硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 27

2021-04-08 20:11:45 | 日記
それなのに、僕は彼女の気持ちを持て余してしまっていた。
上手く答えられない。どう答えればいい。そんな問いが頭の中をぐるぐる回ったまま、人気のなくなったゴミ捨て場まで来てしまっていた。
僕らは、黙ったまま決められた場所にゴミを置き終えると、真島さんは、重力に押し付けられるほど重くなった沈黙を「終了だね。」と、言う何気ない言葉で破ると、小さく息を吐き、ためらいがちに「・・・さっきの質問だけれど。」と呟いた。

「さっきの質問? 」

僕は、自分の頼りなさを誤魔化してしまいたくて、彼女の問をあやふやに聞いていたように答えてしまった。それでも、彼女は嫌な顔もせず、はにかむように、

「うん。」

と、頷くと、大きな目力のある瞳を潤ませながら、ゆっくり話し出した。

「私・・・。川島君の事が好きです。男子を好きになった事も初めてなんです。だから・・・・・・。」

その時、ようやく「ホトケ」のいう「念」を理解し、何て鈍かったのだろうと後悔しつつ、「だから。」の後の言葉をじっと待っていた。
でも、頬を紅潮させ涙をこらえている真島さんは声を出せないでいた。
頑張っている真島さん・・・。 何か答えなくては・・・。 こういう時は、僕がしっかりしなくては・・・。と、自分を押した。

「・・・・・・真島さんはとても可愛いし、頭もいいし、素敵な女子だと思う。けど・・・・・・、僕には好きな人がいるんだ。」

もう、これ以上の言葉は出ない。嫌われてしまっても仕方がないと決心して、真島さんを見ると、両手を握りしめ、一生懸命に言葉を紡ぎ出そうとしていた。

「もう・・・、その人とは付き合ってるの? もし、まだ、片思いなら・・・・・・私、・・・川島君の事、好きでいていいかな? 」

僕の胸に何かが突き刺さった。

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