特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第444話 原宿スクランブル・泣いた放火魔!

2008年10月31日 21時46分23秒 | Weblog
脚本 亜槍文代、監督 三ツ村鐵治
1985年12月12日放送

【あらすじ】
若者の街、原宿で頻発する放火事件。目撃証言が得られない“都会の無関心さ”が犯行をエスカレートさせる恐れがある――そう危惧した神代の指示で、特命課が捜査に乗り出す。神代の懸念どおり、放火魔は白昼堂々の犯行におよぶが、それでも一人の目撃者も現れない。被害者の出ていないことが、せめてもの救いだった。杉、犬養とともに聞き込みを続ける叶だが、若者たちの享楽的な姿に戸惑いを隠せなかった。
そんなある夜、またも放火による火事が発生。足の不自由な老婆が取り残される。駆けつけた杉が炎の中に飛び込み、老婆を救出。現場に居合わせた娘の案内で、叶は老婆を近所の病院に運び込む。だが、容態が急変して、老婆は死去。ショックを受けた娘は、ハンカチを残して病院から姿を消した。老婆の死因は心臓麻痺と診断され、杉は「自分が水をかぶせたことが原因で」と落ち込み、風邪をこじらせ寝込んでしまう。
犠牲者が出たことで、特命課も捜査に本腰を入れる。火事の現場を訪れた叶は、病院に案内してくれた娘と再会。勤め先の地味な制服姿を恥ずかしがり、足早に立ち去る娘。だが、その表情の裏には、叶を刑事と知った驚きが隠されていた。
一方、紅林らは放火現場のブティックの女店員に聞き込むが、「不審な人物を見なかったか?」と聞かれて彼女らが思い出すのは、時代遅れの服を着た青年を笑いものにしたことくらい。だが、報道カメラマンを気取った少年が撮影した一連の火事現場の写真を調べたところ、どの現場にも女店員の語った青年の姿があった。
青年は高校卒業後にアテもなく上京して原宿に住みついたが、いくつもの夢が破れ、今はぶらぶらとする毎日だった。特命課が張り込むなか、青年はまたも放火を企む。現行犯で逮捕した青年は、「気がついたら、友達も誰もいなくなってて、1週間も10日も、誰とも口をきかない日が続いて・・・誰かに俺のことを分かってもらいたいって思って・・・」と動機とも言えない動機を語る。素直に犯行を認める青年だが、老婆の死んだ一件だけは「自分ではない」と否定する。確かに、あの一件だけは火の回りが早かった。
叶はふとしたきっかけで、あの現場に火を点けたのは娘ではないかと直感。念のために調べた娘のハンカチからは、火事の現場と同じ土が検出された。娘を訪ねた叶は、おどけた態度の娘に「自分に嘘をつくのはやめなさい。自分が傷つくだけだ。それだけならまだしも、その傷を癒すために他人を犠牲にするのを見過ごすわけにはいかない」と厳しく追及する。娘はあっさりと犯行を自白した。
「親の目を盗んで、精一杯おしゃれして原宿に行ったのに、友達から服のセンスをバカにされ、悔しかった」とくだらなすぎる動機にあきれ返る刑事たち。「原宿なんてなければよかったのに!」と責任転嫁する娘に「悪いのは原宿か?そうじゃないだろう?悪いのはあんた自身だ!そうなるとは思わなかった?悪いのはその甘えなんだよ!」醜く泣きじゃくる娘の頭上に、叶の断罪の言葉がこだました。

【感想など】
若者の街・原宿に集まる笑顔の裏で、理想と現実のギャップにさいなまれる若者たちの孤独感を描いた一本。「悪いのはその甘えなんだよ!」という叶の言葉で、すべてが語り尽せてしまったような気もしますが、脚本家は、若者たちのやり場の無い孤独感を代弁したかったのか、それとも甘ったれた若者に対する視聴者層の不快感を代弁したかったのか、どちらなのでしょうか?やや、どっちつかずに終わってしまった印象もありますが、私が共感を覚えたのは、もちろん後者。二人の犯人はもちろん、原宿に集う若者たち全般に対して(わざわざ原宿に住んでいる杉も含めて)不快感を禁じえませんでした。

ブティックの女店員(わざわざ「ハウスマヌカン」とカタカナで呼んで話をややこしくするのは、彼女らのプライドの問題らしい)から見れば、タートルネックのセーターにGジャン、ベルボトムのブリーチジーンを着ているのが「信じられない」「ギャグでしょう」というくらいダサい格好なのだそうだが、かつて学生時代(本放送から数年後)に似たような格好をしていた私としては、叶や橘のように「理解できない」と肩をすくめざるを得ません。
ラストの叶の厳しい言葉はもちろん、「そんなの友達と言えるのか?」(紅林)「寂しいからって火を点けられたらたまったもんじゃないぞ。そんな屁理屈が通るか」(橘)など、刑事たち(先輩を敬う気持ちに欠ける犬養や杉、妙に若者に理解を示す桜井や時田の言葉は除く)の台詞ひとつひとつに大きく頷いてしまいました。

とはいえ「若者を、若者という言葉でひとまとめにしてしまうのはどうかね?」という課長の言葉ももっとも。青年や娘のような、衝動的に他人に迷惑を及ぼすような連中は、いくつになっても周囲に迷惑をかけ続けるもの。若者というくくりではなく「バカ者」というくくりで断罪し、かなうことなら世間から隔離してもらいたいものです。
とはいえ、「気がついたら」ポリタンクに用意した灯油をぶちまけて火を点け、それでも「こんな大きな火事になると思わなかった」などと抜かすように、この娘は精神と頭脳に重大な欠陥があるように思われますので、責任能力を問えるのかどうか、はなはだ疑問です。

ちなみに、叶が娘の犯行に気づいた「ふとしたきっかけ」ですが、詳しく書けば、江崎婦警がやたらと重いハンドバッグを持ち歩いていた→あの娘も事件当夜、重いバッグを持っていた→火事の現場には植木鉢が倒れていたが、犯人がつまずいたにしては、手足の跡が残っていなかった→娘のカバンがぶつかって倒したのでは?→ハンカチでカバンについた土を拭いたかも?という、なんとも遠まわしなもの。異常にカンが良すぎるような気がしないでもありませんが、まぁ、どうでもいいことです。

