木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

改め婆

2009年01月08日 | 江戸の交通


年明け早々から下世話な話題で恐縮です。

東海道新居の関は、現存する関所として遺構を今に残している。
この関所はかなり取り調べが厳しいことで知られていた。
特に出女と言われ、女性の出入りは厳しく調べられた。
出女とは、江戸から京都方面へ上る女性のことで、人質として江戸に住まわされていた大名の妻が逃亡するのを禁じていた幕府は、特に厳しく取り締まった。

女性から見ると、関所は主に4つに分類された。
①すべての女性の通行を禁止する。
②関所周辺の女性に限り、名主、庄屋の証文で通行させる。
③特定の役所の証文を持参する女性に限り通行させる。
④幕府留守居発行の証文を持つ女性に限り通行させる。

このうち、新居は④であった。
④であっても、江戸へ下る方向には、手形が必要なくなる箱根の関所のようなところもあったが、新居は、上り下りとも女性に関しては手形が必要であった。
男性については、関所手形はグループに一通あればよかった。これは、名主や大家が発行するのが普通であった。
ただ、旅行には、行き倒れたときの処置などを記した往来切手というものが必要で、これは菩提寺の住職に書いてもらった。身分証明書を兼ねたパスポートのようなもので、これは一人につき、一通が必要であった。

改め婆は、証文を持った者が本人に違いないか、女性を取り調べるのであるが、上にある絵のように、股ををめくらされるのは、男性のほうだった。もっとも、むつけき髭面などは、取り調べられないのだろうが、今時のイケメンなどは、みな股間に虫眼鏡を当てられるであろう。
改め婆は、男装した女性がいないか、服をまくらせ、股間をも調べたのである。改め爺では、同性同士とはいえ、調べるほうも、調べられるほうも、お互いに気詰まりに違いない。

婆にしろ、爺にしろ、取り調べを受けるのは、気持ちのいいものではないが、現代でもこれに近いことが行われている。
それは、オリンピックなど大きなスポーツ大会におけるドーピングチェックである。
友人にレスリングのオリンピック候補になった者がいるのだが、ドーピングチェックにおいては、検査員がトイレの個室の中まで入ってくると言っていた。
かつては、パンツの中に袋を隠し持ち、検査コップに偽の尿を入れたりする者もいたそうで、検査を徹底させるために、尿を絞り出すまで見ているらしい。
どの大会でもそうなのか、女性はどうなのか知らないが、これまた気持ちのいい話ではない。
尿を絞り出す気力も失せるなか、なかなか検査できない選手もいるのではないだろうか。

新居ものがたり 新居市教育委員会
東海道膝栗毛の旅 人文社

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