壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

身に入む

2011年11月05日 21時12分51秒 | Weblog
          赤坂の虚空蔵にて、八月二十八日、奥の院
        鳩の声身に入みわたる岩戸かな     芭 蕉
 

 奥の院は、岩をえぐって造ってあったものであろう。鳩は山鳩として聞くと、「身に入む」がいっそう引き立つように感じられる。

 「赤坂」は、岐阜県不破郡赤坂町の金生山明星輪寺宝光院。『おくのほそ道』旅中の作で、元禄二年八月二十八日の詠。
 「身に入む」は、骨身に徹して痛切に感じられる意で、季語としては、秋気が身に冷え冷えと沁みて、あわれを感じさせるのをいう。嘱目の実感であろう。

    「虚空蔵菩薩をまつった奥の院の岩戸に詣でると、陰暦八月も末に近い
     こととて、木立に鳴く山鳩の声までが、秋気を深く感じさせることだ」


      しんしんと床の間冷ゆる観世音     季 己