DVD-BOX Vol.8以降への期待というか要望

2008年10月30日 02時03分37秒 | Weblog
先日、DVD-BOX Vol.7の収録エピソードについて、くそみそにけなしてしまいましたが、その後も暇にあかせて(実はそんなに暇でもないのですが)「だったらどうしたいのか?」を延々と考えてみましたので、せっかくなのでこの場を借りて思いをぶちまけさせていただきます。
まず、DVD-BOX自体をいつまで出し続けるかですが、全508話(+SP1話)のうち、Vol.7までで110話(+SP1本)と、すでに5分の1以上が収録済みであり、何も全話残らず収録せよというつもりもありません(むしろ「ピラニア」のごとき低レベルの作品は残して欲しくありません)。切りの良いところでVol.10で終了でも良いのではないかと思います。この前提に立って、Vol.8からVol.10までの3BOXのラインアップを、ごく個人的な好みをベースにしつつも、主演刑事や脚本家、放送時期のバランスも踏まえて考えてみました。

Vol.8
第47話「射殺魔・20歳のメモリー」主演:吉野、脚本:橋本綾、監督:野田幸男
第48話「惜別・指の無い焼死体!」主演:津上、脚本:塙五郎、監督:村山新治
第70話「スパイ衛星が落ちた海!」主演:橘、脚本:長坂秀佳、監督:村山新治
第84話「記憶のない毒殺魔!」主演:高杉、脚本:塙五郎、監督:天野利彦
第179話「面影」主演:神代、脚本:石松愛弘、監督:佐藤肇
第184話「慕情」主演:神代、脚本:石松愛弘、監督:佐藤肇
第190話「償い」主演:神代・叶、脚本:石松愛弘、監督:佐藤肇
第226話「太鼓を打つ刑事!」主演:桜井、脚本:塙五郎、監督:辻理
第228話「通り魔・あの日に帰りたい!」主演:叶、脚本:宮下潤一、監督:天野利彦
第241話「歳末パトロールで逢った女!」主演:紅林、脚本:佐藤五月、監督:藤井邦夫
第256話「虫になった刑事!」主演:橘、脚本:長坂秀佳、監督:藤井邦夫
第309話「撃つ女!」主演:船村、脚本:佐藤五月、監督:田中秀夫
第323話「二人の夫を持つ女!」主演:桜井・叶、脚本:塙五郎、監督:藤井邦夫
第358話「単身赴任殺人事件!」主演:紅林、脚本:佐藤五月、監督:藤井邦夫
第403話「死体番号6001のミステリー!」主演:船村、脚本:塙五郎、監督:天野利彦
第421話「人妻を愛した刑事!」主演:吉野、脚本:長坂秀佳、監督:辻理

Vol.9
第36話「傷跡・夜明けに叫ぶ男!」主演:高杉、脚本:長坂秀佳、監督:松尾昭典
第82話「望郷殺人カルテット!」主演:津上、脚本:大野武雄、監督:村山新治
第106話「完全犯罪・ナイフの少女!」主演:船村、脚本:長坂秀佳、監督:天野利彦
第153話「上野発“幻”駅行!」主演:滝、脚本:長坂秀佳、監督:青木弘司
第159話「ポルノ雑誌殺人事件!」主演:紅林、脚本:横山保朗、監督:村山新治
第187話「終列車を見送る女!」主演:桜井、脚本:塙五郎、監督:辻理
第213話「密室殺人・小さな瞳の謎!」主演:叶、脚本:横山保朗、監督:天野利彦
第269話「窓際警視・投げ込み魔を追う!」主演:吉野・蒲生、脚本:塙五郎、監督:辻理
第280話「黙秘する女!」主演:紅林、脚本:阿井文瓶、監督:藤井邦夫
第301話「万引き少女の日記!」主演:幹子、脚本:宮下潤一、監督:野田幸男
第306話「絞殺魔の記念写真!」主演:船村、脚本:塙五郎、監督:辻理
第344話「幻の父・幻の子!」主演:橘、脚本:宮下潤一、監督:辻理
第369話「兜町・コンピューターよ、演歌を歌え!」主演:桜井・船村、脚本:阿井文瓶、監督:藤井邦夫
第370話「隅田川慕情!」主演:吉野、脚本:塙五郎、監督:辻理
第377話「住宅街の殺人ゲーム!」主演:橘、脚本:佐藤五月、監督:宮越澄
第416話「老刑事・レジの女を張り込む!」主演:船村、脚本:塙五郎、監督:北本弘

Vol.10
第58話「緊急手配・悪女からのリクエスト!」主演:高杉、脚本:塙五郎、監督:野田幸男
第77話「挑戦Ⅰ・おじさんは刑事だった!」主演:神代、脚本:石松愛弘、監督:村山新治
第78話「挑戦Ⅱ・僕はおじさんを許さない!」主演:神代、脚本:石松愛弘、監督:村山新治
第79話「挑戦Ⅲ・十三歳の旅立ち!」主演:神代、脚本:石松愛弘、監督:村山新治
第122話「痴漢になった警官!」主演:津上、脚本:阿井文瓶、監督:田中秀夫
第162話「窓際警視の靴が泣く!」主演:紅林・蒲生、脚本:永井龍一、監督:村山新治
第178話「男たちのセプテンバーソング!」主演:桜井、脚本:塙五郎、監督:辻理
第205話「雪国から来た逃亡者!」主演:叶、脚本:長坂秀佳、監督:宮越澄
第214話「バラの花殺人事件!」主演:船村、脚本:長坂秀佳、監督:天野利彦
第220話「張り込み・閉ざされた唇!」主演:吉野、脚本:塙五郎、監督:村山新治
第236話「深夜便の女!」主演:紅林、脚本:佐藤五月、監督:天野利彦
第268話「壁の向こうの眼!」主演:船村、脚本:藤井邦夫、監督:辻理
第283話「或る疑惑!」主演:橘、脚本:佐藤五月、監督:天野利彦
第311話「パパの名は吉野竜次!」主演:吉野、脚本:竹山洋、監督:藤井邦夫
第371話「7月の青春レクイエム!」主演:叶、脚本:亜槍文代、監督:野田幸男
第431話「単身赴任・妻たちの犯罪パーティー!」主演:橘、脚本:佐藤五月、監督:村山新治

いざ選ぶとなると、この他にもたとえば「白い小さな訪問者!」とか「ニセ札・厄病神を拾った男!」とか「消えた子連れ刑事!」とか「凶器が歩く街!」とか「窓際警視が愛した女教師!」とか「警視庁を煙に巻く男!」とか「十字路・ビラを配る女!」とか「二人の街の天使!」とか「44,000人の標的!」とか「OL・横浜ラブストーリー!」とか、好きなエピソードを挙げればキリがないのですが、それなりに納得いただける選択になったのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか?
特に初期編(100話台前半くらいまで)は、私が見逃しているエピソードもあり、「アレが入ってないのは納得いかねぇ!」というご指摘もあるでしょうし、「それはベストエピソードに価しない!」とお怒りの方もいらっしゃるとは思います。そこは、あくまで「人それぞれ」ということでご容赦いただくとして、よろしければ「私ならこうする!」というご意見を聞かせていただければ嬉しく思います。

