脚本 藤井邦夫、監督 宮越澄
1985年5月29日放送
【あらすじ】
7歳の少年が誘拐された。誘拐犯の指示を受け、身代金を持って首都高速を走る父親。その前後を橘・吉野と桜井・叶が車で見張り、さらに上空からは紅林がヘリで追跡する。目印の白いハンカチは待避車線に残されており、父親はトランクを置いて走り去る。非常階段を上ってきた犯人がトランクを持って逃走。このまま逃がしては、首都高速の影に隠れて上空からの追跡も困難となる。車を降りて犯人を追う桜井と叶。「止まらんと撃つぞ!」叶の威嚇に驚いた犯人は転落死を遂げる。
少年の身柄はどこに?犯人の衣服に残ったメモをもとに、遊園地跡にヘリで先行する紅林。少年のランドセルとともに、割れた窓ガラスと血痕を発見。血痕は少年のものと判明し、出血の量からすれば、救出は一刻を争う。血痕の途切れた場所で聞き込んだところ、軽トラックが慌てて走り去って行ったらしい。
軽トラックに記されていた会社名から、運転しているのは零細企業の社長と判明。社長は誘拐の共犯なのか?零細企業を訪ね、社長の妻を問い質す桜井たち。妻は誘拐犯に心当たりはなく、社長は朝から金策に出かけているという。今日中に手形を決済できなければ、会社が倒産してしまうのだ。
社長の足取りを追う桜井は、融資に必要な印鑑証明と住民票を取りに行った区役所へと向かう。区役所員の証言では、終業時間の12時を過ぎていたため、必死に頼む社長を追い返したという。朝一に出かければ、区役所まで12時過ぎまでかかるはずはない。その間、社長は何をしていたのか?だが、身代金受け渡しの最中にも金策に走り回っていたことは明らかであり、「社長は共犯などではなく、脱出してトラックに逃げ込んだ子供に気づいていないだけでは?」と推測する桜井。
なおも捜査を続けたところ、社長が警官に尋問されていたことが判明。老人が貧血で倒れる現場に行き会った社長は、親切心から老人を病院に送り届けた。だが、目撃者は軽トラックが轢いたと勘違いして通報。老人の意識が戻るまで、しつこく警官に尋問されたため、区役所に間に合わなかったのだ。
社長の無実に気づき、公開捜査に切り替える特命課。ニュースを聞いて子供の存在に気づいた社長は、特命課に電話を掛ける。応対した神代に対し、社長は「区役所員と警官にテレビで謝罪させろ!そうしないとあの子は返さない!」子供の命はもちろん、善意の行動のために窮地に陥った社長を犯罪者にしないためにも、必死の説得を続ける神代。絶望感に駆られて自暴自棄になる社長だが、逆探知で居場所をつきとめられ、観念する。「あなたの善意を誤解し、窮地に陥れたことを謝りたい」同じ警察官の一人として頭を下げる神代の態度に、社長は子供の居所を明かす。無事に保護された子供は、社長の応急手当により一命を取り止める。事情を知った子供の祖父が融資を申し入れたことで、社長の会社も倒産を免れるのだった。
【感想など】
誘拐された少年の安否を巡るサスペンスと、理不尽なお役所仕事に追い詰められる社長の悲哀とが絶妙に絡み合った一本。ここのところ、着実にレベルが上がってきていると感じていた藤井脚本ですが、今回でその評価をさらに高めた感あります。後半の展開が第118話「子供の消えた十字路」の焼き直しだったり、オチが丸分かりだったりと、気になる箇所がないでもありませんが、特定の主役刑事がいないながらも、刑事一人ひとりにさり気なく見せ場を与えているあたり、非常に好感が持てます。
誘拐犯を死なせた責任にかられる余り、社長を共犯と決め付けたことを後悔する叶。そんな叶をフォローする桜井。誘拐犯の母親を気遣う吉野や橘。そして、何よりも一人の警官の不始末を、我がことのように頭を下げる神代の潔さ。彼ら一人ひとりの誠意と責任感が、救いのあるラストに結びつき、非常に爽やかな後味を残します。
その一方で、社長を追い詰めた区役所員や警官は、結局、何の罪も責任も問われることなく、これからもお役所仕事や高圧的な尋問を続けることでしょう。職務に忠実であった警官はまだしも、ルールを自分たちが楽をするための道具としか捕らえていない区役所員の姿は、当時も今も全く変わることなく、怒りを越えて憎悪すら覚えます。自分たちの仕事が誰のためのものか、自分たちが得ている給料は何に対する対価なのか、一度たりとも考えることなく、顧客満足などという言葉とは無縁のままに、ただ定年までの日々を過ごす連中には、社長ならずとも「謝れ!」と怒鳴りつけたくなります。甘く、安易なラストと思われる方もいるかもしれませんが、こんなクズどものために犯罪者にならなくてよかったと、心の底から思う私でした。
