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オペラ「万葉集」名古屋公演

2014年09月14日 | なごみ
千住明氏(音楽)、黛まどか氏(台本)による、オペラ「万葉集」名古屋公演に行って来ました。

会場は、愛知県芸術劇場。


石川能理子(ソプラノ) 、松原宏美(メゾソプラノ) 、井原義則(テノール)、 吉田裕貴(バリトン)、 演奏は名古屋室内管弦楽団 によるもの。



テノールの井原氏は、以前に出演したオペラ「魔笛」の演出、総監督でもあった方なので、なんだかとっても舞台が身近。
ご指導頂いた先生の舞台は、とても嬉しい。

万葉歌を歌っているはしくれとして最近気になるのは、プロフェッショナルの方々の万葉舞台の脚本と演出。

素材を元に、どこまで踏み込んだ脚本で、一般の方々にどう表現してみえるのだろうかと。

オペラは2部構成。

1部は「明日香風編」。
白村江の戦いを中心に激動の歴史舞台を、額田王を主人公にし演出した内容であった。
額田王の人物像については、なかなか深い考察をしてみえて、あの文献、この文献もご存知なのかと感じさせてくれる歌詞が織り込まれており、ソプラノの方によって高らかに歌い上げられていた。

2部は、「二上挽歌編」。
過日の歌物語というなれば同じ演目となるのだろうが、脚本次第でいかようにも表現できるのは面白い。
黛氏の台本は、大津皇子と石川郎女の相聞歌からはじまり、草壁皇子の思いを交錯させながら持統天皇の親としての思いをからめた内容に仕立て、大津皇子の謀反へとつなげていった内容であった。
最後の二上山の位置づけを大和の頂(いただき)という表現にし、輝きという言葉を使った表現でしめくくってみえたのは、俳人黛氏ならではの視点とでも表現したいものである。

音楽は、生オーケストラならではの生音の迫力と美しい千住明氏のメロディが奏でられ、うっとりとした中で聴かせて頂いた。

何でも、東京、奈良、京都で上演してきたが、今回千住氏自らの指揮は、名古屋初演との事。
贅沢な空気と、ソリストたちとのアイコンタクトとで形で現れない息のあった呼吸に、こちらが息を止めそうな場面なども。

バリトンの吉田さんは、気鋭の若手歌手みたいだが、時折楽譜に目を落とす程度で、歌詞をほぼ暗唱して歌い上げられていたのは、とても印象的だった。

マイクなしで会場に響き渡らせる歌唱と音楽。

西洋の表現を、大和の言の葉で味わう。

オペラとしては、近年にない大ヒット作となっているそう。
プロである千住明氏をもその気にさせてくれる万葉集の魅力、いや魔力、呪力だろうか。

画期的ともいえるこの取り組みが、海を渡っていったらどんなに素敵だろう、そんなことを感じさせてくれるひと時だった。