自分の故郷の好きな風景Ⅱ

2004年09月20日 | 人生は旅である。
熊野古道熊野古道というものが、故郷の谷の川伝いに通っている。
和歌山は、海南市、清水の浦に上陸し、目の前の藤白峠を越えほぼまっすぐに南に向けて続く道である。
途中にある、熊野九十九王子の中の古社の一つの所坂王子の社「橘本神社」の鳥居がこれ。
古道の両脇の家々の軒先には熊野古道を示すちょうちんが掛けられ、道のところどころには熊野古道の名盤が埋められている。



ちょうちんが
        ぶらさげてあって
                   古い道


人生はコーヒールンバだな。番外編2:人が死ぬといふこと。

2004年09月17日 | 小説:人生はコーヒールンバだな
[log-in]

poco:まりささんこんばんわ
marisa:ん。こんばんは。
poco:あ、どもども。なにしてるの?
marisa:携帯で。メールしてる
poco:あ、そか・・。元気でいますか?
marisa:うん。元気よ
poco:それは良かった。部屋は開けないんだねえ
marisa:うん。少しいろいろありまして。
poco:そか、そか、いろいろあるよね、ここは。
marisa:どこかで映像つけることがあっても部屋を作るとかはないかもしばらく。。
poco:うん。
marisa:知ってる人が自殺しちゃってね。
poco:ええええええ?。なんで・・???
marisa:うん。いろいろと^^
poco:あ、そだね。。。。私が聞く話しではないんだろうな。やふちゃが原因でってことは、ないでしょう?
marisa:ん。原因だよ
poco:え”!。そんな・・・ことあるのか?。なんか、荒らされたとか・・えええっと、晒されたとかで、、、かな・・・。あ、ごめんごめん
marisa:その人に嫌がらせの。メールしたひとが。いるのみたい。
poco:そか・・・。なんか、細かく聞くべきではないと思うが・・。ここも、生きていくのはむずかしいのか。
marisa:うーん。そうね。だけど、少し気が弱かったのでしょう。。。まだ高校3年生の賢い男の子が。死んでしまいました。
poco:はあ?!男の子だったの・・・
marisa:そう。
poco:ふうーーーん。ちょっとなああ。。。それは、。その人には大変失礼な言い方になるけど。弱いよなあ
marisa:うん。だけど。出生もね。いろいろあるのを考えたらなんだか納得してしまいます。その子は本当の父や母を知らない子だから。
poco:結構、不幸だったんだ・・
marisa:恵まれた家庭で育ったんですけど。いろいろ思うところはあるでしょう。
poco:んんんんん?
marisa:医師を父に持つ家庭に育ったの。だからこそ。薬で死んでしまったわけですけどね。。
poco:それは、。んんんんっと。その方の父と母は、本当の。お母さんのおなかから生まれたわけではなかったのですか?
marisa:そう。。病院の前に置いてあったと。その病院が今まで育ててくれた父親の病院だったのかと。
poco:あ、そうかあ。そういう、境遇ってわからないです、私は
marisa:それを知ったのが最近で。その数日後には。この世からいなくなってしまったの
poco:ううううううううううううむ・・・・・・・。なにか、重なってしまったんだろうけど。たとえば生きるってことが。なんだとか・・・。私はなんだろうとか・・・思う頃は。あります。
marisa:うんうん。そう。そういうことを考えないとね。。うん。
poco:で。自分なんか。実存感、生きてる実感が無いし。と思う頃ってありますよねえ
marisa:うん
poco:たぶん、。それと、。自分のお父さん、お母さんが。実の父母でないのとが。重なっちゃったんだろうなあ
marisa:でもそれは何年も前に知ってたんだよ彼は。。だけど
poco:へ?
marisa:いろんな精神的なものが。重なったんだと思う
poco:そだろうなあ・・
marisa:うん。海外に居たしね
poco:あ、そか・・
marisa:11月に留学始めた。ところだったの。
poco:あ、。彼は海外にいたのか・・。海外からチャット?
marisa:うん。元々。日本に居てね
poco:はい
marisa:お話してる段階で。受験の話になって。それで父親は日本で大学にと。言ってたけども。自分は海外に。行ってみたいと。言って。それだったら早いほうが良いという事で。11月から。行ってたの。
poco:行ったばっかりか・・
marisa:卒業よりも前にね。うん。
