硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

京都の夜は僕に似合わない。

2019-03-24 18:36:59 | 日記
町内会が主催する旅行に声が掛かった。しかし、僕は地域愛が希薄なので気が進まなかったのであるが、大人として、無下に断るのも悪いと思い参加する事にした。
行く先は、京都。桜の季節にはまだ早く、行く道の途中では雪も降っていた。
京都は三重から車で2時間ほどの距離である。一昔前なら、延々と一号線を行くしかなかったが、現在は新名神が開通したことにより随分快適になった。

京都で一番最初に訪れたのは、伏見稲荷。たいへん人が多い。しかも、東南アジア系や韓国、中国の民が多く、共に移動してると、様々な言語が飛び交っていて、日本ではないような気もしてくる。
一昔前ならば、修学旅行の学生さんや、地方からの観光客であったのに、時代はすっかり変わってしまった。しかし、それは一昔前には途上だった国の経済が発展しつつあるという事を顕著に示しているように感じ、また、日本経済が追い抜かれる日も近いのではないかと考えた。そして、日本に魅力が無くなった時、次はだれが貨幣を落とすのだろうかと心配になった。

伏見稲荷で参拝し終え、再びバスで移動する。京都の道は本当に渋滞が多い。また、運転手さん曰く、京都のドライバーはマナーが悪いのだそうである。
宿泊地の四条に着く。その後の予定を尋ねると、夜は、祇園で食事会である。思わず驚くが、皆さんの後をついてゆくしかない。夜の祇園で食事が戴けるなんて夢のようで、僕も随分大人になったもんだと思った。

お店につき、めいめいに席に座って、食事を待っていると、京都に精通している社長さんが手配した、綺麗な女性がやってきて、それぞれのテーブルについて、おじさんたちの場を和ませた。
綺麗な女性は、平成生まれの20代後半の人であることに驚いたが、よく考えてみれば、元年に誕生した人でも今年で31歳になるので、驚くことはないのである。
僕は、夜の繁華街には、とんと縁がないので、どう振舞ってよいのか分からなかったが、お嬢さんはそれが仕事であるので、こまめに気配ってくれたので、飲めないお酒が以外に進んだ。時頼見せる笑顔にドキドキしながらも、会話が途切れると、どうしていいのか分からず、おろおろしてしまったが、離れしている人が、上手く埋めてくれて安堵した。

美味しいお料理も一通り食べ終え、次に行きましょうと声が掛かる。どうやら2次会があるようである。お嬢さんにお話を聞くと、どうやら「同伴」という形で、会に参加しており、その流れで、お嬢さんたちが勤めている「ラウンジ」へと向かうというのである。
ようやく状況を飲み込めたのであるが、環境に圧倒され続け、とりあえず、ついてゆくしか術がなかった

古都の花街、夜の祇園をしばらく歩いてゆくと、お嬢さんたちの勤めているラウンジに到着。お店に入ると、綺麗で、セクシーな服を身にまとったキラキラしたお嬢さんたちが、通路に並んでいて挨拶をしてくれた。

浮き足立っていた足が、さらにふあふあとして、なんだか落ち着かない。
遊びなれた人たちにとっては、それが普通のようで、普通に振舞っていたのであるが、迷いが生じた僕に、ボーイさんはどうぞこちらへと、席へと促してくれ、ようやく腰を落ち着かせたのであるが、先ほど挨拶をしてくれていたお嬢さんたちが、近距離に座ると、腰の据わり心地が落ち着かなくなった。

目のやり場に困るセクシーな服と、甘い香水の匂いに軽い眩暈がした。シルバーのネイルの細い指が慣れた手つきで、マドラーを回すと、氷がグラスに触れる音がとても遠いように感じた。慣れた手つきと甘い声。グラスが目の前にそっと置かれた。なんて非日常な空間なんだろうかと思ったが、誰かの音頭で皆で乾杯し、笑顔でグラスを重ね合わせた。お酒を口に含むと、旨い具合に作られたお酒に感心した。

お酒が進むにつれ、時間が麻痺し、狭くなってゆく視野と、耳に入ってくる音全てが歪んで、夢心地になり、不思議な錯覚に陥りそうになるが、お嬢さんの自然に触れるボディタッチが緊張感を引き締めなおしてくれる。
余りにもよそよそしかったらしく、隣のお嬢さんも、「そのキャラはもういいよ」と言ってくれたのであるが、どうしたのものかと思ったが、こういう場では、女性との距離感が分からないと、楽しめないのである事に気づいた。遊びなれているおじさん達は、本当に楽しそうで羨ましいなと思ったが、職業柄、他者を不快にさせないという自制が強く効いているので、旨く羽目を外せない。まぁ僕は僕なりでよいと開き直り、お嬢さんをこれ以上気まずくさせないようにと、ポジティブに会話を試みた。

どれだけ飲んだのか分からなくなったが、気分よくお酒を飲めたのは確かであり、最後まで、隣に座ったお嬢さんとは、ちゃんと目を見て話すことなく、お開きとなった。

夢だったのではないかと思うほど、非日常的な出来事であったが、人通りの無くなった鴨川沿いの道を、冷たい夜風に吹かれながら歩いてゆくと、ようやく地に足がついた心持になった。