竹とんぼ

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紫雲英田に侠客ひとり裏返し   兜太

2018-07-12 | 金子兜太鑑賞
紫雲英田に侠客ひとり裏返し   兜太



昭和47年、「暗緑地誌」より。

紫雲英は蓮華の漢名。
最近では、休耕田に植えられていたりもするが、
蓮華田はすっかり見かけなくなった。
昭和47年辺りだと、
あちこちで蓮華田が広がっていたことと思う。
侠客と言えばすぐに「清水次郎長一家」を連想してしまう。
侠客とは、強きをくじき弱きを助ける人のことである。
「裏返し」とは何であろう?
からだの向きを変えたということではないだろうか。
「裏返る」という自動詞ではない、
「裏返し」なのであり、
「返る」に比べて軽く遠くへ離したような明るい印象を受ける。
「侠客」との配合で「紫雲英田」なのであろう。
この句の侠客は誰であろうか?私は、作者自身だと思う。
紫ピンクの蓮華田にひとりうつ伏せになった、
甘すっぱい青い香が鼻を突いた、
それを劇画めいて、「侠客裏返り」
ちょっと他人事のように、
粋がって侠客と詠んだものではないか。なにやら面白い。
蓮華の濃いピンクの色彩が、
くっきりと、侠客という言葉で浮かび上がってくるような句ある。

私も、小さい頃よく蓮華田に出かけた。
蓮華田に寝転べばきっとすごく気持ちいいだろうと思ったものだが、
道から見ると分厚い絨緞のように見える蓮華田も、
近くに寄ってみると意外と穴がぽこぽこ空いていたりする。
あっちの田んぼの方がもっと蓮華田がきれいかも知れない
と移ってみてもいつも同じことだったような記憶がある。
わたしには、蓮華田は、
なにかいつもちょっと裏切られたような印象が強い。



参照 http://www.shuu.org/newpage24.htm

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