特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第379話 蛍の女・望郷のまつりうた!

2008年01月30日 20時05分56秒 | Weblog
脚本 宮下隼一、監督 天野利彦

郵便局に二人組の強盗が押し入った。駆けつけた橘の目前で、強盗の片割れである老人がバイクにはねられ死亡。共犯の男もその場で取り押さえられた。男は取調べに対して「老人は最近知り合っただけで苗字しか知らない。強盗は老人から借りた金を返すためで、計画したのも老人だ」と主張する。二人が借金について言い争っていたという目撃証言もあり、男の言い分は確かに思われた。
一方、防犯カメラに残された犯行現場の映像を確認したところ、「老人は本当に共犯だったのか?」との疑問が生じる。だが「死人に口無し」で、男の主張を覆す材料は何もない。飯場を訪ね歩き、老人の友人を探し当てる橘と船村。友人の証言から浮かび上がるのは、故郷を懐かしむ孤独な老人の姿だった。老人がいつも口ずさんでいたという民謡の節回しから、船村は福島県の相馬(そうま)出身だと目星をつける。
福島県警に照会したところ、老人には10年前に失踪届けが出ていたが、届出人である妻はすでに死亡しており、娘は死体の受け取りを拒否。老人の過去を知るため、相馬に飛んだ橘は、老人が10年前に公金横領の嫌疑を受けていたことを知る。容疑は濃かったが、老人は黙秘を貫き、証拠不十分でやむなく釈放したところ、即座に妻子を残して失踪したという。老人の娘が教師として勤める学校を訪ねる橘。何も言わずに姿を消した老人のために苦難の日々を過ごしてきた娘は「憎んでいるわけではない、許せないだけです」と、死体受け取りを頑なに拒む。
その頃、特命課は老人と男が旧知の仲であったことを掴む。「男が10年前の横領にも関わっていたのではないか」と事件を洗い直す橘。だが、老人が強盗を働いたという新聞記事が原因で、娘は学校で生徒や父兄からの厳しい視線にさらされる。父親と離れて暮らす少年に「大人になるには父親離れをしないといけない」と励ましていた娘だが、少年から「先生は自分のお父さんが嫌いなんだろう。だから、パパの言うことしか聞かない僕が嫌いなんだろう」と罵られ、ショックを受ける。
その頃、橘はついに横領の真犯人が男だと突き止める。男は、かつて恩を売っていた老人から公金を騙し捕っていた。老人の失踪は、男を自分の手で捕らえるためだったのだ。真相を娘に伝えようとする橘だが、教師という仕事に自信を失った娘は自殺を図る。橘の説得にも耳を貸さない娘に生きる力を取り戻させたのは、橘に諭された少年の「先生、死んじゃいやだ!」という叫びだった。
同じ頃、特命課は老人が共犯ではなく、たまたま現場に居合わせ、男を追いかけただけだったことを立証し、晴れて老人の無罪が証明される。後日、改めて老人の遺骨を抱いて相馬を訪れた橘を、娘が迎える。父と娘との無言の再会を、橘は暖かく見守るのだった。

タイトルだけで「また地方名物巡りかよ」とげんなりしていましたが、エンディングを丸ごと祭りの映像に費やしただけあって、ドラマ部分を食われるほどではありませんでした。とはいえ、要素が詰め込み過ぎな上に、実にご都合主義的な展開であり、説得力に欠けるのは否めません。特に、汚名を来たまま何も語ることなく失踪した老人の行動は疑問です。一切黙秘したまま弁解しないのがこの世代の美徳とは言え、すべてを明かして警察に男を追ってもらえば、10年もかからずに解決したのではないでしょうか?
泣かせどころとしては、父親を慕う少年と娘との交流が挙げられますが、少年と娘の父親に対する想いの対比を、橘と老人の子を思う父親の気持ちの対比と重ね合わせて掘り下げれば、もっと泣ける話になったのではないでしょうか?
ちなみにタイトルにある「蛍の女」とは、娘の名前であり、相馬地方の名物でもあります。ドラマ上は、老人が思いを馳せる故郷の象徴として描かれていますが、ビジュアルとしては蛍の死骸しか見れないため、興を殺がれることこの上ありません。もう一つの名物である「相馬野馬追祭り」はストーリーと一切関わり無く、「地方名産をドラマに活かす」という地方ロケものの命題は果たせずじまいと言えそうです。

第378話 レイプ・妻に捧げる完全犯罪!

2008年01月29日 00時03分33秒 | Weblog
脚本 池田雄一、監督 辻理

ある夜、検問を強引に突破した車を追う叶と吉野。停車させた車のトランクからは、血痕とナイフ、そしてスコップが発見される。死体を埋めた帰りと思われる男を取り調べるが、男は黙秘を貫く。車のナンバーから所有者を割り出し、その自宅で妻に確認したところ、やはり本人に間違いなかった。
トランク内に残された指紋を調べたところ、被害者は前科のある婦女暴行犯と判明。そのアパートには大量の血痕が残されており、犯行現場とみて間違いなかった。サラ金の督促状とともに発見された写真には、男の妻がレイプされた姿が映されていた。黙秘を続ける男に写真を見せ「これが動機だろう?」と問い詰める叶。男は妻がレイプされたことを知って復讐を企てたことは認めるが、殺人については否定する。証拠はすべて男が犯人だと示しており、特命課は死体が見つからないまま殺人容疑で送検する。
そんななか「たった今、新宿のバーで殺されたはずの婦女暴行犯に会った」という女性からの電話が特命課に入る。そのバーを調べたところ、確かにそれらしき男が来客しており、水玉模様の女性が迎えに来ていたことが判る。採取した男の指紋は、確かに婦女暴行犯のものだった。「殺されかけた婦女暴行犯が逃げ延びたのか?」あるいは「婦女暴行犯がサラ金の督促から逃れるために男を陥れたのか?」いずれにしても、殺人の事実がないのは明白となり、男は釈放される。
その後も男の身辺を探り続ける特命課。叶は妻が水色の服を着ていたことを思い出す。叶は婦女暴行犯と妻の関係を疑い「奴を匿っているのでは?」と妻に問い質す。否定する妻に、神代は「奴の居場所のタレコミがあった。2、3日中には全てがはっきりします」と揺さぶりをかける。神代の狙い通り、夫婦は山荘に匿っている婦女暴行犯を殺すべく、行動を開始する。すべては、婦女暴行犯を完全犯罪で葬るための策略だった。
妻は憎い婦女暴行犯に身体を投げ出すことで信用させ、「夫を殺人犯として陥れる」と持ちかけ、あたかも殺人が行われたように細工した。夫が逮捕された後、婦女暴行犯が生きている証拠を特命課に与えたのも妻の仕業であり、ほとぼりが冷めた頃に、密かに婦女暴行犯を殺すつもりだったのだ。しかし、山荘で待っていたのは先回りした叶だった。殺人未遂の罪で夫婦を逮捕し、事件は解決。だが「こうするしかなかったんだ」と苦しい心情を漏らす夫の姿に、叶は割り切れない思いを感じるのだった。

『Gメン75』で有名な池田雄一氏を脚本に迎えた一本ですが、サブタイトルを見ただけで、「妻をレイプされた夫が、復讐のためにレイプ犯を完全犯罪で葬る話」と粗筋がすべて把握できてしまうのは、いかがなものか?「レイプ犯のために一生を棒に振るのは割に合わない」と考えるのは分からなくもないですが、だからと言って、完全犯罪にするためにレイプ犯に何度も抱かれる妻の心理は異常というより「あり得ない」のでは?私は男性ですので、レイプされた女性の気持ちは推測するしかないのですが、同じ男性として夫の立場で考えても「妻をそんな目に合わせるくらいなら、一生刑務所に入ろうとも即刻レイプ犯を殺す」と考えるのが普通では?犯行動機が「失われた夫婦の絆を取り戻すため」というのも、とって付けた感がありありと出ていますが、仮に夫婦の絆が失われたのだとすれば、それは「妻の仇を取りたいけれど刑務所に入るのは嫌」というヘタレな夫のせいではないでしょうか?

第377話 住宅街の殺人ゲーム!

