特捜最前線について語ります
特捜最前線日記(第209話より)
ご挨拶
ファミリー劇場での再放送(毎週月〜木深夜3時からのベルト放送)が昨日の放送で第255話に達しました。第256話「虫になった刑事!」以降のエピソードは、昨年10月よりスタートした元祖「特捜最前線日記」で紹介しておりますので、今回をもってこちらのブログは終了とさせていただきます。第209話「三千万を拾った刑事!」から48話にわたって紹介してきましたが、お付き合い下さった皆様には、厚く御礼を申し上げます。
もちろん、毎週土曜日の放送分については、引き続き元祖「特捜最前線日記」で紹介していきますので、今後もお付き合いいただければ幸いです。
ベルト放送自体も今週で終了という絶妙のタイミングとなりましたが、DVDも第4弾まで発売されるなど、それなりに好評みたいですので、いずれ放送の再開や、待望久しい第1話からの再放送もあり得るのではないかと思います。まだ紹介できてないエピソードが放映される際は、また別の形で紹介していきたいと思いますので、その際はまたよろしくお願いします。
もちろん、毎週土曜日の放送分については、引き続き元祖「特捜最前線日記」で紹介していきますので、今後もお付き合いいただければ幸いです。
ベルト放送自体も今週で終了という絶妙のタイミングとなりましたが、DVDも第4弾まで発売されるなど、それなりに好評みたいですので、いずれ放送の再開や、待望久しい第1話からの再放送もあり得るのではないかと思います。まだ紹介できてないエピソードが放映される際は、また別の形で紹介していきたいと思いますので、その際はまたよろしくお願いします。
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第255話 張り込み・顔を消した女!
脚本 藤井邦夫、監督 天野利彦
元大臣の収賄事件を追う検察庁の依頼を受けて、桜井は大臣秘書の運転手の妻を張り込む。運転手は3年前、検察庁の追及に疲れ果て投身自殺を遂げていた。死体は腐乱した状態で発見されたが、妻が着衣や体格から本人だと確認していた。しかし数日前、妻のアパート付近で起こった殺人事件の捜査中、偶然にも運転手の指紋が発見された。運転手は何者かを替え玉に偽装自殺したものと見られ、その妻も関係している可能性があった。
夜の街でホステスとして働く妻を見張るのは、桜井だけではなかった。ヤクザ風の男たち、そして数年前から執拗に運転手の生存を信じる刑事が、妻の働くスナックに日参していた。刑事の身を隠して妻に接触した桜井は、しだいに妻と心を通わせるようになる。ある夜、桜井はヤクザ風の男に「亭主はどこにいる!」と脅される妻を助ける。ヤクザの反撃にあって負傷した桜井を救ったのは、妻を張り込んでいた刑事だった。
その夜、妻は桜井を部屋に招き、酒を煽りながら警察への恨みを語った。何の関わりも無いはずの収賄事件の捜査のために、運転手は姿を消し、妻は酒に溺れ、一人息子を祖母に預けて寂しく暮らすことを余儀なくされていた。酔いつぶれた妻の部屋で、雨中に干し続けていたハンカチに気づく。それは運転手に対する妻からのサインだった。桜井がそうとは知らずにハンカチを取り込んだことで、運転手は妻が呼んでいると勘違いして部屋に接近。運転手に気づいて追跡する桜井だが、夜の闇に見失ってしまう。桜井の正体に気づいた妻は「汚いよ!」と桜井を責めた。
一方、特命課では、運転手が自殺したのと同時期に、ドヤ街に住む運転手と体格の似た男が失踪していたことをつかむ。その男は失踪寸前に運転手の妻らしき女と一緒に歩いているのを目撃されていた。また、妻を襲ったヤクザが元大臣の息の掛かった喪暴力団だと判明する。そんななか、妻を張り込んでいた刑事が不審な死を遂げた。妻を襲ったヤクザと同様、元大臣の息の掛かった暴力団の仕業であり、このままでは運転手と妻の生命も危うい。二人を追い詰めることに迷いを抱く桜井に、神代が言う。「運転手と妻を助ける唯一の方法、それは運転手を逮捕し、真相を明らかにすることだ」
意を決した桜井は、妻が毎日見つめ続けていた波止場で運転手を発見。妻の制止を振り切って追跡する。そこにヤクザが現れ、運転手を襲ったとき、桜井は咄嗟に二人を逃がそうと身体を張っていた。「二人で逃げろ!」ヤクザに刺され、負傷しながらも叫ぶ桜井。しかし、二人はもはや逃げようとはしなかった。桜井の姿に警察への信頼を取り戻したからなのか、それとも逃亡生活に疲れたからなのか、それは誰にも分からなかったが、運転手の証言により収賄事件は解決。桜井は運転手と妻、そしてその子の幸せを祈らずにはいられなかった。
刑事の身を隠して容疑者の妻に接触する桜井という、特捜ではお馴染みのパターンを臆面もなく繰り返す一本。それにしても、なぜ不幸な女たちはことごとく(それもあっさりと)桜井に惹かれるのでしゅうか?「それだけ桜井に魅力があるのだ」と言いたいところですが、ここまで安易だと「ご都合主義」としか思えません。ゲストも本阿弥周子&大谷朗という常連コンビで、追う事件も汚職の証拠探し。よくあるパターンのオンパレードで、目新しさはどこにも感じられません。ちなみにタイトルにある「顔を消した女」とは、“酒に溺れることで愛しい亭主の顔を頭から消した”という意味でしょうが、ハンカチのサインも含めて分かりづらいことこの上ありません。
元大臣の収賄事件を追う検察庁の依頼を受けて、桜井は大臣秘書の運転手の妻を張り込む。運転手は3年前、検察庁の追及に疲れ果て投身自殺を遂げていた。死体は腐乱した状態で発見されたが、妻が着衣や体格から本人だと確認していた。しかし数日前、妻のアパート付近で起こった殺人事件の捜査中、偶然にも運転手の指紋が発見された。運転手は何者かを替え玉に偽装自殺したものと見られ、その妻も関係している可能性があった。
夜の街でホステスとして働く妻を見張るのは、桜井だけではなかった。ヤクザ風の男たち、そして数年前から執拗に運転手の生存を信じる刑事が、妻の働くスナックに日参していた。刑事の身を隠して妻に接触した桜井は、しだいに妻と心を通わせるようになる。ある夜、桜井はヤクザ風の男に「亭主はどこにいる!」と脅される妻を助ける。ヤクザの反撃にあって負傷した桜井を救ったのは、妻を張り込んでいた刑事だった。
その夜、妻は桜井を部屋に招き、酒を煽りながら警察への恨みを語った。何の関わりも無いはずの収賄事件の捜査のために、運転手は姿を消し、妻は酒に溺れ、一人息子を祖母に預けて寂しく暮らすことを余儀なくされていた。酔いつぶれた妻の部屋で、雨中に干し続けていたハンカチに気づく。それは運転手に対する妻からのサインだった。桜井がそうとは知らずにハンカチを取り込んだことで、運転手は妻が呼んでいると勘違いして部屋に接近。運転手に気づいて追跡する桜井だが、夜の闇に見失ってしまう。桜井の正体に気づいた妻は「汚いよ!」と桜井を責めた。
一方、特命課では、運転手が自殺したのと同時期に、ドヤ街に住む運転手と体格の似た男が失踪していたことをつかむ。その男は失踪寸前に運転手の妻らしき女と一緒に歩いているのを目撃されていた。また、妻を襲ったヤクザが元大臣の息の掛かった喪暴力団だと判明する。そんななか、妻を張り込んでいた刑事が不審な死を遂げた。妻を襲ったヤクザと同様、元大臣の息の掛かった暴力団の仕業であり、このままでは運転手と妻の生命も危うい。二人を追い詰めることに迷いを抱く桜井に、神代が言う。「運転手と妻を助ける唯一の方法、それは運転手を逮捕し、真相を明らかにすることだ」
意を決した桜井は、妻が毎日見つめ続けていた波止場で運転手を発見。妻の制止を振り切って追跡する。そこにヤクザが現れ、運転手を襲ったとき、桜井は咄嗟に二人を逃がそうと身体を張っていた。「二人で逃げろ!」ヤクザに刺され、負傷しながらも叫ぶ桜井。しかし、二人はもはや逃げようとはしなかった。桜井の姿に警察への信頼を取り戻したからなのか、それとも逃亡生活に疲れたからなのか、それは誰にも分からなかったが、運転手の証言により収賄事件は解決。桜井は運転手と妻、そしてその子の幸せを祈らずにはいられなかった。
刑事の身を隠して容疑者の妻に接触する桜井という、特捜ではお馴染みのパターンを臆面もなく繰り返す一本。それにしても、なぜ不幸な女たちはことごとく(それもあっさりと)桜井に惹かれるのでしゅうか?「それだけ桜井に魅力があるのだ」と言いたいところですが、ここまで安易だと「ご都合主義」としか思えません。ゲストも本阿弥周子&大谷朗という常連コンビで、追う事件も汚職の証拠探し。よくあるパターンのオンパレードで、目新しさはどこにも感じられません。ちなみにタイトルにある「顔を消した女」とは、“酒に溺れることで愛しい亭主の顔を頭から消した”という意味でしょうが、ハンカチのサインも含めて分かりづらいことこの上ありません。
第254話 海に消えた殺人婦警!
