特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第367話 六本木ラストダンス!

2007年12月03日 23時43分59秒 | Weblog
※以前に放送された際に視聴し損ねて欠番としていましたが、「刑事ベルト」枠で再放送されたため、ようやく更新できました。当時いただいたですとらさんのコメントも参考にさせていただきましたので、改めて御礼申し上げます。

脚本 佐藤五月、監督 辻理
1984年6月6日放送

【あらすじ】
六本木の公園で青年の刺殺死体が発見される。手首にためらい傷があったため、自殺とも思われたが、死因となった胸への刺し傷から他殺と判明。特命課が捜査に乗り出す。
現場検証のさなか、叶は現場を見つめる不審な娘に気づく。声をかけたところ、娘は「現場近くでコンタクトレンズを落とした」と答えるが、叶の胸には疑念が残った。
その後、現場付近で宝石が発見され、叶は娘が宝石の外れた指輪をしていたことを思い出す。娘と青年の接点を探すべく、叶は娘の身辺を捜索する。
娘はダンサー志望で、レッスンに励むかたわら、昼はウェイトレス、夜は踊り子として複数のディスコを掛け持ちするなど、多忙なバイト生活を送っていた。娘の働くディスコで聞き込んだところ、青年と娘の接点が判明。青年はディスコにミキサー(音響エンジニア)として雇われていたが、支配人にミスを咎められ、娘に慰められていたという。だが、顔見知りという以上の関係ではなかったらしい。
強引とも思える叶の捜査に、特命課は一抹の危惧を抱き、橘がフォローにつく。その後も娘のマークを続けた叶は、ダンサーという夢に掛けた娘の情熱と、それが報われない厳しい現実を知る。自分が落選したオーディションに友人が合格しているのを見て、落胆を隠して嬉々として友人に報せに行く娘の姿に、叶は自分の直感が間違っていたのではないかと悩む。「彼女は自分が不幸でも、他人の悲しみは見逃せないんです。仕事がうまくいかずに落ち込んでいる青年を殺すような人じゃありません」悩んだ末の叶の言葉に、神代はこう答える。「お前の考えはよく分かる。だが、自分が最初に抱いた確信を確かめてみろ。それが刑事というものだ」
再び、娘を張り込む叶。落胆する娘に、オーディションの関係者が接近し「この世界、実力だけじゃだめだ」と金を要求する。純粋な夢を金で汚そうとする行為に憤りを感じた叶は、娘の自宅を訪ね「あんな話を信じちゃダメだ」と忠告する。叶の励ましを受け、娘は翌日のオーディションに臨む決意を固める。
すでに娘の無実を確信している叶に、意外な報せが届く。例の宝石が娘の指輪のものだと判明したのだ。娘の友人によれば、その指輪は有名な某ダンサーにまつわる縁起物だった。叶がマークして以来、娘は指輪をしていなかった。だが、明日のオーディションに臨んで、娘は縁起物の指輪を身につけるはず。そう信じた叶はオーディション会場に張り込む。
友人から、特命課の捜査が指輪に及んだことを聞かされつつ、娘はあえて指輪をはめてオーディションに挑む。素晴らしいダンスを披露する娘。だが、娘を待っていたのは、絶賛の声を断ち割るように現れた特命課の姿だった。
宝石は娘の指輪にピタリと嵌り、動かぬ証拠を前に、青年殺しを認める娘。だが、動機については黙秘を貫く。動機を突き止めるべく、青年が常に持ち歩いていたカセットデッキを探す叶。それは青年の墓前で発見される。再生したテープから、青年の最後の声が流れる。「僕には死ぬ勇気もない。頼めるのは貴方しかいない。貴方の手で死にたい・・・」
テープを聞かされた娘は、重い口を開く。その夜、娘は青年に電話で公園に呼び出され「殺してくれ」と頼まれたという。青年は、自分がミキサーとして採用されたのが、父親が裏で金を渡していたからだと知って絶望したのだという。「金で買える世の中なんて、何の価値があるんですか?」テープの言葉を残して、胸にナイフを突き立てる青年。死に切れずに苦しむ青年を見兼ねて、娘は「弱い人は嫌いよ!」と罵りながらも、ナイフを深く突き刺した。
自殺幇助の罪で送検される女を、「早く刑を務めて、もう一度踊るんだ」と励ます叶。娘は叶に語る。「彼が『死にたい』って言ったとき、本当はその気持ちが分からなかった。でも、オーディションに落ちて、お金のことを持ちかけられたとき、彼の絶望感が分かった」「それでも、君は踊ったじゃないか」だが、娘がオーディションに向った理由は、叶の励ましではなく、青年が最後に言い残した「貴方だけは、踊り続けてくれ」という言葉だった。「あれが、私のラストダンス・・・」
その後、娘の罪が軽くなることを祈る叶のもとに、娘が飛び降り自殺を遂げたとの報せが入る。「彼女もまた、弱い人間だったのです。本当に死にたかったのは、むしろ彼女のほうだったのかもしれません。二人は別々に死にましたが、心中だったのです・・・」叶の報告書に目を通した神代は「これは感想文であって報告書ではない」と書き直しを命じる。報告書を書き終え、六本木の雑踏を歩く叶は、ふとすれ違った少女の顔に、娘の面影を見る。彼女の夢、そして絶望と死は、この街ではありふれたものだったのだろうか?そんな想いが叶の胸をよぎるのだった。