2008年01月23日 02時22分19秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 宮越澄

ある夜、橘の近所のスーパーに押し入った強盗が、店長を刺殺して逃走。やがて現場付近で死体となって発見される。所轄署では、「店長の反撃を受けてナイフで刺され、逃げる途中に出血多量で死亡した」と結論づけるが、橘は強盗の顔面に残った痣に着目。何者かに暴行を受けたのではないかと推測する。だが、強盗が婦女暴行で出所したばかりの近所でも札付きの悪党だったため、所轄署は捜査の継続を認めない。「前科者だからこそ、偏見を排して捜査すべき」という橘の主張で、特命課が捜査に乗り出す。
現場付近の住人を調べ上げ、強盗を目撃していると思しき4名の住人に協力を仰ぐ特命課。老人と会社員は「たまたま一緒に酒を飲んでいた」ため、主婦と受験生は「寝ていて何も気づかなかった」ため、強盗など見ていないと証言する。やむなく現場付近に立て札を掲げて目撃者を募る橘に、老人の妻が「うちの人は結石で苦しんでいる、もう取り調べないで」と訴える。付近の家の二階から、鏡で様子を窺う者がいることに気づいた橘は、その家を訪ねる。そこにいた娘は「何も見ていない」と証言を拒む。娘は3年前、死んだ強盗に襲われ、そのショックで寝た切りとなっていた。
その後も目撃者は見つからず、立て札も住人に撤去される。そんななか、特命に若い女の声で「私、誰かが殴っているのを見ました」との電話が掛かってくる。やはり、強盗は誰かの暴行を受けていた。再度4名の住人を集める橘。「酒を飲んでいた」と主張する老人に、「結石の貴方が、なぜ酒なんか飲むんです?」と問い詰める橘。口裏を合わせていたことが発かれ、老人と会社員は狼狽する。そこに、主婦の夫が現れるが、主婦は皆の面前で夫の浮気を罵る。「あんたのせいで、私は毎晩眠れないのよ!」と叫ぶ主婦。「奥さん、あの夜は寝ていたんじゃないのかね?」との指摘に、主婦は逆切れする。アリバイが崩れた住人たちに「貴方たちの誰かが奴を殺し、それを皆でかばっている。違うか?」と追及する橘だが、住人たちの口は重かった。
その夜、橘は暴走族に怒りを露にし、警察の無力を批判して「父さんが止めないなら、俺が奴らをぶち殺してやる」と口走る息子を見て、最悪の推理へと至る。「強盗の死は、容疑者4人によるリンチによるものではないのか?」三度住人らを呼び出すと、橘は目撃者の存在を明かし、「目撃者が証言する前に、自分の口から言ってほしい」と語りかける。住人らの罪を軽くするためにも、目撃者に辛い思いをさせないためにも、それが最善だと考えたからだ。しかし、住人らは依然として沈黙を保ち、ついに特命課の説得を受けた娘が現れる。「強盗を殴っていたのは、この人たちです」忸怩たる想いで娘の証言を聞いていた橘だが、意を決して4人の取調べを開始する。
「俺たちは何もしようとしない貴様ら警察の代わりに、社会正義のためにやったんだ」と開き直る会社員。だが、主婦の証言で、会社員は他の誰かの名を呼びながら強盗を殴りつけていたことが判明。それは、会社員に左遷を告げた上司の名だった。同様に、主婦は夫の浮気相手である若い娘への憎悪を、老人は耄碌扱いしたバスの運転手への怒りを、受験生は受験勉強に追われるストレスを、手負いの強盗にぶつけていたのだ。うつむく4人の前に、橘の怒りが静かに響く。「あんたらは、社会正義の名のもとに、自分より弱い者を苛めただけだ。奴のしたことと何ら変わらん!」

“街のダニ”の死の影に隠された、醜い人間性を描き出した一本。第283話「或る疑惑」といい、第309話「撃つ女」といい、ツボにはまったときの佐藤五月脚本の切れ味には、唸らされるものがあります(同じ脚本家の頭から第325話「超能力の女」や先日の第373話「呪われた死者の呼ぶ声」のような怪作が生まれるのが不思議でなりません)。今回も、先に挙げた2話ほどではないにせよ、容疑者がみんな共犯というオチ事態は珍しくないものの、社会正義の名のもとに、日常のストレスのはけ口として殺人を犯すという発想が、ひと捻り効いています。
「安心して暮らせる街にするために、周囲に迷惑をかけるだけの“街のダニ”に、何もしない警察に代わりって市民の手で制裁を加える。それのどこがいけない!」という住人たちの主張は、時折現れる暴走族(街宣車や選挙演説車も同様)にうっとうしい想いをさせられる私にとって、大いに頷けるものがあります。しかし、ひとたびこの理論を認めてしまえば、その制裁の対象が無制限に拡大し、収拾がつかなくなるのもまた必然であり、少なくとも法や警察が認めるはずがありません。(市民にこうした想いを抱かせないのも、為政者の責任だと思うのですが・・・)
また、都合が悪くなる度に「年寄りだと思ってバカにするな!」と切れる老人をはじめ、自分を省みることなく、被害者意識だけを肥大させた住人たちの姿も醜悪この上なく(ゲスト俳優さんへの褒め言葉です)、実に嫌な思いにさせてくれます。また、ラストでようやく会社員が漏らした「バカなことをしてしまった」という台詞が、人を殺したことへの反省や罪の意識でなく、単なる後悔でしかないというところに、より大きな絶望感が味わえて最高です。
ラストで見せた橘の苦い表情の裏にあるもの、それは、愛する我が子も、そして(刑事という立場でなければ)自分でさえも、同じ状況で彼らと同じ行為を働かない保証はないという、目を背けたくなるような現実だったのではないでしょうか?