poco:そかそか。まりさはどうなの?。今
marisa:ん?
poco:どんな風に感じながら。思いながら、生きている?
marisa:そうねぇ自分が生かされてる意味とは何ぞやと。思うよ。自分から命を絶つことはしてはいけないと思うんだわ。
poco:ほほ~~~~。まりさって、結構、哲学的だもんな・・
marisa:仏教の世界では。してはいけないことの1つなんだお
poco:ほほ・・・仏教くるかあ
marisa:うん。般若しんきょう。に。書いてた
poco:ほほ~~~~~。般若心経。聞いたなあ。。ちょっと前
marisa:私ね、精神世界のことも好きだから本読んだり、お経読んだりすることもある。
poco:ラジオ体操もあったけど
marisa:うん。信仰心がどうこうというよりもね自分と向き合えるから。そうしてるんだけどね。
poco:何をしちゃいけないの?
marisa:仏教でいうところの「十戒」みたいのが。あるのよ。今思い出せないんだ。。本持ってきたら。かけるけどwww。あはは
poco:はははは
marisa:うん。でもね、その子の死は。私に関わる事だったんだ。だから無駄にしてはいけないと。思って。きちんと考えなければ。
poco:関わる??
marisa:少なくとも絡んではいるよね。
poco:そなのか?知っていると言うことは、関わっているということ?そうでもないのかなあ。もっと、直接的に関わったのだろうか(謎)
marisa:死にますと、あてた手紙に、私の名前もありました
"poco:はあ???それって。辛いねえ,勘弁して欲しいな私なら."
marisa:もちろん知ってたら。止めるよ。止めてたよ
poco:そだね。あとで知ったんだろうね
marisa:うん。その子のね叔父さんと。私がね。恋愛関係にあるかもしれない、ないかもしれないってごたごたしてたの。そう。その子の育てた父親の弟さん。
"poco:おじさんと。まりさは,親戚なのかぁ?"
marisa:そうじゃなくて。私と叔父さんを。引き合わせたのはその子だったの。
poco:ああ。そかそか・・・。なるほど・
marisa:うん
poco:なんか、。すごいねえ。まりさはそのおじさんとは、リアルで会ったわけ?
marisa:まだ。
poco:そか、チャットとかでしか、会ってないんだね
marisa:私の心境はずっと複雑でね。いろいろあったのよ・・
poco:うむ・・いろいろなぁ、、想像できないなあ・・
marisa:うん。
poco:結構辛かったりもしたんだろうなあ
marisa:うん。とにかく今の事は。わすれてwww。あは^^
poco:そでしたか・・・
marisa:うん
poco:それはそれ・・。長い間まりさの顔見てないです。
marisa:そね。顔?みせたことないおw
poco:お顔・・。部屋作ってときに見てました。ラジオ体操してました
marisa:あはは。そういうことね
poco:さしで(二人っきりで)みせて欲しいとは、いいませんが。元気な顔見てみたいと思います。
marisa:うん。ありがとう。
poco:まりさの部屋に来ていた人も。みんなそういってるんじゃないかなあ
marisa:うん
poco:わたしより、はるかに付き合いの深い人、いてそうだし
marisa:うん
poco:私、よく知らないけど。セキュアルームって、どうなんですか?やったことある?
marisa:ああ。踏んでも入れないって。やつね?
poco:そそ・・
marisa:呼んだ人しか。入れないとか。うんうん。私は何人かでお話しするときに使った事あるね。真面目な話のとき。
poco:あ、そか。まじめな話のときね。なるほど
marisa:遊びでつくったのは。ないかもだ。
poco:あ、そかそか・・・遊びかア。あ、明日早いので、そろそろ、寝まする
marisa:12時近いじゃない。寝てね
poco:まりさ元気でよかった。じゃあ、また!機会があれば顔みせてね・・。オヤスミ。
marisa:うん。ありがとう。^^おやすみなさい^^ばばぃ

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人生はコーヒールンバだな 15

2004年09月06日 | 小説:人生はコーヒールンバだな
真っ赤なチャイナ服を着た小太りとは言い切れない肥満のメガネ男(以下デブ男:だって、これ長すぎてもうそろそろ読者の皆さんも読むの疲れたでしょう。)の横に、真っ黒なチャイナドレスに身を包んだ女性が立った。