脚本 大野武雄、監督 野田幸男
ある夜、刑務官が車内で殺されているのが発見された。車には女が同乗していたらしいが、その消息はつかめない。付近の駅員の証言から、犯人らしき男が女とともに始発電車に乗ったことが判明。特命課は、同乗していた女が共犯ではないかと推測。車内に残されたマッチから高級クラブに目星をつけ、高杉婦警をホステスとして潜入させる。高杉が親しくなったホステスに探りを入れたところ、被害者は妙に羽振りがよく、服役囚に印刷技術を指導していたことから「刑務所で贋札を作ってるのでは」と噂されていた。
同じ頃、被害者を殴って逮捕された元同僚が容疑者として浮上。特命課は数日前から姿を消していた容疑者の行方を追う。そんななか、同一犯人により予備校の事務局長が殺される。その予備校に、高杉と親しくなったホステスが職員のアルバイトをしていた。偶然の一致とは思えず、参考人としてホステスを取り調べたところ、住所や本籍はデタラメだった。桜井はホステスが婦人警官特有のバッグの持ち方をしていることに気づき、調査の結果、元婦人警官だと確認される。彼女が警察を辞めたのは、婚約者である刑事が別の女と車で海に飛び込み自殺したためだった。彼女は「これは偽装心中です」と上司に再捜査を依頼したものの、上司は取り合わなかった。そのため彼女は警察を辞め、刑事と一緒に死んだ女が勤めていたクラブのホステスとなったのだ。「婚約者の復讐のために二人を殺したんだな?」と追及する特命課だが、証拠は何も無く、釈放するしかなかった。
その後の調べで、死んだ刑事が入試問題漏洩事件を追っていたことが判明。入試問題は、漏洩を防ぐために刑務所で印刷されることが多い。被害者二人が共謀して学生に入試問題を売りつけていたのだ。また、一緒に死んだ女は刑務官の愛人で、別れ話がこじれていたという。
ホステスを尾行したところ、逃走中の容疑者が現れ、拳銃をホステスに渡す。容疑者は逮捕したものの、その必死の妨害によってホステスの逃走を許してしまう。容疑者は犯行を認め、刑務官の不正に気づいたために無実の罪で逮捕されたこと、刑事だけが自分の証言に耳を傾けてくれたこと、そして出所後に刑事の墓でホステスと出会い、復讐への協力を約束したことを自供する。しかし、ホステスが拳銃で狙う相手については黙秘を貫いた。
刑事の上司も被害者たちとグルだとにらんだ特命課は、上司を締め上げ、黒幕の代議士の存在を知る。ホステスが狙うのは代議士に違いないと、その行方を追う。ヨットハーバーに代議士を追い詰め、拳銃を突きつけるホステス。そこに駆けつける特命課。身を挺して制止する高杉に背を向けると、ホステスは自分の頭に銃口を当て、引き金を引いた。力なく倒れた身体が海に落ち、流されていくのを、高杉は涙ながらに見送るしかなかった。
夏恒例の怪談モノ以外では珍しく、高杉婦警がメインの一本。婚約者の仇を討つために、夜の街に身を落としてまで真相を追う元婦人警官がひたすら哀れです。仮に自分に婚約者がいて、自分がその婚約者を残して殺されたとしたら、婚約者には復讐になど走らず、幸せになって欲しいと思うのですが、正直なところ、別の男と幸せになるのはちょっと悔しいと、実在しない婚約者に対して妄想を膨らませる私でした。
ある夜、刑務官が車内で殺されているのが発見された。車には女が同乗していたらしいが、その消息はつかめない。付近の駅員の証言から、犯人らしき男が女とともに始発電車に乗ったことが判明。特命課は、同乗していた女が共犯ではないかと推測。車内に残されたマッチから高級クラブに目星をつけ、高杉婦警をホステスとして潜入させる。高杉が親しくなったホステスに探りを入れたところ、被害者は妙に羽振りがよく、服役囚に印刷技術を指導していたことから「刑務所で贋札を作ってるのでは」と噂されていた。
同じ頃、被害者を殴って逮捕された元同僚が容疑者として浮上。特命課は数日前から姿を消していた容疑者の行方を追う。そんななか、同一犯人により予備校の事務局長が殺される。その予備校に、高杉と親しくなったホステスが職員のアルバイトをしていた。偶然の一致とは思えず、参考人としてホステスを取り調べたところ、住所や本籍はデタラメだった。桜井はホステスが婦人警官特有のバッグの持ち方をしていることに気づき、調査の結果、元婦人警官だと確認される。彼女が警察を辞めたのは、婚約者である刑事が別の女と車で海に飛び込み自殺したためだった。彼女は「これは偽装心中です」と上司に再捜査を依頼したものの、上司は取り合わなかった。そのため彼女は警察を辞め、刑事と一緒に死んだ女が勤めていたクラブのホステスとなったのだ。「婚約者の復讐のために二人を殺したんだな?」と追及する特命課だが、証拠は何も無く、釈放するしかなかった。
その後の調べで、死んだ刑事が入試問題漏洩事件を追っていたことが判明。入試問題は、漏洩を防ぐために刑務所で印刷されることが多い。被害者二人が共謀して学生に入試問題を売りつけていたのだ。また、一緒に死んだ女は刑務官の愛人で、別れ話がこじれていたという。
ホステスを尾行したところ、逃走中の容疑者が現れ、拳銃をホステスに渡す。容疑者は逮捕したものの、その必死の妨害によってホステスの逃走を許してしまう。容疑者は犯行を認め、刑務官の不正に気づいたために無実の罪で逮捕されたこと、刑事だけが自分の証言に耳を傾けてくれたこと、そして出所後に刑事の墓でホステスと出会い、復讐への協力を約束したことを自供する。しかし、ホステスが拳銃で狙う相手については黙秘を貫いた。
刑事の上司も被害者たちとグルだとにらんだ特命課は、上司を締め上げ、黒幕の代議士の存在を知る。ホステスが狙うのは代議士に違いないと、その行方を追う。ヨットハーバーに代議士を追い詰め、拳銃を突きつけるホステス。そこに駆けつける特命課。身を挺して制止する高杉に背を向けると、ホステスは自分の頭に銃口を当て、引き金を引いた。力なく倒れた身体が海に落ち、流されていくのを、高杉は涙ながらに見送るしかなかった。
夏恒例の怪談モノ以外では珍しく、高杉婦警がメインの一本。婚約者の仇を討つために、夜の街に身を落としてまで真相を追う元婦人警官がひたすら哀れです。仮に自分に婚約者がいて、自分がその婚約者を残して殺されたとしたら、婚約者には復讐になど走らず、幸せになって欲しいと思うのですが、正直なところ、別の男と幸せになるのはちょっと悔しいと、実在しない婚約者に対して妄想を膨らませる私でした。
第253話「注射器を持った狼!」に関する感想の補足
昨日の「注射器を持った狼!」についての感想ですが、少し言い足りなかったので補足させてください。
「リスクを犯してまで助けに入る人がいないのもやむを得ない」と書きましたが、決して「だから助けるな」と主張するつもりはありません。むしろ「それでも助けてあげて欲しい」というのが正直な気持ちですし、勇気を持って立ち向かえる人には賞賛を惜しみません。
とはいえ、実際のところ、よほど腕に覚えのある方か、警察やヤクザといった暴力に対する後ろ盾がある方でない限りは、躊躇無く行動に移せるものではないでしょう。何しろ相手は異常者です。今回の覚醒剤中毒者のようにナイフを持っていれば、迂闊に止めに入るのはリスクが高すぎます。仮に首尾よく制止できたとしても、顔を覚えられて後で報復を受けるリスクもあり、その際に自分の家族まで犠牲になる可能性も否定できません。隠れて警察を呼ぶ、というのが最適な手段だとは思いますが、その際にも迂闊に名乗れば、後で「通報したのは誰だ」と逆恨みされるリスクがあります。そんなとき、警察の情報セキュリティ意識など信頼できるものではなく、やはり匿名で通報するよう注意が必要です。
結局のところ、「それだけの多大なリスクを背負ってもアカの他人を助けろ」というのは、あくまで理想論であり、他人に強要するものではありません。「見て見ぬふりをせず、助けろ」と声高に主張する輩の方が、どうかしているのではないかと思います。今回の老人のように「貴様らも同罪だ」と復讐に走るのは筋違いにもほどがあります。加藤嘉の名演にも関わらず、本編が名作としての評価を得ていないのは、再放送の機会に恵まれないだけではなく、そうした点にも理由があるのかもしれません。
最後に、私自身を振り返ってみれば、つらつら考えてみても、結局は「その場にならないと分からない」としか言いようがありません。犯人(体格や武器の有無、外見から予想される背後関係)にもよるでしょうし、人でなしと言われるかもしれませんが、被害者にもよると思います(別に美人だったら助けるとかいうことではなく、女子供や老人などならともかく、ちゃらちゃらした若造や、脂ぎったおっさんを助けるために命を賭けるのは嫌だという意味)。さらには当日の体調や心理状態にも左右されると思いますので、とても「俺なら必ず助ける」とは断言できません。理想を言えば、「リスク云々を考えるまでもなく、反射的に助けに出れるような人間でありたい」とは思っていますが、正直なところ、そんな場面には出くわしたくないものです。