【感想など】
夢と現実とのギャップに傷つき、死を選んでしまう若者の弱さと哀しさを描いた一本。情けないにも程がある自殺動機はもちろん、好きだった(と思われる)娘を罪に落としてまで、自殺を手伝わせる青年に、感情移入する視聴者はほとんどいないだろうと思われます。
娘の行動と心理についても、説明がつくようで、どこか納得できないものがありますが、それでもなお、それなりに見応えがあったのは、「現実は汚い」という彼と彼女の主張に、共感せざるを得ないものがあるからではないでしょうか?「だからと言って死ぬことはないだろう」という思いは、もちろんあるのですが、そう言えるのは、我々が「夢と現実は違うもの」と、世の中を分かったような気持ちになっている「大人」だからこそ。かつて、世間の厳しさ、現実の厳しさを知らずに、ただ夢を追っていた頃の気持ちを思い返してみれば、一概に「愚かなことを」と言い捨てにできないものがあると思います。

一方、視点を変えて、叶の立場からドラマを振り返ってみると、(何の確証も無く、直感を頼りに娘を追い掛け回すのは無理がありますが、それはさて置くとして)ひたすら空回りしている印象です。落ち込む娘への「オーディションに落ちる、落ちないは問題じゃない。大切なのはずっとやり続けることじゃないか?踏まれても踏まれても、踊り続けることじゃないか?」との励ましや、連行される娘への「君は立派に踊ったじゃないか」との言葉は、結局のところ、娘の胸には届いていません(届いてはいるのかも知れませんが、青年の言葉ほどには娘の行動に影響を与えてはいません)。意地の悪い見方をすれば、本編のもう一つのテーマが「過剰な思い込み、思い入れが空回りする悲劇」ではないかとも思ったりするのですが(ラストの課長の突き放すような台詞なんかが特に)、底意地の悪さには定評のある(褒め言葉ですよ)佐藤脚本だけに、あながち深読みしすぎではないかもしれません。

3 コメント

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見ました (ですとら)
2008-03-10 00:13:43
続きで見ることができましたので書いていきたいと思うのですが、いざ袋小路さんのように書こうとすると以外に細かい点を覚えていないものですね。

