リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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厳しさをます医療現場

2006年06月19日 | Weblog
 医療の現場は非常に厳しい。入り口も出口もその先も。著者のいる医療圏内でも他の病院の体制の弱体化で、当院への救急患者は増える一方。それでもうちの病院ははまだ恵まれているほうかもしれない。しかし通常の一日の勤務の後に救急外来の当直。仮眠をとることを期待して入っても裏切られることが多く実質夜勤となることが多い。翌朝、明けのNs.を見送りながら通常の勤務に入る。当直のため通常の業務が滞る。もう限界と休みたい週末には日直や当番、しかしその代休は無い。なんとかよいシステムをつくりたいといっても日常、業務で精一杯でその余力が無い。現場の人間の頑張りでかろうじて地域の医療体制は維持されているが、疲れた人間からやめていく。これぞ悪循環。崩壊の一歩手前。
 65歳以上の一人当たりの医療費の平均は、それ以下の年代の約4倍であることからもわかるように医療はどうしても病気がちな高齢者が中心となる。そしてその高齢者はますます増えているにもかかわらず、社会保障費が国の財政を圧迫していると国は医療や福祉の予算の削減に躍起になっている。本年度の医療制度改定では医療費は3.15%の削減。福祉が担うべきもが福祉の貧困から医療が肩代わりしているのだと介護保険の財布から出させる魂胆の誘導をおこなっているが、その介護保険も0.5%の削減。行き場が無くした高齢者の行く末や幸せに医療現場が悩まされる。
政治はどこへいったのだ?これから団塊の世代が高齢者となっていくのにどういうことだろう、われわれの世代が中心となって医療を担っているはずの2015年の医療や介護はどうなってしまうのか?もちろんお金の使い方や配分(コスト効率)は考えなければいけないが(お役所や行政法人等に比べればマシなのかもしれないが、一般企業にくらべたらまだまだ甘い。)、それでも限界はある。一人の人間の生存権を保障するケアにはどうしても人手もお金もかかるのだ。その削減のしわ寄せはどうしても現場や弱者に来る。
 地域における医療供給バランスの崩壊。地域での極端な医師不足。そして一人やめると残った人もつらくなるので病院勤務医がやってられないと集団で離職というようなことが全国でおこっている。患者の権利安全擁護の高まりを反映し防衛医療となりアリバイ的なインフォームドコンセントの書類はふえる一方で、日常業務を圧迫している。そして逮捕や医療訴訟の不安。医師をつづけるには危険な時代だ。若い世代の医師は給料が大差ないならばと外科、小児科、産婦人科といったしんどい科は敬遠し、自分のQOLを重視して楽な科に人気があつまる。そしてしんどい科に進む人、残った人はますます大変になるのだ。これぞ悪循環。崩壊の一歩手前。
 本当は田んぼや海を埋め、山を削って新幹線や、空港、新たな高速道路などつくっている場合ではないのだが弱者の声は届かないらしい。医療やケアは文化であるから電線や電波はもちろん、宅急便で運ぶことができない。ゆえに、それぞれの地域でそのあり方を考え、つくり育てていく必要があるのだが、よい地域の医療福祉体制は一朝一夕にできるものではない。誰もがいつかはお世話になることになる医療福祉を考えることで、自治を呼びさまし、みんなのお金の使い方や社会のあり方を考えるきっかけになってくれればと切に願う。