「リスクを犯してまで助けに入る人がいないのもやむを得ない」と書きましたが、決して「だから助けるな」と主張するつもりはありません。むしろ「それでも助けてあげて欲しい」というのが正直な気持ちですし、勇気を持って立ち向かえる人には賞賛を惜しみません。
とはいえ、実際のところ、よほど腕に覚えのある方か、警察やヤクザといった暴力に対する後ろ盾がある方でない限りは、躊躇無く行動に移せるものではないでしょう。何しろ相手は異常者です。今回の覚醒剤中毒者のようにナイフを持っていれば、迂闊に止めに入るのはリスクが高すぎます。仮に首尾よく制止できたとしても、顔を覚えられて後で報復を受けるリスクもあり、その際に自分の家族まで犠牲になる可能性も否定できません。隠れて警察を呼ぶ、というのが最適な手段だとは思いますが、その際にも迂闊に名乗れば、後で「通報したのは誰だ」と逆恨みされるリスクがあります。そんなとき、警察の情報セキュリティ意識など信頼できるものではなく、やはり匿名で通報するよう注意が必要です。
結局のところ、「それだけの多大なリスクを背負ってもアカの他人を助けろ」というのは、あくまで理想論であり、他人に強要するものではありません。「見て見ぬふりをせず、助けろ」と声高に主張する輩の方が、どうかしているのではないかと思います。今回の老人のように「貴様らも同罪だ」と復讐に走るのは筋違いにもほどがあります。加藤嘉の名演にも関わらず、本編が名作としての評価を得ていないのは、再放送の機会に恵まれないだけではなく、そうした点にも理由があるのかもしれません。
最後に、私自身を振り返ってみれば、つらつら考えてみても、結局は「その場にならないと分からない」としか言いようがありません。犯人(体格や武器の有無、外見から予想される背後関係)にもよるでしょうし、人でなしと言われるかもしれませんが、被害者にもよると思います(別に美人だったら助けるとかいうことではなく、女子供や老人などならともかく、ちゃらちゃらした若造や、脂ぎったおっさんを助けるために命を賭けるのは嫌だという意味)。さらには当日の体調や心理状態にも左右されると思いますので、とても「俺なら必ず助ける」とは断言できません。理想を言えば、「リスク云々を考えるまでもなく、反射的に助けに出れるような人間でありたい」とは思っていますが、正直なところ、そんな場面には出くわしたくないものです。
第253話 注射器を持った狼!
脚本 宮下潤一、監督 村山新治
白昼、喫茶店に乱入し、居合わせた夫婦を刺殺した覚醒剤中毒者が、心神喪失状態と認められ無罪となる。両親を目の前で殺された少年は、裁判所から出てきた覚醒剤中毒者を刺し殺そうとするが、吉野に制止され、殺人未遂で少年院に送られた。
それから3年後、牛乳パックなどに注射器で青酸を混入するという手口での連続殺人事件が発生。被害者間には何のつながりもなく、捜査は難航する。続けて選挙事務所に配達された仕出し弁当に混入された青酸で、代議士秘書が死亡する。仕出屋を訪ねた吉野は、そこで配達の運転手をしているのが3年前の少年だと気づく。暴走族の一員となって喧嘩沙汰を繰り返す少年の姿に、吉野は釈然としない。
いずれの現場でも暴走族らしきバイクが目撃されたことや、少年がメッキ工場に勤めていて青酸を入手可能だったことから、特命課は少年を重要参考人として手配する。少年は数日前から行方を消していた。倒産したメッキ工場を経営していた老人を訪ねる吉野。老人は「あんたは間違っている。奴は人殺しなどしておらん」と吉野を責める。
発見した少年を取り調べる吉野だが、少年は警察に対する不信感を隠さず、事件については黙秘を貫く。証拠は何もなく、特命課は少年を釈放。吉野は少年の警察不信の原因が、両親の件だけでなく、一年前のある女の自殺にあることを知る。自殺した女はメッキ工場の娘で、少年は女を姉のように慕っていた。少年は「結婚を目前にした女が自殺などするはずない」と、現地の警察に再捜査を頼んだが、警察は一向に取り合わなかったという。
暴走族に拉致され、姿を消す吉野。一方、特命課は、青酸事件の被害者の一人が覚醒剤の前科があり、女の自殺に関わっているとの情報を得て、現地に飛ぶ。当時の調書を見た橘と紅林は、女が自殺直前に訪れたドライブインに居合わせた目撃者のリストが、一連の被害者と一致していることに気づく。目撃者の生き残りである代議士を訪ねて真相を追及したところ、代議士は「私たちは、一人の娘さんを見殺しにしました」と告白する。その夜、ドライブインを訪れた二人の覚醒剤中毒者が、突然ウェイターに殴りかかった。蛇ににらまれた蛙のように身動きできない客たちの中で、ただ一人、女だけが止めに入った。そのために女は中毒者二人に暴行を受け、直後に自殺を遂げた。
拉致された吉野の前に、少年とともに老人が現れる。青酸事件の犯人は老人だった。「警察がやらんのなら、ワシがこの手で殺してやろうと決心した」と静かに語る老人。少年は老人の犯行を知って、目撃者を探し出すのを協力していたのだ。「俺の両親のときも同じだった」と、見殺しにした目撃者たちへの憤りを語る少年。「気持ちはわかる。だが、それは逆恨みだ」と諭す吉野だが、少年や老人にその言葉は通じない。吉野の名を騙って、中毒者の残る一人を毒殺しようとする老人。少年も吉野の拳銃を奪ってその後を追う。「お前ら、あいつを本当の殺人犯にしたいのか!」取り押さえる暴走族を怒鳴りつけ、必死で後を追う吉野。
中毒者が青酸入りの弁当を口にしようとした矢先、老人の狙いを見抜いた特命課が駆けつける。失敗を悟った老人は青酸を飲んで自殺。そこに駆けつけた少年が中毒者に銃口を向ける。「俺は、お前の両親の仇を討てなかった、最低の刑事だ。奴を撃つ前に俺を撃て!」少年の前に立ちはだかる吉野に、少年は泣き崩れた。「とんだ茶番だぜ」とせせら笑う中毒者に吉野の怒りが炸裂するが、それで誰が救われるものでもなかった。
宮下潤一お得意の救いのない展開が、心に重く残る一本。ストーリー云々以前に、牛乳パックに青酸を混入する描写が問題となって地上波では再放送されないことで(マニアの間では)有名です。なお、ファミリー劇場ではメーカーが分からないように牛乳パックに処理を加えて放送しています。メーカーは判別できませんが「もし雪印製品だったら、今なら放送OKでは?」と思ってしまいました。
法が裁こうとしない犯罪者を被害者の遺族が裁くという展開は、後に第309話「撃つ女!」でも扱われますが、今回は遺族の怒りの対象が犯罪者だけでなく、見て見ぬふりをした目撃者たちにも向けられているのがポイントです。先頃も似たような事件が起こり、いろいろ物議をかもしていましたが、私見を言わせてもらえれば、目撃者を責めるのは筋違いだと思います。まともな想像力を持つ人であれば、白昼堂々、人を刺したり、女に襲い掛かったりするような異常者に立ち向かうことが、どれだけ勇気を必要とするか分かると思います。被害者には気の毒ですが、あえて自分も犠牲者になるリスクを犯してまで助けに入る人がいないのも、当然とは言えないまでも、やむを得ないのではないでしょうか。
白昼、喫茶店に乱入し、居合わせた夫婦を刺殺した覚醒剤中毒者が、心神喪失状態と認められ無罪となる。両親を目の前で殺された少年は、裁判所から出てきた覚醒剤中毒者を刺し殺そうとするが、吉野に制止され、殺人未遂で少年院に送られた。
それから3年後、牛乳パックなどに注射器で青酸を混入するという手口での連続殺人事件が発生。被害者間には何のつながりもなく、捜査は難航する。続けて選挙事務所に配達された仕出し弁当に混入された青酸で、代議士秘書が死亡する。仕出屋を訪ねた吉野は、そこで配達の運転手をしているのが3年前の少年だと気づく。暴走族の一員となって喧嘩沙汰を繰り返す少年の姿に、吉野は釈然としない。
いずれの現場でも暴走族らしきバイクが目撃されたことや、少年がメッキ工場に勤めていて青酸を入手可能だったことから、特命課は少年を重要参考人として手配する。少年は数日前から行方を消していた。倒産したメッキ工場を経営していた老人を訪ねる吉野。老人は「あんたは間違っている。奴は人殺しなどしておらん」と吉野を責める。
発見した少年を取り調べる吉野だが、少年は警察に対する不信感を隠さず、事件については黙秘を貫く。証拠は何もなく、特命課は少年を釈放。吉野は少年の警察不信の原因が、両親の件だけでなく、一年前のある女の自殺にあることを知る。自殺した女はメッキ工場の娘で、少年は女を姉のように慕っていた。少年は「結婚を目前にした女が自殺などするはずない」と、現地の警察に再捜査を頼んだが、警察は一向に取り合わなかったという。
