特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第284話 恐喝!

2007年01月30日 23時30分17秒 | Weblog
脚本 峯尾基三、監督 辻理

吉野の自宅に、女性から「会って話したい」との電話がかかってくる。心当たりがないものの、呼び出された場所に出向く吉野。待っていた女は「これで、あの件は無かったことに」と三百万円の入った封筒を差し出す。何者かが自分の名を騙って女を恐喝したと察した吉野は、女を問い詰める。
女は息子の不正入試について、「特命課の吉野」と名乗る男から電話で恐喝を受けていた。指定された口座に振り込めとの指示だったが、女は吉野の自宅を突き止め、直接会って渡そうとしたのだった。指定された口座から引き出したキャッシュコーナーの録画ビデオには、吉野の警察学校時代の同期生の姿があった。
所轄署を訪ねた吉野は、同期生が汚職行為により退職していたことを知る。同期生の同僚だった刑事とともに、退職後の行方を追う吉野。ようやく居所を突き止めたものの、同期生は逃走。吉野が応援を求めて電話している間に、同期生は銃撃戦の末に射殺された。同僚刑事は正当防衛を主張するが、吉野はその態度に疑問を抱く。
同期生の身辺を調査した吉野は、殉職した元同僚の妻子の面倒を見ていたことを知る。入院中の妻を訪れたところ、同期生は辞職する際に「一人で泥をかぶる」と言っていたという。同僚刑事が汚職行為の共犯であり、吉野の名を騙った恐喝にも加わっているのではと推測する吉野だが、同僚刑事は「辞職後は会ったこともない」と否定する。
内偵した結果、同僚刑事は毎月10日に休みをとっていたことが分かる。再び妻の入院先を訪ねた吉野は、同期生が毎月10日に子供を遊園地に連れて行っていたことを聞き出す。同僚刑事が同期生の辞職後も接触していた証拠を求め、子供が撮影していた記念写真を借り受ける吉野だが、その姿は残っていない。一計を案じた吉野は、同僚刑事のもとに写真を送りつけ、「写真を引き伸ばしたところ、貴様が映っていることが分かった。黙って欲しければ金を出せ」と呼び出す。呼び出しに応じた同僚刑事は、金を渡してネガを受け取った上で、吉野に銃を突きつける。勝ち誇る同僚刑事は、丸腰だった同期生を射殺した上で、死体に銃を握らせて発砲させたことを明かすものの、駆けつけた特命課の面々に取り押さえられる。吉野は怒りを込めて拳銃をつき付けるものの、引き金を引くことはなかった。

見え見えのプロット、強引な捜査、ひねりのないオチと、どうにも低調な一本です。特に気になったのはキャッシュコーナーのビデオを検証するシーン。暗証番号が丸わかりなってしまうのは、ちょっとまずいのでは?なお、射殺される同期生を演じたのは、キカイダーやイナズマン、忍者キャプターやバトルコサックで高名な伴直弥氏です。もうちょっといい役は無かったものかと嘆かずにはいられません。ちなみに、前回に引き続きひげ面の桜井。何か別のドラマの都合だったのでしょうか?

第283話 或る疑惑!

2007年01月29日 23時29分28秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 天野利彦

橘の通う碁会所の近くで主婦が絞殺され、主婦との口論現場を目撃されたセールスマンが重要参考人として尋問を受ける。碁会所仲間だったセールスマンの頼みで、尋問に立ち会う橘。セールスマンは、主婦から「下着泥棒に似ている」と言いがかりを付けられ口論になっただけだと主張し、犯行を否認する。
捜査のために碁会所を訪れた橘だが、碁仲間たちはセールスマンを犯人と決め付け、「あの人ならやりかねない」などと口々に言い募る。そんな碁仲間の態度に、「まだ犯人と決まってもない人に、何故そんなことを言う」と怒りを顕にする男がいた。詳しく話を聞こうとする橘に、男はセールスマンの無罪を主張するが、捜査への協力は頑なに拒んだ。
男が何かを知っていると見て尾行したところ、男は毎日、帰宅途中に犯行のあった主婦宅の近くを通っていた。「男が口を閉ざすのは、過去に何かあったためでは」と思い、男の過去を調べる橘。その結果、男は数ヶ月前に故郷で起こった現金輸送車強奪事件の容疑者として取り調べられたことが判明する。結局、男は証拠不十分で釈放されたが、いまだ犯人は捕まってないという。
その事件をきっかけに、男は妻と娘に去られ、追われるように故郷を去った。男の妻子を訪ねる橘だが、妻は夫や事件との関係を否定する。橘は、妻と息子に去られた自分の身の上と重ね合わせ、男とその家族が再び一緒に暮らせることを祈るほかなかった。
そんななか、主婦殺しの現場近くで新たな殺人が発生。「殺された会社員は主婦殺しの真犯人だ」とのメッセージが特命課に届けられる。主婦宅に下着泥棒に入った会社員が、主婦に犯行を見つかったために殺したものと見られるが、では、会社員を殺したのは誰なのか?
捜査を続けるなか、容疑者として浮かんだ不審者は、例の男だった。犯行を否認し、黙秘する男。そんななか、現金輸送車強奪事件の真犯人が逮捕され、男の妻が橘を訪ねてくる。男の釈放を主張する橘の意に反して、犯行現場からは男の背広のボタンが発見される。愕然としつつ、それでも橘は男に自供を迫る。
男は主婦殺しの現場から会社員が立ち去るのを目撃するが、警察との関わりを避け、通報しなかった。犯人扱いされるセールスマンに同情していたところ、たまたま駅で会社員を見かけて後を追った男は、アパートを訪ねて自首を迫る。そこで会社員に殺されそうになり、思わず反撃した結果、逆に殺してしまったのだ。
ラストシーン、男を連れて現場検証に向かう橘の前に、男の妻が訪れる。男に手に光る手錠を見て、「嘘つき」と罵り泣き崩れる妻。神代に叱咤され、車を出す橘の脳裏に「お父さんの言うとおり、警察はやっぱり信用できないんだ!」との妻の声が木霊するのだった。