とはいえ、「バランスを踏まえて」と言っておきながら、脚本が塙、長坂、佐藤の各氏に偏っているのは否めませんし、時間帯変更後のエピソード(特に時田、犬養主役編のいずれか、この際杉は無視)も、せめて各BOXに1本ずつでも収録するのが筋とは思いますが、まだ未視聴なのですから仕方ありません。機会があれば、「ファミリー劇場」での放送が最終回を迎えた折にでも(このままのスケジュールで行けば、来年の夏頃の予定ですから、そのときには少なくともVol.8のラインアップは発表されているでしょう)、改めて考えてみたいと思います。

DVD-BOX Vol.7のラインナップが決定しましたが・・・

2008年10月29日 01時54分11秒 | Weblog
DVD-BOX・Vol.6が先頃発売となり、あわせて「次はあるのか?」と心配されていたVol.7の発売も決定。しかし、個人的な感想を言わせてもらえるなら、あまりに残念なラインナップとなってしまいました。その原因は明白。かの「ファンが選ぶベストエピソード」に呪縛されているからです。
「ファンが選ぶ」と謳ってはいるものの、「ピラニアを飼う女たち!」をベストエピソードに選ぶ特捜ファンがいるとは到底思えません(まぁ、ランキング87位というのが何票だったのかは分かりませんが)。以下は勝手な想像ですが、総得票数2,000件のうち、少なからずファン以外の投票(たとえば、ある程度の投票数を欲した関係者に頼まれたサクラとか・・・)が含まれており、そうした投票者が内容も見ずに何らかの理由で(たとえば投票期間中にたまたま再放送されていたエピソードだったとか・・・)選んだとしか考えられません。
万が一、心底特捜を愛するファンで、かつ「ピラニア」がベストエピソードだと確信して投票した方がいらっしゃったのであれば、誠に申し訳ありません。しかし、もしそんな方が実在するのであれば、是非、「ピラニア」のどこが面白かったのか教えていただきたい!あるいは、先の想像が少なからず的を射ているのであれば、「ピラニア」のごとき不出来な作品を選んだしまった理由を公表するとともに、「あのアンケート結果は信頼できない」ことを白日のもとにさらしていただきたい!
ここまで憎まれ口を叩くのも、特捜を知らない人が「DVDに収録されているのであれば、歴代エピソードのなかでも指折りの内容に違いない」と思って、たまたまVol,7を手に取り、「ピラニア」を見て失望し、「この程度の作品でDVDに選ばれるのであれば、全体的なレベルも高が知れている」などと思われてしまうのが、悔しくてならないからです。(自分ながら、ものすごい考え過ぎだとは思うのですが・・・)

一応、今回のラインアップを紹介しておきますと、以下のようになっています(毎度の寸評は、そこまでの意欲もないので省略させていただきました)。

~特命課オールスターズ選Ⅲ~
《船村刑事主役編》
第32話「殉職・涙と怒りの花一輪」脚本:井口真吾(=高久進)監督:野田幸男(ランキング87位)
《橘刑事主役編》
第88話「私だけの三億円犯人!」脚本:塙五郎、監督:天野利彦(ランキング87位)
《桜井、橘刑事主役編》
第115話「チリアーノを歌う悪女!」脚本:塙五郎、監督:天野利彦(ランキング87位)
《蒲生警視、吉野刑事主役編》
第138話「警視庁窓際族!」脚本:塙五郎、監督:村山新治(ランキング外)
《紅林刑事主役編》
第141話「脱走爆弾犯を見た女!」脚本:長坂秀佳、監督:宮越澄(ランキング76位)
《橘刑事主役編》
第177話「天才犯罪者・未決囚1004号!」脚本:長坂秀佳、監督:青木弘司(ランキング73位)
《紅林刑事主役編》
第188話「プラットホーム転落死事件!」脚本:長坂秀佳、監督:村山新治(ランキング80位)
《叶刑事主役編》
第195話「殺人メロディーを聴く犬!」脚本:長坂秀佳、監督:野田幸男(ランキング94位)
《橘刑事主役編》
第208話「フォーク連続殺人の謎!」脚本:長坂秀佳、監督:野田幸男(ランキング65位)
《叶刑事主役編》
第209話「三千万を拾った刑事!」脚本:長坂秀佳、監督:村山三男(ランキング94位)
《紅林刑事主役編》
第216話「レスポンスタイム3分58秒!」脚本:横山保朗、監督:村山新治(ランキング83位)
《叶刑事主役編》
第223話「ピラニアを飼う女たち!」脚本:横山保朗、監督:村山新治(ランキング87位)
《神代警視正主役編》
第239話「神代警視正の犯罪!」脚本:塙五郎、監督:天野利彦(ランキング76位)
《紅林刑事主役編》
第248話「殺人クイズ招待状!」脚本:長坂秀佳(原案:岸牧子=内館牧子)、監督:藤井邦夫(ランキング57位)
《紅林刑事主役編》
第315話「面影列車!」脚本:阿井文瓶、監督:藤井邦夫(ランキング81位)
《時田刑事主役編》
第437話「逆転推理・秋の花火のメッセージ!」脚本:佐藤五月、監督:辻理(ランキング外)

アンケート結果として発表された上位100位の未収録作(主に下位)を中心に選んだだけあって、槍玉にあげた「ピラニア」以外にも納得しかねるエピソードが名を連ねています(記憶の曖昧な初期編は別にして)。個人的には、納得できるのは「脱走爆弾犯」「プラットホーム」「殺人クイズ」「面影列車」の4本くらい。「天才犯罪者」「フォーク」「三千万」などは、「分からないでもない」というレベルですが、他のエピソードは・・・まあ「窓際族」「神代」「殺人メロディー」「秋の花火」あたりは、主演刑事のファンからすれば(時田のファンがいるのかどうかはともかく)思い入れがあるのかもしれません。
ともかく、今回でアンケート100位以内はほぼ収録されましたので、残るは以下の6本。

第167話「マニキュアをした銀行ギャング!」脚本:長坂秀佳、監督:田中秀夫
第184話「慕情」脚本:石松愛弘、監督:佐藤肇
第205話「雪国から来た逃亡者!」脚本:長坂秀佳、監督:宮越澄
第226話「太鼓を打つ刑事!」脚本:塙五郎、監督:辻理
第323話「二人の夫を持つ女!」脚本:塙五郎、監督:藤井邦夫
第340話「老刑事・96時間の追跡」脚本:大野武雄、監督:野田幸男

個人的には、今回の収録作よりは水準が高いように思われますので、Vol.8があるならば、これらを収録することに不満はありません。しかし、肝心の「(私にとっての)真のベストエピソード」は一体いつになったら収録されるのでしょうか?