暴走族に拉致され、姿を消す吉野。一方、特命課は、青酸事件の被害者の一人が覚醒剤の前科があり、女の自殺に関わっているとの情報を得て、現地に飛ぶ。当時の調書を見た橘と紅林は、女が自殺直前に訪れたドライブインに居合わせた目撃者のリストが、一連の被害者と一致していることに気づく。目撃者の生き残りである代議士を訪ねて真相を追及したところ、代議士は「私たちは、一人の娘さんを見殺しにしました」と告白する。その夜、ドライブインを訪れた二人の覚醒剤中毒者が、突然ウェイターに殴りかかった。蛇ににらまれた蛙のように身動きできない客たちの中で、ただ一人、女だけが止めに入った。そのために女は中毒者二人に暴行を受け、直後に自殺を遂げた。
拉致された吉野の前に、少年とともに老人が現れる。青酸事件の犯人は老人だった。「警察がやらんのなら、ワシがこの手で殺してやろうと決心した」と静かに語る老人。少年は老人の犯行を知って、目撃者を探し出すのを協力していたのだ。「俺の両親のときも同じだった」と、見殺しにした目撃者たちへの憤りを語る少年。「気持ちはわかる。だが、それは逆恨みだ」と諭す吉野だが、少年や老人にその言葉は通じない。吉野の名を騙って、中毒者の残る一人を毒殺しようとする老人。少年も吉野の拳銃を奪ってその後を追う。「お前ら、あいつを本当の殺人犯にしたいのか!」取り押さえる暴走族を怒鳴りつけ、必死で後を追う吉野。
中毒者が青酸入りの弁当を口にしようとした矢先、老人の狙いを見抜いた特命課が駆けつける。失敗を悟った老人は青酸を飲んで自殺。そこに駆けつけた少年が中毒者に銃口を向ける。「俺は、お前の両親の仇を討てなかった、最低の刑事だ。奴を撃つ前に俺を撃て!」少年の前に立ちはだかる吉野に、少年は泣き崩れた。「とんだ茶番だぜ」とせせら笑う中毒者に吉野の怒りが炸裂するが、それで誰が救われるものでもなかった。
宮下潤一お得意の救いのない展開が、心に重く残る一本。ストーリー云々以前に、牛乳パックに青酸を混入する描写が問題となって地上波では再放送されないことで(マニアの間では)有名です。なお、ファミリー劇場ではメーカーが分からないように牛乳パックに処理を加えて放送しています。メーカーは判別できませんが「もし雪印製品だったら、今なら放送OKでは?」と思ってしまいました。
法が裁こうとしない犯罪者を被害者の遺族が裁くという展開は、後に第309話「撃つ女!」でも扱われますが、今回は遺族の怒りの対象が犯罪者だけでなく、見て見ぬふりをした目撃者たちにも向けられているのがポイントです。先頃も似たような事件が起こり、いろいろ物議をかもしていましたが、私見を言わせてもらえれば、目撃者を責めるのは筋違いだと思います。まともな想像力を持つ人であれば、白昼堂々、人を刺したり、女に襲い掛かったりするような異常者に立ち向かうことが、どれだけ勇気を必要とするか分かると思います。被害者には気の毒ですが、あえて自分も犠牲者になるリスクを犯してまで助けに入る人がいないのも、当然とは言えないまでも、やむを得ないのではないでしょうか。
第252話 或る挑戦!
脚本 竹山洋、監督 宮越澄
マンション暮らしの主婦から「隣室で殺人事件があったかもしれない」とのタレコミ電話が入る。主婦を訪ね、詳しい話を聞く船村。隣室には、夜の街で働く若い女と、その愛人らしき嫉妬深い初老の男が住んでおり、諍いが絶えなかったという。ある夜、激しい喧嘩の後に「人殺し!」と女の叫び声が聞こえ、翌日から女は姿を消したという。
単なる痴話喧嘩とも思われたが、船村は念のため男を尾行する。男の尋常ではない態度に犯罪の匂いを嗅ぎ取った船村は、令状も無いままに男の部屋に踏み込む。「女はどうした?あんた、殺したのか?」船村に問い詰められると、男はあっさりと犯行を自白した。自首を勧める船村の目を盗んで、男は薬を口にして自殺を測る。船村は慌てて救急車を呼び、男を病院に収容。事件の確証を得ようと死体を捜す特命課だが、死体はどこからも発見されず、室内に犯行を示唆するような痕跡はなかった。
男は一流建設会社の元部長だったが、定年退職後、店で知り合った女とともに蒸発した。蒸発中に妻は志望し、一人娘が男の帰りを待っていた。報せを聞いて入院先に駆けつけた娘は、来月には結婚することを男に告げる。その一言を聞いたことで、男の態度は一変。「私は人を殺してなどいない。あんたに不当逮捕された」と船村を弾劾する。男の指示で特命課を訪れた弁護士は、船村の捜査手続きの不備を指摘する。依然として物証は何も無く、特命課は男の釈放を余儀なくされる。
再びマンション周辺を調べる特命課だが、弁護士が手を回したことで、住民たちは一様に証言を拒んだ。しかし、馴染みのスナックで聞き込んだところ、事件当夜、男は泥酔し「あいつは私の帰りを待っている。どこへも逃げられない」と呟いていたという。死体は室内にあると確信する船村だが、家宅捜査の令状を得るのは困難な状況だった。そんななか、男がマンションから引っ越すという情報が入る。引越し荷物の中に死体が紛れていると確信した船村は、「責任は俺が取る!」と令状もなしに荷物を検分する。しかし、死体は発見されず、船村は告訴され、マスコミの避難を浴びる。
男が建設会社でマンションの設計を担当していたことに気づいた船村は、高杉婦警の言葉をヒントに、室内の配管スペースを捜索する。死体はなかったが、髪の毛が発見され、鑑定の結果、行方不明の女のものだと判明。引越しトラックを追跡して確認したところ、男は引越しの後、残った段ボール箱を一つ大阪駅まで運ぶよう頼んだという。
船村は紅林とともに娘の結婚式場に張込み、大阪に向かった橘ちからの連絡を待つ。そこに神代が到着し、死体の発見を告げる。勇んで逮捕しようとする紅林を船村が制止する。その先には、花嫁の父として列席者を見送る男の姿があった。そして、すべてが終わった後、男は「ありがとうございました」と、深々と船村に頭を下げるのだった。
犯罪者としての自責の念と、父親としての立場の狭間でもがき苦しむ男の姿を描いた一本です。マスコミの非難を一身に浴びたおやっさんからすれば、たまったものではありませんが、娘の父という立場としては、男の気持ちが痛いほど分かります。犯罪を証明するために執念を見せながらも、いざ死体が見つかると、「結婚式が終わるまでは」と逮捕を待つおやっさん。それは、単なる男への同情ではありません。おやっさんが刑事生命を賭けて追ったのは、真実、すなわち犯罪の証拠であって、男の罪を裁くことではない。「私は30年刑事をやってるんだよ!」という言葉には、単に経験を重ねてきただけではない、刑事という仕事に対する誇りが込められているのです。
マンション暮らしの主婦から「隣室で殺人事件があったかもしれない」とのタレコミ電話が入る。主婦を訪ね、詳しい話を聞く船村。隣室には、夜の街で働く若い女と、その愛人らしき嫉妬深い初老の男が住んでおり、諍いが絶えなかったという。ある夜、激しい喧嘩の後に「人殺し!」と女の叫び声が聞こえ、翌日から女は姿を消したという。
単なる痴話喧嘩とも思われたが、船村は念のため男を尾行する。男の尋常ではない態度に犯罪の匂いを嗅ぎ取った船村は、令状も無いままに男の部屋に踏み込む。「女はどうした?あんた、殺したのか?」船村に問い詰められると、男はあっさりと犯行を自白した。自首を勧める船村の目を盗んで、男は薬を口にして自殺を測る。船村は慌てて救急車を呼び、男を病院に収容。事件の確証を得ようと死体を捜す特命課だが、死体はどこからも発見されず、室内に犯行を示唆するような痕跡はなかった。
男は一流建設会社の元部長だったが、定年退職後、店で知り合った女とともに蒸発した。蒸発中に妻は志望し、一人娘が男の帰りを待っていた。報せを聞いて入院先に駆けつけた娘は、来月には結婚することを男に告げる。その一言を聞いたことで、男の態度は一変。「私は人を殺してなどいない。あんたに不当逮捕された」と船村を弾劾する。男の指示で特命課を訪れた弁護士は、船村の捜査手続きの不備を指摘する。依然として物証は何も無く、特命課は男の釈放を余儀なくされる。
再びマンション周辺を調べる特命課だが、弁護士が手を回したことで、住民たちは一様に証言を拒んだ。しかし、馴染みのスナックで聞き込んだところ、事件当夜、男は泥酔し「あいつは私の帰りを待っている。どこへも逃げられない」と呟いていたという。死体は室内にあると確信する船村だが、家宅捜査の令状を得るのは困難な状況だった。そんななか、男がマンションから引っ越すという情報が入る。引越し荷物の中に死体が紛れていると確信した船村は、「責任は俺が取る!」と令状もなしに荷物を検分する。しかし、死体は発見されず、船村は告訴され、マスコミの避難を浴びる。