網瞳である。

腰骨近くまで入ったスリットからのぞくすらりと伸びた脚が眩しい。

にむの目がピンクのハート型になった。

「あぁ。網瞳ちゃ~~ん。会いたかったよ~~」

思わず走りだすにむ。顕眠は素留を突き飛ばしてその場に立ち上がる。

にむが、両手を広げて網瞳を抱きしめる瞬前に彼女の右手が空を切りにむの左頬に向けてふりおろされる。

「ベシッ!」   崩れ落ちるにむ。

網瞳は小さく   「ウザ」

にむは殴られた左頬についた真っ赤な手形をさすり、口元から喜びの涎をたらしながら、デブ男を見上げて叫んだ。

「あ、あ、あなたはいったいだれなんだぁあ」

デブ男は、宋顕眠を見据えながら、表情を変えずに答える。

「あるときは、

ネットコミュニティのオフ会の待ち合わせ場所で、目印になる黄色の熊のプーさんぬいぐるみを抱え、チェックのワークシャツを着て、背中にナップサックを背負って立っている男。

またあるときは、上海のジャズバーでぬるいビールを出す黒服を着たボーイ。

またまた、あ~るときは、皮のジャンパーを羽織ったセスナ機のパイロット。

そして、また、あ~~るときは、赤いバイクの郵便配達人。

さらに、また、あ~~~るときは、ひかりレールスターの車掌。

あ、もう一つで今の私を含めて、七つになるんだけどなあ、ま、いいか。

しかして、その実体は・・・」

「チャイナ服を着た、ただのデブでしょ」とにむ

「お前に言われる筋合いはな~~~い」デブ男はにむの腹にけりを入れる。

デブ男は気を取り直して、つづける。

「『タラオバンナイ』を叔父に持ち、『きょうのおばんざい』を伯母にもつ。わたしの名前は 『腹尾万代』こと天架鳥仁(あまけかけるとりひと)だ。」

にむは思わず叫ぶ

「晒しきた~~~~っ。」

腹尾万代は顕眠に銃口を向けたまま話をつづける。

「宋顕眠。お前には、これまでも、もう一歩というところで逃げられてきた。今回の事件にもやはりお前が絡んでいたんだな。」

「私たちの組織は、知ってのとおり国際的で。上海支部から、最近なぜか定期的に黄昏煎餅を載せたバンがある邸宅の門をくぐることが多くなったとの報告を得て、捜査していたんだ。その邸宅は極東を中心とした犯罪組織のアジトだということは前から分かっていた。しかし、いくら黄昏煎餅が好評だといっても、その中で、胡麻煎餅だけが納品されているというじゃないか。ひょっとしたら、その保存性を生かして、半島の北部への食料物資補給として流れているのかと思っていたが、そうでもない。なぜ、胡麻煎餅だけが、と捜査を続けていたところに、Akyukiの死だ。これは、もう少し大きな組織的な動きがあると思って、素留とにむを泳がして、後を追いかけていた。そして、ゴマチップが混ぜられていたことがわかった。

中国もWTOに加盟して、物の輸出入に関しては厳しくなった。お前は、物の密輸から情報の密輸へとフィールドを替えたというわけだな。

確かに情報はネットを通じていくらでも流通は出来るし、それの方が手軽だろう。だが、エシュロンシステムがこれほど進化してしまった今なら、ネット経由の情報流通はすべて盗聴されていると思うのは当然だ。そこで、ゴマチップの登場だ。情報をあえて、モノにして動かすとは。

うちの組織でもゴマチップに埋め込まれた情報を幾つか解読した。そこに記録されていたのは日本国民の名前と住所と生年月日だ。そう、住民基本台帳の情報だ。日本国民全員の基本情報を他国に握られてしまったら、大変なことになる。全世界から送られたダイレクトメールで日本の家庭のポストが一杯になるなんて、大きく国益を損なうことになるだろう。」

「顕眠よ、お前はもう包囲されている。私の手配の者達がこのビルを包囲している。逃げ場所は無い。」

春田が空を見上げてだれに言うとも無く。

「すごいですねえ、さすが国際捜査組織だ。ヘリコプターまで用意してますよ」

上空にはヘリコプターのパタパタと言う音が近づいてくる。

顕眠は居直ったようにいう、

「そこまでいわれちゃあこっちのセリフがなくなるってもんだ」

えっ?さっきまで言いたくないって言ってたじゃないか。

「うるさい、著者!お前はひっこんでろ。」

「そうさぁ、万代。おまえが言ったとおりだ。ただ、今回は誤算があった。いつも行く上海のバーに網瞳がいたんだ。そう、そこに立ってるお嬢さんだよ。網瞳がお前達の組織に属しているということは、途中から気がついた。だが、Akyukiは網瞳に近づきすぎた。これ以上近づくと組織の秘密をばらされそうになったんで殺したということだ。」