第443話 退職刑事失踪の謎! 瀬戸内に架けた愛!

2008年10月24日 02時57分36秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 宮越澄
1985年12月5日放送

【あらすじ】
かつて“鬼”と呼ばれた元刑事が失踪してから3年。橘はその娘のもとを訪れ、元刑事が岡山で発見されたことを明かす。「やっぱり、父は岡山に・・・」娘のもとには備前焼や硯、木彫りの面など、岡山の名産品が差出人不明で送られ続けており、娘は元刑事が郷里である岡山にいると察していた。だが、よもや警官殺しの容疑者として追われているとは、予想していなかった。
かつて、元刑事は苦労をかけ通しだった妻への思いを橘にこう語った。「現職でいるうちはしょうがない。その分、退職後は女房孝行をするさ・・・」だが、定年を迎えたその日、自宅に戻った元刑事を迎えたのは、突然の病に倒れた妻の遺体だった。塞ぎ込む元刑事を案じた娘は、夫と相談した上で「一緒に暮らそう」と持ちかけたが、元刑事は「こんな不味い飯を毎日食わされてたまるか!」とちゃぶ台をひっくり返し、そのまま姿を消していた。
娘ととともに岡山に向かう橘。現地警察が言うには、元刑事は犯行現場から拳銃を放り捨てて逃げ去る姿を目撃されていた。橘は元刑事の無実を信じ、娘も「人違いではないか」と主張するが、拳銃に残された指紋は確かに元刑事のものだった。
元刑事は地元の運送会社に勤めていたが、トラックの運転記録を調べたところ、事件の夜、さらにはそれ以前にも数回にわたり、別人に運転を代わってもらっていたことが判明。代行を頼んだ相手は死体となって発見される。特命課の調べでは、代行を頼んだ日時は、いずれも覚醒剤グループが取引を行った日時と一致する。元刑事と覚醒剤グループとの間に、どんな繋がりがあるのか?
神代以下、特命課の面々も岡山に飛び、本格的な捜査に乗り出す。やがて、娘の夫の会社が、同時期に岡山物産を扱い始めていたことが明らかになる。夫に問い質したところ「義父からのアドバイスと思った」と語るが、釈然としないものが残る。
一方、橘は元刑事の岡山での足取りを追った末に、名産品の工房を渡り歩いていたことを知る。それらの工房は、いずれも亡き妻が働いていた場所であり、元刑事はそこで自ら作った品々を娘に送り続けていた。そして、元刑事が最も働きたかったのは、本人の故郷である岡山と、妻の故郷である坂出を結ぶ瀬戸大橋の工事現場だった。「みんな、亡くなった母への罪滅ぼしだったんですね・・」父の真意を知る娘。だが、最後に送られてきた絣(かすり)と魚網だけは、元刑事が作ったものではなかった。それらは何のために送られたのか?また、備前焼に刻まれた謎の文字は、何を意味するのか?
「もしや、出てきたくとも出てこれない状態にあるのでは?」橘の推測どおり、元刑事は、かつて捜査中に負った傷の後遺症により入院中だったが、発見したときには意識不明で取調べできない状態だった。その間、覚醒剤グループの一員が逮捕され、その証言によって、覚醒剤を岡山から東京に輸送する最、絣や魚網に偽装していたことがわかる。「夫は覚醒剤ルートとつながっていた。絣や魚網は、それを知った元刑事が夫への警告のために送ったんだ」だとすれば、警官や運転代行者を殺したのも、夫の仕業なのか?自らの推理を確認するために病院に向かう橘だが、元刑事は姿を消しており、夫の姿も見つからなかった。
翌朝、元刑事は死体で発見される。現場には、自らの血で書き記した、備前焼と同様の文字が残されていた。目撃者の証言では、犯人は背広に返り血を浴びていたという。姿を消していた夫を発見する特命課だが、夫はシラをきり、証拠となる背広はない。橘はクリーニング屋の伝票から、夫が証拠隠滅のために背広を染み抜きに出したと推測。血痕が洗い流される寸前に背広を発見し、それが証拠となって夫を逮捕する。
事件解決後、謎の文字はクリーニング店で使われる縫い取り文字だったと判明する。クリーニング店もまた、妻の奉公先だったのだ。現場に残された文字は、犯人が夫だと告げており、備前焼に刻まれていた文字は「ごちそうおいしかった。嬉しかった、許してくれ」と、失踪直前の行為を娘に詫びるものだった。不器用な父の確かな愛情を知り、泣き崩れる娘。その眼下では、亡き両親の故郷をつなぐ橋が、開通に向けた工事を続けていた。

【感想など】
橘を演じる本郷功次郎氏の郷里・岡山を舞台にした地方ロケ編。地方ロケものは期待できない、と覚悟はしていたものの、そこは長坂脚本であり、ゲストが織本順吉に加えて、後にGUTSの隊長を務める高木澪。一縷の期待を込めていたのですが、想像以上につまらない話でした。
著書によれば、長坂氏は「ロケハンした場所はすべて使おう」と知恵を絞ったとのことですが、正直言ってクリーニング店のドラマへの絡め方には無理があります。また、暗号の縫い取り文字も、回りくどいというか、わざわざダイイングメッセージを暗号にする必然性が判りません(というか、死にかけの状態でよくそんなものが書けたものですが・・・)。さらに言えば、若かりし日の妻の働きぶりは、あまりに腰が落ち着かぬようで、余計なことながら心配になりました
よくよく考えてみれば、上記の不満点は地方ロケゆえの縛り(たとえば端役に地元の方々を起用したがための棒読み台詞の連続など)のせいというより、上記の「ロケハンした場所はすべて使おう」というつまらぬこだわりと、アイディアに頼ったひとりよがりな展開ゆえでは?これでは「ロケハンは単なる名目で、実は遊び半分で旅行にでも行ってきたのか?」と思わざるを得ません。
なお、本筋とあまり関係ありませんが、最もムカついたのが、照れ隠しなのかどうか知りませんが、娘の好意をむげにした挙句、ちゃぶ台をひっくり返した元刑事の行為です。ラストの言葉で少しは救われた気がしましたが、愛情を踏みにじり、かつ食事を粗末にするああした行為は、人として許せません。頑固親父は決して嫌いではありませんが、たとえ親でもやってはいけないことがあると思いました。

第442話 生きていた死体! 疑惑のニセ家族!

2008年10月20日 21時32分09秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 村山新治
1985年11月28日放送

【あらすじ】
特命課が拳銃強盗犯を逮捕するさなか、流れ弾で老人が負傷する。慌てて病院へ搬送したものの、老人は診察中に姿を消した。警察との関わりを避けるような老人の態度に、不審感を抱いた紅林は、老人の身許を追う。やがて、老人らしき人物を突き止めたものの、それは2年前に財産横領殺人事件の被害者として殺されたはずの人物だった。その事件とは、不動産屋が資産家夫婦を殺害し、その土地を横領・転売したというもの。不動産屋は殺人を否定したが、地検は“死体なき殺人”として起訴していた。老人が殺されたはずの被害者だとすれば、なぜ名乗り出ないのか?また、一緒に姿を消した妻はどこに?
再捜査を開始する特命課。紅林は、老人が娘と孫らしき母子とともに、仲睦まじく歩く姿を発見。母子は老人と同じアパートとの隣人で、老人とは家族同然の関係だった。被害者とは別名を名乗る老人に対し、紅林は「なぜ、姿を消したんです?奥さんはどうしたんですか?」と追及するが、老人は別人だと否定する。
一方、時田らは、被害者が妻の看病のために会社経営から引退したことを突き止める。妻は末期のガンだった。だが、妻の死亡診断書を作成した医者は発見されない。「彼が奥さんを自分の手で、とは考えられんかね?」と示唆する神代。「奥さんを愛していたからこそ、苦しむ姿を見ていられなかった・・・」と時田も応じる。
その後、桜井らの捜査により、老人と同様、母子も住民票の登録がないことが判明。母子は暴力亭主から身を隠すため、転出届も出せずにいたのだ。紅林の追及に、母親は老人との出会いを語る。絶望し、子供とともに海岸で自殺を図っていた母親は、波打際に打ち上げられた老人を発見したという。今の生活を大切にしたい母子と、残り少ない人生を母子に捧げようとする老人。その固い絆を前に捜査をためらいながらも、妻殺しの事実を明かすために、また無実の罪に問われる不動産屋のために、捜査を続ける紅林。
そんななか、ついに暴力亭主が母子を見つけ出し、アパートに乱入。張り込んでいた犬養の助けで事なきを得たが、母親は亭主の告訴には踏み切れず、事態を解決する術は無い。橘が被害者の生家から発見した指紋によって被害者と老人が同一人物だと立証され、アパートを訪ねる紅林。だが、老人は姿を消していた。「亭主を殺すつもりでは!」紅林の推測どおり、包丁を手に亭主に襲い掛かる老人。すんでのところで駆けつけ、老人を逮捕する紅林。「私にしれやれることは、これしかなかった・・・」
特命課の取調べに対し、妻を安楽死させたことを自供する老人。故郷の輪島を思って死んだ妻の遺体を埋めたのは、母子に助けられた海岸だった。遺体発見の報せに安堵の涙をこぼす老人。そこに、桜井に連れられた母子が現れ、亭主との離婚に踏み切ったことを明かす。「おじいちゃんが仕事に行っている間、お母さんを助けてあげるんだぞ」と子供を抱きしめる老人の姿に、紅林はこの“血のつながらない家族”の確かな絆を感じ取るのだった。

【感想など】
愛する妻を、愛するがゆえにその手にかけた老人と、暴力亭主から逃れるべく放浪を続ける母子。行き場のない者同士が築いた“ニセ家族”の哀しい絆を描いた一本です。何か久しぶりに特捜らしいドラマを見た気がしますが、それが藤井脚本というのが、妙に時の流れを感じさせます。特捜の高いドラマ性を支えてきた脚本陣のなかで、塙氏がおやっさんとともに去り、長坂氏の執筆機会も減った当時の特捜にあって、最も特捜らしさを継承しているのが、この藤井氏と言えるのかもしれません(独自の味を発揮し続ける佐藤五月氏もいますが・・・)。

ただ、あえて“継承”と書いたように、全編どこかで見たような展開や台詞というか、焼き直しの詰め合わせという印象が拭い去れないのもまた事実。たとえば、老人の行動は、「裸の街」でのおやっさんや「バラの花殺人事件」での元俳優を想起させます。また、「真実を拒否し、逃げ隠れしている生活はいつか崩れます。本当の幸せを願うなら、真実を受け入れ、過去を清算すべきです」との紅林の言葉には「死んだ筈の女」を思い出します。さらに、安楽死というテーマも「雪明りの殺人者」で藤井氏自身が取り上げているなど、デジャブが止まらないのが残念なところ(さらには妻の遺体を葬るため、休暇を取って能登に向かう紅林に「わらの女」を思い出す、というのは余談ですが)。

また、焼き直し云々を別にしても、老人や母子の現実逃避とも言える選択に、違和感を覚える視聴者も少なくなかったのではないかと思えます。たとえば、過去を暴こうとする紅林に対して老人が言った「人間はいつか必ず死ぬんですよ。そのときに自分が満足して死ねれば、それでいいんです」との台詞。あるいは、大事に育てていた鉢植えの花を庭に植え替えながらの「枯れるかもしれないが、この花だって、ちっぽけな植木鉢でいつまでも咲いているより、他のいろんな花と一緒に咲いて、誰かに楽しんでもらって散るほうが本望なんですよ」との台詞。さらには、自殺を果たせなかったことを振り返っての「死なずに罪を償え、と女房が言っているような気がしました」との台詞・・・いずれも含蓄のある言葉とも取れる一方で、自分勝手な思い込みにも聞こえます。さらに、母子を救おうとした老人の行為も、意地の悪い見方をすれば、先のない老人ならではの“捨て身のヒロイズム”に酔っているだけとも見えなくもありません。いろいろと評価の別れる一本かとは思いますが、個人的にはまずまず満足できた一本であり、今後、メインライターの一角を占める存在となる藤井氏が、どのような独自性を発揮していくかに期待したいと思います。

刑事マガジンVol.6に叶・犬養登場!

2008年10月14日 23時23分50秒 | Weblog
「ファミリー劇場」での放送が2週間お休みということで、すでに放送済みの第442~443話については、その間にぼちぼちと更新させていただきます。その穴埋めというわけではないですが、先日、一年ぶりに発売された「刑事マガジンVol.6」について触れさせていただきます。
個人的には興味のない「相棒」がメインだったのは残念ですが、恒例の70年代刑事ドラマ特集では、叶を演じた夏夕介氏、犬養を演じた三ツ木清隆氏のインタビューが掲載されていました。両者のエピソードはもちろん、夏氏の語る大滝氏(=おやっさん)、三ツ木氏の語る本郷氏(=橘)のエピソードは、興味深いものがありました。
それにしても、驚いたのは夏氏の若さ。叶を演じていたこととほとんど変わらぬ笑顔を見るだけでも、買った甲斐があったというものです。

なお、特捜とは関係ありませんが、Gメンから登場の夏木陽介氏、藤田三保子氏、そして我らが宮内洋氏のインタビューも掲載されおり、興味深く読ませてもらいました。特に夏木氏の談話では、ご本人演じる小田切警視や関谷警部補(原田大二郎)が退場した裏話があり、「そんな理由だったとは!」と驚かされました。

第441話 女子中学生殺人事件・冬のコオロギのSOS!