「痛ましい」と言うしかない悲惨な一本。救いの無い話が大好きな私ですが、ここまで酷い話はなかなかお目にかかれません。かつて無実の罪で取り調べられ、妻子や故郷を失った男が、無実の罪で調べられるセールスマンに心から同情し、助けようとした結果、今度は本当に罪を犯してしまう。男が警察を恨むのは当たり前ですが、警察の立場からすれば男を取り調べるのは当然のことです。さらに言えば、警察に取り調べられた男を世間が白眼視するのもやむを得ないこと。誰も悪意を持っているわけではないのに、それでも悲劇は起こってしまう。人を疑う警察が悪いのか、警察を信用しない者が悪いのか、それとも世間が悪いのか。誰を恨めばよいのかはっきりしないだけに、やるせない後味の悪さが心に染み渡る傑作です。先日の第280話「黙秘する女!」や、かなり以前の第152話「手配107・凧を上げる女!」と並んで個人的ベストに挙げたい一本ですが、残念ながら、これも傑作線DVDからは漏れているため、やや詳細に語らせてください。
ラストシーンの痛ましさは言語を絶するものがありますが、それ以外にも痛ましいシーンが目白押しです。たとえばドラマ中盤、橘が男の妻子を訪ねたときのこと。男が警察に調べられてから、わずか10日で田舎に帰ったという妻に、「ご主人よりマスコミを信じたわけですか?」とやや皮肉な言葉を投げかける橘。自分も妻と子に去られただけに、「なぜ辛い立場のご主人を支えてあげなかったんですか」と問いかける橘に「あの人も辛かったでしょうが、世間の眼にさらされる私や娘だって辛かった」と泣きながら反論する妻。「刑事さんに調べられる人間の気持ちは判らない!」との言葉に、橘は反論できず、「ご主人に会ってやってください」と言うしかありません。
また、男の妻が橘を訪ねてきた場面。「勝手だと言われるかもしれませんが、もう一度あの人とやり直したい」と涙ぐむ妻に、橘は容疑者として取調べ中だと告げられず、思わず「ご主人は社員旅行で不在です」と言ってしまう。そんな橘の嘘に、「あの人、新しい会社の人とうまくやっているんですね」と喜ぶ妻が痛ましく、そんな妻を見ている橘はさらに痛ましい。男を妻の元に返してやりたいと、自分の見込み違いだったと言って釈放を主張する橘に「男の背広のボタンが一つだけ違っている」と報告する紅林。「紅林、もういいんだ」という橘だが、神代は「現場を徹底的に調べろ、ボタンがあるかもしれん」と命じます。この一連のくだりの橘の表情に、刑事としての立場と、人としての感情にせめぎ合いが痛いほど現れています。
さらに、ラスト近くの男が自白する場面。駅で会社員を見かけたとき、男はそばに橘がいたにも関わらず、告げるのをためらったと告白します。その時の男の態度に思い当たり「なぜ、あのとき言ってくれなかったんですか!」と悲痛な表情を浮かべる橘。「あの時、警察を信用していれば・・・いや、やっぱり信用できなかった・・・」と涙ぐむ男を、橘は正視することができません。男を犯罪に追い込んだのは、まぎれもなく警察の捜査のせいです。それを十分に知りつつ、橘はその手で男を捕えなければならない。刑事という仕事の哀しさ、苦しさ、そして厳しさが、橘の苦い表情の中に語り尽くされているような気がします。あと、蛇足ながら、桜井が今回から急にひげ面となっているのも要注目です。


第282話 ラッシュアワーの女!

