではなく桜井班(特命第二課)に配属されるのですが、その背景には、この話や第323話「二人の夫を持つ女!」などを通して描かれる、二人の反発と信頼の歴史があるのではないか、などと勝手に想像しています。

(2)第157話「ドレスメーカー女学院強盗殺人!」
4月9日放送、脚本:横山保朗、監督:宮越澄
叶と強盗犯の銃撃戦。警備員を死に至らしめたのは、どちらの放った銃弾なのか?人を殺したかもしれないという不安にかられる叶を救ったのは特命課の仲間たちだった。「拳銃は凶器」という神代の台詞に象徴されるように、刑事という仕事の重みを描くと同時に、特命課刑事たちとの信頼関係を描く上でも重要な一本。

(3)第167話「マニキュアをした銀行ギャング!」
6月18日放送、脚本:長坂秀佳、監督:田中秀夫、BOX8収録(98位)
何の接点もない凶悪犯3人が協力して銀行を襲った。その背後には、革命グループ「黒の十字軍」の存在があった。十字軍の女闘士の魔手に落ち、銀行の支店長とともに人質となった叶。その機転によって事態を察知した特命課と女闘士との激しい知恵比べの行方は・・・。長坂脚本ならではのサスペンスと細かなトリックの連続による見応え十分の一本。

※第169話「地下鉄・連続殺人事件!」を最後に滝が退職。共演期間が短かったせいか、叶と滝のからみはあまり印象が残っていません。それはともかく、次回から船村刑事を加えて、以降5年以上にわたる不動の陣容が確立します。

(4)第170話「ビーフシチューを売る刑事!」
7月9日放送、脚本:塙五郎、監督:天野利彦、BOX2収録(28位)
連続暴行事件を追う叶だが、逮捕した男は無実と判明。男の母親は自殺してしまう。やがて真犯人を突き止める特命課。真犯人の元彼女は、退職した船村が営むビーフシチュー屋で働いていた。誤認逮捕と母親の自殺にショックを受ける叶を叱咤する船村だが、捜査への協力はかたくなに拒む。人を逮捕するという「怖さ」に直面して苦しむ叶と、その「怖さ」を知り尽くしているがゆえに、再び直面することを拒む船村。この後長きにわたって描かれる両者の師弟関係の端緒となる一本。

(5)第175話「ナイター殺人事件!」
8月27日放送、脚本:池田雄一、監督:田中秀夫、BOX10収録(23位②)
叶の引っ越した団地で起こった銃殺事件。当初は子供の悪戯によるライフルの暴発と見られていたが、叶は子供の母親の態度に疑問を抱く・・・。団地内という独特の社会に構築される人間関係のえげつなさと、叶の子供に対する視線が見所。

(6)第186話「東京、殺人ゲーム地図!」
11月19日放送、脚本:長坂秀佳、監督:田中秀夫、BOX6収録(52位)
男女を交互に狙い、被害者の服のボタンを奪うという異常な手口の連続通り魔事件が発生。さらなる事件の発生と、捜査の難航を予告する評論家は、叶の元上司だった。マスコミを通じて警察の無能を糾弾する元上司の言葉に反発し、必死の捜査を続ける叶。ようやく突き止めた犯行動機は、想像を絶するものだった・・・。長坂秀佳の特異な発想と巧妙なストーリーテリング、そして叶の悲壮感あふれる捜査が光る傑作。

(7)第190話「償い」
12月17日放送、脚本:石松愛弘、監督:佐藤肇
第179話「面影」、第184話「慕情」に続く小泉純子3部作の完結編。「面影」でも重要な役割を占めた叶ですが、今回はより深く事件に関わります。
サラ金の強引な取り立てによる犠牲者が続出するなか、背後に暴力団の存在を察知して捜査に乗り出す特命課。足を洗おうとしている取立人に接触し、捜査への協力を依頼する神代。偶然、事件と関わった純子は、かつて同様の捜査方法の犠牲になった父親の姿を重ね合わせ、取立人を救おうとするが・・・。
純子役の女優の演技に生理的嫌悪を覚える人は少なくないと思いますが、このエピソードを抜きに三部作の評価は語れません。先の2作がDVD収録済みなだけに、早期の収録が待たれるところです。

叶刑事主演作リスト(その2)につづく