男が建設会社でマンションの設計を担当していたことに気づいた船村は、高杉婦警の言葉をヒントに、室内の配管スペースを捜索する。死体はなかったが、髪の毛が発見され、鑑定の結果、行方不明の女のものだと判明。引越しトラックを追跡して確認したところ、男は引越しの後、残った段ボール箱を一つ大阪駅まで運ぶよう頼んだという。
船村は紅林とともに娘の結婚式場に張込み、大阪に向かった橘ちからの連絡を待つ。そこに神代が到着し、死体の発見を告げる。勇んで逮捕しようとする紅林を船村が制止する。その先には、花嫁の父として列席者を見送る男の姿があった。そして、すべてが終わった後、男は「ありがとうございました」と、深々と船村に頭を下げるのだった。
犯罪者としての自責の念と、父親としての立場の狭間でもがき苦しむ男の姿を描いた一本です。マスコミの非難を一身に浴びたおやっさんからすれば、たまったものではありませんが、娘の父という立場としては、男の気持ちが痛いほど分かります。犯罪を証明するために執念を見せながらも、いざ死体が見つかると、「結婚式が終わるまでは」と逮捕を待つおやっさん。それは、単なる男への同情ではありません。おやっさんが刑事生命を賭けて追ったのは、真実、すなわち犯罪の証拠であって、男の罪を裁くことではない。「私は30年刑事をやってるんだよ!」という言葉には、単に経験を重ねてきただけではない、刑事という仕事に対する誇りが込められているのです。
第251話 午後10時13分の完全犯罪!
脚本 長坂秀佳、監督 松尾昭典
少女売春のスキャンダルで辞職に追い込まれた元議員が、新宿のスナックで射殺された。その手口は、元議員を窓際にある電話口に呼び出し、隣接するビルから窓越しに射殺するというもの。スナックには「元議員に強請られている」とのタレコミを受けた桜井が居合わせていた。捜査を開始する桜井の前に、東新宿署の副署長が現れる。元議員は副署長にとって学生時代の恩人であり、その日もスナックで待ち合わせていた。「余計な手出しは無用」と、神代以下の特命課への対抗心をむき出しにする副署長は、捜査の指揮を取り、すばやく目撃者を確保。その証言から、犯人は革ジャンを着た中年男と判明する。
桜井らが元議員の事務所を調べたところ、何者かに家捜しされた後だった。元議員は女関係をネタに強請りを繰り返していたらしく、被害者リストの1ページと証拠写真が焼き捨てられていた。しかし、手をつけられてなかった金庫から控えが発見され、燃えカスと照らし合わせたところ、有名なハードボイルド作家が容疑者として浮上する。できすぎた証拠に、「作家を陥れる罠では」と推測する桜井。作家の自宅に駆けつけると、東新宿署の刑事が作家を連行するところだった。
目撃者の証言、発見された拳銃や革ジャンなど、証拠はすべて作家に不利だった。しかし、あまりに副署長の読みどおりに進む展開に、桜井は疑惑を抱く。副署長が警視正への昇進を控えていることを知った桜井は、「副署長も元議員に恐喝されており、昇進の邪魔になるのを恐れて元議員を殺害し、その罪を作家になすりつけた」と推測する。特命課の捜査により桜井の推測が裏付けられるものの、副署長は「目撃者の証言はどうなる」と不敵な態度を崩さない。神代は現場検証を通じて「君は目撃者の心理を誘導して、作家の犯行だと印象づけた」と看破する。「立証できるのか?」と開き直す副所長に、「では、君は現場検証に居合わせた花売り少女の顔を覚えているか?」との問いかける神代。神代の狙いを読んだ副署長は「そこの婦警さんだ」と得意げに断言。しかし、それは神代の罠であり、花売り少女は別人だった。「人間の記憶など曖昧なものだ。君でさえ、暗示によって記憶を誘導されることが証明された」神代の言葉に愕然とする副署長に、さらなる証拠を突きつける桜井。事件当夜、革ジャンについたペンキの跡から推察される犯人の身長は、作家ではなく副署長に当てはまった。「ペンキはズボンにもついているはずだ」と攻め立てる桜井。だが、副署長宅のズボンを全部調べても、ペンキの跡はない。「貴様ら全員を処分に追い込んでやる」と捨て台詞を残して副署長が向かった先は、クリーニング屋だった。クリーニングに出していたズボンを回収し、焼き捨てようとする副署長。そこに現れる特命課。「特命課にしては、珍しく上出来じゃないか」悔し紛れに吐き捨てる副署長に、桜井の怒りの鉄拳が炸裂した。
あまりに練り込み過ぎた脚本に、やや食傷気味になる一本。ここのところ強引さが目立つ長坂脚本ですが、今回もかなりの強引さです。あらすじにある花売り少女のくだりなど、視聴者の予想を裏切ることに全力を尽くすあまりの卑怯ともいえる演出に、かえって不快感を覚えてしまうほど。とはいえ、決して駄作というわけではなく、神代と特命課の課長の椅子を争ったという副署長のキャラクターはなかなか秀逸。また、ラストの神代の台詞、「警察権力がその気になれば、どんな人間でも犯人としてでっち上げることができることを、お前の行為が立証した。それが最も許せん」にも唸らされます。加えて見逃せないのは、桜井の推理を裏付ける橘の活躍ぶりです。大胆な行動力が売りの桜井と、地道な捜査が売りの橘、両者の絶妙なコンビネーションを堪能できました。
少女売春のスキャンダルで辞職に追い込まれた元議員が、新宿のスナックで射殺された。その手口は、元議員を窓際にある電話口に呼び出し、隣接するビルから窓越しに射殺するというもの。スナックには「元議員に強請られている」とのタレコミを受けた桜井が居合わせていた。捜査を開始する桜井の前に、東新宿署の副署長が現れる。元議員は副署長にとって学生時代の恩人であり、その日もスナックで待ち合わせていた。「余計な手出しは無用」と、神代以下の特命課への対抗心をむき出しにする副署長は、捜査の指揮を取り、すばやく目撃者を確保。その証言から、犯人は革ジャンを着た中年男と判明する。
桜井らが元議員の事務所を調べたところ、何者かに家捜しされた後だった。元議員は女関係をネタに強請りを繰り返していたらしく、被害者リストの1ページと証拠写真が焼き捨てられていた。しかし、手をつけられてなかった金庫から控えが発見され、燃えカスと照らし合わせたところ、有名なハードボイルド作家が容疑者として浮上する。できすぎた証拠に、「作家を陥れる罠では」と推測する桜井。作家の自宅に駆けつけると、東新宿署の刑事が作家を連行するところだった。
目撃者の証言、発見された拳銃や革ジャンなど、証拠はすべて作家に不利だった。しかし、あまりに副署長の読みどおりに進む展開に、桜井は疑惑を抱く。副署長が警視正への昇進を控えていることを知った桜井は、「副署長も元議員に恐喝されており、昇進の邪魔になるのを恐れて元議員を殺害し、その罪を作家になすりつけた」と推測する。特命課の捜査により桜井の推測が裏付けられるものの、副署長は「目撃者の証言はどうなる」と不敵な態度を崩さない。神代は現場検証を通じて「君は目撃者の心理を誘導して、作家の犯行だと印象づけた」と看破する。「立証できるのか?」と開き直す副所長に、「では、君は現場検証に居合わせた花売り少女の顔を覚えているか?」との問いかける神代。神代の狙いを読んだ副署長は「そこの婦警さんだ」と得意げに断言。しかし、それは神代の罠であり、花売り少女は別人だった。「人間の記憶など曖昧なものだ。君でさえ、暗示によって記憶を誘導されることが証明された」神代の言葉に愕然とする副署長に、さらなる証拠を突きつける桜井。事件当夜、革ジャンについたペンキの跡から推察される犯人の身長は、作家ではなく副署長に当てはまった。「ペンキはズボンにもついているはずだ」と攻め立てる桜井。だが、副署長宅のズボンを全部調べても、ペンキの跡はない。「貴様ら全員を処分に追い込んでやる」と捨て台詞を残して副署長が向かった先は、クリーニング屋だった。クリーニングに出していたズボンを回収し、焼き捨てようとする副署長。そこに現れる特命課。「特命課にしては、珍しく上出来じゃないか」悔し紛れに吐き捨てる副署長に、桜井の怒りの鉄拳が炸裂した。
あまりに練り込み過ぎた脚本に、やや食傷気味になる一本。ここのところ強引さが目立つ長坂脚本ですが、今回もかなりの強引さです。あらすじにある花売り少女のくだりなど、視聴者の予想を裏切ることに全力を尽くすあまりの卑怯ともいえる演出に、かえって不快感を覚えてしまうほど。とはいえ、決して駄作というわけではなく、神代と特命課の課長の椅子を争ったという副署長のキャラクターはなかなか秀逸。また、ラストの神代の台詞、「警察権力がその気になれば、どんな人間でも犯人としてでっち上げることができることを、お前の行為が立証した。それが最も許せん」にも唸らされます。加えて見逃せないのは、桜井の推理を裏付ける橘の活躍ぶりです。大胆な行動力が売りの桜井と、地道な捜査が売りの橘、両者の絶妙なコンビネーションを堪能できました。
第250話 老刑事・赤い風船を追う!
