硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「犬を飼うという事」  14

2013-10-09 08:58:35 | 日記
「残念。本当にいい答えだけれど、ちょっとちがいます。」

「ええ~っ!」

その声に、お母さんは大笑いをしている。お父さんも少し笑いながら

「お母さんそんなに笑っちゃぁだめだよ。」

とお母さんに言っている。

「ひどいよ。そんなに笑わなくても。」

「ごめんなさい。すごいおどろき方だったから。ついね。」

お父さんはお母さんにお茶のお変わりを頼むとゆっくりと話し出した。

「むつき。答えを出すまでにずいぶん時間がかかったね。その間ずっと考え続けてた?」

「う~ん、正直に言うと最近はあまり考えて無かった。」

「それはなぜだと思う?」

「う~ん。友達もあんまり犬の話をしなくなったからかな。」

「うん。それです。」

僕は何のことだか分からなかったから、

「それは、どういうことなの?」

その問いにお父さんはゆっくり答えだしました。おかあさんも静かに聴きいっています。

「問題を出したのは、本当に犬を飼いたいかどうかその気持ちを見たかったんだよ。むつき位の年頃は、気持ちが変わりやすい物だからね。実は僕もむつき位の頃、どうしても犬を飼いたくて、亡くなったおじいちゃんに頼んだ事があるんだ。でね、犬を飼う事になって、しばらくは世話をしていたけれど、日がたつにつれ、散歩させることも餌をやる事もめんどうくさくなって、結局おじいちゃんが世話をしてたんだ。」

「うん。」

「それで、僕はと言うとおじいちゃんに言われた時だけ、時々散歩に出かけたり、餌をやったりで、犬を飼う事ってどういうことかわかってなかったんだ。今思うと、犬が来るところまでは想像できたんだけど、毎日世話をすると言う事まで思いが及ばなかったんだ。でね、ある日、僕が散歩に連れ出した時、散歩が途中で面倒くさくなって犬の首輪をはずしたんだ。そしたらすごくうれしそうに走っていって、何処かに行ってしまってね・・・。」

お父さんはお茶をもう一度飲んで、ゆっくり続きを話した。

「でね。見えなくなった犬は、大きな道へ飛び出して車にはねられて、それで、死んでしまったんだ。僕はすごく悲しくって泣いてしまってね、こんな事なら犬を飼わなければよかったって思って、それ以来、犬は飼わないことにしたんだよ。」


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