軍鶏そば極だん@京都市南区唐橋西平垣:軍鶏そば

昨年11月20日に新規オープンしたお店。このところ矢継ぎ早にオープンする京都市内の新店を、誰かさんみたいに速報できるほどのフットワークは私にはない。かねてから気になっていつつ、ようやっと訪れたって感じ。JR西大路駅に程近い。クルマで行けば、近隣コインパーキングはこの日時点で20分/100円が相場のようだ。
お店の扉を開けたらソコに券売機。その前にアルコール噴霧器で手指消毒。
限定メニューに「宇治抹茶あわ鶏白湯」なるものがあるようだが、今回はレギュラーメニューを選ぶことにした。
券売機のボタン拡大図。初めて訪れた時にはこの前に立てば、結構迷うことになるだろう。実際、私の前に入店された三人連れの客人は、アレにしようかコレにしようか、ずいぶん長いこと逡巡されていた。その間、私はお店の外でガラスドア越しにしばし待った。しばらくして、三人連れ様先客のお一方が「お待たせしてスミマセン」と、私に気遣って声をかけて下さった。(余程怖い顔してたのだろうかオレ笑)
まず、「軍鶏そば」か「軍鶏白湯そば」か「軍鶏そば(塩)」の基本三択をどうするかで迷う。次に、チャーシュー丼セットにしようか、さらに「特製」にしようか、軍鶏チャーシューは増そうかどうしようか、味玉・メンマ・ねぎ・のりの具材をどうしようか…で、迷う。まして、日頃からラーメン店に出入りすることが多い人ならともかく、たまーに「今日はラーメンでも食べにいこカァー、あのお店、美味しいらしいでぇー」てな感じで訪れるお客さんであればあるほど、券売機前では逡巡してしまうものかもしれない。
そんなあと、清湯か白湯かで私も少し迷ったが、ソコは初訪。券売機左上ボタンに「そのお店の基本」がある原則を信じ、「軍鶏そば」を選択。
決して広くはないが、南向きからの採光十分かつ白を基調とした内装で明るい印象の店内。厨房に面するカウンター席4席。やはりココが「アリーナ席」となる様子。透明アクリル板で仕切られ、コロナ対策への配慮もしっかりした感じ。カウンター席後方に2人掛けと4人掛けテーブル席がそれぞれ一卓。階段を上がった2階部分は使わない様子。(製麺用スペースにでも充てているのかしらん?)カウンター席の隣席の先客は特製軍鶏白湯そばチャーシュー丼セットを召し上がっておいでで、店主の出自について、「特製」の具に載る鴨レアチャーシューについて、
テーブル上の「和歌山県産ぶどう山椒」について等々、会話を楽しみながら「うん美味い!こりゃ美味い!」と召し上がっておいでの最中、しきりに感動されていた御様子。挙句、食べ終えられてお店を出られるときには、店主と名刺交換までされていた。なんでも奈良のFM局「ならどっとFM」でパーソナリティを務めておられる、あるお方であったようだ。(そんなことだから、今後そのうち、同局の番組中で、このお店に訪れた時の話題が出るかもしれない予感がした。)
さて、注文の「軍鶏そば」。私も店主に話しかけてみたいこと、このお店について知りたいことは山ほどあるが、そこは黙っていただくことにした(基本、いつもそうだ。)スタンダードな「軍鶏そば」には特製鴨レアチャーシューや海苔、味玉は付いてこない。けれど、広面積豚肩ロース肉チャーシューの上に青ネギとスプラウト、とろろ昆布を囲むように穂先メンマ。そして、今の季節の彩として、桜の花麩をトッピング。見た目の美しさにはさすが作り手のキャリアを感じさせるものがある。また、厨房での店主の調理作業を観察していると、菜箸を使っての作業が非常に多いことからもそのことが窺える。
しかし、このラーメンに具材豪華版を求めるなら、やはり特製を選ぶべきであるようだ。
後から見てみたら、券売機の横に「特製」メニューの二種だけは写真が掲出されているところなどから察すると、お店側として「推し」なのはスタンダードなメニューより「特製」の方であることが窺える。鴨レアチャーシュー・味玉・のりが加わることで300円の価格差。そこに、その価値を見出すかどうかというところか。
しかし、トッピングの具材がどうであれ、まずは麺とスープが肝心だ。ここの「軍鶏そば」のスープは、軍鶏の出汁と醤油ダレ、という単純なものではないようで、調理行程を観察しても、出汁とタレの他にハーブというかスパイスというか、そうしたものをあれこれ組み合わせている。結果、なるほどちょっとやそっとでは真似できそうに無い独自性のある味わい。麺もまた、ライ麦配合の自家製麺で、これもまた、なるほどちょっとやそっとでは真似できそうに無い独自性がある。
そして、トータルに、相当に美味い。…のだが、それは「軍鶏そば」のボタンを押したときに期待していた味のイメージとは若干異なるものであったように思う。店主自らが調理を手がける無化調&自家製麺こだわり系ラーメンに期待するものは、「軍鶏そば」だったら軍鶏の旨み、「鶏そば」だったら鳥の旨み、それと、塩なり醤油なりのタレ(カエシ)及び油脂分との組み合わせの中にどれだけの味わいがあるか、だ。(して、それをやれ「奥行き」だの「深み」だのと抽象的な言葉を選んでは文章に表現するわけだが)
さらに、そんなスープと麺とのマッチングも無意識のうちに意識しながらいつも食べているように思う。とりわけ、無化調で作る場合に陥りがちなのは「スープ単体」ではかなり美味いけど、麺と合わすとたちまちショボくなってしまうパターン。往々にしてこれは、スープを作っているときに麺との組み合わせを念頭に入れたチューニング(簡単にいえば少々過剰気味と思えるところに旨みの濃度を持っていくこと…のような気がしている)をイメージしておくことを置き去りしてしまっている場合が多い気がする。
この日味わった「軍鶏そば」は、トータルに、相当に美味い。そのことは前提として、けれど、券売機のボタンを押したときに期待していた味のイメージ=根源的な出汁&タレ&麺の組み合わせ・バランスとは、いささか異なる印象であった。スープの中にいろんなものを加えることにより、独創性は増すだろう。同時に、足し算のし過ぎは、ことラーメンの味においては負の方向に働く場合もある…。そんなことを思う。
【そういう点で、ココ最近食べた中で出色だったのは福井「鯖の江」の「黄金のしお」。素材自体の構成は結構複雑なようだが「余計な調味料は一切使用していない」という。結果、忘れられないインパクトのある旨みがあった】
しかし、先ほど隣席で奈良のFM局パーソナリティ氏が食べながら絶賛しておられた白湯バージョンの方はまた違った印象なのかもしれない。
和食の世界からラーメン店に転身・開業されるケースは、ままある話。先月一杯を持って御勇退された金沢福座の福田さんも、その一例。その福田さんが、ラーメン店主として京都福三をオープンされた頃は、定番としたい「福三ラーメン」の味をどう決めるかで、開業後も試行錯誤を繰り返しておられたものだった。
そんなことで、今回いただいた「軍鶏そば」は、イメージとは少々違うものではあったけれど、今後も着目はしておきたい。また、同店ではこの日の夕方から、店先に「近江しゃもらーめん専門」と書かれたデカい日除け幕を設置したらしい。


軍鶏そば 極だんラーメン / 西大路駅
昼総合点★★★★ 4.0

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