2007年01月25日 00時00分04秒 | Weblog
脚本 竹山洋、監督 野田幸男

殺人事件が発生し、所轄署では被害者と最後に接触した女を容疑者として取り調べる。女は「犯行時刻には特命課の紅林刑事と一緒だった」とアリバイを主張したため、紅林が所轄署に呼び出される。
女と紅林は同じ電車で通勤する顔見知りだった。数日前、紅林は車内で女が落とした本を拾って届けており、そのお礼としてネクタイを渡すために喫茶店に呼び出されたのが、ちょうど犯行時刻だった。紅林の証言で女は釈放されるが、翌日、再び起こった殺人事件でも、女は容疑者として所轄署に連行された。今回もアリバイは証明されたが、女と接点のある男が二人続けて殺されたことに疑念が残った。
被害者二人が同じ土地の出身だったことから、紅林はその出身地に向かう。被害者は数年前に起こった三人組の銀行強盗事件の容疑者だった。その事件は迷宮入りしていたが、今回の被害者の指紋が事件の残留指紋と一致したことで、二人が犯人だったと判明する。
事件の映像を見て驚く紅林。人質として犯人に連れ去られた女こそ、例の女だった。女は早くに母親を亡くし、ガンで苦しむ父を楽にさせるために殺していた。鑑別所を出てきた矢先に銀行強盗に巻き込まれ、犯人に乱暴された末に解放されたのだと言う。
銀行強盗の残る一人を追う特命課だが、その男は交通事故を起して刑務所にいた。しかし、所在を確認したところ、先日保釈されたばかりであり、保釈金を支払ったのは女だった。
一方、たまたま見つけたエロ雑誌に女の写真を見つけた紅林は、その写真を撮ったカメラマンを追う。カメラマンは女が良く通うジャズ喫茶のボーイだった。そこで「死刑台のエレベーター」をリクエストすることが、女からの殺人指令だったのだ。その日も女は同じ曲をリクエストしていた。保釈された男を殺すつもりだと見た紅林は、残されたメモから犯行場所を割り出し、急行する。カメラマンは逮捕されたが、女に頼まれたことは否定する。しかし、保釈された男は銀行強盗犯の主犯が女だったことを自白。ジャズ喫茶に一人たたずむ女のもとを訪れた紅林は、その手に手錠をかけるのだった。

悪女と言うにはあまりに悲惨な過去をもつ女と、紅林の愚直なまでの誠実さを描いた一本です。ドラマ中盤、「女は二人が殺されるのを知っていて、アリバイを用意したのでは?」というおやっさんの指摘を受けて、紅林は女を訪れ「私にネクタイを贈ったのは、アリバイ作りのためだったのですか?」と率直すぎる聞き方で詰問します。女が「ひどい!」と泣き喚くのも当然です。その一方、ラストで「私がネクタイを贈ったのは迷惑でした?」と問う女に、紅林は「仲間に触れて回りたいくらい嬉しかった」と答えつつ、お返しにと口紅を手渡します。あえてデリカシーの欠片もない言葉で問い質すのも、二度と会うことが無いであろう悪女に心からの優しさを見せるのも、すべては紅林という男の誠実さの現れであり、だからこそ、連行される女の顔に微笑が浮かんでいたのでしょう。

第281話 一人だけの暴走族!

2007年01月24日 23時58分58秒 | Weblog
脚本 押川国秋、監督 天野利彦

バイクの騒音に対する市民からの苦情を受けて、叶はただ一台で走り回るバイクを追跡する。バイクの主は中年の男で、連続放火事件の犯人として逮捕された息子の無実を晴らすための行為だった。「確かに息子は暴走族だか、放火現場で聞いた排気音は、息子のバイクのものではない」と主張する父親。
放火事件を再調査する叶は、目撃者に複数のバイクの音を聞かせ、事件当日の排気音がどのバイクのものかを証言させる。ほとんどの目撃者の証言は曖昧だったが、バイク屋の主人だけは、息子のバイクの排気音が当日のものだったと主張する。
「息子が暴走族になったのは自分の育て方が悪かったからだ。けれど、人様の家に火をつけて回るような人間じゃない」息子の無実を信じる父親の姿に打たれ、無実の証拠を探す叶。しかし、付近の住民がたまたま録音していたバイクの排気音は、息子のバイクのものと同一であり、また無人カメラ(オービス)にも息子のバイクが映っているなど、見つかるのは息子に不利な証拠ばかり。しかし、写真を見た父親は「バイクに乗っているのは息子ではない」と主張。父親の言葉を裏付けるように、息子の放置したバイクを別の何者かが乗り去るのを見た者が現れる。その時間は放火の犯行時刻と一致しており、その間の息子のアリバイが明らかになれば、無罪が証明される。しかし、肝心の息子は証言を拒み「もういいから鑑別所に戻せ」と言う。そんな息子に対し、無罪の証言を求めて必死に駈けずり回る父親の姿を見せる叶。その姿に、息子は思い口を開く。息子は自分を守ろうとしてヤクザを刺殺した先輩をかばっていた。バイクを放置している間、ヤクザや警察から身を隠している先輩の元に食事を運んでいたのだ。特命課を先輩のもとに案内したことで、息子の無実は証明された。しかし逮捕される先輩の「裏切り者」との言葉が、息子の胸に突き刺さるのだった。
その後、逮捕された火事場泥棒の証言から、排気音は実際のバイクのものではなく、テープの録音したものだと判明。真犯人としてバイク屋の主人が逮捕された。実は、主人は放火されたアパートの所有者で、土地を売却しようとして住人の反対にあったため、放火すれば売却できると考えたのだ。
ラストシーン、釈放された息子を出迎えた父親は「これからは息子に本当の愛情を注いでいきます」と叶に約束するのだった。

息子の無実を信じる父親のひたむきな愛情を描いた一本、なのでしょうが、残念ながら全く同情できません。暴走族にせよ、右翼の街宣車にせよ、選挙演説にせよ、騒音を撒き散らして喜ぶような輩は人間のクズだとしか思えないので。個人的な意見はともかく、父親や犯人の行動がチグハグで、ストーリーにも一貫性が乏しく、藤岡弘がバイクに乗る姿が見られる以外には、特に収穫はありません。

第280話 黙秘する女!