2008年10月09日 00時42分30秒 | Weblog
脚本 高久進、監督 天野利彦
1985年11月21日放送

【あらすじ】
早朝、河原で女子中学生の死体が発見された。目撃者の釣り人によれば、別の女子中学生が馬乗りになって包丁で刺していたという。桜井、叶とともに付近で張り込み中だった杉は、犯行時刻の直後に不審な様子の少女を見かけていた。桜井と杉は、少女が公衆電話に残していった生徒手帳から身許を割り出し、自宅を訪ねる。
自宅に少女の姿はなく、台所からは包丁が消えていた。母親、兄と三人暮らしのその家族は、小児喘息が原因でいじめに遭っていた少女を救うために引っ越してきたばかりだった。少女の部屋から発見されたコオロギの死骸。それは、住んでいた団地を去る際、その屋上で見つけたものだった。冬だというのに必死に鳴いているコオロギに、少女は自分の境遇を重ね合わせ、大切に飼っていたという。
少女の通う中学校で確認したところ、被害者は同じ学校に通う札付きのツッパリだと判明。少女には友達が少ないらしく、被害者との関係も不明。唯一仲の良い同級生が入院していると聞き、病院を訪れる桜井。同級生は自殺を図り、精神的ショックで喋れなくなっていた。桜井の問い掛けに心を開いた同級生は、筆談で自殺の原因を語る。それは、親友だと思っていた少女からいじめにあったからだという。
いじめの辛さを知る少女が、なぜ親友をいじめるのか?母親や兄に事情を聞いたところ、妹を哀れんだ兄が、軽い気持ちで「いじめられない方法は、自分がいじめる側に回ることだ」と言ったのが原因らしい。「彼女は、団地にいるかもしれない」桜井の勘は的中し、屋上の隅でうずくまっている少女を発見する。「もう生きてるのはイヤ!」飛び降りかねない様子の少女を見て、慎重に接する桜井。少女は「殺そうと思って呼び出したけど、殺せなかった」と語る。
その頃、監視結果を受け取った特命課は、被害者の死因が刺し傷ではなく、頚椎の損傷によるものだと知る。目撃者の釣り人を問い質したところ、あっさりと犯行を認めた。釣り人は、少女が現場に包丁を残して逃げ去ったあと、傷ついた被害者を発見。釣り人の娘も被害者らのいじめにあってため、腹いせに「喧嘩に負けたのか?いい気味だ」と声を掛けたところ、もみ合いになって思わず絞め殺してしまったのだ。
桜井の粘り強い呼びかけに、少女は被害者を殺そうとした経緯を語る。兄の言葉を真に受け、親友をいじめることで、被害者率いるツッパリグループの仲間入りを果たした少女だが、親友の自殺未遂を知って激しく後悔し「もういじめはやめたい」と申し出た。被害者らの暴行を受け、鞄に入れていたコオロギも踏みにじられたのだ。「聞こえるだろう?コオロギが鳴いている」あの日のように聞こえてくるコオロギの声に、耳を澄ます少女。叶と杉が探しだしたコオロギを、桜井は少女に差し出す。「虫だって必死に生きている。君も生きなきゃ。強く生きなきゃ」手の中で寒さに凍えるコオロギを、息を吐きかけて温める少女。泣き腫らした顔に笑顔が戻るのを、桜井は優しく見つめていた。

【感想など】
凍てつく寒さの中で、自分の生命の声を誰かに聞いてもらおうと鳴く冬のコオロギ。季節外れの虫の音を、いじめに遭う少女の声なき悲鳴に重ね合わせた一本です。「俺たちだけでも、そのか細い訴えに耳を傾けてやろうじゃないか」桜井のストレートな優しさが胸に響く一方で「なんかキャラが違う」と感じる思いも捨て切れません。
高久進脚本だからというわけではないですが、シンプルで判りやすいストーリーは、特捜と言うよりも、むしろGメン(それも後期)的な雰囲気。桜井の役どころを立花警部補(演じるは若林豪)に置き換えれば、そのままGメンの一本として通用しそうです。

いじめによる少年少女の自殺が社会問題と化してきたのは、この頃からだったのでしょうか、これまで特捜がいじめ問題をメインテーマとしたのは記憶にありません。「いじめっていうのはね、昔からあったんだよ。しかし、今ほど陰湿じゃなかったね。お互いに、いじめたり、いじめられたりしながら、心の交流があった。そして、成長していった」「受験戦争などへの子供の不安感が苛立ちになる。その鬱積した感情をぶつけるものがない。だからつい、弱いものにぶつけてしまうのかねぇ」橘や神代の台詞として、(おそらくは脚本家の)いじめに対する意見が吐露されていますが、さほど深みは感じられません。
この手のドラマの成否は子役の演技に大きく左右されるものれますが、今回の少女役はなかなか良かったのではないかと思います。まったくの棒読みでもなく、かといって妙に演技達者でもなく、中学生らしさが出ていて好感がもてました(あと、口が利けなくなった同級生もよかった)。

なお、冒頭では、前回のラストで新加入した杉刑事にスポットが当たっていますが、別件で張り込み中とはいえ(一人ならともかく、桜井や叶もいるのに)、手が血まみれの不審な少女を見かけながら放置しておくのは、刑事としていかがなものか?新人刑事ならではのミスとしてガツンと叱責されるのかと思いきや、それを知った桜井は「なぜ早く言わん」だけであっさりとスルー。「それでいいのか桜井?」と言いたくなります。
杉の登場とあわせて、今回から幹子の後任として江崎愛子婦警が登場。オープニングはどうなることかと思っていたら、杉と二人で1カットという中途半端な扱いでした。若い二人がこれからの特捜でどんな存在感を発揮していくのか、期待半分、不安半分で見守っていきたいと思います。

第440話 結婚したい女・ハイミスOLの報復!

