特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第333話 一円玉の詩!

2007年07月31日 01時48分43秒 | Weblog
脚本 大川タケシ、監督 山口和彦

ある夜、紅林の自宅近くでタクシー運転手が殺された。現場に駆けつけた紅林が見たものは、車内に散乱する大量の一円玉だった。所轄署は「いまどき一円なんて紙屑同然。客が落としたか、捨てたんだろう」と気にも留めず、目撃者の証言をもとに近所のヤクザを逮捕。ヤクザは売上金を奪ったことは認めたものの、殺人については否定する。納得いかない紅林は、現場付近の草むらでスーパーの紙袋に入った数百個の一円玉を発見。すべて同じ年に発行されたもので、車内に残された一円玉も同様だった。
神代の許可を得て再捜査を始めた紅林は、現場付近で立ち尽くしていたスーパーの女店員に疑念を抱く。犯行当夜の行動を確かめたところ、女店員は「病院にいた」と答え、一円玉については「何も知らない」という。病院で確認したところ、女店員は犯行当夜、バイクに跳ねられた近所の少年を病院に運び込んでいた。女店員は同じく近所に住む老人とともに、鍵っ子である少年の面倒を見ていたという。少年は頭を打って意識不明のままで、その日も老人が付きっ切りで看病していた。
老人と女店員、そして少年のただならぬ絆を感じ、その身辺を聞き込む紅林。定職屋で料金が5円足りずに困っていた女店員に、老人が助け舟を出したのが二人の出会いだった。二人は母親にかまってもらえず寂しい思いをしていた少年とともに、孤独な者同士が慰め合うようにして暮らしていた。老人が大量の一円玉を貯めていたことを知った紅林だが、老人宅を捜索しようとした矢先、女店員が特命課に自首。女店員は明らかに老人をかばっていた。女店員の自首を知り、苦しげな表情を浮かべる老人に紅林は語りかける。「子供の頃、一円玉を粗末にする私を、母は『一円を笑う者は一円に泣く』と叱った。それ以来、私も一円玉を貯めるようになった。一円玉を大切にするあなたが、理由もなく人を殺すはずがない。正直に言ってください。でないと、あなたが大事にしている一円玉が悲しみますよ」そのとき、看護婦が少年の意識が回復したことを告げ、老人は安堵の吐息とともに犯行を告白する。
その夜、女店員から少年が撥ねられたとの連絡を受けた老人は、財布を少年に渡していたため、貯めていた一円玉を紙袋に入れて部屋を飛び出した。タクシーで病院に向かう途中、一円玉で料金を払おうとした老人に、運転手は「今時一円玉なんて何の役にも立たない」と受け取りを拒否。一円玉を蔑ろにされた老人は、怒りにかられて運転手を殺してまったのだ。「私は、一円玉をバカにした運転手が許せなかった。使い途がなくて、孤独で寂しい一円玉が、つい自分のような気がして、いつの間にか貯めるようになった」誰にも顧みられることのない一円玉に、社会に居場所のない自らの境遇を重ね合わせる老人の呟きに、紅林は黙って耳を傾けるのだった。

ファンが選ぶベストエピソードで上位にランクされ、DVD-BOXVol.1に収録された一本だけに、期待して見ていたのですが、正直なところ期待はずれ。むしろ老人が一円玉を大切にする理由や犯行動機について、納得いかないものを感じました。

ご存知の通り「一円を笑うものは一円に泣く」という言葉は、「わずかのお金でも大切にすべき」という教え。私たちの世代であれば、親に言われるまでもなく、自然と身についた道徳観だと思います。しかし、今回の老人の場合は単なる1円玉コレクターであり(発行年度別に分類するなど、本人以外には何ら意味のない貯め方をしていることからも明白)、自分の大切なコレクションをバカにされてキレたとしか受け取れません。もちろん運転手の態度はひどいとは思いますが、数百個の1円玉を数える手間を考えれば、法律云々ではなく断られるのが当然でしょう。仮に、老人をフィギュアオタク、大量の一円玉をプレミアのついたレアなフィギュアに置き換えて、老人の行為を検証して見れば、犯行動機の理不尽さ分かるでしょう。
お金を大切にするということは、決して発行年度別に分類して溜め込むことではありません。もし一円玉に気持ちがあるならば、日々の暮らしの中で、大切に使われることを望んでいるのではないでしょうか?消費税がどうとかではなく、募金箱に入れるなり、銀行で両替するなり、流通させることは難しいことではないはず。日々の暮らしの中で一円玉を役立ててこそ、お金のありがたみが分かるのではないかと思います。

また、ラストで特命課の面々が「硬貨は20枚までしか強制通用力はない」と定めた臨時通貨法について感想を述べ合いますが、ここでも結局のところ何が言いたいのかよく分かりません。「こんな法律はおかしい」とでも言いたいのか?それとも「誰も知らないマイナーな法律を持ち出して人の行動を規制するな」と言いたいのか?そのあたりのテーマの曖昧さや、あらすじ中に長々と引用した紅林の台詞の論理性の無さも、私が本作を評価できない理由の一つです。

※ちなみに「臨時通貨法」は昭和62年に「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に改定されましたが、「貨幣は額面の20倍までを限り法貨として通用する」とされ、20枚までしか強制通用力がないルールは変わりありません(紙幣は別)。

第332話 殺人実写フィルムの女達!