2007年01月23日 23時57分16秒 | Weblog
脚本 阿井文瓶、監督 藤井邦夫

僧侶が刺殺死体で発見された。胃の中から小さなネジが見つかった他には、身元を示す手がかりが無い。ネジの製造元を追う紅林が行き当たったのは小さな工場だった。僧侶の写真を見せたところ、主人も妻も「見覚えが無い」と言うが、不自然に会話を打ち切る妻に、疑念を抱く紅林。周辺を聞き込んだところ、妻が息子とともに僧侶と立ち話をしている者がおり、妻への疑惑は深まる。
そんななか、僧侶の宿泊していたホテルが判明。ホテルに向かった紅林は、何者かの戒名を記した紙を発見。「3名の来客があった」と証言するホテルマンに妻の写真を見せたところ、その一人が妻だったと判明する。妻を任意で事情聴取する紅林だが、妻は2日間にわたり黙秘し続けたため、釈放するより他は無かった。
その後、荷物が放置されていたロッカーから、僧侶が残したと思われる衣類と経文が発見される。経文に明記されていた寺に向かった紅林は、僧侶が10年前にふらりと訪れ、遺体の無い墓を作って供養していたことを知る。その墓には、ホテルに残された戒名とともに、生前の氏名が記されていた。供養されていたのは、10年前に過激派の爆弾により死亡した警官だった。当時の過激派の資料を調べたところ、僧侶はあるセクトのリーダーであり、同じセクトの名簿に妻の名が見つかった。
妻のもとを訪れ、自分の推理を語る紅林。「僧侶は10年前の罪を悔やみ、自首しようとしたところを、共犯に問われることを恐れたかつての仲間に殺された。僧侶と最後まで行動を共にした者は誰だ?」問い詰める紅林だが、妻はなおも証言を拒む。
妻から証言を得ることを諦め、かつてセクトのメンバーだった者を訪ねて回る紅林。ホテルに僧侶を訪ねた残り2名を突き止めたものの、紅林の想いは複雑だった。理想を追っていた過去を否定する者、遠い日の思い出として振り返る者、迷惑そうに関わりを避ける者・・・わずか10年前の情熱を忘れてしまったメンバーの姿に、「変わっていないのは妻だけだったのでは」と思った紅林は、再び妻を訪れる。
妻の目前で息子を問いただす紅林。「君がお坊さんと会ったとき、誰と一緒だった?」日頃から「嘘をついてはいけない」と言い聞かせていた彼女は、思わず息子から目をそらす。そんな妻をかばおうとして「お坊さんになんか会ってない」と泣きじゃくる息子。悲痛な表情を浮かべる妻に、紅林が諭すように語りかける。「嘘をついちゃいけないと知ってる子が、必死になって嘘をついた。あの子のためにも、話してくれませんか」
紅林の推理を裏付けるように、妻はホテルでの会話を告白。やがて二人が逮捕され、妻も10年前の爆弾事件の罪を問われることになる。ラストシーン、安寧を貪る若者たちで賑わう通りを歩く紅林と、鉄格子越しにまぶし気に陽射しを見上げる妻とを対比しつつ、チリアーノの歌声が流れる。

日々の生活に追われる中で、過ぎ去りし青春の日に描いた理想を忘れ去り、いつとはなしに変わってしまう・・・そんな人生の哀しみと、その中で理想を持ち続けることの厳しさ、尊さを描いた一本です。ドラマ中盤で紅林が語る人生観、そしてクライマックスで語られる妻の生き様と、「変わっていくことを潔しとしない人々」の志の高さに圧倒される傑作でありながら、残念ながら傑作選DVDには漏れています。埋もれさすにはあまりに惜しい一本ですので、いつもより長めに紹介させていただきます。

