竹とんぼ

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世の中は三日見ぬ間に桜かな  大島蓼太

2019-03-28 | 今日の季語


世の中は三日見ぬ間に桜かな  大島蓼太

句の「世の中」は、自然的環境を指している。戸外、周囲の意味。「あな寒といふ声、ここかしこに聞ゆ。風さへはやし。世の中いとあはれなり」(『蜻蛉日記』下)の用法だ。句意は説明の必要もあるまいが、桜の開花のはやさを言ったもの。たしかに、咲きはじめると、すぐに満開になってしまう。散るのも、またはやい。ところで、この句を諺か警句みたいな意味で覚えている人がいる。いや、そう覚えている人のほうが多いかもしれない。「世の中」を社会的環境ととらえ、桜花の咲き散るようなはやさで、社会は変化するものだという具合に……。落語のマクラにも、その意味でよく使われる。ただし、こういうふうに覚えている人は、たいてい原句を間違ってそらんじているのが普通のようだ。「世の中は三日見ぬ間に桜かな」ではなく「世の中は三日見ぬ間の桜かな」と、助詞を勝手に入れ替えている。「に」と「の」の入れ替え。なるほど、これでは警句に読めてしまう。無理もないか。たった一文字の違いによる、この激しい落差。地下の作者は泣いているだろう。蓼太(りょうた)は、18世紀の江戸に住んだ俳人。信州出身とも伝えられるが、出自は明らかでない。『蓼太句集』所収。(清水哲男)

【初桜】 はつざくら
◇「初花」
その年の春に初めて咲く桜の花。また、咲いて間もない桜の花。桜の咲くのを待ち受ける人の心があらわれている。
例句 作者
初花の夜をたゆたひ雨泊り 吉田鴻司
初花の水にうつろふほどもなき 日野草城
徐ろに眼を移しつつ初桜 高浜虚子
初花や一日青空きはまりて 中村汀女
浜に火を焚けば濃き色初桜 茨木和生
初花の薄べにさして咲きにけり 村上鬼城
初花も落葉松の芽もきのふけふ 富安風生
初花の夕べは已にほの白く 高野素十
初花やななめに降つて山の雨 草間時彦
燭をもて初花仰ぐ酔ひにけり 永井東門居

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