硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

念願の「モーターサイクルショウ」

2024-04-06 21:00:33 | 日記
1980年代後半、一つの夢があった。
それは「レーシングライダー。」
そんな時期があった。(絵を描くこともこの頃夢中になっていたが、早々と才能の無さに気づいていた)
4年ほど夢中になって夢を追いかけていたが、何回目かの鈴鹿サーキットの130Rと呼ばれるカーブで、曲がり切れずダートを走った数秒の間、初めて「怖い」「明日の仕事を休むわけにはいかない」という思いが生まれ、その後「いろいろ考えてしまい」それを気にバイクを下りてしまった。

でも、バイクを見るたびに乗ってみたいなという思いどこかにあった。

それから、数十年。モーターサイクルショウというイベントを知る。
それ以来、ずっと行きたかった「モーターサイクルショウ」
しかし、週末はいつも仕事で詰まっていた。
今年の3月、立ち寄ったローソンでチケットが販売されているのを知り、しかも今年、その日は休日。

「これは行くしかないだろう」と、その勢いでチケットを購入した。

電車を乗り継ぎ2時間かけて中部国際空港にある国際展示場へ向かう。
車で行った方がよいかなとも考えたが、名古屋鉄道に乗る機会なんてなかなかないと思い電車を選択。
名鉄のホームからセントレア行に乗る。初めての名鉄、並び方に焦る。しかし、初めて乗る路線の風景はとても新鮮で子供のように車窓から外を見てしまった。

しばらくすると「大江」という駅名を耳にした。
現在は工業地帯であるが想い出すのは戦闘機や爆撃機。
ジブリの「風立ちぬ」という映画で登場人物が勤めていたのもこの辺りである。
以前、「風立ちぬ」の二次作品の物語を紡ぐにあたっていろいろと調べたので、この話をしだすと長くなってしまいそうであるから、話を元に戻す。

無事セントレアにつき、国際展示場を目指す。とにかく歩く。駅からビックリするほど遠い。
キャリーバッグを持ったトラベラーを横目に競歩の如く歩いてゆくと、左側に大きな建物と広い駐車場が見えた。
「なんで、スペースジェットではないんだろう」とぼやきながら、ボーイングの飛行機を横目に施設を通過するといよいよ会場が迫ってきた。

駐車場にはたくさんのバイクが止まっている。ついに来てしまった。

チケットを見せて、リストバンドを腕に巻く。いまや貼り付ける使用になっていて驚く。

会場にはライダースジャケットを着た人が大勢いて、全体が黒い。時々若い男女も見かけるが多くは、同じ世代のおじさん。
1980年後半から1990年代前半のバイクブームが青春時代だった人たちである。
僕もその中の一人であるが、バイクには乗っていないし、所有もしていない。
だから、「カムバックライダー」ではないが、最新のオートバイには興味津々。

まずは無料の案内地図を手に取り、全体像をチェック。
「モビリティショウ」ほど規模は大きくなく、これならば、2時間もあれば回れるかなと思いつつ、ワクワクしながらホンダブースへ。

バイクにまたがり記念撮影をしている人が沢山いる。なるほど、そういう風に楽しむのかと僕も気になるバイクにまたがってみる。
全体的に見てトレンドは「ネオクラシック」なようである。1970年くらいのオートバイらしいデザインが流行っているようであるが、そこはあまり響かない。

どちらかというと、最先端のレーサーが好き。そして今一番気になるCBR600RR。
カラーリングといいデザインといい、心もときめく。

ドキドキしながら左手でステアリングを握り、固くなった股関節に戸惑いながら、右手で右足の足首をもってまたぎ、右のステアリングを握ると、自然に人差し指と中指がレバーに伸びる。そして、ステップに両足が載ると、腰を上げて、しっくりくるポジションに腰を下ろした。
かつて、行っていたルーティン。身体が覚えていたのには驚いた。

しかし、ここからが問題であった。まず、腕が引っ張られる感じがする。背筋がかちかちで背中が張る。軽い腰痛があるので、腰に違和感を覚える。

完全なる老化を知る。

現代のレーサーがよくやるコーナーに入る前に内側の足をステップから外すという動作をしてみる。リアタイヤにトラクションをかけるためだという理由だそうであるが、その動作をすると、身体のあちこちが軋む。

値段が高いという理由で諦めてはいたけれど、やはりと言うべきか、スポーツタイプには乗れない身体になってしまっていた。

ヤマハブースでのYZF スズキブースでのGSX カワサキブースでのninja どれも身体がバイクにフィットしなかった。もう無理なようである。
ではどんなバイクがフィットするのだろうかとハーレーなども座ってみたのであるが、一番しっくり来たのがsuzuki GSX―8Rであった。