2007年07月30日 00時41分55秒 | Weblog
脚本 峯尾基三、監督 天野利彦

桜井のもとに届いた謎の8ミリフィルム。そこには見知らぬ女が何者かに刺し殺される現場が映されていた。翌朝、フィルムに映っていた女が死体で発見される。犯人はなぜ殺人シーンを撮影し、桜井に送ってきたのか?特命課は桜井がかつて逮捕した性犯罪者のリストをもとに捜査を開始する。
やがて、第二のフィルムが届けられ、同様に死体が発見される。第三のフィルムを現像所に持ち込んだ女を取り調べたところ、映像を撮影した男が判明。それは、かつて桜井が婦女暴行罪で逮捕し、釈放されたばかりの変質者だった。男の潜伏先を突き止めた桜井は、編集機材とともに不動産屋の領収書を発見。不動産屋に確認したところ、別荘を借りていたことが判明する。別荘に踏み込んだ桜井が見たものは、変質者の死体だった。死因は青酸中毒であり、現場には他に人がいた様子はないことから自殺と見られたが、桜井は割り切れないものを感じていた。
三本の映像を繰り返し見た桜井は、第一のフィルムに違和感を覚える。第二、第三の被害者はカメラ、すなわち撮影者から必死に逃れようとしていたが、第一の被害者のみ、カメラに向かって助けを求めるような素振りを見せていた。第一の被害者は弁護士の婚約者だった。その身辺を調べ直したところ、弁護士に新しい恋人ができたため、婚約を破棄していたことを知る。弁護士に疑惑を抱いた桜井は、「これを撮影したのはあなたでは?」との質問をぶつけるが、弁護士は「馬鹿馬鹿しい!」と怒りをあらわにして否定する。
その後、橘の調べで、弁護士と変質者の接点が判明かするが、弁護士は犯行当日に軽井沢でゴルフをしており、アリバイは完璧だった。アリバイを崩すべく、再び映像を見返す桜井。三本の映像は、いずれも変質者が借りていた別荘で撮影されたものと思われたが、実は第一の現場だけは、良く似た別の場所で撮影されたものだった。桜井は蝶番の位置からそのことを見抜き、弁護士を追い詰める。「特定の動機ある人物を殺せば、いずれは警察の手が伸びる。あなたは警察に疑われることなく元婚約者を殺すため、一連の猟奇殺人の一つに見せかけようとした!」すべてを見抜かれた弁護士は、もはや犯行を自白するしかなかった。

捜査のポイントを絞らせないため、異常者の犯行に見せかけて連続殺人を犯すというトリックは、ミステリーの古典であるクリスティの『ABC殺人事件』が元ネタ(というかぶっちゃけパクリ)と思われます。刑事ドラマがミステリーのトリックをパクることは珍しいことでなく、本作では殺人シーンを映像に残して送りつけるという猟奇性を付与しているため、オリジナリティの点では問題なしとしましょう。ただし、淡々と事件の推移を追うのみで、特捜本来の魅力である犯罪者や被害者、事件を追う刑事の心理的背景が全く描かれないため、見ていて感情移入のしようがありません。最後まで淡々と見ているのみで、「蝶番(ちょうつがい)を「ちょうばん」と読むのは間違いではないのか?」と、どうでもいいことばかり気になってしまいました。

第331話 小さな紙吹雪の叫び!

2007年07月23日 22時15分09秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 野田幸男

ホテルの屋上から会社員が突き落とされ死亡した。所轄署の捜査が行き詰まり、特命課が捜査に乗り出す。被害者は大手企業で合理化推進を担当しており、転属・降格させた多くの社員の恨みを買っていた。降格された社員のリストをもとに捜査を進めるなか、叶は死体の側に落ちていた紙くずに着目。会社近くの文房具屋で同じ紙を発見し、紙くずはその紙をシュレッダーにかけたものだと判明する。その紙を被害者の会社の女社員が頻繁に買っていたと聞き、女社員を調べる叶。女社員は社員食堂に配置換えとなっていたが、かつては社員福祉係を担当し、社員の誕生日に花を贈る仕事に誇りを持っていた。問題の紙について確認する叶だが、女社員は「メモ帳用に買っていたが、配置換えの際にすべて焼却した」と答えた。
女社員の証言の裏を取るべく、社員に贈っていた花を買っていた店を訪ねた叶。花屋の女店員は女社員の友人であり、「彼女は社員一人ひとりの好みを考えて花を贈っていた」と真摯な仕事ぶりを誇らしげに語った。「彼女は問題の紙に社員の好みをメモしていたのではないか」と推測する叶だが、女社員は否定した。だが、女店員に確認かめたところ、女社員は問題の紙で社員一人ひとりの趣味嗜好を書いたカードを作成し、それを持って花を買いに来ていたという。彼女はなぜ嘘をついたのか?
その後の調べで、被害者が進める強引な合理化に対して、女社員がただ一人異を唱えたことが分かる。「社員の誕生日に花を贈るのは、素晴らしい制度だと思います。なぜ止めてしまうんですか?」社員カードを持って抗議に来た女社員に対して、被害者は怒りを露にし、女社員からカードを取り上げシュレッダーにかけた。その後、女社員は刻まれたカードの屑を貰いに来たという。取り調べに対し、女社員は犯行を自白する。その日、被害者は「花を贈る制度について考え直した」と言って女社員を呼び出し、ホテルに連れ込もうとしたという。女社員は持っていた紙くずを被害者にぶつけて「人でなし」と罵り、その拍子に転落したのだった。
ラストシーン。女社員に託された子猫とともに、花屋の女店員を訪ねる叶。だが、女店員は友人の逮捕にショックを受け、田舎に帰ろうとしていた。「東京は生きる情熱を枯らすところだと気づきました」と語る女店員に「東京で頑張れ」と諭す叶。叶の言葉を振り切り、去っていく女店員だったが、雨の中で子猫を探す叶の姿に、再び東京で暮らす決意を固める。厳しい東京の生活の中で、それでもなお人を思いやる優しさを忘れまいと。