第376話 警官汚職地図!

2008年01月22日 00時33分12秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 松尾昭典

風俗街への手入れが空振りに終わる事態が続く。警察からの情報漏れが噂されるなか、検察庁に所轄署の刑事と風俗業者の癒着を密告する手紙が送られてくる。事態を知った神代は「警察に自浄作用があることを示さねば、一握りの不良警官のために、全警官の名誉が損なわれる」と捜査を買って出る。
神代の指示を受けた桜井は、早速、風俗店の店長を逮捕して所轄署に連行。「私の目的は奴らを摘発することではなく、奴らに情報を売っている薄汚い警官を摘発することだ」と宣言する桜井に、所轄署の刑事たちは不快感を露にする。その夜、桜井を尾行してきた所轄署の若手刑事が、班長に汚職の疑いがあることを告げる。証拠をつかむべく捜査を続ける桜井に、班長が接近。汚職刑事の名を明かす班長だが、自分に対する疑惑には言葉を濁した。所轄署の防犯課長からは「捜査を辞めろ」と恫喝される桜井だが、クビをかけてでも捜査を貫くことを宣言する。
班長を尾行する最中、桜井は引ったくりを目撃し、班長とともに追跡。引ったくり犯にもいたわりを見せる班長の姿を見て、桜井に迷いが生じる。そんな桜井に、班長はかつての相棒のことを語る。ヤクザをかばって殉職したその相棒は、どこか桜井に似ていたという。班長宅を張り込む桜井のもとに、神代自らが現れ、かつて世話になった先輩刑事を逮捕した経験を語る。「誰かが手錠を掛けなければならないとすれば、一番世話になった私がやるべきだと思った。そうした苦さから、私たちは逃げちゃいけない」
翌朝、班長は妻に「警官として最後の仕事をする」と言い残して姿を消した。妻から「夫は、殉職した相棒の娘さんのことで悩んでいた」と聞いた桜井は、相棒の娘を訪ねる。動揺する娘だが、班長の悩みについては口をつぐんだ。
その後、橘らの捜査で、汚職刑事が防犯課長ら数名だと判明。班長に金が渡った事実はなかった。安堵する一方で、班長の身を案じる桜井。そこに班長から桜井宛に電話が入る。呼び出された先に急行した桜井が見たものは、自らの手に手錠を掛け、拳銃自殺を遂げた班長と、証拠として残されたテープだった。
班長の遺体を前に、相棒の娘が真相を語る。相棒は病気の妻のため、風俗店のオーナーから借金をしていた。殉職後、オーナーは娘に返済を迫り、困り果てた娘は班長に相談。その借金を帳消しにするために、班長は一度だけオーナーに手入れの情報を流していたのだ。
班長が残したテープには、防犯課長に汚職の事実を追及した際の会話が録音されていた。班長の想いを汲んで、テープを所轄署に託す桜井。防犯課長以下の汚職警官は所轄署によって逮捕されるが、情報を流した事実から、班長もまた警察官としての立場と名誉を失った。だが、桜井は確信していた。命を賭して警察の自浄作用を促した班長こそ、真の警察官であることを。

汚職警官の摘発という苦い仕事に挑む桜井と、死んだ友のために一度だけ犯した過ちを自らの死で償う刑事との、哀しい交流を描いた一本です。重たい話なのに、なぜか印象に残らないのは何故だろうか?と考えてみたところ、二つの理由が浮かびました。
一つは、サブキャラを豊富に配しすぎたのが裏目に出て、それぞれ描写不足に終わったことです。自分を育ててくれた班長を尊敬しながらも、汚職を許すことができず苦悩する若手刑事。叩き上げの刑事を長年にわたり支え続けた班長の妻。班長同様に人情派であったと思われる相棒と、その遺児たち。それぞれ巧妙な人物配置だとは思うのですが、いずれも消化不良に終わっているように思われて残念です。
もう一つは、自ら死を選ぶほかなかった班長の苦悩と葛藤が、理屈では分かるものの、描写として全然足りていないこと。さらに何故、今なのか?何故もっと早くに(死を選ぶかどうかは別にして)告発しなかったのか?がはっきりしないこと。これも理屈では、桜井のクビを賭した覚悟に触発されたのだろうと分かるのですが、もう少しドラマの中で描いて欲しかった。桜井に似ていたという相棒(とその遺族)の話題に絞って展開してもらった方が、もっと良い話になったのではないでしょうか?
などと偉そうに評してみましたが、ここしばらくの低迷振りからは抜け出したような印象。とくにラストで神代が語る「失った信頼を取り戻すためには、全国の警官一人ひとりが、今後の行動で示していくほかない」という言葉は、全ての警官、そして公務員どもに聞かせてやりたいものです。

第375話 恐怖のプールサイド!