脚本 宮下潤一、監督 天野利彦
東京都内が妨害電波に襲われた朝、船村は7年前に逮捕した女の出所を迎えに、栃木の刑務所へと出かけた。女とともに上野駅に着いた船村を吉野が出迎え、誘拐事件の発生を告げる。足の不自由な兄のもとで働くと言う女と別れ、船村は被害者宅へ。誘拐されたのは、7歳になる銀行員の娘だった。犯人の指示通りに駅前で待つ銀行員から、オートバイに乗った男が身代金を奪って逃走する。車での追跡は振り切られるが、予定通り発信機からの電波で追跡を続ける特命課。だが、妨害電波によって追跡は不可能となる。
焦る特命課に、逃走したオートバイが事故で炎上し、乗っていた男が即死したとの情報が入る。焼け残った封筒に残された郵便番号は栃木のものだった。また、解剖の結果、男の足が不自由だと判明する。栃木からの郵便を受け取った足の不自由な男・・・船村はそれが出所した女の兄ではないかと直感する。兄の工場を調べた結果、誘拐された娘を抱いた女が、犯人二人とともに車で逃走するのが目撃されていた。出所した早々、事件に巻き込まれた女を案じる船村。「なぜ、そこまで気にかけるのか」と訪ねる吉野に、船村は語った。
両親と死に別れ、兄と二人きりで生きてきた女が初めて愛したのは、夜間高校の教師だった。その教師に裏切られた女は、教師を刺殺して船村に逮捕され、刑務所の中で教師の子を出産する。それは、憎い教師の子を殺すためだった。「お前は間違っている。あの子は、お前が腹を痛めて産んだ子供じゃないか!」と叱咤する船村。ようやく母性に目覚めた女だが、それまでの行動から「親としての行動に疑問あり」とされ、子供は施設に送られた。
その後、銀行員の娘が実子ではなく、施設から養女に貰われた子だと知った船村は、ある自分の想像に愕然とする。女の子供を預けた施設を訪れた船村は、自分の想像が当たっていたことを知る。再び犯人から身代金を要求する電話が入り、犯人の指示通りに車を走らせる銀行員を追う特命課。だが、またも妨害電波が。その発信源がアドバルーンによるものだと気づく船村。桜井がヘリでアドバルーンを追い、撃ち落とす。
銀行員から金を受け取った女は「子供は必ず返します。私の命に換えても」と言い残して姿を消す。金を得た犯人は娘を殺そうとする。身を挺して娘を守ろうとする女に、犯人の銃口が迫る。間一髪で特命課が駆けつけ、女と娘を救出。火傷の痕から、娘が我が子ではないかと察していた女は、「もしかして、あの子は?」と船村に問う。嘘が通用しないことを承知で「違う。お前の子は、別のところで立派に育っている」と答える船村。「おばちゃんがいたから、怖くなかった」と無邪気に笑う娘に、女は名前を尋ねた。娘の名を呼ぼうとして、言葉にならない女。それが、女にとって2度目の我が子との別れとなった。
誘拐事件の背後に秘められた哀しい親子の絆を描いた一本です。誘拐された娘と女の関係といい、妨害電波の発信源といい、先が見え見えの展開にも関わらず引き込まれてしまうのは、おやっさんはもちろん、幸薄い女を演じた紀比呂子の演技力の賜物でしょう。左時枝といい、島かおりといい、本阿弥周子といい、特捜ゲストに不幸の似合う女優には事欠きません。特捜の魅力と言えば充実した脚本が真っ先に挙げられますが、彼女たち不幸な女の存在も忘れてはいけないでしょう。
東京都内が妨害電波に襲われた朝、船村は7年前に逮捕した女の出所を迎えに、栃木の刑務所へと出かけた。女とともに上野駅に着いた船村を吉野が出迎え、誘拐事件の発生を告げる。足の不自由な兄のもとで働くと言う女と別れ、船村は被害者宅へ。誘拐されたのは、7歳になる銀行員の娘だった。犯人の指示通りに駅前で待つ銀行員から、オートバイに乗った男が身代金を奪って逃走する。車での追跡は振り切られるが、予定通り発信機からの電波で追跡を続ける特命課。だが、妨害電波によって追跡は不可能となる。
焦る特命課に、逃走したオートバイが事故で炎上し、乗っていた男が即死したとの情報が入る。焼け残った封筒に残された郵便番号は栃木のものだった。また、解剖の結果、男の足が不自由だと判明する。栃木からの郵便を受け取った足の不自由な男・・・船村はそれが出所した女の兄ではないかと直感する。兄の工場を調べた結果、誘拐された娘を抱いた女が、犯人二人とともに車で逃走するのが目撃されていた。出所した早々、事件に巻き込まれた女を案じる船村。「なぜ、そこまで気にかけるのか」と訪ねる吉野に、船村は語った。
両親と死に別れ、兄と二人きりで生きてきた女が初めて愛したのは、夜間高校の教師だった。その教師に裏切られた女は、教師を刺殺して船村に逮捕され、刑務所の中で教師の子を出産する。それは、憎い教師の子を殺すためだった。「お前は間違っている。あの子は、お前が腹を痛めて産んだ子供じゃないか!」と叱咤する船村。ようやく母性に目覚めた女だが、それまでの行動から「親としての行動に疑問あり」とされ、子供は施設に送られた。
その後、銀行員の娘が実子ではなく、施設から養女に貰われた子だと知った船村は、ある自分の想像に愕然とする。女の子供を預けた施設を訪れた船村は、自分の想像が当たっていたことを知る。再び犯人から身代金を要求する電話が入り、犯人の指示通りに車を走らせる銀行員を追う特命課。だが、またも妨害電波が。その発信源がアドバルーンによるものだと気づく船村。桜井がヘリでアドバルーンを追い、撃ち落とす。
銀行員から金を受け取った女は「子供は必ず返します。私の命に換えても」と言い残して姿を消す。金を得た犯人は娘を殺そうとする。身を挺して娘を守ろうとする女に、犯人の銃口が迫る。間一髪で特命課が駆けつけ、女と娘を救出。火傷の痕から、娘が我が子ではないかと察していた女は、「もしかして、あの子は?」と船村に問う。嘘が通用しないことを承知で「違う。お前の子は、別のところで立派に育っている」と答える船村。「おばちゃんがいたから、怖くなかった」と無邪気に笑う娘に、女は名前を尋ねた。娘の名を呼ぼうとして、言葉にならない女。それが、女にとって2度目の我が子との別れとなった。
誘拐事件の背後に秘められた哀しい親子の絆を描いた一本です。誘拐された娘と女の関係といい、妨害電波の発信源といい、先が見え見えの展開にも関わらず引き込まれてしまうのは、おやっさんはもちろん、幸薄い女を演じた紀比呂子の演技力の賜物でしょう。左時枝といい、島かおりといい、本阿弥周子といい、特捜ゲストに不幸の似合う女優には事欠きません。特捜の魅力と言えば充実した脚本が真っ先に挙げられますが、彼女たち不幸な女の存在も忘れてはいけないでしょう。
第249話 レイプ・襲われた姉妹!
