防 人
我が妻も 画にかきとらむ いつまもが
旅行く我(あれ)は 見つつしぬばむ (『万葉集』巻二十)
天平勝宝七年二月、坂東(ばんどう)諸国の防人(さきもり)を筑紫に派遣して、先に行っていた防人と交代させた。その時、防人たちが歌を作ったのが一群となって、巻二十に集録されている。
この歌は長下郡、物部古麿という者の作ったものである。一首は、
「自分の妻の姿をも、画に描いて持ってゆく、その描く暇(いとま)が
欲しいものだ。はるばると辺土の防備に行く自分は、その画を見て、
妻のことを思い出し、しのぼう」
というので、歌は平凡であるが、「我が妻も画にかきとらむ」という意向が珍しくもあり、人間自然の意向でもある。
いま、東京銀座の「画廊宮坂」で、【鈴木正二 展】が行なわれている。今日じっくりと観せていただき、ちょうど会場にいらした鈴木先生の奥様ともお話をした。
その時ふっと、この歌を思い出したので、ここに書き留めておく次第……。
ゆりかもめ真昼の川の睡りをる 季 己
我が妻も 画にかきとらむ いつまもが
旅行く我(あれ)は 見つつしぬばむ (『万葉集』巻二十)
天平勝宝七年二月、坂東(ばんどう)諸国の防人(さきもり)を筑紫に派遣して、先に行っていた防人と交代させた。その時、防人たちが歌を作ったのが一群となって、巻二十に集録されている。
この歌は長下郡、物部古麿という者の作ったものである。一首は、
「自分の妻の姿をも、画に描いて持ってゆく、その描く暇(いとま)が
欲しいものだ。はるばると辺土の防備に行く自分は、その画を見て、
妻のことを思い出し、しのぼう」
というので、歌は平凡であるが、「我が妻も画にかきとらむ」という意向が珍しくもあり、人間自然の意向でもある。
いま、東京銀座の「画廊宮坂」で、【鈴木正二 展】が行なわれている。今日じっくりと観せていただき、ちょうど会場にいらした鈴木先生の奥様ともお話をした。
その時ふっと、この歌を思い出したので、ここに書き留めておく次第……。
ゆりかもめ真昼の川の睡りをる 季 己