壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

先づ祝え

2010年12月29日 22時22分00秒 | Weblog
          しばし隠れける人に申し遣はす
        先づ祝え梅を心の冬籠り     芭 蕉

 祈りもしくは励ましの心が基調となっている発想である。
 この一句は、門弟の杜国あるいはその主従に贈られたものと考えられている。貞享四年十一月、杜国を訪問した際のものと思われる。

 「先づ祝え」は、自らまず鼓舞激励せよ、の心で言ったもの。「祝ふ」は、将来の福を請い求め祈る、の意である。
 「梅を心の」は、『古今集』の
        難波津に 咲くやこの花 冬籠り
          今を春べと 咲くやこの花
 を踏んだもので、百花にさきがけて咲き出る梅の心を、己が心としての意。

 季語は「冬籠り」で冬。挨拶の心が露出して、句が骨組みだけに傾いている。

    「今は落魄の身で、いわば冬籠りしているような身の上だが、冬に堪えて、
     百花にさきがけて咲き出るあの梅の心を心として、何よりもまず自分自身の
     将来を祝いなさい」


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