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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『大学の話をしましょうか-最高学府のデバイスとポテンシャル』 森博嗣 

2006年11月19日 | 教育関連書籍


大学の話をしましょうか.jpg

大阪大学が、世界史の履修漏れの高校生たちの補習を行うと発表しました。大学が高校生の教科書を使って、単位を認めるそうで、文部科学省も、聞いたことがない そうです。 そりゃそうでしょう。

いろんな指摘が可能ですが、未履修問題が、何も片付いていない段階で、大阪大学は、“必修世界史が未履修でも入学を認める”と宣言したことになりかねません。

もうむちゃくちゃですが、それは別の機会にゆずり、今日はもう一つ別の観点から本書を紹介します。


大阪大学がそれを決定した時、竹中亨教授(西洋史)のコメントは


国際化の時代なのに、学生が第二次世界大戦などを知らず社会に出て行くことに歯止めをかけたい


どうです。


“歯止めをかけたい” つまり、阪大という名門校の大学生が、すでに戦争に対する知識がないというのです。

学力低下の論争の火付け役になった、『分数ができない大学生』(岡部 恒治 , 西村 和雄 , 戸瀬 信之 )という調査報告の本をご存知でしょうか。京都大学、慶応大学という偏差値の高い大学でも、小学生の分数さえできない者が相当数いるという告発です。


これに反論し、ペーパーテストの結果だけじゃなく、“意欲も学力だ”などと、言っておりましたが、現状、そのやる気も学習時間の平均も、国際比較では日本はほとんど世界最低レベル


家庭学習をする子とまったくしない子の二極化はかなり前から進行しています。10年くらいやっている先生は絶対、知っている、肌で感じていると思います。


履修漏れ事件の原因が、受験ばかりを意識した高校教育のせいだ、という主張が新聞などにものります。しかし、これ以上、高校生が勉強しなくなってしまった日本の将来はとても明るいとは思えません。


今の受験制度のままで、学力低下の問題をいっぺんに片付ける方法は、実は簡単で、大学の入学定員を大幅に減らして、受験科目数を増やすことです。実施するのが難しいだけです。

実際、少子化をむかえて、大学は個性を出そうと、定員を減らすどころか、逆に次々と新しい学部を作りますし、中国人留学生まで入れてまでも、一定人数を確保しようと懸命に競う大学までありましたね。 入学試験の科目を減らしたり、AO入試や○○推薦などと、実質は生徒の青田買いをしなければ、質を確保できない、定員に届かないところも出てきました。“歯止めをかける” どころではありません。


本書が、何かの売上ランキングに出ていたので、何も知らずに読みましたが、著者の森博嗣氏は人気作家でありながら、名古屋大学工学部建築学科の助教授なんですね。 上記の点に関して、氏は


昔、必要だから大学がたくさんできた。今は少子化なのだからどんどんつぶせば良い と言い切ります。その通りで、そうすれば、学力低下問題だけは一気に解決しますし、税金の節約になります。大賛成です。


本書では森氏がインタビューに答えるという形式で、教育、特に大学の組織などについてご自分の意見を述べています。大学に籍を置く人間としては、非常にラジカルというか、個性的な意見でしょう。

大学の組織がいかに非効率かということを批判する人は、かなり激しい口調になるのが常だと思いますが、森氏のたんたんとした語り方が印象的です。


作家の中には、教育に関して的確な発言する方が多いような印象を持ちます。このブログでも、これまで、重松清氏の『みんなのなやみ』や 村上龍氏の『希望の国のエクソダス』 などをご紹介しました。


非常に読みやすく、アカデミズムの実態を解説してくれている一冊です。残念なのは、インタビュアーの突っ込みというか、踏み込んだ質問が少ないので、なんとなく、表面的な印象を持ってしまいます。聞きたいことはまだまだあるのに~、という感じでしょうか。インタビューでなく、自分で書かれたものであったらと悔やまれます。 

大学の話をしましょうか―最高学府のデバイスとポテンシャル

中央公論新社

詳  細




http://tokkun.net/jump.htm(当教室HPへ)





P.S. ここ二日間、はでに遊ばせていただきましたので、かなりじみな印象ですね、今日の記事は(笑)。実は昨日の川柳も、ランキングでは大変な、高評価をいただきました。ありがとうございます。学問に王道なし【 There is no royal road to learning. 】 と生徒に言っておりますので、あまりの高評価に、“年内はずっとスッコトでいくか” などと誘惑にかられましたが(笑)、私も生徒同様、地道にまいります。

直球あっての変化球だと指摘をいただき、私も変化球投手に代わるのは、もう少し経験をつんだあと。アドバイスを頂いたみなさん、感謝しております。時々は、スットコや川柳なども出しますので、そのときは一緒にはしゃぎましょう(笑)。今後ともよろしくお願いします。昨日までの落差が大きくなりますと決心がゆらぎますので(笑)、できましたら、応援のクリックを… m(__)m (さっ、本よも)
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『大学の話をしましょうか-最高学府のデバイスとポテンシャル』森博嗣中央公論新社:187P:756円


『〈教育力〉をみがく』家本芳郎

2006年11月19日 | 教育関連書籍
  

指導力不足の教員が問題化しています。

本書は改めて「教育力」とは何か考えます。
議論の前提となる議論という感じです。
それによれば、「教育力」とは
「指導の力」
「人格の力」
「管理の力」
がその柱です。

読んでいて、教育内容によって
指導方法が具体的に議論されていて
とても参考になりました。

また、同じ教育目標でも、
教師の個性によって指導方法も
異なっていてもいいんだということを知り、
ちょっとだけ安心しました。

ただ自分がどんな個性をもった講師なのかは
生徒に聞いてみないと分かりませんが。

“教育力”をみがく

子どもの未来社

詳  細



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