合理化の名のもとに優しさが踏みにじられていく悲劇を描いた一本、なのでしょうが、時代の違いのせいか、悪の権化のごとく描かれている被害者に同情を禁じえませんでした。
当時、リストラという言葉はまだ一般的ではなかったようですが、終身雇用、年功序列が常識だった時代に、合理化の名のもとに降格された社員の反発がどれほどのものだったのか、想像はできます。とはいえ、企業間の競争が厳しくなるなか、既得権の上に胡坐をかいて生産性を妨げる社員が降格されるのは当然のことであり、合理化を推進した被害者を責める前に、まず自分が会社に対して貢献しているかどうかを振り返るべきではないでしょうか?(特捜とは関係ないですが、そうした合理化を全くしてこなかった組織は、社会保険庁のような腐った風土を生み出しかねないことにご注意ください)
女社員のやっていた「社員に花を贈る仕事」は、社員に喜ばれるのはともかく、会社に対してなんら利益を生み出すものではなく、ムダと言われても仕方のないこと。人に喜ばれて嬉しく思い、その仕事に誇りを持つこと自体は責めることはできませんが、それで何を生み出しているわけではないということに気づいて欲しいものです。シュレッダーにかけるというのは正直やり過ぎとは思いますが、もし私が被害者の立場だとしたら、「会社は利益を追求する組織」という当たり前の事実を分かろうともしない彼女の言い分に、心からムカつき「単なる自己満足でしかない仕事のために給料を払う身になってみろ」ぐらいのことは言ったかもしれません。経営者のやり方に不満があるなら、会社を辞めればいい。一人でやっていく自信がないなら、会社の方針に従うしかない。今では当たり前の感覚だと思うのですが、当時はこれが悪と思われていたのでしょうか?
そんなわけで、ドラマ中盤までは被害者にやや同情的でしたが、妻がいる身で女社員をホテルに誘ったのはいただけません。とはいえ、よくよく考えたら、無理やり関係を迫ったわけでもなく、殺されるほどの悪人とはとても思えません。この被害者に「都会の悪意」を仮託させるのは、ちょっと無理があるように思えてなりません。

第330話 佐世保の女!

2007年07月23日 06時51分03秒 | Weblog
脚本 竹山洋、監督 天野利彦

ある夜、池袋で米軍海兵が足の不自由な男に刺殺された。凶器に残された指紋から、犯人は詐欺罪で指名手配中の男と判明する。男はこれまでにも外国人とトラブルを起こしており、外国人に恨みを持っているものと推測された。男が滞在していた簡易宿泊所を突き止めた特命課だが、すでに男の姿は無かった。残された荷物の中に、男には不似合いな香炉があった。男は「これを焼いた女が知り合いだ。いざという時に助けてもらう」と語っていたらしく、桜井と紅林は香炉の製造元である佐世保に飛んだ。
香炉を焼いた女は、クリーニング店主の妻だった。男との関係を問い質され「そんな男は知らない」と答える女だが、桜井は米兵を拒絶する女の態度に男との共通点を感じ、密かに尾行を開始する。男の過去を調べたところ、かつて佐世保に米軍艦が入港するのを阻止するための学生運動(いわゆる「エンプラ闘争」)に参加し、その際に足を負傷したことが判明。ノンポリ学生だった男が学生運動に参加したきっかけは、ある女子学生であり、それは香炉の女に間違いなかった。その事実を突きつけられても、女は頑なに男との関りを否定する。それは、自分の過去を亭主に知られたくなかったためだった。女は自分の身代わりになって足を負傷した男のために、街娼に身を落としていた時期があり、その過去を亭主に知られることを恐れていたのだ。
男が九州へ向かったことを突き止め、佐世保に集結する特命課。男の行方はつかめず、桜井は女のマークを続ける。ようやく男との関係を認めた女は「私があの人の人生を狂わせた。その借りを返さないといけない」と桜井に語る。桜井は佐世保の海の潮を指差し、女に語りかける。「君はあの潮の流れを止めることができるか?奴はあの潮に流されているだけだ。あんな奴のことより、毎日アイロンをかけるご主人の気持ちを考えてやれ」
その後も女を張り込み続ける桜井らに、女は「夕べ、あの人から電話がありました」と告げ、待ち合わせ場所を明かす。しかし、それは特命課の眼を逸らすための嘘だった。女は店の金を持ち出して男のもとへ向かう。女を追った桜井は男を発見。通りすがりの車を奪って逃走を図る男を追跡する。廃工場跡に男を追い詰めた桜井。「来るな!飛び降りるぞ!」と自殺をほのめかす男に、桜井は悲痛な眼で男を見上げる女を指差し「彼女は今の生活を捨ててまで、お前をかばおうとしたんだ!」と叱責する。連行される男を、涙ながらに見送る女。逃走幇助で罪に問われそうになる女を、桜井は捜査協力者としてかばう。亭主のもとへ送ろうという桜井の申し出を「一人で帰ります」と断る女。振り向かず去っていく女の背中を桜井はずっと見つめていた。