2008年01月17日 06時00分52秒 | Weblog
脚本 宮下隼一、監督 野田幸男

プールで一心不乱に泳ぐ娘を、優しく見つめる高杉。娘は以前、万引の現場を高杉に取り押さえられていたが、その後、高杉の励ましを得て水泳選手として立ち直っていた。娘から相談を持ちかけられた高杉だが、多忙のため応じることができなかった。
その夜、高杉が自宅で入浴していたところ、水道から浴槽に髪の毛が流れ込んでくる。給水タンクを調べたところ、大量の毛髪が投げ込まれており、悪質なイタズラと思われた。
翌日、娘の友人が高杉を訪れ、娘が行方不明になったと告げる。友人は娘と同じく水泳選手だったが、一年前に足を怪我して水泳を辞めていた。娘の日記には「もう絶望だ、いっそYと一緒に死にたい」と記されていた。娘のコーチに心当たりを訪ねたところ、かつてプールで監視員として働いていたイニシャルYの男が、女性から「目つきが嫌らしい」との苦情が出て、クビになっていた。男には婦女暴行の前科があり、娘がそんな男と付き合っていたとは信じられない高杉。だが、数日後、男と娘が心中死体で発見される。
娘に何があったのかを調べ始めた高杉は、娘がコーチと付き合っていたこと、コーチの名のイニシャルもYであること、さらにコーチが高杉と同じマンションに住んでいることを知る。日記のYはコーチのことではないかと推測する高杉。さらに調査を進めると、コーチが今夜にも渡米する予定であり、その間に部屋を改装する予定だと判明。コーチの部屋が犯行現場だと直感した高杉は、ルミノール試薬を持ち出して部屋に侵入する。
その頃、特命課では、娘と男の検死結果から偽装心中だと判明。犯人は左利きと推測されたが、プールの関係者で左利きはコーチだけだった。コーチの部屋で血痕を発見した高杉を、何者かがナイフで襲う。危ういところに特命課が駆けつけ、犯人は逃走。空港に急行し、渡米しようとしていたコーチを逮捕。事件は解決したかに見えた。
真相を報せようと友人を訪ねる高杉。友人はプールに花を供えに出かけていた。プールに向かった高杉は、友人の着衣にルミノール反応を発見。コーチの部屋で高杉を襲ったのは友人だったのだ。同じ頃、特命課ではコーチが「すべては友人が仕組んだこと」と告白していた。すべては一年前、風邪気味だった少年がプールで水泳の練習中に急死した事件が発端だった。当時、少年の担当指導員だった友人は、責任を感じて自殺を図り、足を負傷して水泳競技者としての夢を絶たれた。当然の報いとして受け入れていた友人だが、数日前、コーチが男から強請られている現場を偶然目撃し、娘が少年の風邪を知っていたことを知る。本来、責任を問われるべきは娘であり、それをかばったコーチだった。
復讐を誓った友人は「真相を明らかにされたくなければ、娘を殺せ」とコーチを脅す。コーチは男と娘を心中に見せかけて殺害し、数日間、貯水槽に死体を隠していた。友人の狙いはコーチを死刑にすることであり、そのために高杉をも殺そうとする。プールに落ち、ハシゴ?に足を取られて溺れる高杉。逃走しようとした矢先、高杉に届いていた娘からの手紙を発見する友人。そこには、友人と少年に死んで詫びようとする娘の想いが綴られていた。娘の真意を知った友人は、泳げないはずの足でプールに飛び込み、高杉を救出。駆けつけた特命課によって、逮捕される友人を、高杉は哀しげに見送るのだった。

幹子主演の話には見ごたえのない話が多いのですが、今回もすごかった。娘の死体の髪の毛が不自然に椅子に絡みつくわ、わざわざマンションの貯水槽に死体を隠すわ、いろいろと突っ込みどころが満載です。また、以前は「刑事の真似事をするな!」と怒られていたものですが、今回は勝手に聞き込むわ、コーチの部屋に侵入するわ、ルミノール試薬を持ち出すわと、よく神代課長が放置したものだと呆れるほかありません。最後は何とか良い話っぽくまとめていましたが、それまでの展開が無理矢理だっただけに、「だからどうした」という印象です。
ちなみに、不幸な友人を演じた女優に見覚えがあったので「誰だったか?」と思っていたところ、ダイナピンクなどを演じた萩原佐代子さんでした。前話(殺人エレベーター)にはダイナレッドも出ていましたが、それくらいしか語りどころのない2編でした。

第374話 真夜中の殺人エレベーター!

