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精神科医師のブログ。
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センターというからにはMDアンダーソンがんセンター紹介

2011年08月22日 | Weblog
がんセンターというと世界的にはアメリカ合衆国テキサス州ヒューストンにあるMDアンダーソンがんセンターが有名である。

MDアンダーソンがんセンター(MDA)は49もの医療研究教育機関が集まる世界で最も大きな医療キャンパス、テキサスメディカルセンター(TMC)の中にある癌の治療、研究、教育、予防を専門とする大規模がんセンターでありがん治療の歴史を作って来た。
綿花工場で巨額な富を得たもののがんを患ったアンダーソン氏が多額の寄付を行い1942年にがんセンターができたのが始まりだ。
今や全米トップ、そしておそらく世界トップのがんセンターだ。
日本のがんセンターや大学病院とは人もモノも集積度が段違いだ。


チーム・オンコロジーMDアンダーソンがんセンター概要

職員数は 17,000人、研修者(医師、科学者、他の医療職種・・)も約6900人。
2010年度の実績では年間105000人以上の患者を診療(うち32000人が新患)している。
臨床試験は年間約5000件ほど行なわれており、世界中から患者があつまる。
29台のリニアックが稼働し、世界最大の陽子線治療センターもある。

そして驚くべきことは、これほどの症例数のあるMD.アンダーソンがんセンターの病床数がわずか520床しかないということだ。
同規模の日本の病院(例えば愛知がんセンター)に比べて約17倍ものスタッフ数で運営されている。
どれほどの密度での治療がおこなわれているのだろう。

まったくもってあらゆるものが桁違いだ。


アメリカの病院は長期入院できず、すぐに退院させられてしまうので退院後は病院近くのホテルから治療に病院に通う。
センターの周囲には有名高級ホテルから長期滞在向けのホテルまで各種ホテルがあるそうだ。

また、がん医療の均てん化という意味で、初期の評価と治療が終われば地域の病院でフォローされ、センターには定期的にアセスメントのために来るというような仕組みになっているそうだ。
これはとてもいい仕組みだと思う。地域循環型医療という感じか。


内部の雰囲気は次のレポートなども参考になる。(→日本の医学物理士が見た M.D.アンダーソン

ものすごいマンパワーでシステマテックに研究や診療がすすむ様子が見てとれる。
個々の患者は尊重されているのだろうが、遠くからみると流れてる一つの部品のようだ。

こういうのをみると人類と「がん」とのの闘い・・という感じもして、宗教的、崇高な感じすらうける。

日本でも北海道のハイメックス構想、築地の医療コンプレックス、神戸の医療特区など、同様の構想はあるにはあった。
しかし日本には、これほどの規模の医療複合体・医療産業都市は生まれなかった。
日本では皆、センターばかりをやたら作りたがって、結局、どこもセンター(中心)になれず皆が不幸になるという構造があるからだ。
この構造は羽田や成田、あるいは関空と伊丹空港、神戸空港空港などの不毛な争いをみてもみてとれる。

これは狭い島国の中で、おらが村を越えた以上の世界を想像できない狭い縄張り争いをつづけてきた民族性によるものなのだろうか?
それとも新しいものには飛びつき、とことんやりたいアメリカの国民と、あるがままを受け入れる日本国民との国民性の違いなのだろうか?
それとも日本の辺縁国家としての宿命なのだろうか。


ところで佐久総合病院から静岡がんセンターにいった先輩は「若いがんの患者さんがたくさんいる。」ことに驚いたという。
若い人であればあるほど、より治癒の可能性を求めて人口集積地の高度ながんセンターにも行き闘病する。
そこで、いい主治医に巡り会えればしあわせだろう。
高齢者は地域でそこそこの治療を受けて地域で生を全うする。
これも、いい主治医に巡り会えればしあわせだろう。

がん拠点支援病院にも適正な規模というものがある。
中途半端な規模なものがいくらできても結局センターにはなれない。
人口がたったの6万人しかいない高齢化のすすむ大北医療圏には、質の高い「がん相談支援センター(これもセンターだ(^◇^;))」と、「通院治療センター」(これもセンター(^◇^;))、ホスピスケア病棟をおいて、あとは高次のセンター(信大病院や相澤病院の集学治療センター)に任せる方がトータルとして質があがり満足度の高い治療がおこなえるのではないかとおもう。

(これはあくまでも樋端の私見です。)


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