よむよま

よむ・よまない、それから。

映画「凪待ち」 2

2019-07-01 19:02:25 | 慎吾
映画「凪待ち」 2
配役が見事だった。
白石監督が「配役がうまい!と思う」と自分で言ってた記事があったが、
まったくだ。(どの記事だか、もう全然わからない)

目立つのはやはり、亜弓の父、勝美。
いまでこそ年老いた漁師だが、
若いころは暴れん坊で、やくざの親分に「貸しがある」という凄味のあるとっつあん。
頑固で不愛想だったのが、最後には、
大事な漁船を売って、郁男のために金を作ってくれる。
やくざの事務所に連れ去られたと聞けば、一人で乗り込んで来る。
演じている吉澤健が実にいい。
親分の麿赤児とともに、状況劇場の役者なんだって。
慎吾くんに最初から、いまのキミが郁男を演じることに意味があるよと言ってくれたとか。

勝美に、これからどうすると聞かれた郁男が
「福島で除染の仕事をする」と言う場面は、
その一言で、郁男のどん詰まり感が強く出て、たまらない気持ちになった。
もう仕事もない居場所もない、福島に行って除染の仕事でもやりますよという。
実際、暴力団の派遣業のいい稼ぎ場になってるんでしょ。
身元保証や経歴にうるさくないって。

亜弓と郁男の仲の描き方もいい。
恋だの愛だのじゃなく、もうずっと一緒にいる男と女の感じが自然に感じられた。

一家のむかしからの知り合いの小野寺、奇妙なほど優しくしてくれる。
リリー・フランキーが、初めましての人が多い現場にいてくれて安心できたと
慎吾くんが言っていた、
その効果は確かにあったかもしれないね。

競輪のノミ屋(違法の私設投票所)をやってるやくざの人もよかった。
ここの受付やってる若いニイチャンもいいのよ、
通いつめるようになる郁男に、「よく来るねー」とあきれたように呟いたり、
もはや楽しみの賭け事ではない郁男の顔つきを見て、ぎょっとしてたり。

そして非常に印象に残ったのが、川崎にいたときの同僚ナベさん。
気の弱そうな人で、二人で一緒に競輪に行くのが楽しみだった人。
「イクちゃんの声が聞きたくなって」と最後にかけてきた電話、
そのあと郁男にもらった自転車で走り去る後ろ姿の不穏な感じが、
翌朝の映像に結び付く。
演じているのは宮崎吐夢、大人計画の俳優だそうだ。
コメント
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