2008年01月15日 23時31分49秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 天野利彦

誰に知られることもなく、雑居ビルのエレベーターの屋根裏で白骨となっている死体。年に一度の定期点検を控えたある夜、その死体を密かに運び出そうとする男がいた。ビル内のクラブのママに見咎められた男は、ママを殺害し、現場に白骨死体を残して逃走する。
半年前、クラブで働く娘が行方不明になっており、白骨死体はその娘かと思われた。しかし、娘の履歴書には写真がなく、住所もデタラメだったため、身許が分からない。所轄署では娘に付きまとっていた男を容疑者として指名手配するとともに、死体が娘であることを確認すべく、科研に複顔を依頼する。だが、担当した科研の技官が何者かに襲われ負傷。復顔を妨害する何者かの仕業と見た神代は、技官に代わって復顔を行うことになった医大の女講師のガードを吉野に命じる。
助手の男子学生とともに、深夜まで医大に残って復顔作業を続ける女講師。不意の停電に、学生が配電室を見に行くが、闇の中に学生の悲鳴が響く。吉野は死体となった学生とともに、学生が彼女と一緒に映った写真を発見。女講師に確認したところ、彼女は学生と別れて他の男と付き合っていたが、今は卒業して田舎に帰ったはずだという。学生は、自分を捨てた彼女が忘れられず、写真を持ち続けていたらしい。
学生の死にショックを受けた女講師を送っていく吉野。犯人の魔手は女講師にも伸びる。危ないところで吉野が助けに入るが、犯人は逃走する。その後、特命課は匿名のタレコミを得て、容疑者の潜伏先に踏み込む。そこでは、容疑者が首を吊って死んでいた。残されていた帽子は、吉野の見た犯人が身につけていたもので、追い詰められた末に自殺したものと見られた。だが、橘は自殺に見せかけた殺人と見破り、タレコミの主が真犯人だと推測する。
容疑者が所有していた行方不明の娘の写真を公開し、身許に関する情報を募ったところ、娘本人が出頭。娘は容疑者のつきまといを避けるため、行方をくらましていただけだった。その頃、ようやく完成した復顔は、殺された学生の彼女に他ならなかった。彼女が田舎に帰ったという情報は、担任教授が語ったもの。吉野は教授に疑惑の目を向ける。
その後の捜査で、教授はクラブの常連であり、容疑者とも顔見知りだと判明。容疑者と行方不明の娘の顛末を隠れ蓑に彼女を殺し、発覚を恐れて学生を殺したのだと推測するが、証拠は何もない。吉野は一計を案じ、復顔はまだ終わっていなく、死体の欠損部分を探すため、エレベーターを捜索するとマスコミに発表する。その夜、密かにエレベーターを調べにきた教授を、待ち受けていた特命課が逮捕。「スキャンダルをネタに彼女に脅されていた」と彼女への恨み言を漏らす教授。吉野と女講師は、悲劇を招いた女の復顔を、暗然と見つめるのだった。

冒頭から白骨死体が登場するショッキングなシチュエーション。どう展開するかと思っていたら、その後がひたすら状況説明的な台詞が連続し、グダグダな展開に終わってしまいました。夏場ならではのホラーノリも中途半端(ただし、復顔のアップが実際の女優なのは、ビジュアル的には凄く怖い)で、辻褄も合っているのかどうかよく分かりません。何やら一生懸命に説明しようとしていましたが、正直言って、真剣に理解しようとする気にもなれませんでした。どうせなら辻褄にこだわらず、いっそホラーに徹底すればよかったのではないでしょうか?いつもと違ったバロック調のBGMなど、演出面では工夫が見られるだけに、少し残念です。

第373話 呪われた死者の呼ぶ声!

2008年01月10日 03時52分47秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 松尾昭典

ビル街での防犯訓練の指導に当たっていた紅林は、謎の声に悩まされる。「助けて・・・死ぬのはいや・・・」と囁く声は、幻聴とは思えなかった。翌日、防犯訓練のさなかに、若い女が飛び降り自殺を遂げたことが判明。女は紅林が指導していた付近の繁みに落ち、誰にも気づかれぬまま放置され、死んでいた。「自分が気づいていれば、彼女は助かったかもしれない」と自責の念に囚われる紅林。
数日後、連続殺人事件を追うかたわら、自殺現場に弔いに出かけた紅林に、謎の老人が憎悪の目を向け、「人殺し」と囁く。一人花を手向ける紅林の頭上から植木鉢が落下。寸前でかわした紅林は、屋上に老人らしき人影を目撃するが、破片で頭を負傷し、意識を失う。その間、連続殺人の被害者は、いずれも自殺現場に居合わせたことが判明する。紅林が狙われたのも、一連の事件と関連があるとすれば、謎の老人こそが連続殺人犯なのか?
自殺した女の身許を調べる紅林だが、女に姉はいなかった。死んだ父親の代わりに、病気の母親と弟妹を養うために、給料の全てを故郷に送っていた女は、周囲から浮き、職場に友人一人いなかった。女の自室に残されたメモに、暗然たる思いを抱く紅林。「神様、こんなに頑張っても力を貸してくださらないのですね。もう疲れ果てました。生きるって、もっとすばらしいはずなのに・・・」
女と親しかったという会社員を訪ねる紅林。会社員は、幸薄い女を自殺に追い込み、見殺しにした世間に対し、激しい怒りを見せる。その夜、帰宅途中の紅林を何者か手鉤で襲う。年恰好が似ていたことから、会社員を尋問する紅林。アリバイを偽る会社員を「君は、彼女を見殺しにした人たちに復讐しようとしたんじゃないのか」と追及する紅林。だが、会社員は「トルコに行っていたのを婚約者に知られたくなかった」と弁解し、女と親しい様子の老人から「彼女を弄んでいるんじゃないのか?」と詰問されたことを明かす。老人の住所を探し当てた紅林に、老人は「お前はあの子を見殺しにした!」と怒りをぶつける。ふとしたことで知り合った女は、孤独な老人にとって唯一の心の支えだったのだ。
その後の調べで、どの犯行現場にも老人が居合わせたことが判明し、老人に対する疑惑は深まる。参考人として尋問したところ、老人はあっさりと犯行を自白。だが、神代は被害者の一人であるOLが、頭部を手鉤で貫かれた後で、さらに首を絞められていることに注目。そこを老人に問い詰めたところ、急に証言はあやふやになる。
OLの怨恨関係を調べ直したところ、OLが愛人バンクに加入していたことが判明。一方、老人宅を張っていた桜井は、凶器の手鉤を戻しに現れた不審な男を捕らえる。男はOLと愛人関係にある上司だった。OLに強請られた上司は、女の自殺にショックを受ける老人の存在を知り、巧妙な犯罪計画を思いつく。「自殺現場にいた連中には、天罰が下って当然だ」と老人をそそのかし、現場にいた人間を次々と殺害。OL殺しを連続殺人の中に埋没させ、すべてを老人の犯行に見せかけようと図ったのだ。
事件解決後、再び自殺現場で女を弔う紅林に、老人が歩み寄る。幸薄い女を悼む紅林の言葉を聞いて、老人は亡き女に「刑事さんが、あんたのことを思い出している。あんたは決して一人ぼっちじゃなかったんだよ」と語りかけるのだった。

夏場恒例のホラーテイストの一本。ちょうど1年前に放送された怪作、第325話「超能力の女!」と同様、佐藤五月脚本&紅林主役ということで、視聴前から不安視していたのですが、予想以上のトンデモない展開に、あきれ返るしかありません。
おかしな所をいちいち挙げていっても不毛なのですが、とにかく話が強引すぎ。吉野が言う通り、「逆恨み」でしかない恨み言を真に受けて「私が彼女を殺したようなものだ」とまで自分を責める紅林の姿は、責任感が強いというにも無理がありすぎて、むしろ滑稽にすら見えてしまいます。苦悩する紅林を「君の真面目さがうらやましい。まぶしいくらいだ」と慰めるおやっさんの言葉もピントはずれ。
身も蓋もない言い方で恐縮ですが、諸悪の根源は自殺した女にあるのではないでしょうか?いくら生活が苦しかろうと、自ら死を選ぶという行為はとうてい肯定できません。ドラマの結末としては、助けてやれなかったことを悔やむのではなく、若くして死を選ぶ愚かさを気づかせてあげて欲しかった、と思えてなりません。

第372話 老刑事スニーカーを履く!

