たびびと

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プライドへの配慮 グアテマラの風

2010年08月16日 | グアテマラの風
グアテマラに赴任早々、グアテマラ人のプライドの高さを知らなかったために、大失敗をしたことがある。

政権交代直後のある日、大臣、局長、ぼくとその他数人のメンバーで会議があった。
いわゆる顔見せである。

自己紹介の後、近況について報告をした。
ぼくが外国人ということもあり、大臣は微笑んでぼくに次のように言った。
「何か困ったことはないですか」
そんな中、ぼくは大臣にひとつお願いをした。
「着任当時、ぼくには一緒に仕事をしていくグアテマラ人のパートナーが任命されていました。ところが、政権交代後、その人物が解雇され、今は一人で仕事をしています。いろいろとわからないこともあるので、新たに任命してくれると、とても助かるのですが」

すると、間髪をいれずに、(何となくあわてふためいた様子で)同席していた直属の上司でもある局長が言った。
「ああ、マガリをパートナーにしましょう。これで問題解決ね」

今までに何回か、この件を局長に依頼をしていた。しかし、非常に忙しい人なので、先送りになっていた。でも、この場でしっかりとパートナーを任命してもらい、とても嬉しかった。

ところが翌日、ぼくはちょっとした違和感を職場で覚えることになる。

局長は聡明な女性である。日本へ研修生として招待されたこともあってか大の日本ビイキ。
そしてパーティーが大好き。
仕事中、午後になるとみんなを会議室に集合させ、何らかの理由をつけてはパーティーをやった。父の日、母の日…。
もちろんアルコールはなしだった。

こんな気さくな局長は、毎朝、ぼくの席までやってきて声をかけてくれた。
「今日の調子はどう」
片言の日本語を交えて気を使ってくれていた。

ところが、この大臣との会合の日を境に、朝の挨拶がなくなったことに気がついた。

異変に気づいたのは3日後。その日の朝、何かがいつもと違うと感じた。
局長室から漏れる大きな笑い声を聞き、ぼくは思った。
「局長の日本語の挨拶が今日はないな」

そうして数日間それが続いた。
「一体原因は何だろう。機嫌を損ねる何かをしてしまったのだろうか」
と思っていたが、数日後ハッとひらめいた。

例の会議のときのことである。
大臣に対するぼくの一言は彼女のプライドを傷つけてしまったのである。
面子をつぶしてしまったのだ。

パートナーを指名するのは局長の役目。それを大臣に依頼したということは、局長に何らかの不満があるということを間接的に言っている。

ぼくの若さゆえの気配りの欠如であった。

この事件以来、どんな些細なことでも、どんな場所でも、グアマラ人を人の前では、たてる、ほめる、ということを欠かさなくなった。

相手にどんなに非がある場合でも、関係者の前では相手を持ち上げた。
「パートナーが非常によくやってくれるので助かります」
具体例な例をあげながら、よい面を評価したのだ。

これは今後のグアテマラの生活、いや中南米での生活で多いに役立つことになる。
皆がぼくの業務に率先して協力してくれるようになったのだ。

日本人は人にほめられると何となく照れくさい。ほめることもしかり。まして、上司の前で同僚をほめることなど一般的ではない。
夫婦間もそうだろう。

中南米では、第三者の前で相手を大いにほめたたえることが人間関係を良好にするためのコツである。

ちなみに、この局長は政権交代後の人事異動ですぐにぼくの職場からいなくなってしまった。

偉大なる教訓を残して。

局長は既に職場を去ることがわかっていて、モチベーションが落ちていたのかもしれない。それで挨拶がなくなったとも考えられる。

いずれにせよ、今となってはこの局長に大感謝である。


多くの方に楽しい旅をしていただければと思います。
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