果物料理と果物食品加工

ビタミン・ミネラルに果物の仄かな香りに目覚める フルーツソムリエ

利益はご利益から     「生かせ  いのち」

2011-08-14 17:11:19 | 高野山
 
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利益はご利益から   藪 崇史(福岡県糟屋郡 切幡寺 住職) 
 いつの時代も利潤を追求するのが経営組織の本質であるといわれるように、利益を生み出さなければ企業の存在意義は有り得ないと思われます。どの企業も利益のことをやかましく言い、利益追求のためにさまざまな工夫をしています。しかし、利益追求についての考え方には違いがあり、その違いによって利益そのものも違った性格を持ってくるようになります。
 この考え方には大きく分けて二つあり、一つは自分の利益、もう一つは人の利益です。利益の上に御をつけると「ごりやく」とよみます。利益とはもともと仏教語であり、本来は「りやく」と読みます。この言葉は経典の中にあり「成仏する、救われる」というのが本当の意味です。ですから、現世利益というと生きたまま成仏する一仏になる、という意味になるのです。この利益(りやく)がいつの間にか日本 

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の経済用語に取り入れられ「儲け」という意味に使われ利益(りえき)を上げる、金儲けといった意味合いに使われるようになったのですが、本当は人を救う、世のためになる。成仏すると意味が正しいのです。

 経済という言葉も「経世済民」という言葉を略したもので、世の中を治め人々を救うというのが本来の意味なのです。会社に例えると、利益を追求することはお客さまを救う、お客さまの利益になるように努力することが、お客さま、すなわち神さま仏さまですから、結果として会社にご利益をくださる、救われるということになるのです。自分の利益ばかりを考え、こうすればああすればこれだけの利益があるといった姿勢では逆効果というものです。相手のことを考えてどのようにすれば役立つのか、喜ばれるのかを思い、努力の結果が利益として残される。こうした思いが明るい世の経済、利益のあり方ではないでしょうか。

 現在、社会において仏さまの示される本来の意味は忘れられ、意味を取り違え都合の良い解釈は仏道どころか道徳をも捨て去り、おのれの利潤のみに執着し、我も人をも卑しめ疑心に満ちた安らぎのない世界をもたらしつつあります。騙し騙され、裏切り裏切られる世界に本当の利益がもたらされることはありません。偽善でもなく理想論でもなく、他を利すること、他人に利益を施すことから始まる豊かな社会が今の世なればこそ必要であり、現代を生きる私達の忘れてはならない生き方だと思うのです。

 お大師さまは、「善人の用心は、他を先とし己を後にす」と示されています。すなわち本当に悟れる者、幸せを得られる者は自分のことばかり考えず、人のことを思える人であるのです。皆さまが目にする仏前勤行次第のお勤めの最後に「回向の文」といって「願わくはこの功徳をもってあまねく一切に及ぼし、われらと衆生とみなともに仏道を成ぜん」とあります。

 自分の功徳を多くの方に向けて分かち合う尊い祈りの偈文です。心の豊かさから生まれる幸せを見逃してはいませんか。

 皆さまも時折、日々の暮らしの中で自分自身に「今の自分はどうか」と問いかけてみていただきたいと思います。心豊かな日々をお祈り申し上げます。

          参与770001-4228(本多碩峯