顕眠は覚悟をきめたように、

「しかたがないな、残念だが、今回はあきらめるよ。」

と、うなだれつつ、両手を前に出して腹尾万代に歩み寄る。

「お前もこれまでだな、長らく悪事を働いているといつか失敗はするもんだ。」と腹尾万代。

顕眠は観念したように上目遣いに万代を見つめて、

「へい、今回のヤマは物が煎餅だけに、焼きが回りました。」

というやいなや、懐から手榴弾大の黒い玉を床に叩きつける。たちまち立ち上る煙。全員煙の中に取り込まれてる。

「ピストルを打ってはだめだ、危なすぎる」とはだれた言ったのか。

バタバタバタとヘリコプターが近づく音。

煙が吹き飛ばされたときに、見上げるとヘリコプターからつるされた縄梯子に宋顕眠は飛び移っていた。見る見る高度を上げるヘリコプター。ピストルで狙いを定めるには十分に遠くまで上がったあたり、顕眠はヘリコプターの機体の中に乗り込んでしまう。

その時、腹尾万代の携帯電話がプルプルと鳴る。万代は耳に携帯を押し付ける。男の声が。

「おれじゃよ、顕眠だ。今回はよく、わしを追い詰めたものだ。ほめてやるよ。でも、やすやすとつかまる俺じゃ、読者も納得はせんだろう。好評なら二作目、三作目も作らんといかんからな、なあ著者よ」

いや、そのような予定はないが、まあ、好評なら考えなくは無いが。

万代は私をにらみつける

「著者は引っ込んでろ!
 顕眠、携帯電話からきっと尻尾をつかんでやる」

顕眠は余裕の顔で応える。

「無駄だな。こんなケータイ、欲しければくれてやる」

プチッと電話が切れたときに、飛行機雲が三本引かれた真っ青な空から、顕眠が投げ出した携帯電話がきらきらと落下してくるのが見えた。



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这边中文版

人生はコーヒールンバだな 14

2004年09月06日 | 小説:人生はコーヒールンバだな
夜の南山胡麻商店前。黒い人影が4人

「おまえ、なんちゅう格好してんねん」素留が小声でにむに聞く。

「え、なんちゅうって言うても、これから南山胡麻商店に忍び込むんでしょう?夜陰に乗じてでは明るい格好ではあきまへん。だから、こういった暗い服にしてきたと言うわけです。昼前に南山商店から築地駅に向かう時に、素留さんも言うてたじゃないですか。夜の十時に会社前に集合。その間になるべく目立たん服を調達して来いて。」

「おまえの格好、忍者の黒装束やろ。たしかに夜陰に入れば目立たんけど。銀座のホテルからここまでどうやって来たんや。」

「へ、そりゃ、地下鉄乗ってきました」

「それ、むっちゃ目立っとったんちゃうか?どこで、手に入れたんや」

にむは、懐を指でつまんで、

「あ、これね、原宿の竹下通りで買いました。今の時代コスプレが流行でしょう。いろんなコスチューム売ってますなあ。ラムちゃんとかセイントテールなんてのはもう定番ですよ。猫の耳とメガネのセットが、え~っとなんて言いましたかな。あ、そう『萌えセット』って袋に入れて売ってます。今最高の流行が『ロリコス』ですよねえ。お土産に一着買いましたけど、今度見せますね」

「いらん!」

「そうですかあ、見て欲しいなあ。郵便配ってくれてるあの小太りの女性警官なんかに着せたら最高似合いまっせ。あの子に着せたろ。そやそや。」

「何をしょうも無いこと言っとんねや。

ところで、春田さんはついてこなくて良かったのに。」

「いえ、ま、行きがかり上お付き合いします。物語の進行的にもアリバイをしっかりしとかなきゃなんないし。」

「ま、そうですけど。そのわりに、真っ黒のサングラスにナイキの野球帽って、そうとう怪しいでっせ。

ナルさん、あぁ、鳴門さん、あんたさっきからそこで何してはりまんのん?」

「え、は?春田さんにもらった胡麻煎餅を食べてます。これ、結構あっさり味でおいしいですねえ。胡麻の風味もいいですよ。RFIDチップが入ってるなんて、サッパリ分かりませんねえ。ぱりぱり。」