学生運動で負った傷から立ち直れないままの男と、その男を学生運動に引き込んだ負い目を抱えながらも普通の暮らしを手に入れた女。二人の再会から始まる悲劇を描いた一本なのですが、なんというか、掘り下げ不足であっさりしすぎ。過去を引き摺る男と、現在を必死に生きる亭主との対比をもう少しきちんと描いていればよかったのではないか、などと思ってしまいました。香炉とドラマの関わりも、単なる名産品紹介の枠を出ておらず、「やはり地方ロケは駄目なのか」と溜息をもらすしかありません。

DVD第4弾ラインナップ決定

2007年07月20日 21時29分01秒 | Weblog
DVD第4弾ラインナップ決定

11月に発売されるDVD-BOX・Vol.4に収録されるエピソードが決定しました。今回はスタッフ&キャストが選ぶマイ・ベスト・エピソードということで、次のようなラインナップとなっています。

《荒木しげる推薦》
第68話「誘拐・東京‐函館・縦断捜査!」
第69話「誘拐Ⅱ・パニックイン・函館!」・・・見てるはずですが、特に記憶になし。
《櫻木健一推薦》
第108話「午前0時に降った死体!」・・・滝登場編
《横光克彦推薦》
第129話「非情の街・ピエロと呼ばれた男!」・・・納得。待望の一本。
《夏夕介推薦》
第148話「警視庁番外刑事!」・・・叶登場編
《塙五郎(脚本)/深沢道尚(プロデューサー)推薦》
第152話「手配107・凧をあげる女!」・・・傑作!これだけでも買う価値あり。
《櫻木健一推薦》
第169話「地下鉄・連続殺人事件!」・・・滝退場編
《誠直也推薦》
第200話「ローマ→パリ縦断捜査!」
第201話「ローマ→パリ縦断捜査Ⅱ!」・・・初の海外ロケとしか印象なし。
《塙 五郎(脚本)推薦》
第211話「自供・檻の中の野獣!」・・・これも傑作。おやっさんファンは必見!
《横光克彦・深沢道尚(プロデューサー)推薦》
第212話「地図を描く女!」・・・紅林の魅力が満載!感涙の一本です。
《藤井邦夫(監督・脚本)推薦》
第255話「張り込み 顔を消した女!」・・・先日見たばかりですが低評価。なぜ選ばれたか疑問。
《長坂秀佳(脚本)推薦》
第260話「逮捕志願!」・・・典型的な長坂脚本。織本順吉の演技も光る。
《天野利彦(監督)推薦》
第380話「老刑事・対決の72時間!」・・・以降は未視聴
第399話「少女・ある愛を探す旅!」
《長坂秀佳(脚本)推薦》
第418話「少年はなぜ母を殺したか!」

個人的に期待(予想?)した16本のうち、実際に収録されたのは4本だけでしたが、それにしても「張り込み 顔を消した女!」だけは分からない。脚本の藤井氏にとっては思い入れの深い一本なのでしょうが・・・
ちなみに、メインキャストのうち二谷、藤岡、本郷、大滝の各氏(あと西田、三ツ木、渡辺、阿部の各氏も)のセレクトは無し。ひょっとしてVol.5が彼らのセレクトなのでしょうか?

第329話 父と娘のしあわせ方程式!

