壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

出所あはれ

2010年12月25日 21時31分31秒 | Weblog
        古法眼出所あはれ年の暮     芭 蕉

 狩野古法眼(かのうこほうげん)といえば、容易に人の手放しそうもない名品であるが、それが人手に渡されようとしている。そこに、その持ち主の家の運命が感じとられるわけである。
 「出所あはれ」は、さらりと端的に言ってのけているが、深い人生観照が感じられる

 「古法眼」は、狩野派を大成した狩野元信(1476~1559)。元信は狩野正信の子、御用絵師として足利義政などに仕え、画名が高かった人で、剃髪して永仙と号し、法眼に叙せられた。
 法眼は、もと最高位の法印に次ぐ僧位。中世以降、僧に準じ、画師・連歌師・医師などに授けられた位。
 「出所(でどころ)」は、売りに出された書画骨董類の元の所有者を、ここでは意味する。

 季語は「年の暮」で冬。「年の暮」の窮迫した面が取り上げられている。

    「古法眼元信筆の立派な絵が売りに出されたが、これは一体どこの
     名家から売りに出されたものであろう。このような先祖伝来の家宝 
     が売りに出されるについては、旧家の年の暮も推しはかられて、
     しみじみした感じにさせられることだ」


      我楽多の中に起き伏し年の暮     季 己