2008年10月06日 23時41分44秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 北本弘
1985年11月14日放送

【あらすじ】
市民を巻き込んだ拳銃乱射事件が発生。特命課は拳銃を持ったまま逃走を続けるヤクザを追う。紅林と叶は、路上で見かけた子供の遊んでいた拳銃が、手配中の拳銃と同型だったことに気づく。「あれは玩具でなく、本物だったのでは?」念のため、子供を探し当てたところ、拳銃は近所に乗り捨ててあった自転車のカゴから見つけたもので、空き地に穴を掘って埋めたという。だが、何者かが持ち去ったのか、拳銃は発見されなかった。周辺の聞き込みを開始した紅林らは、その自転車を物色する不審な若者と出会う。それは同様にヤクザを追う、所轄署の杉刑事だった。
その頃、高杉婦警は郷里・青森の母親から帰郷をせがまれていた。3年越しのプロポーズを受けている男性の存在もあり、退職すべきかどうかの選択を迫られる高杉。相談のため、大手企業に勤める同郷の先輩を訪ねたが、つい最近、退職していた。職場の同僚は「結婚のためじゃないか?」と語ったが、「仕事と結婚する」が口癖だった先輩だけに、にわかには信じられない。だが、同僚によれば、30歳を目前に控えて昇進試験に失敗したことを機に、「結婚したい」と漏らすようになっていたという。実家に知らせることも無く住所を変え、行方不明になった先輩を案じる高杉。
そんななか、手配中の拳銃による射殺事件が発生。被害者は女出入が激しいと噂の男で、ヤクザとの接点は無い。その後、杉刑事の協力を得てヤクザを逮捕するものの、男殺しの時間にはアリバイがあった。「拳銃は自転車のカゴに隠したが、なくなっていた。近くのアパートに住む女が見ていた」ヤクザの証言から「拳銃を持ち去ったのはその女ではないか」と推測する紅林。スナックで働いているというその女こそ、行方不明の高杉の先輩だった。
紅林に伴い、先輩のアパートへ向かう高杉。拳銃については無関係を主張する先輩だが、高杉に対してだけは胸の内を明かす。「同期の誰にも負けまいと仕事を頑張ってきたが、気がついたら29歳。何だか置いてけぼりをくったみたいで、たまらなくなっちゃった・・・」
拳銃を持ち去ったのが先輩だとすれば、男を射殺したのも先輩なのか?だが、男との間に何の接点があったのか?紅林の捜査によって、男に騙され口論していた事実が発覚。再び先輩を訪ね、迷いを相談する高杉。「私もお付き合いしている男性がいるの」と無理に幸福を装う先輩に、高杉はそれ以上何も聞くことができなかった。
一方、先輩に見合いパーティーを紹介していた上司には、ベテラン女子社員の「肩叩き」を行っていた。「彼女は、上司も殺す気では?」紅林の予想通り、先輩は上司を待ち伏せし、銃口を向ける。間一髪で間に合った先輩を取り押さえる特命課。紅林の取調べに対し、先輩は動機を語る。見合いパーティーで出会った男に貯金を騙し取られたこと。騙されたと知った翌日、先輩に「後妻のクチならあるよ」と声をかけられたこと。心がズタズタになって死のうかとすら思っていたある日、子供が拳銃を埋めるのを目撃したこと・・・先輩の自白を聞きつつ、高杉は辞職の決意を固める。
新メンバーとして杉刑事を迎えた日、神代は皆に高杉の退職を告げる。「私としても、手放したくはないんだが。みんなも高杉君の幸せを祈ってやって欲しい」「幹子、先輩の分までも幸せになるんだぞ。でないと、我々の掛けた手錠が浮かばれんからな・・・」紅林の言葉に同意するように、優しく頷く刑事たち。「皆さん、長い間お世話になりました。ありがとう・・・ございました」感極まって涙をこぼす高杉を、刑事らの暖かな拍手が包んだ。

【感想など】
第109話(1979年5月、桜井が復帰して高杉が退場、滝が加入した直後。そういえば、西田敏行演じる高杉刑事のいとこという設定でしたっけ)の登場以来、足掛け7年にわたって活躍してきた高杉幹子婦警の退場編。時間帯変更時でなく、あえてリニューアル後4話だけ引っ張った事情はよくわかりませんが、(加えて、このタイミングで若手刑事を新メンバーに加える事情もよくわかりませんが)、何はともあれ「長い間、お疲れ様でした」と労いの言葉をおかけしたいと思います。
刑事ドラマにおいて、女刑事でもマスコット的なお茶汲みでもなく、庶務担当の婦警がレギュラーを務め、時には主役編(夏場恒例の怪談モノなど)も演じるほどの存在感を示したケースは珍しいのではないでしょうか?演じる関谷ますみさんのお人柄がにじみ出るような、清潔感と生活感が適度に入り混じった好演が視聴者から愛されたからでしょう。

しかし、せっかくの幹子退場編だというのに、内容的にはちょっと微妙。特に、先輩が上司まで殺そうとした理由がさっぱりわかりません。「自分を傷つけた人間」に対し「怒り」を覚えるのは無理からぬことですが、それが「殺意」にまで発展するのは、ちょっとリアリティに欠けるような気がします(あと、上司の言葉で心がズタズタになったというのは、「後妻」に対して失礼ではないかとおも思います)。一人殺したからといって、殺人と言う行為への心理的ハードルが下がったという見方もあるかもしれませんが、それもこの女性のキャラクターからして無理があるように思えます。それとも「結婚を焦る女の執念というものは、それほどまでに恐ろしいものなのだ」という佐藤氏ならではのメッセージが込められていたのでしょうか?
また、幹子が退職を決意した決め手が「先輩のようにはなるまい」と思ったからにしか見えないのも、退職編の展開としてはいかがなものかと思います。それも佐藤氏ならではの「女の幸せは結婚だ=いつまでも働いてないで大人しく家庭に入れ」というメッセージなのかもしれませんが。

第439話 愛を撃つ女・暴かれた裏切りのレイプ!