2007年07月17日 03時23分59秒 | Weblog
脚本 塙五郎、監督 藤井邦夫

ハワイで夫とともに暮らす娘に初孫が誕生したことを喜ぶ船村。早速、出産祝いを贈ろうとした矢先、小学生の少年が誘拐されたとの通報が入る。被害社宅に駆けつけたところ、通報したのは中学生になる姉だった。両親の行方を問い質す船村に、姉は「父親は数年前に離婚し、母親は別の男のところ」と涙混じりに答えた。活字を切り貼りした脅迫状には「父親が金を持ってこい」と記されていた。離婚した父親の素性を調べたところ、船村の娘の夫だと判明。驚きつつも、ハワイに連絡しようとする船村だが「犯人が被害社宅の事情を知っているわけじゃない。身内だから言うわけじゃないが、彼には新しい生活がある」と神代が制止。母親の情夫を父親の代理にさせようとしたが、女を食い物にするクズのような男であり、やむなく紅林が代理となる。
しかし、指定された受け取り場所に犯人は姿を現さず、再び届いた脅迫状には「本当の父親を連れてこい」と記されていた。船村は娘の夫に事情を隠して帰国を促し、空港に迎えに出る。予想外の娘と孫の姿を見て戸惑いつつ、夫だけに事情を明かして被害社宅へ伴う船村。「勝手な頼みだが、娘には黙っていて欲しい。それから、娘を悲しませないでくれ」と、父親としての本音を漏らすのだった。
その間、脅迫状の文面に誤字が多いことに不審を抱いた桜井は、子供たちの狂言ではないかと推測。姉の後を追って、潰れた母親のスナックに踏み込む桜井。だが、そこに少年の姿はなかった。事情を話すよう諭す桜井だが、姉は硬く口を閉ざしてしまう。やむなく家に送っていったところ、船村とともに父親が到着していた。懐かしい父親の胸にすがりつき、涙ながらに告白する姉。「ごめんなさい。私が弟に『お父さんに会わせてあげる』って約束したの」しかし、当初は狂言だった誘拐が、いまや本当の事件へと発展していた。少年の身代金を求める電話を掛けてきた声は、母親の情夫のものだった。
当初は事情を知らず、船村に孫の顔を見せて喜ぶ娘だったが、3千万円を用意するために、夫はやむなく事情を明かす。「お父さんって昔からそうだった。捜査のためだったら、娘がどうなってもいいのね!」と船村を責める娘。「あの人は今では私の夫よ。何でいまさらあの人を呼んだの!犯人を逮捕するためでしょう?」言い訳することなく「そうだ」と答える船村に、娘はやり場のない怒りをぶつけるのだった。
船村が家を抵当に入れて用意した3千万円をもって指定された場所へ向かう。タクシーを囮にして、夫だけを別の場所に呼び出す情夫。夫の後を追った船村は、船着場の小屋の中で少年を発見するが、背後から情夫が包丁で襲いかかる。少年をかばった夫の背中を、情夫の包丁が貫く。救急車に運ばれながら、船村に妻のことを託して息を引き取る夫。「空港で待っていてくれ」との夫の言葉を信じて待っていた船村の娘は、ニュースで夫の死を知り、ハワイへと帰国した。
数日後、船村は孫のために買ったベッドメリーを「いらなくなっちゃったんだよ」と飲み屋の女将に譲る。雨の中、一人家路につこうとして船村が見たものは、傘を持って迎えに来た娘の姿だった。

第275・276話のハワイ編の後日談として、おやっさんの娘とその夫の悲痛な運命を描いた一本です。おやっさんにとってキーポイントとなる話だけに、脚本はやはり塙五郎。細部まで隙のない脚本は見事です。
たとえば、子供たちの父親が明らかになる一連のシークエンス。少年の学校に向かった紅林は、少年の描いた絵に記された名前に目を止めます。「両親が離婚して、苗字が変わったのが辛かったのか、ときどき、わざと昔の苗字を書くんです」と担任の先生が語るように、そこには離婚前の苗字が記されていました。紅林は冒頭で、ハワイの孫に向けてお祝いを贈ろうとしたおやっさんから「私の代わりに英語で宛名を書いて欲しいんだ」と頼まれた際に、娘の夫の苗字を聞いていたため、少年の実の父親がおやっさんの義理の息子だと気づくのです。少年の父親の素性が判明するというストーリー上の核となるシーンの背後に、孫が生まれたおやっさんの喜びや、父親が離婚した少年の哀しみを絡ませることで、ドラマに厚みを持たせる心遣いが、他の脚本には見られない塙五郎ならではの持ち味と言えるのではないでしょうか。
父親として娘の幸せを祈りながらも、刑事として、そして人として、誘拐された少年を救おうと奔走するおやっさん。その行為を娘から責められたとき、あえて言い訳を口にすることなく「捜査のためだ」と答えるその不器用さが、たまらなく切ない。また、船村を、そして娘の夫を気遣う神代の優しさも胸に迫ります。ちなみに、タイトルは「世の中には、幸せの量が決まっているのかねぇ。誰かが幸せになれば、その裏で誰から不幸になる。私は娘の幸せしか考えていなかったが、その影であの子供たちは・・・」というおやっさんの台詞から。特捜テイスト溢れる、一度聞いたら忘れられない味のあるタイトルです。

第328話 カラスと呼ばれた女!