2008年01月09日 03時08分17秒 | Weblog
脚本 押川國秋、監督 天野利彦

ある夜、酔った男が車のフロントガラスを叩き割って逮捕された。男の取調べを担当したのは、船村の二年先輩に当たる老刑事。その夜、娘の婚約者と飲む約束をしていた老刑事は、一人で会うのが気恥ずかしく、同席させるため船村を呼び出していた。船村を待たせて取り調べに臨む老刑事に、男は「弁償するので車の所有者に会わせろ」と懇願。事件を知って駆けつけた男の妻からも「あたしが責任持って弁償させます」と頭を下げられ、情にほだされた老刑事は、車の持ち主に連絡を取り、示談成立のために骨を折る。退職を間近に控えて仏心を示す老刑事を、船村は微笑ましく見守っていた。
だが、翌日になって、男の指紋が二年前のホステス殺しの容疑者と一致していることが判明する。責任を追及された老刑事は、痛恨の思いで男を追う。同席していた船村も責任を感じて捜査に協力する。聞き込みの結果、男は一人暮らしだと判明。妻と名乗った女の正体は謎だった。
調書をもとに、男が働いていた代行運転の事務所を回る船村と老刑事。ようやく男を発見し、逃走する男を必死で追うものの、老刑事の足では追いつくことはできなかった。吉野や叶に「なんで俺たちに連絡してくれなかったんです?年寄り二人で追いかけたって無理ですよ」と責められ、反論する船村。「ホシを追っかけるときに、てめぇの歳がいくつかなんて考えてられるかい!息が切れて目がかすんで足がもつれて、ホシがどんどん遠ざかっていく。そんなときの気持ちは君らには分からんだろう。しかし、誰だっていつかはそうなる。そのときになって、歳をとったなぁって実感するんだよ。」
新調したスニーカーを履いて、妻と名乗った女を追う船村と老刑事。「年寄りの冷や水と言われようが、気にしちゃいられないよ」と言いつつ、若者に混じってハンバーガー屋で昼食をとる二人。そんな中、老刑事は店員が女と同じペンダントをしていることに気づく。店員に聞いたアクセサリー店からたどって、女を探し当てた二人だが、女は取調べに対して黙秘する。女の母親の証言から、最近まで車の所有者が重役を務める製薬会社に勤務していたことが判る。橘が重役を当たるものの、女と男の関係は何も知らないという。しかし、その後の調べで、重役が何度か男に代行運転を依頼していたことが判明する。
黙秘を続ける女に対し、船村は「重役がすでに話した」と欺き、自白を迫る。阿吽の呼吸で口裏を合わせた老刑事とともに、巧みに情に訴える船村の前に、女は「重役から女房のふりをして男を釈放させるよう頼まれた。男の行方は重役が知っているはず」と証言する。特命課がマークするなか、重役は密かに接触して男に金を渡す。老刑事は男を逮捕。船村は重役を尋問する。重役は、他の製薬会社から産業スパイを働いていた。それを知った男は重役を強請るべく、重役の車から新薬データを強奪。重役は事件を闇に葬り去るために、女を使って男を釈放させたのだった。こうして、事件は解決。船村と老刑事は、互いの足が慣れないスニーカーでマメだらけになっているのを見て、笑い合うのだった。

「老いる」ということの悲しさから逃げることなく戦い続ける、愛すべき老刑事たちの姿を描いた一本。数ある老刑事モノの中でも、今回のタイトルは一際異彩を放っているように思えます。某七曲署の新人刑事のニックネームにもあるように、スニーカーは若者の象徴。そのスニーカーと老刑事のミスマッチさを狙ったタイトルは、ストレートすぎるような気もしますが、ストーリーにうまく合致しています。
まだ40前の私が言うのもなんですが、歳を取るということは誰にとっても切なく、哀しいもの。特に、体力がモノを言う刑事という世界では、老いの苦しみは格別なものがあるでしょう。とはいえ、年老いたものには「経験」という武器があるもの。「亀の甲より年の功」という言葉の裏には、年寄りのプライドや強がりがあるのかもしれませんが、それを失ったときが、本当に老いたときなのではないでしょうか?ある意味では、自らの老いを認めない「潔くない姿勢」こそ、これからの超高齢社会に必要なものではないでしょうか?
女に対する老獪な取調べをはじめ、潔くない老刑事たちの魅力が満載の本編ですが、面白いのは、老刑事が二年後輩のおやっさんに対して、「若い者の前でカッとなっちまうなんて、年取った証拠だ」と自嘲するシーン。おやっさんに「若い者って、俺のことかい?」と茶化されるように、わずか2年の違いにもこだわるのは、ある意味では愚かなことですが、それも自身の積み重ねてきたキャリアに対する誇りの現れです。そして、その強固な誇りがあるからこそ、彼らは刑事という仕事を続けてこられたのでしょう。