素留はあきれて、

「胡麻煎餅なんか後でよろしい。春田さんにいくらでももらいますから、ったく。では、全員そろったので参りましょう」

にむは、正面玄関の扉の前でポケットから取り出したクリップを三本伸ばしている。

「わたし、鍵破り三級の免状を持っています。泥棒を捕まえるには泥棒相当の技術を持っていなければと身につけたんです。すべからく相手の身になってというのが正しい生き方ですね。」

「それを、趣味に使ってないだろうな。おまえコスプレパブにもちょくちょく顔を出してるらしいやないか、それも緊縛系の。」と素留

「え、そ、そんな、何で知ってるんですか」

「こないだ、店長に聞いた」

「え、素留さんも行ってるんですか」

「しょうも無いこと言ってないで、はよ作業せんか」

観音開きの玄関ドアの右側。取っ手の下に開いた鍵穴にクリップを差し込んで開けようとするにむ。がなかなか開かない

「どれどれ、内側からも見てみましょう」

と鳴戸佐助が左側の扉を押して中に入り、右側の扉の内側から鍵穴を点検する。

「内側からだと普通に開きますけどね」と佐助

「おかしいなあ、なんで開かないんだろう。山型は合ってるようなのに」と首をひねるにむ

「おまえら、なにしとんねん。玄関あいとるやないか。さ、行くで。」と素留。苦笑する春田。

四人はそろりそろりと五階の倉庫に忍び入る。照明の落ちた倉庫は窓から差し込む街の光で薄暗く、三本ならんだ棚とそこにおかれたダンボールがうっすらと見て取れる。

鳴戸佐助がポケットから携帯電話をとりだす。

「これは、ですねえ。ドコモ505icdを改造したRFID探査装置です。506icは別名『おさいふケイタイ』ですね。FeliCaと呼ばれる非接触ICカード技術がケータイに搭載された、iモードFwliCa対応ケータイでしてね。iモードの機能とFeliCaが組み合わさって、ショッピングや会員認証などが出来るようになって、おサイフの中の便利さがケータイ一つで実現できる、っていうですけど。ま、落としたらとんでもないことになるんで、私は欲しくないですが。あ、ちなみに、私は通常でも携帯電話というものを持ってませんが。
で、この、FeliCa対応機能を改造して、あらゆる規格のRFIDチップを探し出すようにしました。まだ開発中で、見つけたチップに記録されているデータを読み出すことは出来ませんが、チップがあるかどうか位は十分探し出すことが出来ます。」

佐助は、三列並んだ中の中央の棚の段ボール箱を端から探査装置に押し付けてチェックをする。三つ目のダンボールに装置を当てたときだ。

「チャラリ~~~ン」と、音が倉庫中に響き渡る。

鳴戸佐助はあくまで冷静にささやく

「この箱にゴマチップが入っています。今の音はFeliCa標準登載の音です。ま、これももっと小さい音にしなければならんと思っているんですが、開発中なんで、えへへ。」

そのとき

「だれだ!」

と、奥の女子更衣室の扉が開くとともに倉庫内の蛍光灯が一斉に点灯した。

そこには、南山感治と宋顕眠が立っていた。

にむが宋顕眠を指さして叫ぶ。

「あ、あなたがなぜ、ここにいるんだぁあ!」

宋顕眠は四人を見据えて静かに言う。

「あなたたちこそ、どうしてここにいるんですか?。捜査令状でもあるんですか?お引取りください。今日は、南山社長と新しい胡麻油自動フライ装置について、打ち合わせをしていただけです。」

「だいたい、大の大人が四人も揃って夜中のビルに忍び込むなんてよほどのことですなあ。ましてや、管轄地域外で捜査活動ですか。これは、由々しき自体ですね。警視庁の方にも連絡をいれなきゃいけないですな。」

南山がそれを受けて

「まったく、いい迷惑ですよ。私の会社はただの胡麻商社です。私一代でここまで築き上げてきた。なんら、やましい仕事なんかしてこなかった。大変な人権蹂躙ですな。
まして、そこの携帯持った御仁。あなた、なんなんですか、まるでマッドサイエンティスト気取りじゃないですか。あんたなんか、どこぞの研究室でこもってりゃいいんだ」