脚本 佐藤五月、監督 野田幸男
郊外のスーパーに「ダイナマイトを仕掛けた」との脅迫電話が繰り返される。実際に仕掛けられることはなく、無駄な避難が繰り返されるだけだったが、叶らは捜査のために店員として潜入する。そんなある夜、スーパーに勤める若い女が連続暴行魔に襲われる。車で通りかかった叶に「通報するので交番まで送ってください」と頼む女だが、交番の前でスーパーの店長に出くわす。事情を知った店長は「君はCMにも出ている我が社の顔だ。君が襲われたことがわかればイメージダウンになる」と通報を妨害。「どうしても警察に届けるなら・・・」と、解雇すら匂わせる。両親と死別して以来、親代わりとなって妹を育てている女は、職を失うわけにはいかず、通報を断念。妹には「転んで怪我をした」と言って真実を隠す。
その翌日、脅迫電話のために売り上げが低迷するスーパーに専務が現れ、店長以下を叱咤する。そこに、またも脅迫電話が入る。電話を引き伸ばそうとする叶だが、専務は「相手になるな。単なる脅しだ」と強引に電話を切る。専務の指示で開店しようとする店長だが、叶らは「たとえ悪戯だとしても、人命を優先すべき」と制止する。脅迫電話を録音したテープをニュースで流したところ、「ヤクザの声にそっくりだ」とのタレコミが入る。そこでヤクザの情婦を当たったが、その行方はつかめなかった。
見舞いに訪れ、刑事の身分を明かした叶に、女は「あのことは忘れて、男に負けないくらい働いて出世します。それが私の男に対する復讐です」と語る。しかし、今度は学校帰りの妹が襲われる。必死に反撃した妹は、ストッキングに隠されていた暴行魔の顔を見た。女から連絡を受け、姉妹のもとに駆けつける叶。翌朝、女と叶に付き添われて警察に向かう途中、妹は売店に並んだ雑誌の表紙に暴行魔の顔を見つけると、「警察には一人で行く」と言い残して駆け出した。
その頃、特命課に専務が訪れ「捜査を取りやめてもらいたい」と要求。その首筋に残っていた引っかき傷から、叶は専務が連続暴行犯ではないかと推測する。専務をマークしたところ、行方を消していたヤクザと接触し、金を渡す現場を目撃。ヤクザを連行して問い詰めたところ、ヤクザは「専務が連続暴行魔だと知って金を要求し、言うことを聞かないために脅迫電話を繰り返した」と自白する。
そのころ、暴行魔がスーパーの専務だと知った妹は、姉のスーパーでの立場を思って通報を思い止まる。船村とともに妹の暴行現場を調べた叶は、破られたストッキングを発見。妹が犯人の顔を見たことを知る。姉妹を訪ねて、妹に証言するよう頼む船村。叶は妹の気持ちを汲んでその場を去ろうとするが、船村に叱咤される。女は妹に「自分も暴行魔に襲われた。あのとき通報していれば、あなたが襲われることはなかった」と告白し、一緒に通報しようと説得する。だが、妹は「今の職を得るために、どれだけ苦労したか思い出して」と反論し、「刑事さんたちには、女が職を得るためにどれだけ苦労するか、わかっていないのよ!」と叶らをなじる。そんな姉妹に「どんな辛い生活の中でも、社会正義というものがある。君たちなら分かるね」と語りかける船村。決意した姉妹の証言を得て、特命課は専務を逮捕。叶や船村は、辛い経験を乗り越えた姉妹の将来に幸多からんことを祈るのだった。
「女性の社会進出」が叫ばれていた当時、それでも女性には生きづらい世の中を、肩を寄せ合いながら生きる姉妹を描いた一本です。細かいところでリアルな生活観を醸し出すのが佐藤五月脚本の持ち味。職場を守るために泣き寝入りしようとする姉妹はもちろん、予告電話を受けて客を避難させようとする紅林に「開店30分サービスの卵はどうなるの!」と叫ぶ主婦や、生活保護を受けようとして「ヤクザだったらヤクザらしい稼ぎ方があるでしょう」と情婦に罵られるヤクザなど、本筋に関係ないところにも佐藤イズムが溢れています。
それはさておき、犯人の専務ですが、登場した時点で手に包帯を巻いており、「こいつが怪しいですよ」と言わんばかりの演出が興ざめです。最近のニュースでもお分かりのように、客の安全よりも利益を優先するのが経営者というもの。それだけなら「またか」で許せますが(いや、許しちゃだめか)、自らの欲望を満たすために若い美人ばかりを狙って襲うのは到底許せません。是非とも厳罰を望みたいものです。
郊外のスーパーに「ダイナマイトを仕掛けた」との脅迫電話が繰り返される。実際に仕掛けられることはなく、無駄な避難が繰り返されるだけだったが、叶らは捜査のために店員として潜入する。そんなある夜、スーパーに勤める若い女が連続暴行魔に襲われる。車で通りかかった叶に「通報するので交番まで送ってください」と頼む女だが、交番の前でスーパーの店長に出くわす。事情を知った店長は「君はCMにも出ている我が社の顔だ。君が襲われたことがわかればイメージダウンになる」と通報を妨害。「どうしても警察に届けるなら・・・」と、解雇すら匂わせる。両親と死別して以来、親代わりとなって妹を育てている女は、職を失うわけにはいかず、通報を断念。妹には「転んで怪我をした」と言って真実を隠す。
その翌日、脅迫電話のために売り上げが低迷するスーパーに専務が現れ、店長以下を叱咤する。そこに、またも脅迫電話が入る。電話を引き伸ばそうとする叶だが、専務は「相手になるな。単なる脅しだ」と強引に電話を切る。専務の指示で開店しようとする店長だが、叶らは「たとえ悪戯だとしても、人命を優先すべき」と制止する。脅迫電話を録音したテープをニュースで流したところ、「ヤクザの声にそっくりだ」とのタレコミが入る。そこでヤクザの情婦を当たったが、その行方はつかめなかった。
見舞いに訪れ、刑事の身分を明かした叶に、女は「あのことは忘れて、男に負けないくらい働いて出世します。それが私の男に対する復讐です」と語る。しかし、今度は学校帰りの妹が襲われる。必死に反撃した妹は、ストッキングに隠されていた暴行魔の顔を見た。女から連絡を受け、姉妹のもとに駆けつける叶。翌朝、女と叶に付き添われて警察に向かう途中、妹は売店に並んだ雑誌の表紙に暴行魔の顔を見つけると、「警察には一人で行く」と言い残して駆け出した。
その頃、特命課に専務が訪れ「捜査を取りやめてもらいたい」と要求。その首筋に残っていた引っかき傷から、叶は専務が連続暴行犯ではないかと推測する。専務をマークしたところ、行方を消していたヤクザと接触し、金を渡す現場を目撃。ヤクザを連行して問い詰めたところ、ヤクザは「専務が連続暴行魔だと知って金を要求し、言うことを聞かないために脅迫電話を繰り返した」と自白する。
そのころ、暴行魔がスーパーの専務だと知った妹は、姉のスーパーでの立場を思って通報を思い止まる。船村とともに妹の暴行現場を調べた叶は、破られたストッキングを発見。妹が犯人の顔を見たことを知る。姉妹を訪ねて、妹に証言するよう頼む船村。叶は妹の気持ちを汲んでその場を去ろうとするが、船村に叱咤される。女は妹に「自分も暴行魔に襲われた。あのとき通報していれば、あなたが襲われることはなかった」と告白し、一緒に通報しようと説得する。だが、妹は「今の職を得るために、どれだけ苦労したか思い出して」と反論し、「刑事さんたちには、女が職を得るためにどれだけ苦労するか、わかっていないのよ!」と叶らをなじる。そんな姉妹に「どんな辛い生活の中でも、社会正義というものがある。君たちなら分かるね」と語りかける船村。決意した姉妹の証言を得て、特命課は専務を逮捕。叶や船村は、辛い経験を乗り越えた姉妹の将来に幸多からんことを祈るのだった。
「女性の社会進出」が叫ばれていた当時、それでも女性には生きづらい世の中を、肩を寄せ合いながら生きる姉妹を描いた一本です。細かいところでリアルな生活観を醸し出すのが佐藤五月脚本の持ち味。職場を守るために泣き寝入りしようとする姉妹はもちろん、予告電話を受けて客を避難させようとする紅林に「開店30分サービスの卵はどうなるの!」と叫ぶ主婦や、生活保護を受けようとして「ヤクザだったらヤクザらしい稼ぎ方があるでしょう」と情婦に罵られるヤクザなど、本筋に関係ないところにも佐藤イズムが溢れています。
それはさておき、犯人の専務ですが、登場した時点で手に包帯を巻いており、「こいつが怪しいですよ」と言わんばかりの演出が興ざめです。最近のニュースでもお分かりのように、客の安全よりも利益を優先するのが経営者というもの。それだけなら「またか」で許せますが(いや、許しちゃだめか)、自らの欲望を満たすために若い美人ばかりを狙って襲うのは到底許せません。是非とも厳罰を望みたいものです。
第248話 殺人クイズ招待状!