2007年07月15日 23時51分07秒 | Weblog
脚本 竹山洋、監督 辻理

新宿で身許不明の老人の死体が発見された。酔った上での転落死として処理されたこの事件を再捜査したいと申し出る紅林。数日前、紅林は老人が信号待ちの車一台一台に「100円ください」と声を掛け、うるさがられるのを見ていた。死体の側に落ちていたブローチは、老人がそうして貯めた金で買ったものだった。「そうまでして買ったプレゼントを渡す前に、事故死するのは腑に落ちない」と主張する紅林に、神代は捜査の許可を出す。
老人の浮浪者仲間を当たった紅林は、「カラス」と名乗る女浮浪者と出会う。老人は「ああ上野駅」を歌うのが得意だったことから「駅長」と呼ばれていた。その歌を手掛かりに上野駅周辺を聞き込んだ結果、老人はかつて付近に勤める巡査だったが、10年前に懲戒免職となっていたことが判明する。当時、老人は密輸品を扱う貴金属店を内偵していたが、本庁の刑事から「この件は我々に任せておけ」と捜査を止められた。しかし、実際は刑事が裏で貴金属店と繋がっており、その関係を調べようとした老人は、実の娘のように可愛がっていた貴金属店の店員に婦女暴行犯の濡れ衣を着せられた。「これは罠です!」との訴えも虚しく、老人は解雇され、妻子とも離縁することに。
その後の老人の足跡を追った紅林は、正義感が強すぎるあまり、次第に行き場を失っていった老人の悲哀を知る。10年前の事件が冤罪だと確信した紅林は、それが老人と店員の共謀によるものだと推測し、二人の行方を追う。「ブローチを送ろうとした相手は、別れた娘しかあり得ない。老人は娘と再会して、必死に金を貯めようとしているなかで二人を見つけた。そして娘のために10年前の汚名を晴らそうとして殺されたのではないか」と推理したのだ。小料理屋の女将となっていた貴金属店の店員を発見した特命課。最初は事件との関りを否定した女将だが、老人の死体を前にして重い口を開く。10年前から愛人関係にあった二人は、刑事の悪事を暴かれまいとして老人を陥れ、その後、刑事は実業家へと転身していた。事件当夜、老人はタクシーで通り掛った女将と元刑事に気づき、二人を問い詰めた。その結果、元刑事は老人とともに新聞社に行って事実を告白すると約束したという。「約束を口実に老人を連れ出して殺した」と推測する紅林だが、自分から出頭してきた元刑事には確かなアリバイがあった。「たとえ今回の事件が貴様の仕業でなくても、10年前の事件は時効になっても、俺は貴様を許さん!」紅林の怒りが虚しく響く。
女浮浪者にブローチを見せたときの反応が気になった紅林は、再び女浮浪者を訪ねる。紅林に問い詰められ、女浮浪者は涙ながらに告白する。老人がブローチを買ったのは、やはり娘のためだった。死の数日前、女浮浪者とともに街を徘徊していた老人は、偶然娘と再会。娘が婚約中だと知った老人は、その日から100円集めを開始。そして事件当夜、老人は公園で娘の結婚式でスピーチする練習をしていた。通りかかった女浮浪者は、老人にブローチを見せてとせがみ、手に取ろうと揉みあった末に、老人を転落死させてしまったのだ。事件は解決し、紅林はようやく探し出した老人の娘にブローチを渡そうとする。「いりません」と受け取りを拒否する娘。「お父さんが、たくさんの人に頭を下げて100円づつ貰って貯めたお金で買ったものなんです!」と訴える紅林。だが、娘は悪徳警官の娘として苦労を余儀なくされたことを恨んでいたのではなかった。「いつまでも男らしくて誇り高いお父さんでいて欲しかったんです!自分で汗水流して働いてくれれば、たとえ10円でも・・・」
雨の振る中、引き取り手のない老人を一人弔う紅林。葬儀場でブローチも一緒に燃やしてもらおうとした寸前、駆けつけた娘。雨の中、泣きながら駆け寄る娘に、紅林はブローチを差し出すのだった。

竹山脚本の持ち味と言える「運命の皮肉さ」が味わい深い一本です。悪意のある元刑事が裁かれることなく、悪意のない女浮浪者が裁かれなければならない。自分の捜査はいったい何のためだったのか、虚しさと後味の悪さをかみ締めるしかない紅林の苦悩が身に迫ります。
脚本も素晴らしいですが、老人を演じた今福将雄もまた素晴らしい。夜の公園で娘の結婚式のスピーチを練習する老人。しかし、それは本当に予行演習だったのでしょうか?デパートに勤める娘と再会したとき、娘はカラスと並んで浮浪者然とした父親の姿に、顔を背けるようにして婚約者の車に乗り込みました。老人は、自分が娘の結婚式に出ることなどないと思っていたのではないでしょうか?それでも娘のために、もらってくれないかもしれないブローチを買うために、必死に金を集めた。その行為こそ、娘を最も悲しませる行為だと知らずに。
今福将雄といえば、個人的に思い入れの深い第283話「或る疑惑!」の熱演が記憶に新しいですが、後で調べたところ、その他にも第54話「ナーンチャッテおじさんがいた!」や第159話「ポルノ雑誌殺人事件!」など名作揃いの出演暦に驚かされました。

第327話 オランダ坂殺人予告状!