鳴戸佐助の頭が「ぷちっ」と音を立てた。

「黙って聞いとったら、つけ上がりくさって、お前らなにさまじゃ!春田さんをだまくらかして、胡麻にゴマチップを混ぜとったんは貴様らやろう。ほれ、この箱の中身がその証拠じゃあ」

と、ゴマチップが入ったダンボールを床に叩きつける佐助。床に胡麻チップがざざざ~っと散らばる。

「おんどりゃぁぁぁ。ガタガタ言うとったら、鼻の穴から指突っ込んで、奥歯ガタガタいわせながら、両方の耳からストロー突き刺して脳みそチューチュー吸ったるどぉ。わ~~~れ~~~~。」

二人は一瞬顔を見合わせたと思うと、四人が立っている棚の反対側を走り抜けて、入り口から階段に出る。南山は階下へ、顕眠は屋上へと走る。

佐助は南山を追って階段を駆け下りる。
素留とにむ、そして春田は屋上へ駆け上がっていく。

顕眠は屋上の反対側のビルの外側に取り付けられた非常口に向かって走っていく。だが、屋上の中央付近で素留がその腰にタックルする。もみ合う二人。

にむが足に取り付いて、顕眠は動けなくなった。

素留は顕眠を組伏したまま、訊ねる。

「やっぱりあなたが、Akyukiの死と関係してたんだな。いったい、何があったんだ?」

すると、居直ったように、宋顕眠が声を荒げる。

「まったく、下手な小説ほど、事件の動機や殺害方法を犯人にしゃべらせる。わしは話さん。誰がお前の尻拭いをする必要がある」

「え、顕眠さんどこ見て話してるんですか?」とにむ

「著者を見ておる」

著者とは?

「おまえや~~」顕眠は私を指差して叫ぶ。

は?私が著者であるな、しかし、著者が物語の中に入っていってはまずかろう。

「な~にを言っておる。ここは著者の世界ぢゃ。お前の思うがままに我々登場人物は話し、行動し、殺されたりもする。」

「Akyukiなんか気の毒なもんだ。『カイシャツブレタカ』と『ソレハオクヤミダナ』というセリフを残して神戸港に浮かんどったんだぞ。それも、たこ焼き串を口につきたてた無様な姿でな。
そもそも、Akyukiが死ぬところからこの話は始まっておるんじゃろう。事件が起こったということは、背景、犯人、そして動機、と大まかのプロットは決まっていたはずじゃ。したがって、物語の進行に合わせて徐々に、それらのことを読者に分かるように組み立てていく。それが小説の書き方じゃろう」

そんなことをいっても、この小説はそれほど計画性をもって書き始めたわけではない。

そもそも、この話は私が新聞広告原稿のモデルになる事がきっかけで始まったことだ。なんとなく広告のサイドストーリーを書き始めたらこんなことになってしまったというわけなんだ。もちろん、初めからプロット立てして書き始めたわけではない。

たしかに、ここに登場する人物はモデルが無いではない。Akyukiは実際、実在の人物の印象が濃すぎてすぐに殺さざるを得なかったくらいだ。でもなあ、こうやって書きながら話の終わり方を探して書いているのは事実だし。三ヶ月ほど前にはまったく別の終わり方も考えていたんだけれどなあ。

「そんなことだから、最後に犯人にしわ寄せがくる。テレビドラマの二時間スペシャル家政婦は見ていたみたく、最後に『わたしは、Akyukiが憎かった。網瞳にお口あ~んしてもらっていたAkyukiがうらやましかったんだ。あの晩彼を港に呼び出した私は、特製のたこ焼きですと彼に差し出して、食べさせるふりをしてかなづちで竹串の片端をドンと叩いて・・・』なんて、再現フィルムとともにクダクダと話させる。」

「わ~しはいやだぞ、ずぇ~~ったいに事件の裏なんか話してやんない」

そういわないで、話してくださいよ。

「いやじゃと言ったらいやぢゃ」

こまったなあ。と著者がほとほと困ったときである。

「それまでだ。」と言う声で全員が目線を移す。

ビルの外側に取り付けられた非常階段の上がり口に立っていたのは、真っ赤なチャイナ服を着た小太りとは言い切れない肥満のメガネ男であった。両手には小径のコルトが一丁ずつ握られている。


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