2008年10月01日 00時03分24秒 | Weblog
脚本 宮下隼一、監督 天野利彦
1985年11月7日放送

【あらすじ】
連続タクシー強盗を追う特命課は、犯人の恋人である娘をマーク。ディスコで踊り狂う娘を張り込む犬養たち。そこに現れた女は、娘を強引にディスコから連れ出し、お腹の赤ちゃんを大切にするよう親身になって説得する。
女は2年前、刑事になり立てだった犬養が逮捕した男の妻だった。当時、妊娠中だった女は、自宅に押し入った暴漢に乱暴されそうになったが、帰宅した夫が格闘の末に暴漢を殺してしまう。捜査の結果、犬養は「妻を守るための正当防衛」と主張したが、暴漢は身許がわからなくなるほど顔を潰されていたため、判決は過剰防衛。女はそのショックで流産し、二度と子供の産めない体となった。一時は失意にくれたものの、犬養の励ましで立ち直った女は、タクシー運転手だった夫の愛車を受け継ぎ、出所の日を心待ちにしていた。
女に再会した犬養は、娘との関わりを問い質す。女は娘とはアパートの隣人であり、恋人の凶行を知って自棄になり、子供を堕ろそうとする娘のことが他人事とは思えなかったのだ。「あの子にはこんな思いを味合わせたくないんです。私で終わりにしたいんです」
捜査を続けるなか、犬養は犯人が夫の知人であることや、二人の共通の友人が2年前から行方不明になっていることを知る。その友人こそが暴漢だったのでは?一つの推測は、大きな疑惑を生む。暴漢が夫の友人だったとすれば、2年前の事件は正当防衛ではなかったのでは?だが、仮にそうだとしても“一事不再理”(※一旦量刑が確定した事件をもう一度裁くことはできないという刑法上のルール)によって判決は覆らない。また、夫を待ち続けている女の心を考えれば、事実を追及することは憚られた。そんな犬養に、桜井は語る。「事実って奴は必ず明らかになる。そこから眼を逸らさないのが刑事だし、人間だ」
女に当時の状況を確認しようとするものの、言い出せない犬養。その間に、犯人は女の運転するタクシーを狙う。「恋人に会えたら自首する」犯人の言葉を信じた女は、娘を犯人の待つ倉庫に連れて行く。女のタクシーを追って、倉庫を包囲する特命課。追い詰められた犯人は娘を人質に取る。「やめて!私のお腹には、あなたの子供がいるのよ!」「俺のガキかどうか、わかるもんか!」隙をついて犯人を取り押さえる特命課だが、裏切られたと知った娘は激情にかられて犯人を刺す。
事件は解決したかに見えたが、犯人が所持していた拳銃が見つからない。病院で意識を取り戻した犯人は「タクシーの中に隠した」と証言。だが、拳銃はすでに女が持ち去っていた。「問題は、彼女が拳銃を必要とする理由だ・・・」「まさか!」桜井の疑問に、犬養が反応する。犬養の説明を聞いた橘や紅林は、2年前の事件の裏を見抜く。「暴漢の顔を潰したのは、意図的に身許を隠そうとしたからでは?」「つまり、計画殺人だった可能性がある」「そんな!」愛する妻を守るための正当防衛どころか、妻を囮にした計画殺人だったというのか・・・愕然とする犬養。
「我々の仕事は裁くことではない。真実を見つけ出すことだ」一事不再理の原則を踏み越えて、2年前の事件を調べ直す特命課。やがて、橘らの推理は裏付けられる。夫は友人との賭ビリヤードに負け続け、最後に女すら賭けていた。女は倉庫で男からその事実を知らされていたのだ。責任を感じて辞表を出す犬養。「お前の捜査を信じ、夫を信じた女の気持ちはどうなる」「刑事が一つの判断を下すということは、それだけ重いことなんだ」橘や桜井の言葉、辞表を破り捨てる神代の態度に、気を取り直した犬養は、夫のもとへ向かった女を追う。
出所する夫を待ち構え、銃口を向ける女。「やめろ!やめるんだぁ!」女の前に飛び出す犬養。「俺が2年前に真相に気づいていたら、君にこんなことをさせずにすんだ!だから、撃つなら俺を撃て!」自分の喉に銃口を向ける女。そこに、橘が娘を連れてくる。「この娘はね、自分を裏切った男の子供など生むまいと思った。だが、君を信じて生む決心をしたんだよ」橘の言葉に崩れ落ちる女。犬養が女にしてやれることは、その手に手錠を掛けることしかなかった。「苦く、悲しい真実を見つけ出すこと。それが私の刑事としての本当の第一歩だった」

【感想など】
サブタイトルや冒頭の演出から、かの名作「撃つ女!」の焼き直し(あるいはオマージュ)かと思いきや、比較するのも虚しいほどの出来でした。さほど込み入ったストーリーではないのですが、先が読めるわりには回りくどく、かといって意外性もない。ドラマが二転三転するというより、右往左往しているという印象です。ラストの犬養の熱演も、肝心の台詞に論理性の欠片もないために、正直なところ「何を言ってるのか?」という印象です。
犬養が夫の真意を見抜けなかったのは事実ですが、仮に2年前にそれを見抜いてしたとして、それで女が救えたとは思えません。犬養の女に対する責任は、突き詰めて言えば「2年間、夫に騙されたままにしてしまった」ことだけであり、出所するタイミングにあわせて都合よく拳銃が手に入ったこと、女が(2年間騙され続けたゆえに?)夫に対し殺意を抱いたことにまで、責任を感じるのはちょっとどうかと思います。「俺は刑事失格です!」などとご大層なことを言って辞表を出すのも含めて、「思い込みの激しすぎる痛い奴」というマイナス評価しか出てきません。

あと、個人的に気になったのは、女と夫、娘と犯人、女と犬養、女と娘など、さまざまな関係において「信じる」という言葉が多用されていますが、こうした「信じる」の大安売りには、正直言って辟易します。桜井は「刑事が判断を下すということは、それだけ重いことなんだ」と刑事という仕事の責任の重さを語りましたが、刑事に限らず「信じる」という判断を下す際には、重い責任が伴うのではないでしょうか?
誰かを「信じる」ということは、「信じるに足る」という自分の判断を「信じる」ことであり、その責任を取るのも結局は自分でしかありません。にもかかわらず、よく知りもしない相手を安易に信じて、騙されたと知るや、信じるに足りない人間を信じてしまった自分の非を顧みることなく「騙された」「裏切られた」と被害者顔で言い募る愚かさには、ほとほと呆れてしまいます。こうした愚かさの最たるものが、選挙に際して知名度や印象だけで判断し、愚にも付かない低劣な候補者に貴重な一票を投じて当選させ、その愚かさに相応しい愚行を見せるや、マスコミの街頭インタビュー(これ自体が不快でしょうがないのですが)に対し「裏切られた気持ちです」などと抜かす選挙民の姿勢です。「信じるに足る政治家などいない」という虚しい結論がある以上、やむを得ないことかもしれませんが、せめて自分の一票で愚者を国会に送り込んだという自責の念だけは、持っていて欲しいものです。

・・・話が変な方向に逸れてしまいました。新メンバーの紹介編として、2話続けて(前話は桜井の引立役でしたが)メインを務めた犬養ですが、立ち位置としては「直情径行な若手の熱血派」というところ。制作サイドの狙いとしては吉野の後釜のつもりかもしれませんが、この2話だけを見る限り「直情」というより「短慮」としか思えません。他の刑事との差別化としては「まだ刑事になって2年目」という「若さ」=「未熟さ」も挙げられますが、その役割も次回から登場する杉刑事に奪われかねません。先行きの不安さは否めませんが、演じる三ツ木氏は決して嫌いな俳優さんでもないので、何とか頑張ってもらいたいものです。