壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

古暦

2010年12月19日 21時01分35秒 | Weblog
        御経に似てゆかしさよ古暦     蕪 村

 昔の暦は、「御こよみも、軸もとになりぬ」(蜻蛉日記)とあるように、右巻きの巻物のようになっていて、形が経巻に似ていた。また、形だけでなく色彩の点からも、暦は事実、お経に似ていたのである。
 したがって、この句は、蕪村が特別な連想をしたわけではなく、季語そのものの心象と情趣とを、他の材料の技巧的配合なしに、素直に詠んだ種類の句である。
 
 季語は「古暦」で冬。歳末、来年用の新しい暦が来ると、今年の暦は「古暦」となる。『蜻蛉日記』にあるように、巻収めが軸元になる。これを「暦の果」という。ここには、一年の果てようとする感慨がこめられている。「暦果つ」 「暦の終

    「今年も残り少なくなってしまった。一年中、何かにつけて相談相手に
     してきた暦とも、間もなくお別れである。一日一日を息災に過ごせた
     のも、なんだか、この暦のお陰だったような気がして、古びのかかっ
     たその姿が、経本そのもののようにゆかしく思われる」


      暦果つ人の情けと癌残し     季 己