硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

よく吟味してみる。その3

2015-09-26 19:16:59 | 日記
「新しい三本の矢」の概要を聞いて、困ったなと思いました。一見、魅力のある指針であるけれども、公約とは実現しなくてもよいものでもあるので、少し距離を置いて考えた。

GDPを600兆円に引き上げる為には、無駄を省き、必要なところに人と貨幣を集中することが前提になります。また、積極的に消費するには活発に貨幣が行き来する市場が必要になり、あらゆるものを購買する状況を作り出さねばなりませんが、もう、1次産業や2次産業ではその市場を維持する事が難しくなってきていると言われています。

もし、上記の考え方が正しいのであれば、人が集中していて、3次産業が盛んな場所では成長してゆくけれども、1次産業や2次産業で支えられている場所と大きな格差が出来てしまうように思います。

人は誰しも豊かになりたいという願望があるので、豊かな場所を目指して移動するのは自然な運動で、集中することを抑制することは出来ません。それが経済の発展につながる要素の一つではあるけれど、居住場所に問題が発生します。
科学が進歩したとはいえ、空に向かって人が住む場所を増やすことにも限界があり、そのような構造を持つ場所では他者からパスされることが前提であるので、その場所で人口の推移を保つことは構造的に難しいように思います。

そして、介護離職問題。このタイミングで首相が公言したのは、近頃メディアで取り上げられ話題にもなっているサービス付き高齢者住宅で起こった事件があったからではないかと思う。あの事件はこれからサービスを利用するかもしれないと考えている多くの有権者の不安を煽ったので、どのように対策を講じてゆくか指針を示さねばならない状況になったからだと思う。
僕個人が思うに、あの事件がなければ、介護離職0という指針は声に出さなかったのではと考えます。なぜなら、人材の育成や給与の見直しはあまりにもコストが掛かり、介護の市場は、3次産業ではあるけれど、福祉事業は非生産であり、貨幣を生み出さず、公費を消費するのみなので、経済成長の足を引っ張る形となるからです。

それでも、アベノミクスの考え方で介護業界を持続可能な形にしてゆくとしたならば、NPOなどの小さな施設は淘汰され、大きな施設に集約されてゆくことになるのではないかと思います。ドライな考え方かもしれませんが、福祉とはいえ、支えているのは経済であり、資本主義だからです。

しかし、消費税の増税や兵器の輸出といった、禁断ともいえるべき矢を放つことで、財源を補うのだとしたら、社会福祉は国民の負担の上に成り立っていると考える人も出てくるでしょう。
そのような考え方をする人なら、おそらく自己の権利を最大限に主張するでしょう。
理不尽な要求も平気で行うでしょう。そんな人間を相手に、心優しい人が対応し続けられるでしょうか。消費税増税によって、生活が苦しくなれば、経済的に子供を産むことも難しくなるでしょう。
このような、生産性の乏しい事業を人々は優しい目で見守ってくれるでしょうか。

安倍首相が声高らかに「一億総活躍社会」と謳いあげていたけれど、首相が理想とする資本主義経済は、貨幣が多いところにより多くの貨幣が集まるという構造には変わりありません。しかし、中国、上海株式市場の影響を受けてしまう不安定な市場では、低所得者である私達に、富裕層から零れ落ちる益を享受できるのか否かは、本当の処、誰にもわからないと思うのです。

願わくば、こんなネガティブな予測は吹き飛ばしてほしいと思う。