ミキサーの男が公園で殺された。左手首にためらい傷があるが、致命傷は胸への刺し傷だった。現場にいた俳優志望のダンサーの女に特命は目を付ける。女はレッスンにバイトに夜はダンスの腕を披露すべくディスコで踊り続け、男との接点がないように見える。女はオーディションを受け続けるが、結果が出ない。
一方で殺された男は普段から録音用にカセットデッキを持ち歩いていたが現場にはなかった。再度現場検証したところ、ダンサーの女が身に着けていた指輪の石が発見される。特命は彼女の友人に指輪のことを聞く。友人は彼女が指輪をしていたことを証言する。その指輪はイミテーションだが、有名なダンサー由来のものだとのこと。女は指輪をつけていれば有名なダンサーのようになれると信じ指輪をしているのだと冗談めかして証言を続けた。特命は友人にこのことは女に黙っているよう口止めする。
特命は女に石のことを聞くが知らないという。特命は女をマークする。女は次のオーディションを目指し、再びレッスンやバイトの日々だったが、ある日そのオーディション関係者に接触、関係者は「君は実力はあるが、オーディションに受かるには金が必要なんだ」と言う。絶望する女。
そんな中、女のオーディションが始まる。女は友人から特命に指輪のことを聞かれたと告げ口する。それでも女は有名なダンサーを信じ指輪をはめてオーディションを受ける。特命が見守る中、今までにないダンスをする女。そのダンスは審査員の目に留まり、合格となる。しかし、はめた指輪が決め手になり、女を連行する特命。女は男を何となく殺したと証言する。理由について腑に落ちない特命。
一方で別に現場検証している中で男のカセットデッキが発見される。そのカセットには男と女の会話が録音されていた。男はミキサーとしてある会社に採用されたが、それは親がその会社に金を渡して採用されたものだった。自分の実力で採用されなかったことに絶望し、自分を殺してくれと女に頼む男。男は手首を切って自殺をしようとするが死に切れなかった。女はためらうが、同じ境遇に同情したのだろう、男の胸を刺すのを手伝ってしまったのだ。
カセットの内容により、女は自供する。女はその後検察に送検された。言いようの無い絶望感に浸っている中、特命に検察から連絡が入る。女が検察の取調べ中に飛び降り自殺したという。女も殺された男と同じで強くなかったんだ…と更に絶望する特命であった。

すいません。既に別の番組を録画してしまい確認できないので、細かい描写等が微妙に違っているかもしれません。他に見た方でご指摘訂正いただければ幸いです。
今回、書き連ねてみましたが、意外と細かいところが覚え切れていないものですね(苦笑)。大変でした。
感想としては、最後の2段階で絶望感が味わえ、久々に特捜っぽい内容で良かったです。自分の夢に突き進んでいた男と女が結局金がないとその夢が叶えられないことがわかり、共に自殺を遂げてしまう。胸にズシっとくる話でした。
今後再放送があれば、見ておいた方が良い作品だと思います。
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ありがとうございます (袋小路)
2008-03-10 21:52:05
未視聴で気になっていたのですが、粗筋ありがとうございました。なんというか、救いの無い話だったみたいですね。再放送の機会があれば、改めて視聴したいと思います。
私もブログを書く際に、あやふやなところは録画を見返したりしているので、一度見ただけでは書けないと思います。機会があれば、ですとらさんもブログをやってみてはいかがですか?
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儚さがありふれた街 (まり)
2016-08-03 22:21:04
古い記事にコメント失礼します。
六本木ラストダンスは特に好きでした。

一生懸命生きて、傷ついて自殺しても、その存在は人の波の中に押し流されて消えていく。
寝る間もなく頑張った女性ダンサーが、バイト先の深夜のディスコで来ていたドレスは確かオレンジだったと思いますが、燃える炎のように踊っていた若者の命が、ロクソクの火のように呆気なく消えた対比。彼女の自殺を知った時の、まさか…という叶の表情が表していました。その叶刑事も既に旅立って何年か経ってしまったんですよね。

広田レオナは最高にはまり役だったし、BGMに流れていた角松敏生さんのミッドナイトガールが印象的でした。 
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