ドラマ中盤で、妻が元過激派だったことを知った紅林は、警察への証言を拒む妻に、珍しく怒りを顕にします。それは、彼女が夫や息子との生活を守りたいがゆえだと思ったからでした。「死んだ僧侶は、10年間罪の意識に苦しみ続けてきた。その一方で、自分の言ったことを忘れて、時代に合わせて生き方を変え、小利口に生きる者がいる。あんたたちの志っていうのは、そんないいかげんなものだったんですか?反吐が出る!」妻はそんな紅林を揶揄するかのように「まるで10年前に過激派の同志だったみたいですね」と呟きますが、対する紅林の答えは、彼らしい誠実さに満ちたものでした。「10年前、私はあなたたちを弾圧する側にいた。だけど、何も考えなかったわけじゃない。志をもって必死に生きている人たちを弾圧していいものか、夜も徹して考えた。考え抜いた末に、私はこの道を選んだが、反対の方向を選んだ者もいるだろう。同じような理想をもっていても、正反対の方向に歩きはじめることはある。そう思った」同じ時代に青春を過ごした紅林にとって、過激派の若者たちは、選んだ道こそ違え、同じ理想をもった戦友のようなものだったのかもしれません。だからこそ、当時の理想をあっさりと捨て去った者たちに、言いようの無い悔しさを感じたのでしょう。

しかし、捜査を続ける中で、元過激派たちの変節振りを見せつけられた紅林は、「一言も語らず、警察への協力を拒む彼女の方が、変わっていないのかもしれない」と気づきます。そして、クライマックスで明かされたホテルでの僧侶と妻、他2名の会話によって、妻が抱え続けた志とは何かが語られます。

自首すると打ち明けた僧侶に対して「我々の家庭を壊すというのか」と迷惑そうに反対する2名。「君も迷惑か?」との問いに、妻は頷きつつも、他2名とは異なる理由を示します。「10年前、私たちは目指すべき未来のために爆弾を投げた。その爆弾で人が死んだと知ったとき、自首しようと思ったが、『敵の法律で裁かれるべきでは無い』と説得され、それから結婚して子供を生んだ。でも、平凡な生活に飲み込まれていいんだろうかと考え続け、あのとき目指した志を、夫と子供との生活の中で持続させるべきだ。そうすることが、私自身を裁いてくれるんだと思った」そんな彼女に、「志というが、こんな時代に何ができるっていうんだ?」と冷笑する2名。しかし、彼女は毅然として答えます。「わからない。でも、わからないからといって、ダメになるわけにはいかないの」何ができるかわからないから、どうせ何もできなからと、安易にダメになってしまう私たちにとって、彼女の言葉のなんと重いことでしょう。しかし、彼女の考える「自分にできること」とは、非常に地道であり、かつ非常に困難なことでした。

翌日、訪ねてきた僧侶に妻は自分の作ったネジを見せながら、こう語ります。「私はこのネジを作って、家族や従業員の生活を支えている。かつて私たちが敵と見ていた仕組みに組み込まれてしまったけれど、そのおかげで、私は10年前と同じ気持ちを持ち続けられる。私はこのネジになろうと思う。全てが楽なほうに流されてしまうから、せめて私がネジになって、私の周囲だけでも流されないようにしよう。そう思って、夫と暮らし、子供を育て、工場をやっている」真摯にネジを作り、工場を営むこと、そして息子をまっすぐに育てることが、今の時代に志を失わず、理想の社会を追求することだと彼女は訴えます。日々の生活を誠実に、真摯に生きる者の強さと気高さが、見る者の心に熱く訴えかけます。

融資の打ち合わせに訪れた銀行マンに従業員の優遇振りを皮肉られるシーン、見るからに誠実で朴訥な主人をいとおしげに見守るシーン、「嘘をついてはいけない」と息子を優しく諭すシーン・・・これらのシーンが温もりに満ちているのは、彼女が10年前の若き日に抱いた志を、市井に生きる一人の主婦として抱き続けているからであり、「平凡な暮らしの中で、自分にとって大切なことを守り続ける」という簡単そうでなかなかできないことを実践しているからでしょう。

そんな彼女の姿を見て、僧侶は「僕ももう一度やり直せるかな、僕もネジになれるかな」と言いつつ、ネジを飲み込みます。「失くしてしまった志を、君に分けてもらった」と立ち去る僧侶の背中に、私たちは自分の姿を重ね合わせるのです。振り返ってみれば、30半ばを越えた私は、10年前とどれだけ変わってしまっているのでしょうか?10年前と比べて、何を失ってしまったのでしょうか?自分が、そして同じ青春を生きた仲間たちが変わってしまった哀しみとともに、誰か変わらないでいる人がいて欲しいという希望を代弁するかのように、ラストシーンで妻が紅林に問いかけます。「あなたは10年前、何かを信じて、私たちの敵に回りました。それは今でも?」もちろん、紅林は強く頷きます。「変わっていません」どうか、あなたたちだけは、いつまでも変わらないで欲しい。そんな想いとともに、チリアーノの歌声に耳を傾けるのでした。



第279話 誘拐 ホームビデオ挑戦状!