1985年5月29日放送
【あらすじ】
7歳の少年が誘拐された。誘拐犯の指示を受け、身代金を持って首都高速を走る父親。その前後を橘・吉野と桜井・叶が車で見張り、さらに上空からは紅林がヘリで追跡する。目印の白いハンカチは待避車線に残されており、父親はトランクを置いて走り去る。非常階段を上ってきた犯人がトランクを持って逃走。このまま逃がしては、首都高速の影に隠れて上空からの追跡も困難となる。車を降りて犯人を追う桜井と叶。「止まらんと撃つぞ!」叶の威嚇に驚いた犯人は転落死を遂げる。
少年の身柄はどこに?犯人の衣服に残ったメモをもとに、遊園地跡にヘリで先行する紅林。少年のランドセルとともに、割れた窓ガラスと血痕を発見。血痕は少年のものと判明し、出血の量からすれば、救出は一刻を争う。血痕の途切れた場所で聞き込んだところ、軽トラックが慌てて走り去って行ったらしい。
軽トラックに記されていた会社名から、運転しているのは零細企業の社長と判明。社長は誘拐の共犯なのか?零細企業を訪ね、社長の妻を問い質す桜井たち。妻は誘拐犯に心当たりはなく、社長は朝から金策に出かけているという。今日中に手形を決済できなければ、会社が倒産してしまうのだ。
社長の足取りを追う桜井は、融資に必要な印鑑証明と住民票を取りに行った区役所へと向かう。区役所員の証言では、終業時間の12時を過ぎていたため、必死に頼む社長を追い返したという。朝一に出かければ、区役所まで12時過ぎまでかかるはずはない。その間、社長は何をしていたのか?だが、身代金受け渡しの最中にも金策に走り回っていたことは明らかであり、「社長は共犯などではなく、脱出してトラックに逃げ込んだ子供に気づいていないだけでは?」と推測する桜井。
なおも捜査を続けたところ、社長が警官に尋問されていたことが判明。老人が貧血で倒れる現場に行き会った社長は、親切心から老人を病院に送り届けた。だが、目撃者は軽トラックが轢いたと勘違いして通報。老人の意識が戻るまで、しつこく警官に尋問されたため、区役所に間に合わなかったのだ。
社長の無実に気づき、公開捜査に切り替える特命課。ニュースを聞いて子供の存在に気づいた社長は、特命課に電話を掛ける。応対した神代に対し、社長は「区役所員と警官にテレビで謝罪させろ!そうしないとあの子は返さない!」子供の命はもちろん、善意の行動のために窮地に陥った社長を犯罪者にしないためにも、必死の説得を続ける神代。絶望感に駆られて自暴自棄になる社長だが、逆探知で居場所をつきとめられ、観念する。「あなたの善意を誤解し、窮地に陥れたことを謝りたい」同じ警察官の一人として頭を下げる神代の態度に、社長は子供の居所を明かす。無事に保護された子供は、社長の応急手当により一命を取り止める。事情を知った子供の祖父が融資を申し入れたことで、社長の会社も倒産を免れるのだった。
【感想など】
誘拐された少年の安否を巡るサスペンスと、理不尽なお役所仕事に追い詰められる社長の悲哀とが絶妙に絡み合った一本。ここのところ、着実にレベルが上がってきていると感じていた藤井脚本ですが、今回でその評価をさらに高めた感あります。後半の展開が第118話「子供の消えた十字路」の焼き直しだったり、オチが丸分かりだったりと、気になる箇所がないでもありませんが、特定の主役刑事がいないながらも、刑事一人ひとりにさり気なく見せ場を与えているあたり、非常に好感が持てます。
誘拐犯を死なせた責任にかられる余り、社長を共犯と決め付けたことを後悔する叶。そんな叶をフォローする桜井。誘拐犯の母親を気遣う吉野や橘。そして、何よりも一人の警官の不始末を、我がことのように頭を下げる神代の潔さ。彼ら一人ひとりの誠意と責任感が、救いのあるラストに結びつき、非常に爽やかな後味を残します。
その一方で、社長を追い詰めた区役所員や警官は、結局、何の罪も責任も問われることなく、これからもお役所仕事や高圧的な尋問を続けることでしょう。職務に忠実であった警官はまだしも、ルールを自分たちが楽をするための道具としか捕らえていない区役所員の姿は、当時も今も全く変わることなく、怒りを越えて憎悪すら覚えます。自分たちの仕事が誰のためのものか、自分たちが得ている給料は何に対する対価なのか、一度たりとも考えることなく、顧客満足などという言葉とは無縁のままに、ただ定年までの日々を過ごす連中には、社長ならずとも「謝れ!」と怒鳴りつけたくなります。甘く、安易なラストと思われる方もいるかもしれませんが、こんなクズどものために犯罪者にならなくてよかったと、心の底から思う私でした。