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生かせ いのち 「多くのお蔭に日々感謝」

2011-07-05 14:07:11 | 高野山
Koyasan_sinpo

多くのお蔭に

 

          日々感謝

                                    河合了宣
 高野山真言宗では「生かせ いのち」をスローガンに、お大師さまの教えを世界中の人たちに説いています。平成二十七年、お大師さまが高野山を開かれて千二百年にあたります。「生かせ いのち」の教えは変わることはありませんが、千二百年開創法会に向けて「大師の みおしえ いまここに」と、新しく高野山よりお大師さまの教えを発信しています。仏によって生かされて、多くの人々のお蔭によって生かされている自分を今見つめ、日々の感謝や報恩行を行えば、必ずお大師さまが寄り添っておられますという教えです。
 檀家さんの処にお参りに行くと、おじいさんがよく戦争の時のはなしをしてくださいます。戦争の賛否はともかくとして、戦友は同じ釜の飯を食べ、苦しい時も辛いときも楽しいときもみんな一緒でした。「今、私が生きているのは戦友みんなのお蔭や」と昔を懐かしんで話してくださいます。皆さまも脈々と続く先祖のお蔭、お父さんお母さんのお蔭、そして多くの人たちのお蔭によって生かされていることを、今までに幾度も実感されたことでしょう。
 私は岐阜県の刑務所で、教誨活動をしています。以前、二人の受刑者と仮出所に向けてのお話したとき、年配の受刑者が言いました。「自分がこうして無事に出所できるのも、私を待っていてくれた妻とこの人のお陰です。」ともう一人の受刑者の方を見ました。「自分が耳は遠いので、刑務官の指示がわからず迷惑ばかりかけました。点呼のときなどは順番が聞こえず、この人が必ず私の番になると体を叩き合図して助けてくれました。とても感謝しています」。

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 私はお二人に、「今まで過ごした何十年間あなた方は何一つ変わることがなかった。これからはすごいスピードで変化していきます。しかし、生かされている感謝の心や今素直に言葉に表したお蔭さまの心は、変わることなく常に持ち続けて下さい」と餞別の言葉を贈りました。あれからお二人に会うことはありませんが、必ずやお蔭の感謝を持って生活していることと信じております。

 また、ある暑い夏の日に、受刑者約三十人と小さな教室で勉強していたときのことです。私は暑さのため話しているのが辛くなってきました。受刑者のひとも辛そうでした。顔を見ればわかります。もちろんクーラーや扇風機などありません。そのとき、窓から涼しい風が入ってきました。全員が一斉に窓の外を見てとてもいい顔になりました。私は間髪入れず、「今、みなさんが普段気に止めない、また感謝したこともないただの風に有り難いと思ったでしょう。今の気持ちこそ仏の心であり、真言宗の教えなのです」と説明しました。

 真言宗の教えは難しいと言われますが、そうではありません。「有り難い」と、人にでも、また大自然にでも手を合わせて感謝すれば、そのとき人や大自然は仏であり、手を合わす自分自身もまた仏であり、手を合わす自分自身もまた仏となっているのです。それがお大師さまのご誓願である即身成仏であり、必ずお大師さまが寄り添っておられます。

                 著者は岐阜県岐阜市円明院の住職です。

 参与770001-4228(本多碩峯)