子燕や壁塗り替えし長屋門 丈士

子燕や壁塗り替えし長屋門





青梅雨や遅れるバスの気にならず

みな白い腹山渓の鯉のぼり

青嵐とぎれとぎれのプロポーズ 丈士

青嵐とぎれとぎれのプロポーズ





法話会あとの漫ろに夕牡丹

麦秋やたしかめながら下駄の音　

点ひとつ線香花火に家族の目 丈士

点ひとつ線香花火に家族の目




麦の秋造成の杭打ちはじむ


ひまわり迷路幕間に頸を折り

屋久島にあごの刺身と古代杉 丈士

屋久島にあごの刺身と古代杉





恐竜の食べない進化進化青蜥蜴

夏落葉うらもおもてもなかりけり

今年竹ときには真直うとまれる 丈士

今年竹ときには真直うとまれる






身ぎれいの少し解けて更衣


滴りの旅をきざみて岩の窪

余花の雨帰国媼の茶懐石 丈士

余花の雨帰国媼の茶懐石



関われば先は怪しく蝮草

留守居寝にひっぱろこんで竹夫人

夜空突く夏越し太鼓に腹ゆるる 丈士

夜空突く夏越し太鼓に腹ゆるる






深まるや父相伝の菊根分

松落葉母をまつ子のひとりごち

夏帽子折るる心をもちあげる 丈士

夏帽子折るる心をもちあげる






この星の見切り時さて蟇

上り来る火玉三六〇度

霾ぐもり僧と二人のお魂抜き 丈士

霾ぐもり僧と二人のお魂抜き





核家族化して墓守をする血縁が離れ離れになったり
少子化で家を継ぐということもなくなっている

墓終いのための魂抜けの法要が多いと聞く
その法要にも参列する家族は少なく
たったひとりで僧侶と二人だけが多いそうだ

浦島草ふいとをんなの気持ちかな

炎帝の覗きこんでる閻魔堂

声も汗かく原色の中華街 丈士

声も汗かく原色の中華街





握りたる鉄鎖に谺かくれ滝

軍服を解いて心身クールビズ

来し方にひと日ひとすじ蜷の道 丈士

来し方にひと日ひとすじ蜷の道



春禽の序列あるごと川に群る


烏瓜明日をうらなふ蔓をひく

黒南風や寂しがりやの人嫌い 丈士

黒南風や寂しがりやの人嫌い



眩しさに一拍おくれの草矢かな

水鉄砲水に潜って水を込め