大人が読んでも耐えられるようにしつつ、高校生くらいを念頭において日本の歴史、および歴史学習の意味を語り口調で書いたものです。どこにも歴史好きという生徒がいます。そういう人はみんな、歴史を苦労して暗記するのではなく、そのストーリーにロマンを感じているようです。
福田氏の主張は、歴史を小説のように感じるロマンから、さらに現代の自分たちに直接関わる問題だと感じて欲しいというもののようです。本書の副題は『震えるような共感、それが歴史だ』です。
筆者は物事をはっきり主張するタイプだと考えておりましたが、本書の主眼は若者に考える材料を提供しようというもので、自分の意見は控えめにした非常に静かな語り口、冷静な内容です。
江戸時代に花開いた文化から、ペリーはなぜ開国を迫ったのか、日清、日露戦争時の背景、第一次世界大戦の影響、そして第二次大戦へと進む過程までが分かりやすく書かれています。また、日本はなぜ嫌われるのか、ということについても考察を加えます。
バブル以降の現状、若者が「人に迷惑をかけないんだから売春したっていいじゃない」という時、著者は『真正面から反論できないが、そういうことが言えるような社会になるためには、とてつもない先人の蓄積があるんだということを認識して欲しい』と答えます。援交OKの宮台真司氏とは考えが違うわけですね。
歴史とは自分を過去の流れの中で感じることであり、そうであればそんな意見も出てこないであろうということです。高校生以上の諸君に読んでもらいたい一冊です。
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『魂の昭和史』福田和也
PHPソフトウェアクラブ:270p:1500円
知らないことが多くとても参考になりました。