硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 48

2021-05-17 20:38:10 | 小説

「ただいま・・・。」

「おかえりぃ。なんか元気ないなぁ。どうしたん? 」

我が母に隠し事はできない。

「もうすぐご飯できるで、さき着替えておいでぇ。今日は、きららの好きなカレーやで。その前に、手洗いと、うがい、ちゃんとせなあかんでぇ。ああそうそう、サラダいる?」

「うん。」

たたみ掛けるように喋るのは、吉本新喜劇で鍛え上げられた関西出身の母のなせる業だ。
私はなんだか恥ずかしくて関西弁を使わないけれど、明石家さんまさんを勝手に師匠と呼ぶ母は、「魂は売らん。」と言って、頑なに標準語を使わない。
自身を「いらち」と自覚していて、いつもガサガサしている感じはするけれど、大学生の頃はモデルもやっていたというだけあって、身なりや生き方等、意識が高い。そんな母を私は尊敬しているし大好き。

制服からジャージに着替え、スイッチをオフにする。今日はいろいろあったなと振り返りながら、リビングに行くと、母の作るカレーの匂いが部屋を包んでいた。

「父ちゃん、今日も帰りがおそくなるの? 」

「うん。なんか仕事忙しいんやって。LINEあったわ。まぁ、うちらの為に頑張ってくれてるんやで、しゃーないわ。きらら、カレー大盛りにする? 」

「う~ん。あまりお腹空いてないから、普通でいいよ。」

「元気ない時は食べやな元気でやんで。大盛にしといたるで、頑張って食べ。ついでに福神漬けも大盛サービスしといたるわ。」

遠慮がない。でも、それで、私は何度も救われている。

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