2007年01月16日 07時55分08秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 辻理

幼い少女が母親の目前で誘拐された。6歳の誕生日を祝おうとした矢先の悲劇に、嘆き悲しむ母親のもとに、1本のビデオテープが届けられた。そこには監禁された少女の姿とともに、女性が高級車で出かける場面が録画されていた。その女性は母親の姉で、現在は慈善活動で有名な評論家の後妻となっていた。特命課が評論家宅を訪れたところ、留守電に英語で「子供を預かった」とのメッセージが残されていた。声紋分析で犯人を特定しようとする特命課だが、その声は音声電訳機のものであり、犯人の手がかりはつかめない。
続いて届けられたテープには、少女の身代金として、評論家が妻に贈った高価なネックレスを用意せよとのメッセージが。部屋の窓から見える風景をもとに、監禁場所を割り出そうとする特命課だが、どれだけ調べても該当する場所は見つからない。それは映像上で合成された風景だったのだ。
翻弄される特命課を嘲笑うように、ネックレスの引渡し場所を伝えるテープが届けられた。しぶる評論家に頼み込んでネックレスを借り受けた母親は、指定された場所へと出向く。周囲に包囲網を敷く特命課だったが、付近で交通事故が起こった隙をつき、犬がネックレスを咥えて奪い去った。
ネックレスが奪われたものの、いまだ少女は解放されない。捜査を続けるなか、船村は評論家が主催したパーティー会場で起こった事件を聞き込んだ。誤って姉のドレスに水をかけたため、評論家からひどく罵られたカメラマンがいたというのだ。カメラマンを犯人と見た特命課だが、すでにアパートは引き払われた後で、奪われたネックレスとともに神代宛てのビデオテープが残されていた。
調べたところ、ネックレスはイミテーションだった。妻になじられつつも、「失敗の責任は警察にある」と冷淡な態度を崩さない評論家。ビデオには少女が炎に包まれるトリック映像とともに、再度の、そして最後の要求が。錯乱する母親の姿に、唇を噛む特命課の面々。橘は、少女への誕生日のプレゼントを買うことで、無事に救出することを自分に誓う。
姉から託された本物のネックレスを持って、指定された場所に赴く母親。再び現れた犬がネックレスを持ち去る。路地裏を縫って犯人のもとへと走る犬を必死に追う特命課。失敗を悟った犯人が少女を殺害せんとした寸前、監禁場所に犬とともに特命課が踏み込み、少女を保護する。橘をはじめ、特捜課の面々は、それぞれが買っていた少女への誕生日プレゼントを差し出すのだった。

視聴者から募集したプロットをもとに、長坂秀佳がシナリオ化した一本。とはいえ、元のプロットとは全く違った話になったらしいです。ストーリー自体はやや平板な印象がありますが、電訳機や映像トリックを用いた捜査の撹乱や、少女へのプレゼントを印象的に使ったラストは、まさに長坂脚本の妙味と言えるでしょう。

第278話 逮捕・魔の24時間!

2007年01月10日 23時42分22秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 ニ谷英明

叶の姉と名乗る覚醒剤中毒の女が病院に運び込まれた。報せを受けた神代は、桜井を確認に向かわせるが、女の言動は支離滅裂で、真偽を確かめることはできなかった。
そんな中、ラブホテルで若い女が殺され、遺留品から覚醒剤中毒者の犯行と思われた。特命課は現場に残された手拭いを手がかりに、犯人らしきレインコートの男を追う。その捜査中、桜井は病院を抜け出していた女を発見し、改めて叶の姉かどうかを確かめる。女は幼い頃、母親の愛情を独り占めしようと、生まれたばかりの弟を捨てたと語る。先日亡くなった母親から「死ぬ前に弟に会いたい」と頼まれ、行方を探したところ、刑事になっていることが判ったのだという。念を押す桜井に、女は「本気にしたの?」とはぐらかす。半信半疑のまま、女に金を渡す桜井。覚醒剤を買おうとする女を尾行したところ、女の向かった先では、覚醒剤を扱う暴力団の幹部が殺されており、死体の様子からラブホテルの殺人と同一犯と思われた。
神代の指示で現場に向かった叶は、桜井に女を病院に送るよう指示される。桜井から叶の名を聞かされた女は、病院に向かう車中で叶に親しげに話しかけ、自分の正体を明かすことなく「犯人の居所が分かったら連絡する」と約束するのだった。
一方、橘らは手拭いに記されていた工務店を探し当て、有力な容疑者を突き止めた。容疑者のアパートのゴミ捨て場からレインコートと凶器のナイフが発見されたことから、橘らは部屋に踏み込む。容疑者は「レインコートは人に売った」と証言するが、叶は「覚醒剤中毒者の言うことなど信用できない」と締め上げる。しかし神代は、暴力団幹部を殺したのは対抗する暴力団であり、覚醒剤中毒者による通り魔的な犯行だと捜査をミスリードするため女を殺したのだと看破する。
たまたま殺された女を撮影していたテレビ制作会社から連絡を受けた特命課は、女を連れ去った男の顔から身元を割り出す。その男の前妻が叶の姉と名乗った女だと判明した矢先、女から叶に連絡が入る。「男の居所を教える」との言葉に誘い出された叶を、デートを楽しむかのように連れ回す女。その正体を知らない叶は閉口するが、最後には男との待ち合わせ場所に。しかし、男の銃弾から叶をかばって女は死亡する。何も知らないまま女の死体を抱きかかえる叶を、桜井は複雑な表情で見つめていた。
ラストシーン。夜の街を歩きつつ、桜井は神代に女の正体を明かす。女が幼い頃に弟を捨てたのは真実だが、その弟は叶と同じ孤児院に預けられ、子供の頃に死んでいた。「結局、叶には話さなかったのか?」と問う神代。「いけなかったでしょうか?」と問い返す桜井に、神代は「それでいいんだ」と答えるのだった。

神代課長を演じるニ谷英明自身が監督となった一本。メインストーリーと交錯するように、刑事たちの抱えるドラマが描き出されます。それぞれ生別、死別した娘のことを語り合う船村と神代。親に暴力を振るう少年に息子の姿を重ね合わせ、捜査中にも関わらず少年を叱りつける橘など、心に残るシーンが目白押しです。それぞれの苦悩の根源を暗示するかのように、冒頭とラストで、殺された女が故郷の両親に宛てた手紙の文面が聞こえます。「お父さん、お母さん、やはり田舎には帰れません。東京には夢がいっぱい落ちています・・・」余韻のあるいい話なんですが、サブタイトルだけは意図がよく分かりません。


第277話 橘刑事逃亡!

2007年01月09日 23時41分50秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 野田幸男

覚醒剤中毒者による事件が頻発するなか、特命課は所轄署との合同捜査により、覚醒剤取引の元締めである暴力団を捜査していた。その暴力団の末端構成員である息子を逮捕して欲しい、という母親のタレこみを得て、暴力団のアジトに踏み込む橘たち。しかし、事前に情報が漏れたらしく、現場に人影は無い。さらに同じ頃、情報提供者である母親の家が放火された。息を引き取る母親に「息子は必ず俺が逮捕する。そして、あんたの代わりに真人間にする」と誓う橘。しかし、その誓いも虚しく、息子もまた死体で発見された。
警察内部のスパイを炙り出すべく、橘は所轄書で“三羽烏”と呼ばれる3人の敏腕刑事に疑惑の目を向ける。彼らを挑発するかのように「貴様らの中にスパイがいる!」と宣言する橘に、別の中堅刑事が何事かを証言しようと接触する。しかし、何者かの圧力を受けたものか、翌日には一転して証言を拒んだ。
一方、橘は「所轄の刑事に友達がいる」とうそぶいていたとチンピラを捕え、所轄署内で取り調べる。チンピラは「ここで喋ったら殺される」と怯えたあげく、自分で胸を刺して死亡。橘は咄嗟に自らを犯人に見せかけ逃走する。
所轄署の包囲網を突破し、暴力団に単身乗り込んだ橘は「チンピラが死ぬ間際にスパイの正体を吐いた。その口止め料を払え」と取引を迫る。組長は「警察を裏切った証拠に、桜井を殺せ」と条件を出す。指示されたとおり、桜井を呼び出す橘。現れた桜井の背中に、橘は銃口を向け、引き金を引いた。
暴力団の信頼を得た橘の前に、スパイの正体を現す中堅刑事。個室を与えられた橘は、備え付けられていた電話を握る。盗聴されていると察した橘は、4回コールするだけで電話を切った。電話の意図を質問する中堅刑事に「桜井の容態を聞こうかと迷ったが、それも吹っ切った」と答える橘。中堅刑事はようやく橘を信じ、「一緒にこの組織を乗っ取ろう」と誘いをかけ、覚醒剤取引の資金源となった黒幕の存在を明かす。
同じ頃、特命課では、4回コールの意味を「スパイは三羽烏ではなく、4番目の男だ」という橘からのメッセージだと読み解き、中堅刑事をマーク。中堅刑事の引き合わせによる黒幕と暴力団組長との会合現場に踏み込み、組織を一網打尽にする。
混乱する現場から、いち早く桜井の元に駆けつけた橘。桜井はその手を固く握り締めるのだった。

橘と桜井の命がけの信頼関係を描いた一本。台詞のやり取りがあったわけではないですが、橘が劇鉄を上げた瞬間、その音を耳にした桜井はあえて背中を向け、動きを止めたのでしょう。その背中に無言の信頼を感じたからこそ、橘は引き金を引き、桜井の信頼に応えるように、急所を外して撃ち抜いたのでしょう。ちなみに、『太陽にほえろ』でも、同様に刑事同士が射殺を迫られる場面がありましたが、そちらでは最後の最後に犯人が「もういい」と制止していました。どちらが良いかというのではありませんが、両作品の個性を対比させる上で、見比べてみるのもいいのではないでしょうか。


第276話 望郷Ⅱ 帰らざるワイキキビーチ!