脚本 長坂秀佳、監督 藤井邦夫
深夜、帰宅中の紅林は、自分を尾行する影に気づく。「救世主(メシア)の使い」と名乗った影は、「あるスーパースターを殺す。これはあんたへの挑戦だ」と予告する。翌日、特命課に紅林宛の電話が入る。「今日から金曜日ごとに4通の手紙を送る。順に日時、凶器、場所、ターゲットを暗号で記してある。暗号を解いて、答えを朝刊の広告欄に掲載しろ。全問正解すれば暗殺は中止するが、1問でも間違えれば実行する。指示を無視すれば、無関係な人物に不幸が起こる」ふざけた内容に呆れ返る特命課。予告通りに届いた第一の手紙には日本画の切抜きが入っていた。
数日後、捜査に追われて予告を無視していた紅林に、再び電話が入る。犯人は「指示通りにしないとどうなるか、思い知らせてやる」とプロ野球選手の名を挙げた。その選手の自宅が放火され、「明日までに答えを出せ」との指示が入る。日本画が示す日時を「画家の死亡した日」と推理した特命課は、指示通りに広告を出す。
凶器を示す第二の手紙には「58°」と記されていた。北緯58°、東経58°に位置する街と同じ名の喫茶店を調べる紅林。それを見計らったかのように男から電話が入り「答えを間違えるなよ」と挑発する。その間に橘と桜井が解いた答えは、ゴルフクラブの中でも58°のロフト角を持つサンドウェッジの別名、ダイナマイトだった。
一方、犯人は新聞に特命課に対する挑戦を発表し、世間の喝采を浴びる。そんな中、紅林は行きつけのガソリンスタンドで、犯人とよく似た声の青年がアルバイトをしていることに気づく。青年を調べようとする紅林だが、スタンドに届けていた住所はでたらめで、その日を境に青年は姿を消した。
場所を示す第三の手紙には「3」と記されていた。各界のスーパースターをリストアップした特命課は、犯行予告日に3とつく地名を訪れる者を絞り込むが、「わざと答えを間違え、犯人を油断させる」という神代の方針のもと、あえて無関係な「三番町」と回答した。
その間、なぜ自分が名指しされたのかを考えていた紅林は、自分と放火されたプロ野球選手とが同郷だったことを知り、故郷に飛んだ。調べたところ、青年もまた同じ町の出身であり、地元出身の著名人である紅林とプロ野球選手を強く意識し、「いつか俺も有名になる」と口にしていたという。
ターゲットを示す最後の手紙は「3×3」と記されていた。予告当日、ターゲットを絞りきれぬまま厳戒態勢を敷く特命課。「3×3」がサザン=南だと解いた紅林は、スルス(フランス語で南)と名乗る歌手が、青年とともに上京してきた仲間であり、青年が恨みを抱いていた相手だと知る。その日、歌手はソレイユという会場でリサイタルを開く予定だった。ソレイユ=太陽=Sun(サン)=3。謎を解いた紅林はソレイユへ急ぐ。現れた青年が放ったダイナマイトをキャッチし、消し止める紅林。連行されながらも「俺は歴史に残ることをやったんだ!」と勝ち誇る青年だったが、神代に「お前はジョン・レノンを殺した男の名を覚えているのか!お前の名前など、すぐに忘れ去られる」と切り捨てられ、がっくりとうなだれるしかなかった。
岸牧子氏の原案を長坂秀佳が脚本化した一本。長坂ならではの強引極まりない暗号に、思わず「解けるわけないやん」と笑ってしまいます。あまりのインパクトの強さに、特捜を揶揄するネタに使われることが少なくありませんが、それだけに、特捜ファンなら見ておかねばならない一本とも言えます。クイズの強引さ以外にも、「特命課とはいえ、単なる1刑事が著名人と言えるか?」など、突っ込みどころは多々ありますが、世間を騒がせて喜ぶ劇場型犯罪者をバッサリと切り捨てたラストの切れ味はさすがです。強引さも一つの「味」として楽しむのが、特捜ファンの嗜みというものでしょう。
なお、ご存知の方も多いでしょうが、原案の岸牧子氏とは、いまや人気脚本家として、また横綱審議委員として、さらには大日本プロレスのファンとして有名な内舘牧子氏。クイズの内容はすべて長坂氏が変えたとのことですが、もとのクイズはどんな内容だったのか?気になるところです。
深夜、帰宅中の紅林は、自分を尾行する影に気づく。「救世主(メシア)の使い」と名乗った影は、「あるスーパースターを殺す。これはあんたへの挑戦だ」と予告する。翌日、特命課に紅林宛の電話が入る。「今日から金曜日ごとに4通の手紙を送る。順に日時、凶器、場所、ターゲットを暗号で記してある。暗号を解いて、答えを朝刊の広告欄に掲載しろ。全問正解すれば暗殺は中止するが、1問でも間違えれば実行する。指示を無視すれば、無関係な人物に不幸が起こる」ふざけた内容に呆れ返る特命課。予告通りに届いた第一の手紙には日本画の切抜きが入っていた。
数日後、捜査に追われて予告を無視していた紅林に、再び電話が入る。犯人は「指示通りにしないとどうなるか、思い知らせてやる」とプロ野球選手の名を挙げた。その選手の自宅が放火され、「明日までに答えを出せ」との指示が入る。日本画が示す日時を「画家の死亡した日」と推理した特命課は、指示通りに広告を出す。
凶器を示す第二の手紙には「58°」と記されていた。北緯58°、東経58°に位置する街と同じ名の喫茶店を調べる紅林。それを見計らったかのように男から電話が入り「答えを間違えるなよ」と挑発する。その間に橘と桜井が解いた答えは、ゴルフクラブの中でも58°のロフト角を持つサンドウェッジの別名、ダイナマイトだった。
一方、犯人は新聞に特命課に対する挑戦を発表し、世間の喝采を浴びる。そんな中、紅林は行きつけのガソリンスタンドで、犯人とよく似た声の青年がアルバイトをしていることに気づく。青年を調べようとする紅林だが、スタンドに届けていた住所はでたらめで、その日を境に青年は姿を消した。
場所を示す第三の手紙には「3」と記されていた。各界のスーパースターをリストアップした特命課は、犯行予告日に3とつく地名を訪れる者を絞り込むが、「わざと答えを間違え、犯人を油断させる」という神代の方針のもと、あえて無関係な「三番町」と回答した。
その間、なぜ自分が名指しされたのかを考えていた紅林は、自分と放火されたプロ野球選手とが同郷だったことを知り、故郷に飛んだ。調べたところ、青年もまた同じ町の出身であり、地元出身の著名人である紅林とプロ野球選手を強く意識し、「いつか俺も有名になる」と口にしていたという。
ターゲットを示す最後の手紙は「3×3」と記されていた。予告当日、ターゲットを絞りきれぬまま厳戒態勢を敷く特命課。「3×3」がサザン=南だと解いた紅林は、スルス(フランス語で南)と名乗る歌手が、青年とともに上京してきた仲間であり、青年が恨みを抱いていた相手だと知る。その日、歌手はソレイユという会場でリサイタルを開く予定だった。ソレイユ=太陽=Sun(サン)=3。謎を解いた紅林はソレイユへ急ぐ。現れた青年が放ったダイナマイトをキャッチし、消し止める紅林。連行されながらも「俺は歴史に残ることをやったんだ!」と勝ち誇る青年だったが、神代に「お前はジョン・レノンを殺した男の名を覚えているのか!お前の名前など、すぐに忘れ去られる」と切り捨てられ、がっくりとうなだれるしかなかった。
岸牧子氏の原案を長坂秀佳が脚本化した一本。長坂ならではの強引極まりない暗号に、思わず「解けるわけないやん」と笑ってしまいます。あまりのインパクトの強さに、特捜を揶揄するネタに使われることが少なくありませんが、それだけに、特捜ファンなら見ておかねばならない一本とも言えます。クイズの強引さ以外にも、「特命課とはいえ、単なる1刑事が著名人と言えるか?」など、突っ込みどころは多々ありますが、世間を騒がせて喜ぶ劇場型犯罪者をバッサリと切り捨てたラストの切れ味はさすがです。強引さも一つの「味」として楽しむのが、特捜ファンの嗜みというものでしょう。
なお、ご存知の方も多いでしょうが、原案の岸牧子氏とは、いまや人気脚本家として、また横綱審議委員として、さらには大日本プロレスのファンとして有名な内舘牧子氏。クイズの内容はすべて長坂氏が変えたとのことですが、もとのクイズはどんな内容だったのか?気になるところです。
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