2007年07月10日 02時51分01秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 天野利彦

橘が一浪中の息子と同居するようになって数ヶ月。ある日、休みの日にも図書館で勉強する息子を送っていった橘は、地元長崎の新聞に目を通すと、高校時代の恩師の死亡広告に気づく。別れた女房との仲人を頼んだ恩師の葬儀に立ち会うべく、休暇を取って長崎に向かう橘。だが、再会した旧友とともに恩師宅に着いた橘を出迎えたのは、死んだはずの恩師自身だった。「悪質な悪戯だ」と憤慨する橘だが、恩師は懐かしい教え子たちと再会できて、かえって喜んでいた。
十数年ぶりの同窓会を開く教え子たち。正義漢で喧嘩好きだった橘は、いまや特命課の刑事に。小説家志望だった文学青年は、夢を諦め家業を継いで工場の主に。そして同じく小説家志望だった学年一の優等生は、東京で郵便局員となっていた。思い出話に花を咲かせる橘たちだが、恩師はなかなか現れない。迎えに出た元優等生から「先生が死んでいる」との電話が入る。慌てて現場に駆けつけた橘は、現地の警察とともに捜査に当たる。
偽の死亡広告が殺人予告だったのではないかと、新聞社を訪ねる橘。広告の依頼主は東京に住む女だった。特命課に協力を仰いだところ、女は自宅で死んでいた。女の身辺を調べたところ、小説家志望の男と恋仲にあることが判明。男の小説が新人賞の最終選考に残っており、その原稿の下書きを女の同僚が預かっていた。原稿と女の顔写真を持って、船村が長崎へ向かう。
その頃、橘はオランダ坂で血を流して倒れている元文学青年を発見。病院に運び込まれるも、治療の甲斐なく死亡した。一方、東京では出版社を総当りした結果、その作者が郵便局に勤める元優等生だと判明する。電話でそのことを知らされ、愕然とする橘。容疑者が橘の旧友だと知った神代も、叶と高杉婦警を伴って長崎へ。犯人は死亡広告を女に出させ、口封じのために女を殺したと見られた。だが、何のためにそんなことをしたのか?橘はそのカギが小説にあると見た。小説は文学青年の高校時代の作品を盗作したもので、その発覚を恐れ、文学青年を殺すために恩師の死亡広告で呼び寄せたのではないか。橘はそう推理した。
恩師の書庫で、かつての文芸部の文集を探したところ、橘の推理は裏付けられた。物的証拠を探すべく、オランダ坂周辺で写真を撮っていた観光客を探す特命課。そんななか、姿を消していた元優等生から橘宛に電話が入る。「一緒に海釣りに行こう」と誘われ、橘は周囲に黙って海に出る。「小説を書くことだけが俺の存在証明だった」と語る元優等生に、橘は原稿とともに自分の推理をつきつける。自首を勧める橘に、元優等生はナイフで切りつける。「お前には分からない。なんで俺のように能力ある者が・・・」自らの境遇への劣等感を露にし、逆上する元優等生。「刺すなら刺せ。俺はお前を信じている」と語る橘の前に、元優等生は泣き崩れるのだった。そこに、観光客の撮ったビデオから証拠をつかんだ特命課が駆けつけ、事件は解決する。
「事件の処理は任せて、奥さんに会って来い」と薦める神代。渋る橘に、橘の息子から届いた手紙を渡す高杉婦警。そこには「僕の鉛筆削りを長崎の家から持ってきてください」と書かれていた。息子の気遣いに照れたような苦笑を浮かべ、橘は長崎行きの列車に乗り込むのだった。

異国情緒溢れる街・長崎を舞台に、橘の過去にスポットを当てたドラマが展開される一本です。長崎へ向かう橘に「いい機会だから奥さんに会ってこい」と声を掛ける神代の気配りが泣かせます。冒頭で見せた橘の過保護ぶりや、ラストの息子の手紙も味わい深いですが、肝心のストーリー展開がどうにも低調。細かなアラを探せばきりがないですが、本筋に関係ない人物をわざわざ登場させるのは勘弁して欲しいものです。「地方ロケに名作無し」というジンクスは今回も律儀に守られたわけですが、個人的には犯人である元優等生の屈折ぶりが強く印象に残りました。
小説の新人賞へのこだわりが、恩師や旧友、彼女を殺すほどのものなのか、疑問を思える方もいるでしょう。しかし、その選択が愚かであるがゆえに、一抹の同情と哀れみを禁じえません。学校一の優等生と言われ、将来を嘱望された彼が、家庭の事情で進学を諦めたとき、残された唯一の希望が小説家になるという夢でした。郵便局員という仕事を「スタンプ押しの毎日さ」と卑下しながら、ひたすら小説を書き続ける毎日に、彼の心は次第に屈折していったのでしょう。40を超えても芽が出ず、つい旧友の作品を盗作したとき、皮肉にもそれが新人賞の最終候補に残る。自分の夢の実現を、共に喜んでくれるはずの人々を、自らの手で殺めてまでも、つかみかけた夢を手放すことはできなかった。それが愚かな行為だと一番知っていたのは、きっと彼自身だったのでしょう。

第326話 亡霊が呼んだ部屋!

2007年07月09日 04時24分26秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 天野利彦

ある夜、アパートに戻った叶は、ポストに目をくり抜かれた自分の写真が入っているのに気づく。直後に謎の女から電話が掛かり「気に入った?次はあなたの番よ」と叶に告げる。翌日の夜、今後は目をつぶされたオルゴール人形が届けられる。再び女から電話が掛かり「5年前にあなたに殺された女よ」と名乗った。アパートの外で、白いドレスの女が子供たちと戯れているのに気づく叶。女を追った叶は、背後から男に殴られ昏倒する。女は薬品を用いて叶の視力を奪うと、何処とも知れぬ場所に監禁する。
消息を絶った叶の身を案じる特命課は、アパートで写真と人形を発見。数日前に、サラ金の支店長が同様に目をくり抜かれた写真を送りつけられた後、行方不明となっていることが判明する。叶と支店長の接点を追った特命課は、5年前の二人組の強盗殺人事件にたどりつく。犯人のうち従犯格の男は、支店長の取り立てに追われた挙句に強盗に走っていた。だが、叶の捜査に恨まれるような理由は見つからなかった。
その頃、監禁された部屋を手探りで探った叶は、何者かの死体を発見。驚く叶の前に、従犯格の男が現れ、死体が支店長だと告げる。男がサラ金で金を借りたのは、妻の緑内障の手術のためだった。視力を失った末に自殺した妻と同様に、視力を奪った上で殺したのだ。「妻を殺したのは貴様だ!」と叶を暴行する男。当時、叶は男が現れるのを待って妻の待つ部屋に張り込んだが、その死に関わった覚えはなかった。
女の正体は妻の姉だった。自殺した夜、妻は女との電話で話した際、「そばに叶という刑事がいる」と告げたという。女は叶に「妊娠していた妹が自殺などするはずがない、お前が殺したんだ」と決め付け、「妹と同じように殺してやる」と宣告する。
その頃、ようやく姉の犯行の証拠をつかんだ特命課は、監禁場所を突き止めて急行する。しかし、すでに叶の姿はなかった。二人の意図を読んだ特命課は、叶のアパートへと急ぐ。アパートでは、目の見えない叶に危機が迫っていた。「これが証拠だ」と、妻が投身自殺を遂げた際に握っていたこけしを突きつける女。そこには、「か」と文字が刻まれていた。こけしを握った叶は、こけしの底に「と」という文字を発見。「真犯人は、主犯格の男、加藤だ!」と推理する叶だが、二人はそれを信じようとせず、叶を窓から突き落とす。ギリギリのところで特命課が駆けつけ、叶を救出。数日後、主犯は男の妻殺しを自供した。叶の目も手術を受けて回復するのだった。

