リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

マッチョ老人のひとり介護予防

2006年09月07日 | Weblog
信州の高原はやっと涼しくなり秋を感じる気候になった。
朝晩など、もうすでにコタツを使い始めている家もある。
はたけも10月いっぱいでうちばになる。(シーズン終了。)

高血圧等で高原野菜の村の診療所に通っている80を超えたご婦人。
いつもあまりに元気なので秘訣を問うと

「毎日腹筋をしている。30回を朝昼晩の3セット。それから自転車こぎ30分間(1500回)やっている。」
という。

「だれから教えてもらったのか?」
と聞くと

「自分で考えて10年前からやっている、おかげで腰痛も膝痛もなく元気でやっている。」
のだそうだ。

腰は曲がっているが、なんと大腿周径も40cm(これはすごい値だ!)もある、若月俊一もびっくりのマッチョばあちゃんだ。
自転車エルゴは、確かに膝関節に負担をかけず周りの筋肉を強化し、心肺機能を強化する合理的な方法だ。

癌検診としての内視鏡やエコーなどをすすめても

「まえはやってたけど、もういいよ。」という。

病院から訪問診療に行っている、通院の足がなく米寿をむかえた別のおばあちゃん。夏の間はヘルパーや訪問看護の助けも借りながら1人暮らし。寒さの厳しい冬は関東の子供のうちで過ごす。(けっこうこのパターンも多い。老健の越冬入所なんてのもある。)
1人で庭でいろんな野菜をつくっていて、子供たちが来たときにはたくさんの野菜を車に満載してかえるという。包丁で手を腱まで切ってしまったときも病院にいかず自分で治してしまった。

「このあいだ、米寿のお祝いで、市長や、福祉の人、老人会の会長や、カメラマンまで車2台で来てなにか困ってることはないかって聞いて、写真をとって記念品をおいて帰って行ったよ。」

「もういつ逝ってもいいよ。でも苦しまないように死にたい。よろしく頼むよ。」

といつも言う。
運動不足でいつも疲れている自分よりよっぽど健康だ。
こっちが元気をもらいに行くようなものだ。

このお二方に限らず、小さな畑にでて自家用の野菜を作ったり、草取りしたり田んぼの水を見に行ったり、毎日自然に運動している高齢者はみんな元気だ。

この調子で元気に90過ぎまで生きれば、癌でも脳卒中でも肺炎でも大病を患えば、たいていはロウソクの火が消え熟した実が落ちるようにあまり長引かずにあっさりとあの世に逝けることが多い。

プロスキーヤーの三浦敬三(三浦雄一郎の父)などは100歳を超えても山でスキーを楽しみ、最後は見事な引き際であった。

 さてさて現場を大混乱に陥れている役人が机上で考えた介護保険は新予防給付で虚弱高齢者にプログラムを用意してマシンによる筋トレなどをさせて、要介護状態になるのを防げという。動ける人は、ベッドや車椅子のレンタルで使っちゃダメだという。
 パワーリハビリなんかもよさそうではあるが、実はさまざまな福祉ビジネス業者やパワーリハビリの機器のメーカーをもうけさそうという魂胆ではないかとかんぐってしまう。

 介護予防というのなら年取ってからあわててやるものではなくて、若いころからの生活習慣(食生活、運動など)の積み重ねであろう。自家車でも大切に使えば長持ちするように体や心もメンテナンスし、いたわりながら大切に使えば長持ちし、脳血管障害や転倒骨折、心配機能の低下を予防できる。

 もちろん高齢になり、要介護状態になっても、少しでもよくしよう、自立できるように援助しようと働きかけをするリハビリの発想は重要だし、身体機能が低下しても安全に運動できる環境の整備や指導できる人材の配置は必要なのだろうが・・・。

 しかし、やむを得ず介護状態になった人にも生存権を保障するための介護保険なのに、予防するなんて要介護状態はまるで悪いことみたいではないか。「要介護状態になってしまったばかりにお国のお金をつかって」と怒られているようだ。
 
 筋トレなどの介護予防が介護費用減の効果があるというエビデンスはないということは二木立も指摘しているところである。(⇒参考文献
 
どうせ、お金をかけるならQOLを重視したものにするべきだろう。
それならば、高齢者が楽しんでやっているゲートボールなどをベースに発展させたりすなどのほうがよっぽどよさそうだ。学生時代に地域の高齢者とサークルメンバーの学生チームの対抗戦ではじめて経験したが、なかなか頭も使うし面白いゲームであった。ボードゲームとスポーツ(?)を組み合わせたようなものといえばいいだろうか?よくできたゲームではある。
農山村の高齢者は運転できる仲間の車に乗り合わせてゲートボール場に集まる。冬でもゲートボールのできる屋内ゲートボール場もある。大々的に開かれる地区対抗の大会などは大盛り上がりだ。

 また、個人プレーなら北海道ならパークゴルフ、長野ならマレットゴルフなんてのも人気だ。あるいは中国のようにどこでも街角や公園で太極拳をやるというのはどうだろう?

 認知症のリハビリなんていって無理やり音読や計算をさせるくらいなら、囲碁や将棋、マージャンなどのゲームを子供たちと一緒にやったほうがよっぽどいいとおもうのだが。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ゲートボールは今 (モモちゃんタロちゃん)
2006-09-08 00:24:33
はじめまして。Dr.Iさんのところでお見かけし、やってまいりました。



 ゲートボールは今、グラウンドゴルフというんだそうですよ。ゲートボールというとしかられますよ。
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ゲートボール (といぴ)
2006-09-08 21:22:34
でもみんなゲートボールっていってますよ。

地域によって違うのかな?
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