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田中利典師の「修験道とエコロジー/世界遺産登録への思い」(朝日新聞「人生あおによし」第19回)

2024年01月15日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、「修験道とエコロジー/世界遺産登録への思い」、2014年の朝日新聞「人生あおによし」の第19回である。2004年、利典師の格別のお骨折りで、「紀伊山地の霊場と参詣道」がユネスコの世界文化遺産に登録された。
※トップ写真は吉野山の桜(2022.4.7撮影)

今年は、世界遺産登録20周年の年である。師は世界遺産をめざした理由の1つとして「吉野大峯の自然環境の保全」を挙げられている。今回は、そんな師の思いが綴られている。ぜひ、全文をお読みいただきたい。

修験道とエコロジー/世界遺産登録への思い
世界遺産を目指したもう一つの目的は、吉野大峯の自然保全への願いです。修験道の本分は山を拝み、樹を拝み、祈りの心を持って山々を修行することです。自然を征服するのではなく、歩かせていただくという祈りの心でかかわってきました。

修験者は山には入ると一木一草でさえ自分の都合で取ったりはしません。石ころ一つ持ち帰ることもありません。神を見て仏を感じながら、あるがままに行じさせていただいているのです。

ところが近年、根本道場である大峯山脈の荒廃には目を覆うものがあります。大峯峯中、八経ヶ岳手前に群生したオオヤマレンゲは姿を消し、ブナやトウヒの自然林も鹿に樹皮を食い尽くされています。温暖化や酸性雨の影響で、連綿と修験の法灯を継承させてきた我々の神聖なる舞台が喪失の危機に瀕しているのです。

環境問題は人間の都合で自然を刈り取り生態系の破壊にまで至った結果、生じてきたものです。自然との共生を図る修験道の精神文化は、今世紀の課題を先取りしたものと思います。

「普遍的価値を有する人類共有の遺産として、次代に守り伝えていこう」という世界遺産条約の精神をよりどころに、大峯七十五靡(なびき)や紀伊山地に広がる自然と精神文化を守る中での繁栄こそが、世界との共存共生につながると私は信じています。
コメント (2)
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