2007年01月08日 23時41分16秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 天野利彦

(前話からの続き)船村の制止も虚しく、現地警官の銃弾が懲役犯を撃ち抜く。一命を取り留めた懲役犯は、かつて婚約者であった女に会わせろと船村に頼む。その願いを聞き入れ、女に身元を明かす船村だが、女とともに病院を訪れたとき、懲役犯は脱走していた。
射殺死体で発見される懲役犯。現地警察は自殺と判断するが、特捜課は殺されたのだと主張。現地警察を説き伏せるべく、神代らもハワイへ。「懲役犯を殺して誰が得をするのか?」という現地警察に、神代は「30年前に妻を殺したのは、懲役犯ではなかったもしれない。その真犯人が口封じをした可能性がある」と主張。戦後間もなく女が日本に帰国した時期と、懲役犯の妻が殺された時期が一致していることを明かす。
一方、船村の娘は堕胎手術を拒み、生活費を得るために身を売ろうとする。捜査中にその現場を見かけた船村は激しく動揺するが、駆けつけた夫に制止されるのを見て、安堵とともに複雑な想いを抱くのだった。
懲役犯をハワイに逃がし、病院から連れ出した者がいると見た特命課は、それが興信所の男だと突き止める。男もハワイ出身で、実の親に捨てられたところを、女の元に引き取られ、育てられた。懲役犯から妻殺しが女の犯行だと聞かされ、やむなくハワイに逃がし、日本の警察の手が届かぬ所で殺害したのだ。
追い詰められた男は、観光バスを乗っ取り逃走する。バスに居合わせた船村の娘を人質にする男だが、ついには現地警官に射殺され、船村の娘は救出された。娘を案じる夫に、船村は自分が父親であることを隠しつつ、励ましの言葉を送るのだった。
懲役犯の妻殺しを自供した女に、「あなたはハワイに永住権がある。あなたが望めば、ハワイで裁判を受けることもできる」と告げる神代。外国に居住していた彼女には時効が適用されず、日本で裁判を受ければ有罪となってしまう。しかし、女は「いえ、私はやはり日本人です」と答える。帰国する飛行機の中で、国境を越えるアナウンスとともに、船村は女にそっと手錠を掛けるのだった。

「メリケン行こうか日本に帰ろか」とハワイ移民の哀しみを唄った歌が繰り返し流され、異国で生きる厳しさを印象づけます。懲役犯が強盗を犯したのも、女が懲役犯の妻を殺したのも、すべては異国生活を余儀なくされたためであり、だからこそ故郷への想いが募るのでしょう。たとえ罪を得ると分かっていても、故郷への想いを捨てられない女。その哀しみを目の当たりにしながら、それでも異国で暮らすという娘の決断を認めざるを得ない船村に、父親という存在の哀しみが見て取れます。


第275話 望郷 凶悪のブルーハワイ!

2007年01月07日 23時40分39秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 天野利彦

死後30年経過した女性の白骨死体が発見された。一緒に埋まっていた写真に残された指紋は、強盗殺人で無期懲役中の男のものと判明。懲役犯が逮捕される以前に、その妻が失踪していたことから、死体はその妻で、懲役犯に殺されたものと推測された。
復顔された死体の写真を持って、収監中の懲役犯に面会する船村。懲役犯は死体が妻だと認めたものの、自分の犯行ではないと主張。しかし、死体と一緒に埋まっていた男女二人の子供の写真を見ると激しく動揺した。やがて、写真の男の子は懲役犯であることが判明。日系二世として生まれ育ったハワイで撮影したもので、女の子は同じ二世の子と推測された。
その数日後、懲役犯は脱獄し、パスポートを偽造してハワイに飛んだ。後を追った船村と高杉婦警は、懲役犯の目的が、写真の少女に会うことだと睨む。今や年老いた少女は、二世部隊として活躍した夫の遺産をもとに、身寄りの無い子供たちを引き取って育てていた。船村は観光客を装って女と接触し、懲役犯が近づいてくるのを待った。一方、懲役犯は警官を襲って銃を奪い、事態を重く見た神代は橘らをハワイへ送る。
日本では、懲役犯に定期的に差し入れに来ていた興信所の男を、吉野がマークしていた。男は米国籍で、ハワイの日系人を相手に、日本にいる親族の消息を知らせるという仕事をしていた。懲役犯とはその仕事を通じて知り合っただけと主張し、事件との関わりを否定する男だが、吉野の目を盗んでハワイに飛んだ。
同じ頃、船村の娘は、父の反対を押し切って妻子ある男と結婚し、ハワイで働いていた。夫は現地で開業しようとしていたが、金を騙し取られてしまう。夫から「父親のもとに帰れ」と帰国を勧められる娘だが、妊娠していることを打ち明けて帰国を拒む。しかし、夫は出産に反対し、堕胎を勧めた。神代の意を受けた高杉に、娘に会うことを勧められる船村だが、「娘は私を捨てたんだ」と拒否するのだった。
一方、懲役犯を発見した特命課の面々は、ハワイ警察とともに球場に追い詰める。「できるだけ発砲しないでくれ」と頼む船村だが、仲間を殺された現地警察は、「相手は先に攻撃するのが得意な日本人だ。真珠湾を忘れるな!」と殺気立つ。懲役犯を死なすまいと、船村は現地警官の前に身を投げ出すのだが・・・(次回に続く)

ハワイロケ特別編の前後編のため、珍しくオープニングカットまでハワイロケのものに変更されています。皆がハワイに出発するなか、行きたいのになかなか行かせてもらえない吉野が妙に可愛い。