よむよま

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「蘇我の娘の古事記」

2018-05-03 21:13:54 | 読む
「蘇我の娘の古事記」周防柳 角川春樹事務所
古事記はふることぶみの振り仮名。

動乱、戦乱、陰謀、策略、一族の生き残りをかけて権力者の間を生きていく百済からの渡来人たちの物語。
ではあるんだけど、とても愛らしい文章で、やわらかくカワイイ印象。
主役が「可憐な盲目の美少女とまっすぐな凛々しい少年」の恋人たち。
主人公のコダマは蘇我入鹿の忘れ形見、彼女の命を助けたことが、百済人・船の一族の運命にかかわってくる。
コダマは目が見えないかわりに、物語を、一度聞けば覚えてしまう。

コダマを娘として育てた父は、蘇我蝦夷のもとで国史を作る仕事をしていた。
コダマの波乱の生涯がずっと進んでいくのと、いろいろなお話を聞き取っていくのが平行してて、
どこかで古事記になるんだろうとは思ったけど、
波乱の生涯の最後に、この「国史」がクローズアップされる。

壬申の乱で兄の息子を倒した大海人皇子が、天皇となって国史の編纂を命じたと知ったコダマは、
父の仕事を思い出し、自分の覚えている物語をそこに加えてもらえるように、書き残そうと思う。
「歴史は敗者のもの。勝者は自分たちのための歴史を作ろうとする。
私はそこからこぼれ落ちたものを掬い取って歴史を書き留めたい」

時代が時代だから、人の名前も難しいし、関係も難しい、
でも、わかりにくくないし、読みやすいの。
雰囲気が可愛らしくて、その印象がずっと続くので、むしろ悲劇的な展開になって驚いたりした。
けっこうな長編なのに、面白くて、どんどん読めた。
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