初霜や菊冷え初むる腰の綿 芭 蕉
この句、『荒小田』に「此の句、羽紅のもとより、腰綿をつくりて贈られし返事なり」と注記して収められている。他には出ていないという。
秋冬の頃、京近辺にあった時期で、かつ、羽紅の夫凡兆との関係などから、元禄三年の作と推定できる。
凡兆の妻羽紅から腰綿を贈られ、その厚意に対して謝意をこめた挨拶である。「冷え初むる」が「菊」にもかかり、「腰」にもかかるのでその複雑さが句を曇らせている。しかし、老境の感慨がこめられているので、何かしみじみしたものを誘う句である。
「腰の綿」は腰綿のこと。腰にまとい冷えを防ぐ綿。
『荒小田』に秋の部に収めるので、季語は「菊」。「菊の綿」もしくは「菊の着綿(きせわた)」を心に置いた用い方となっている。「菊の着綿」は、菊の花に綿をおおい被せたもの。重陽の節句(九月九日)の行事で、前夜、菊の花に綿をおおって、その露や香を移しとり、翌朝その綿で体を拭うと長寿を保つという。
なお、「初霜」は冬。「冷ゆる」も秋。
「初霜がおり、菊も冷えはじめてきた。自分の腰も冷えはじめるころに
なったのだ。菊の着綿をする頃だが、自分もこの腰綿を巻いて、冷えを
ふせごうよ」
晩菊や家うち深く日の入りて 季 己
この句、『荒小田』に「此の句、羽紅のもとより、腰綿をつくりて贈られし返事なり」と注記して収められている。他には出ていないという。
秋冬の頃、京近辺にあった時期で、かつ、羽紅の夫凡兆との関係などから、元禄三年の作と推定できる。
凡兆の妻羽紅から腰綿を贈られ、その厚意に対して謝意をこめた挨拶である。「冷え初むる」が「菊」にもかかり、「腰」にもかかるのでその複雑さが句を曇らせている。しかし、老境の感慨がこめられているので、何かしみじみしたものを誘う句である。
「腰の綿」は腰綿のこと。腰にまとい冷えを防ぐ綿。
『荒小田』に秋の部に収めるので、季語は「菊」。「菊の綿」もしくは「菊の着綿(きせわた)」を心に置いた用い方となっている。「菊の着綿」は、菊の花に綿をおおい被せたもの。重陽の節句(九月九日)の行事で、前夜、菊の花に綿をおおって、その露や香を移しとり、翌朝その綿で体を拭うと長寿を保つという。
なお、「初霜」は冬。「冷ゆる」も秋。
「初霜がおり、菊も冷えはじめてきた。自分の腰も冷えはじめるころに
なったのだ。菊の着綿をする頃だが、自分もこの腰綿を巻いて、冷えを
ふせごうよ」
晩菊や家うち深く日の入りて 季 己