ちょうど1年前に放送された第274話「恐怖の診察台!」に続く、叶の拉致監禁シリーズ第2弾。前回は歯に穴を空けられ、今度は目をつぶされる叶。いずれも脚本は藤井邦夫。何か叶に恨みでもあったのでしょうか?眼球に注射針を近づけられるシーンは生理的な恐怖を感じます。ストーリー的には、こけしの文字をはじめ、突っ込みどころが満載。タイトルにある「亡霊」も登場せず、なんじゃそりゃあという印象です。ちなみに犯人役は科学特捜隊のイデ隊員。キャップこと小林昭二と違って犯人役にも違和感がありません。

第325話 超能力の女!

2007年07月02日 20時37分35秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 宮越澄

雷雨の中を事件現場に向かう途中、妙な頭痛に襲われる紅林。事故か、それとも殺人か、橋から転落死を遂げた男の自宅を訪れたところ、被害者の妻は「やっぱり」と頷いて謎の念仏を上げ始めた。近所の聞き込みによれば、被害者は妻によく暴力を振るっていたらしい。そこに現れた被害者の愛人は、妻が祈祷師に頼んで呪い殺させたと証言する。「時間の無駄」と一蹴する特命課だが、紅林は吸い寄せられるように祈祷師のもとへ。アリバイを問い質す紅林に、祈祷師は「あなたは7日以内に死ぬ」と予言する。
祈祷師は、被害者の妻だけでなく、多くの不幸な女の依頼で、不幸の原因である男を呪い殺していた。それらの事件は、いずれも事故死として処理されていた。祈祷師による犯行ではないかと推測する紅林は、祈祷師が次に呪っていた会社員を訪ねるが、すでに転落死を遂げていた。事故現場を調べ直し、殺人だとの確信を得た紅林は、再度祈祷師を訪ねる。「私は不幸な女を救うために祈祷している。殺すことが本意ではないが、男が改心しなければ死をもって罰せられる」と語る祈祷師。彼女もまた、悪い男に苦しめられた過去を持っていた。
その後の調べで、会社員の呪殺を頼んだ女が、多数の男から金を強請っていたSM嬢だったと判明。祈祷師は、女の体の傷を見て同情していたが、それはSMによってついた傷だった。ショックを受けた祈祷師は、雨の中を走り出す。近くの林を掘り返した祈祷師は、埋めてあった呪殺対象の写真とわら人形が無いことに気づき、愕然とする。そこに通りかかった顔なじみの新聞配達員が、献身的に祈祷師を守るのを見て、紅林は疑念をいだく。
配達員と祈祷師の関係を調べる紅林。配達員は幼い頃に酒乱の父親に母親を殺されており、同じような境遇の祈祷師に母親を重ね合わせ、慕うようになったらしい。配達員が祈祷師のために犯行を重ねたと推測する紅林だが、証拠は何もない。そこで、高杉婦警を囮に使うことを思いつく。祈祷師を訪ねた高杉婦警は、「吉野を殺して欲しい」と依頼する。林を見張る紅林と高杉婦警。予想通り、祈祷師が埋めた吉野の写真を配達員が掘り返した。
ヤクザ風の姿で街を徘徊する吉野の背後に、配達員の姿が見え隠れする。だが、決定的な証拠をつかむ前に、高杉婦警が襲われた。駆けつけた特命課が危機一髪の高杉婦警を救出。襲ったのは祈祷師だった。祈祷師は、事の真相と紅林の狙いを察して、吉野の写真に「逃げろ」とメッセージを残し、配達員の無実を証明するために高杉婦警を襲ったのだ。取調室でも念仏を唱え続ける祈祷師だが、そこに配達員が自首して現れる。多くの不幸な女が祈祷を受けるために列を成しているのを複雑な思いで見ながら、紅林は祈祷師を連行するのだった。
だが、本当に恐ろしいことは、この後に起こった。入院する高杉婦警を見舞った紅林は、「7日以内」の予言どおり、階段で躓くのだった

夏恒例の怪談ものかと思いきや、スタッフの意図と裏腹に(?)笑ってしまうしかない異色作。タイトルに超能力とありますが、実際は祈祷師による呪殺がテーマ。まあ、スタッフやメイン視聴者層にしれみれば、超能力も呪殺も似たようなものなのでしょう。ちなみに、主役は紅林ですが、例によってひどい目に遭うのは高杉婦警。それにしても、巫女と占い師を足して2で割ったような祈祷師の衣装には思わず失笑。ラストのオチのどうしょうもなさを見て、ストーリーについての評価などどうでもよくなってしまいました。