腕が張ることも背筋に違和感を覚える事も無いし、刀のように、腰が立ってしまいすぎるという訳でもなく、取り回しもよさそうで、ツーリングでも通勤でもサーキットでも楽しんで乗れそうという気持ちをかき立ててくれる。そして価格も頑張って貯めればなんとかなりそうな値段である。それでも、

「いやあ、でも無理だろうなぁ」とすぐにあきらめてしまう自分がいた。

パーツメーカーさんも出店しているで、パーツブースもじっくりと見てゆく。
一度離れてしまうともうわからないかなと思っていたのであるが、そんな事もなかった。
スリップオンマフラーが展示してあるブースに立ち寄る。様々なマフラー。
ああ覚えている。懐かしい名前ばかりである。しばし立ち止まり感動。
スリップオンマフラーといえば、「overが今度新しく出したマフラーがあるよ」とショップの店長に教えてもらって、峠では、いち早く装着した思い出がある。
しかし今では標準になってしまっているようである。

昔の色々なことを思い出しながら、最新のバイク、パーツ、バイクギアを観てゆく。
当たり前ではあるが、あらゆるものが、格段に良くなっている。どのブースでも感動してしまう。
よくわからないパーツなどはじっくり見て、その用途を想像してみる。その様子を見てか、時々ブースの人が話しかけてくれているので、少しばかり質問して、解を得る。

SHOEIのブースでは、懐かしいデザインのヘルメットに出会う。ガードレールを蹴飛ばしてクラッシュを未然に防ぐ天才高校生ライダーのレプリカ。
あの頃は「走りが速くなければカッコ悪い」と頑なに拒んでいたのを思い出す。
いくらするのだろうと老眼鏡をかけて価格を見る。確かにオジサンの心をくすぐるが、リッチになる事から降りた僕には無理である。

「あきらめる事が多いなぁ」と思いながら、今、何とかして購入しようとしているカワサキKDXを観に行く。紹介文をみると販売は秋ごろとある。当初の予定は今春の予定だったような・・・。
オフ車はヤマハスズキとも生産を止めてしまったので、現在ではホンダのみ。したがって中古車価格が上昇しているが、中古車の価格は上げないでほしいと切に願う。新車よりも高くなったら、その価値に納得する人しか購入しなくなる。

CBX400Fが200万円になったことを聞いた時、驚きと共に、1980年頃、やんちゃしていた人達がある程度裕福になって、やんちゃしていた頃のバイクをもう一度乗りたいという思いからプレミアがつくようになったのではと思った。
しかし、バイクの旧車は自動車と違ってアメリカやヨーロッパでそれほど人気がないのだから、狭い日本の市場だけでは、このような高騰は最終的に売れ残りを生み出してしまうのではないか思う。

バイクは小さな趣味の世界である。映画「ワイルドスピード」のような紹介もされないし、雨天では濡れてしまうし、真冬は寒くて乗れないし、真夏は暑くて乗っていられない。もう、自動車とは根本が違うのである。そこは分かってほしいと思う。

KDXを写真に収めた所でお腹が空いてきたので、屋外で販売されているキッチンカーの食事を食べる事にした。
一人飯であるし、がっつり食べなくても良い。軽く手早く済ませばよいかと、ハンバーガーを選択。ハンバーガーを食べるのはおそらく10年ぶりくらいである。

価格は1000円を超える。「うっ」と思いながらも、勢いも大事だと言い聞かせ購入。
用意されている休憩スペースに移動し周りを見てみる。
モーターサイクルショウだけあって、女性と高校生以下の人は無料といえども、やはり一人で来ている人も多く、一人飯の人も沢山見えた。
もし、あのままバイクに乗り続けていたら僕はあんな感じだったのかなと思いながら空いている席に腰を下ろす。
紙に包まれたハンバーガーをしばらく見つめ、「1000円かぁ」と思いながらその味をかみ締める。ふと、中学生の頃、「ドムドムバーガー」を120円で食べたことを思い出す。当時僕にとって120円はとても高かった。そして現在。僕は価格が10倍のハンバーガーを食べている。
えらくなったもんだと感心する。

食事を終え、パンフレットを開いて見忘れてないブースがないか確認。
もう心もお腹もお腹いっぱい。思い切って来てみるものだと改めて思う。

疲労した両足にむち打ち、来た道をガンガン歩く。
空港の時刻表を見ると海外便の行く先の多くは中国。どおりで周りは中国語ばかりなのかと感心。
貧富の差は大きいけれども、経済的には豊かになっていることをあらためて実感する。
帰りは、思い切って「ミュースカイ」に乗ってみる。
初めて乗る「ミュースカイ」。乗り心地は最高である。行きの準急は準急の良さを感じたけれど、ミュースカイは快適のままあっという間に名古屋駅である。これならトラベラーも満足であろう。

名古屋駅ではいつもより沢山の外国の人を目にする。
そうか、鈴鹿はF-1ウィークであった。