よむよま

よむ・よまない、それから。

渡辺謙の「王様と私」

2019-07-17 22:50:32 | 見る
7月12日シアターオーブで「王様と私」を見てきた。
渡辺謙が王様役で話題になった2015年のブロードウェイから、
その後ロンドンでも上演され、今回はいわば凱旋公演。
満席なんじゃないかな、当日券完売と出てたから。
主演女優のケリー・オハラさん(トニー賞受賞)はやっぱり魅力的だった。
知的で、役にぴったり。
渡辺謙さんは、トニー賞ノミネートのときは、芝居部分はいいけど、歌が弱かったみたいだけど、今回は歌もだいぶ声が出てる感じでした。
王様の右腕である首相の役で、大沢たかおが出てた。
第一場の登場ではわからなくて、よく似てる人だなぁと思ってた。
大沢さんはロンドン公演から参加してるんだって。
この作品はシャムが舞台だし、西洋人はアンナと息子と外交官ぐらいだから、ほぼ全員アジア系の俳優をそろえないといけないのね。

日本の舞台(王様は現・松本白鷗)を見たのははるかむかしで、
ユル・ブリンナーの映画のイメージのほうが強い。
どの曲も美しく、耳なじみのある知ってる曲ばかりで、懐かしかった。
こういう古いミュージカルは、ここで拍手!と決まってるのがいいよね。
最近のは歌の終わりを盛り上げないようにしてたりして、わかりにくい。
ビルマからの貢ぎ物として連れて来られる美女タプティムのキャム・クナリーさん、よかったなぁ。英語もできてもっと勉強したいという面もある美女なのね。
第一王妃のセザラー・ボナーさんも貫禄で、冷静に判断する知性のある王妃。
名曲ぞろいの中で、私がすごく好きなのが、この王妃が歌う「Something Wonderful」
王様のやり方に怒るアンナに対して説得する歌だけど、自分の愛もあり、アンナに対する王の気持ちも察している。

この舞台で初めて聞いた曲が1曲あった。イギリスから外交官が来るのを接待して、シャムは遅れた国ではないと好感を持ってもらおうと、西洋式のドレスを大急ぎで作りながら、王妃が歌う歌「おかしな西洋人」。
「こんな妙な服を着て窮屈なハイヒールを履いて動けやしない!
私たちを遅れていると思って、文明化しようなんて、西洋人はおかしい!
でもまあ、ともかくしょうがないわ」とドレスを作る作業を進めるの。
この曲、どうしたの?と思ったら、パンフレットに書いてあった。
最初から作られていた曲だが、映画やこれまでの舞台ではカットされていた、と。
ハマースタインはちゃんと、西洋文化の押し付けは文明化なんかじゃないよという歌を作っていたのだ。
この曲が入って、東と西の文化の衝突がおもしろく描けた感じがする。
鹿鳴館というばかばかしい大騒ぎをやった日本人にはうってつけの場面。

古い作品は、いま見ると、社会的に容れられない面があって上演されなくなったりするけど、「王様と私」は、いまの状況にはむしろいいんじゃないかな。
東と西の文化、男と女の対等性、古い慣習と新しい考え方の入れ替わり。

劇中劇「アンクルトムの小屋」の場面もすばらしく、思ってた以上に感動した舞台でした。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする